先日、飛騨コスモス天文台の観望会のあとに、かんたろうさんの45cmドブソニアンで見せてもらったリング上星雲M57に色がついた話ですが、天リフの特選ピックアップにとりあえげられるなど、反響がすごかったので少し補足しておきたいと思います。

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色がついた時の詳細

この時、M57は都合3度ほど見ました。そこまで記憶が定かではないのですが、まず最初に70倍、ついで360倍、また70倍だったと思います。もしかしたらその後さらに360倍を見たかもしれません。

ほぼどの回も、私はずっと電視観望でUranus-Cのテストをしていたので、直前までそこそこ明るいPCの画面を見ていました。PCがある場所から45cmドブソニアンまでは10m位離れていますでしょうか。途中Hさんが撮影している場所を通るので、見えにくい目で注意しながらHさんを避けてドブソニアンのところまで行き、これまた見えにくい目でかんたろうさんに接眼部の場所を聞き、頭をぶつけたりしないように注意しながらアイピースを覗きます。

  1. まず最初に70倍で見た時。ちょっと緑色に見えているように感じましたが、背景の色も緑に見えるような気もして、色がついていると言うには全然確証が持てませんでした。
  2.  一旦電視観望のところに帰り、明順応になった状態で再び360倍。この時は気のせいと思うこともできないほど色が全くついたようには見えませんでした。
  3.  再び70倍。よく見ると決して明るくはないですが、M57の中がはっきり青と緑の2色に分かれています。「あ、これは色がついてる!」と叫んで、確証した瞬間です。真ん中が青で、その周りが緑。細い外周が一瞬オレンジ色か赤っぽく見えましたが、見ているとすぐにその色は確認できなくなっていました。
あ、でもこの時点は実際にはどの色がどの順で見えるべきかの確証はなかったのですが、後で画像で確認すると見事に中が青で、外に行くに従って緑、最外周はオレンジだったので、ここで改めに確証が持てました。

今回は最低限2色、もしくは3色見えたことが「星雲に色がついた」ということの確証です。

それでも、オレンジ系は気のせいかとも思っていて確証が持てなかったのですが、その後の天リフ特選ピックアップで編集長が「M57の外周部が口径20cmでほんの少しオレンジ色に感じたことがあった」と書いています。Twitterで黒天リフさんが発言していたのですが、これは電視観望の名付け親のHUQさんも同時に見ていたとのことです。これを聞くと、私も気のせいなどではなかったのではと思えてしまいます。おそらく、何か見える要因があるのでしょう。

今回、星雲に色が付くことは理解でき、実際に見えたのでやっと納得できました。2016年の原村の星まつりでドブソニアンの人たちに聞きまくって、当時10歳だった下の息子が「緑に見える」と言ってもどうしても私には色がついて見えるようには思えませんでした。その後どうしても観望会で色付きの星雲をお客さんに見せたくて電視観望への道が開たのですが、今後は明順応を前提にした観望会もやってみたいと思うようになりました。

今後はM57のオレンジや、M42などの明るい星雲の色がどこまで見えるのか、いろいろ検証できたらと思います。

かんたろうさん、素晴らしい眼視経験、本当にありがとうございました。でも今のところかんたろうさんの45cmのドブ頼りです。自分で一本持った方がいいのかなあと思い始めています。


自宅で順応実験

さて、天気も悪く、もちろん手元にドブも無いのですが、もう少しできることとして、その後、自宅で少し実験してみました。

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夜中目が覚めてトイレに起きた時は確実に暗順応状態です。なので、まずは暗順応から試しました。実験は、廊下にある電気のスイッチのところについている小さなオレンジ色の明かりを使います。暗順応状態でも、目を普通に開けて普通に見るとオレンジ色がそのまま見えます。そこで、暗くするために目を細めます。目を細めていくと、あるところから色が消えて白い明かりがあるように見えますが、それでも形ははっきりとわかります。おそらくこれが暗順応した目で星雲を見ているような状態だと思います。

次に、起きている間に、夜に電気を消して廊下周りを暗くして同じスイッチのオレンジ色の光を見ます。目を開けているとオレンジ色に見えるのは同じです。同じようにだんだん目を細めていきますが、あるところから真っ暗になります。暗順応の時に見えたような白い明かりは全く見えません。これが明順応で見た状態に相当すると思うのですが、M57を明順応で見たときは少なくともまだ形が見えてたので、廊下で見た暗くなる状態よりは、目に入る光量は多かったと考えていいのかと思います。

暗順応状態でも、明順応状態でも、ある程度の明るさがあれば色はついて見えることはわかりました。色がついているものが、色がつかないように白く見えるのは暗順応の方ということもわかりました。問題は、最低限色がつく明るさが、明順応の方が暗順応よりも暗いのかどうかです。

  • 廊下で暗い状態で見た小さなオレンジ色の明かりが、明順応の方がより暗い状態で色が付くのならば、今回見たM57の色もかなり説明がつきます。
  • 逆に、暗順応の方がより暗い状態で色が付くのならば、今回見たM57は説明がつきにくくなります。
  • ですが、暗順応の場合に、色が付かなくてより明るく見えるために、その明るさが色を消してしまうようならば、まだ今回見たM57の色は説明がつきます。
今回は目をつぶりかけるということで明るさを調整しているために、明順応、暗順応で色がついたときの明るさを定量的に比較できていないことが、今回の廊下スイッチ方法の最大の欠点です。

でも少なくとも明順応と暗順応で、暗く色がついた光の見え方に明らかな違いがあることが確認できました。簡単な方法なので、よかったら皆さんもぜひ試してみてください。


いよいよ明日は

さて、いよいよ明日は志賀高原の天空フェスタで電視観望セミナー。今から楽しみです。

実は、M57を見た時に同時にしていた電視観望は、この天空フェスのスライド作りのためでした。その後、晴れる日があるかどうか心配で、最後のチャンスかと思っていたのですが、結局今日まで晴れる日はなくて、本当にあの時が最後のチャンスでした。

スライドの準備もほぼ完了。ブログ記事をこんなふうに書いているくらいなので、精神的にも少し余裕があります。天気がちょっと心配ですが、来てくれた方には精一杯付き合おうと思います。せっかくの機会なので、満足して帰っていただけるよう頑張ります。