前回のSV405CCのセンサー解析レポートに続き、撮影編でのレポートになります。




撮影準備

6月17日の金曜、天文薄明終了が21時過ぎ、その後月が22時過ぎから昇ってきて明るくなりますが、貴重な梅雨の晴れ間です。SV405CCでの撮影を敢行しました。

ターゲットは北アメリカ星雲としました。理由は
  • 月から離れていること。
  • 以前自分で撮影していて、比較しやすいこと。
  • メジャーな天体で、他の人も認識比較できること。
  • 自宅撮影なのと、途中から月が出てくるので、ある程度明るい天体。
  • ワンショットなローバンドフィルターを使いコントラストを上げたいため、輝線星雲であること。
  • 最後の決定打は、そこそこ広角で手軽なFS-60CBで撮影できるくらい大きめのもの。
などから決めました。

といっても、この日の空はうっすら霞んでいる様な状況で、撮影に適した日とは到底言えません。

夏至が近く、日が長いので、明るいうちに準備ができます。機材はFS-60CB+マルチフラットナー+CGEM II。フィルターはCBPのアメリカンサイズとしました。ガイド鏡はいつも使っている120mmのサイトロンのもの、ガイドカメラはASI290MMです。

CBPをノーズアダプターに取り付ける時、ASI294MC Proについていくるものは途中までしかねじ込めませんが、SV405CCに付属のものには最後まできっちりねじ込めます。使いたいフィルターのネジ規格によるのですが、私はサイト論のものをよく使うので、SV405CCのノーズアダプターの方がいいのかもしれません。

IMG_5758

今回の撮影は、もともとASI294MC ProやASI294MM Proでのセットアップに近く、ケーブルも普段組んでいる物を使いました。そうすると、SV405CCの背面にUSBの分岐がないのが地味に辛くて、結局長いケーブルをもう一本這わせることにしました。これまで意識していなかったですが、意外にカメラでのUSB分岐が役に立っていたのだと実感しました。

SV405CCは冷却初期モデルなのでまだそこまで手が回っていないと思いますが、将来的にはUSB分岐もあると、ZWOカメラと互換性が高まりユーザー側でのケーブルなどの取り回しが楽になると思うので、考えてもらえると嬉しいかもしれません。ガイド鏡などは速度を求めないので、USB2.0で十分かと思います。

初期アラインメントや、最初のピント合わせでSharpCapで実際の星を見てみました。時間はほとんどかけられませんでしたが、RGBカラー調整バーのジャンプが少し気になりました。一段変えようとすると50飛びで変化が大きすぎです。マウスやカーソルでもう少し細かい変更ができると嬉しいです。

今回はコントラストなどのパラメータはほぼ何も触っていません。というのもSV305で触ると設定が大きく外れて一気に画面上で見えなくなった経験があるのと、実際には撮影までの時間が惜しいので、余分なことはやりたくなかったというのです。SV405CCで電視観望を試したいので、その時にいろいろ触ってみようと思います。

SharpCapで試したことで一番大きかったことが、プレートソルブが問題なくできたことでしょうか。少し前の記事で書きましたが、最近は極軸調整が終わった後の赤道儀での初期アラインメント(ワンスターアランメンと)で、目的天体が入ったかどうかの確認を省略しています。その代わりにプレートソルブでずれを認識し、赤道儀にフィードバックして目標天体を入れるようにしています。今回SV405CCでも待ってく問題なくプレートソルブできたので、少なくとも全然おかしな像が来ているとかはないことがわかります。


NINAでSV405CCを動かすには

そのまま撮影のためにNINAに移ります。撮影にSharpCapではなくNINAを使う理由が、ガイド時のディザーの扱いです。最近のSharpCapもスクリプトなどでかなりのことができる様になってきましたが、ディザーを含めた撮影はまだNINAの方がかなり楽なのかと思います。

NINAでSV405CCを使うためには、ドライバーが必要です。ただしNINAの最新版NINASetupBundle_2.0.0.9001.zipに入っているSCBONYのカメラのdllの日付は2022/4/4なので、6月13日付のドライバーは入っていません。そのため最新ドライバーを使用して撮影するためには、ドライバーを手動でインストールする必要があります。

私を含め、SV405CCユーザーには直接6月11日に新ドライバーが送られてきたようですが、日本の公式ページを見ても全てのカメラを含むドライバーの2022-02-21版がアップされているだけで、SV405CC用のドライバーはまだアップロードされていません。と思ってよく探したら、本国のSVBONYの方には6月13日にアップロードされていました。というわけで、SharpCap、NINAともにSV405CCを使う場合には、

https://www.svbony.com


に行き、上のタブの「SUPPORT」 -> 「Software & Driver」 -> 横の「Windos」と進み、「SVBONY Cameras」の最新版(Release date:2022-06-13以降)をダウンロードする必要があります。その後、解凍してRead Me.docをよく読みNINAのインストールディレクトリの「External」「X64(64bit OSの場合)」「SVbony」のSVBCameraSDK.dllを新しいものに自分でコピペして入れ替えるひつようがあります。

こうすると無事にNINAでも新ドライバーで動くようになります。


さらに新しいドライバー

実は撮影を開始する2時間ほど前に、TwitterのダイレクトメールでSVBONYさんから直接、6月14日更新のドライバーができたと連絡がありました。Google Driveにアップしたのでダウンロードしてくださいとのことです。ところが非常に残念なことに、Googleの何らかのポリシーに反しているらしくて、アクセスさえできません。Googleをログオフしたり、別アカウントでログインしたり、Mac、Windows、iPadなどいくつか試しましたが、いずれも状況はかわらず、撮影準備時間にも限りがあるのでなくなく6月11日に送られてきたドライバーのままで撮影を始めました。

このドライバー、前回のレポートで書いていますが、HCGモードのゲイン設定がおかしいことがわかっています。私の解釈が正しければ、HCGモードのダイナミックレンジが得をする一番美味しいゲイン設定ができないという結果なので、是非とも改善されたドライバーで試したかったのですが、まあ仕方ないです。

それでも、数日のオーダーでドライバーを貪欲に書き換えてくるレスポンスの速さは素晴らしいと思います。


実際の撮影

実際にNINAでSV405CCで撮影を開始しました。ゲインは迷いましたが、後で比較できるようにASI294MC Proでいつも撮影しているのと同じ120にしました。露光時間は3分間です。冷却温度はいつも撮影している-10℃に設定します。ただし梅雨時期に入り、気温も高くなってきているので、そこは考慮すべきかと思います。この日は夜になっても暑く、撮影開始時には外でも25℃程度はありました。

この日は薄曇りというか、空全体が霞みがかっていて、北極星はほぼ何も見えなくて、夏の大三角がかろうじて見えるくらいでした。それもあってか、1枚目の画像はなぜかとても暗くて、北アメリカ星雲ですが、淡いところがほとんど何も出てきません。ASIFitsViewでのオートストレッチですが、実際電視観望で見えるよりはるか以下です。

2022-06-17_21-27-39_0000


ところが2枚目には普通に星雲が見えます。これは一旦撮影を止めた次の撮影でも再現しました。

IMG_5757
ここの1枚目と4枚目です。全く同じ設定で星の数が4分の1ほどです。突然雲が来たかとも思ったのですが、ガイド鏡の画面を見ている限りそんなことはありません。

ところが次にASI294MC Proで撮影を終え、再びSV405CCに切り替えた3度目の連続撮影では最初から普通に撮影できます。何かあるのか?、たまたまなのか?、もう少し検証すべきですが、少なくともこんなことがあったので一応書いておきます。

さて、その最初の撮影ロットの2枚目、大きな問題が発生です。画像を見てもらうとすぐにわかります。

2022-06-17_21-30-39_0001

真ん中に大きな影があります。右下の小さな円状の影は埃であることが判明しているので、ここでは無視します。さてこの真ん中の影、結局はセンサー面の結露でした。

IMG_5753

数枚撮影した後、温度を0度に変更することでこの結露は消えました。よほど湿気っぽかったのかもしれません。ただ、後で撮影した画像をいくつか見ると、-10℃のままでも曇ったエリアが小さくなっていたので、待っていればよかったかもしれません。


撮って出し撮影画像

なんだかんだトラブルもあり、まともな画像が撮影できたのは22時頃から。とりあえず10枚で30分撮影します。高度が上がってくると淡かった星雲も少しづつ濃くなってきます。10枚目を22時30分に撮影し終わりました。その時の画像をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

2022-06-17_22-27-48_15_SV405CCb

22時半頃にASI294MC Proに交換。この頃から少しづつ雲が出てきます。カメラの回転角、ピントを合わせ直し、雲が通り過ぎるのを少し待ちます。撮影時のゲインはSV405CCの時と同じ120、露光時間も同じ3分です。温度も比較しやすい様にSV405CCで撮影したのと同じ0℃にあわせます。

22時49分にやっとASI294MC Proでの1枚目が撮影できました。その1枚目をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

2022-06-17_22-46-43_0016_ASI294MCPro

2枚の画像を比べても、ストレッチをした後だと極端な差はないことがわかります。最初、SV405CCの北アメリカ星雲がかなり淡かったので心配していましたが、ASI294MC Proで見ても大きな差がなかったので、この日の空の状況がよくないということで理解でき、少し安心しました。

ただし、クリックして拡大などしてみていただければわかりますが、滑らかさに差があるわかるかと思います。これはヒストグラムを見比べるとなぜだかわかります。2枚の画像のヒストグラムASIViewerで見てみます。上がSV405CC、下がASI294MC Proです。

histgram_SV405CC


histgram_ASI294MCPro

まず、明らかに山の位置に違いがあり、上のSV405CCの方が右側に出ていて明るいことがわかります。ゲインと露光時間は同じなのに明るさが違います。これは前回のレポートで、今公開されているSV405CCのドライバーではゲインが120ズレていて実際には明るく撮影されてしまうという報告をしましたが、傾向としては合ってそうです。ただ、明るさはゲインで120ズレているなら12dB=4倍のズレになるはずなのですが、平均値で比べると2倍弱の明るさの違いしかありません。この原因は今のところ不明です。

また、SV405CVの方の赤の広がりが大きいのが気になります。ASIFitsViewのオートストレッチはノイズはいじっていないはずなので、この広がりはノイズそのものを表すはずです。しかもこのヒストグラムの山は主に背景を表しているはずなので、RとGBでそれほど差が出ることはないはずです。Debayerのアルゴリズムのせいかもしれませんが、ドライバーの方でチューニングできるなら今度のアップデートを待ちたいかと思います。


その後の撮影と片付け

結局撮影は、最初にSV405CCで10枚の30分、ASI294MC Proで10枚の30分、さらにSV405CCで20枚の1時間です。雲などが入り明らかに写りが悪いのは省いた上での枚数です。最後の方でガイドがものすごく揺れているので外に出てみたら、机やPCが吹っ飛びそうなくらいの強風が吹いていました。危険なのと、星像も揺れるはずなのでここで終了として撤収しました。
  • 今回の画像で最適化されていないことがいくつかあります。一つはバックフォーカスで、FS-CB60にマルチフラットナーをつけた時に、きちんとそこから定められた距離にセンサーを置かなければいけないのですが、今回は合わせている時間がもったいないので適当にしました。なので四隅が流れてしまっていますが、ご容赦ください。
  • また、SV405CCの画像にほこりがついていて影になってしまっていますが、これも取り除く時間がもったいなかったのでそのままにしてあります。こちらはフラット補正で消えることを期待しています。
  • また、カメラの回転角とピントも同じで合わせきれていません。少しづつズレてしまっていますが、此処もご容赦ください。


今後

現在ダークフレーム、フラットフレーム、フラットダークフレームなど撮影しています。画像処理を引き続き進めますが、空は悪かったので写りは大したことないかもしれませんが、ASI294MCも同時に画像処理して比較してみますので、差を見ることでカメラとしてどれくらいの能力を持っているかわかるかと思います。

とりあえず画像処理はまだ時間がかかりそうなので、今回は主に撮影の様子と、撮って出しの比較くらいまでの記事としたいと思います。次回記事で画像処理の結果を見せたいと思います。

また、SV405CCドライバーはまだ発展途上なので、画像も今後大きく変わる可能性もあります。そこら辺も見所になるかと思います。


  1. SV405CCの評価(その1): センサー編 
  2. SV405CCの評価(その2): 撮影編 
  3. SV405CCの評価(その3): 画像比較
  4. SV405CCの評価(その4): 新ドライバーでの画像比較
  5. SV405CCの評価(その5): 青ズレの調査と作例
  6. 番外編1: 階調が出ない時のPedestalの効果
  7. 番外編2: ASI294MC Proでの結露