前回記事で試したASI2400MC ProとFS-60CB +旧フラットナーで試した電視観望。
お気軽電視観望というところからは程遠いことがわかり、今回は満を辞してのTSA120の登場です。さて、どうなることやら。
前回FS-60CBでの反省を踏まえ、TSA-120でのセットアップです。
この状態でM42オリオン大星雲で比較します。今回も、西の空低くの沈みかけになります。FS-60CBではなかなか出なかったのですが、TSA-120では細部までかなり出ていることがわかります。ランニングマンも写りかけています。基本的にピクセルサイズが6μmと大きいため感度が高いためか、西のかなりひどい状況の空でも十分に映し出すことができています。
ただし、FS-60CBの時よりはましみたいですが、それでも周辺減光があります。実はこれ、周辺減光はひどいわけでは全くなく、普通の撮影時で出てくる周辺減光と同レベルです。電視観望では強度の炙り出しをリアルタイムでしてしまうために、どうしても周辺減光が必要以上に目立ってしまいます。
次に、馬頭星雲と燃える木です。一応見えてますが、あまりはっきりしません。周辺減光で炙り出し切れていないせいもありますが、そもそも隣の家の屋根に沈む寸前。これ一枚ライブスタックした次の画像は、屋根が入ってしまいました。
次はこちらも沈む少し前のバラ星雲です。画面をiPhoneで撮影したものです。
この時にSharpCapでキャプチャした画像が下になります。
この一部を拡大してよく見るとホットピクセルが多少あります。
でも解像度が高いので、引きで全体を見ている限りはそこまで目立たないようですが、スタック時間が長くなるとミミズのように伸びていきます。これはリアルタイムダーク補正でだいぶマシになります。
下はダーク補正をした場合。少し残りますが、細くなっていて実際の電視観望で全体で見ている限りはまず気になりません。
これ以降はの画像は全てダーク補正をしてあるものになります。
周辺減光を緩和できないか試してみました。次の画像はリアルタイムフラット補正をしたものです。iPad ProでColor Screenというアプリを使い、灰色に近い色を画面に出し、鏡筒の先端に当ててフラットを撮影しました。その際、画面が明るすぎたので露光時間を100msと短くしました。ちなみにLiveStack時は露光時間6.4秒ですが、一般にゲインさえ変えなければフラットフレームの露光時間を変えても問題ないはずです。
でもこれを見ると、どうも赤が過補正になってしまっています。この時はモノクロのフラットフレームを作成しました。
色別で補正具合が違うということのようなので、各色で補正しなくてはダメなのかと思い、次はカラーのフラットフレームを作成してフラット補正した場合です。ダーク補正が何か影響するのかとも考え、この一枚はダーク補正もなしです。
今度は白で過補正になっていますね。これまでも何度かSharpCapでフラット補正を試していますが、うまくいったことがありません。この日もこの時点で諦めました。以後はフラット補正はしていなくて、ダーク補正はしてあります。
オリオン座が沈む頃の時間帯、春はあまりカラフルな天体はなく、鮮やかさでは寂しくなってしまいます。その代わり銀河はよりどりみどり。フルサイズなので広角ですが、十分に見応えがあります。
例えばしし座の三つ子銀河ですが、やはり周辺減光が大きいですが...、この画角だと拡大して一部だけ見た方がいいと思います。
実際、高解像度のカメラなので、拡大画像でも全く破綻しないんですよね。むしろこれがASI2400MC Proの真骨頂で、拡大しても得られた画像は素晴らしいの一言です。実際に見ているのに近い、iPhoneで撮影したものです。
もうツルッツルですよ。これで6.4秒露光で、ライブスタックでトータル20分ちょいです。
参考に、画面をキャプチャしたものも載せておきます。
中心部を拡大すればこんなふうにかなり見えるようになるので、たとえ2インチ対応の鏡筒でも電視観望の炙り出しで周辺減光がある程度残ってしまうことを考えると、フルサイズの広角なのを利用して導入で楽をして、目的の天体を画面中心に持ってきて、画面上で拡大というのが使い方としては現実的なのかもしれません。
ちなみに下は、10分の1の時間、ライブスタック2分の時の画像です。
20分と比べるとザラザラ感は残りますが、これでも電視観望なら十分過ぎるくらい綺麗なものになります。
拡大して比較してみます。左が20分スタック、右が2分スタックです。2分のほうがノイジーですが、逆に20分は画像が流れた縞ノイズが少し出ています。
ただ、拡大してこの程度なので、通常の電視観望ではたとえ2分露光のものでもかなり綺麗に見えたという印象になるかと思います。
20分スタック画像を簡易処理してみました。10分程度でパッとやったくらいです。流石に長時間かけた天体写真と比べるとダメですが、それでも十分鑑賞できるくらいにはなるのかと思います。
次はソンブレロ銀河です。20分露光です。周辺減光が目立たないように中心部を拡大しています。これだけ見えれば十分でしょうか。
最後はM51子持ち銀河です。これも20分露光で、中心部を拡大。少しノイジーですが、かなり細部まで出ています。これは結構すごい!
少しノイジーだったので、あっと思い、この段階でこれまで冷却していないことに気づきました。そのため、では冷却したらどうなるかを試しました。
ただし、その際、SharpCapを最新版にアップデートしたのですが、少し状況がわかったようです。ほぼ同じ条件で冷却をオンにしただけですが、明らかにノイジーになってしまっています。必ずしも最新版がいいわけではないようです。インターフェースは白の明るい部分がなくなり、改良されているようです。
そもそも電視観望は長時間露光ではないので、冷却がどこまで効くかは疑問で、今回は冷却に関しての効果の判断は保留としたいと思います。
とここら辺まで試して月が出てきたので終了。ASI2400MCとTSA-120での贅沢電視観望いかがでしたでしょうか?このレベルを観望会で、しかも大型画面やプロジェクターで見せることができたら、結構すごいと思います。
ASI2400MC Proでの電視観望である程度わかったことをまとめておきます。
ただし、このカメラの値段を調べてもらうとわかりますが、ちょっとというか、かなりのものです。電視観望のためだけに購入するのはなかなか勇気が必要で、今回は借り物だから実現できたのかと思います。撮影のためにこのカメラを購入し、そのついでに電視観望をするとかならまだ現実的でしょう。予算がある公共の天文台とか、個人でも余裕がある方は電視観望用途でも検討する価値はあるかと思います。ただ、今回私も口径や焦点距離、周辺減光などで結構苦労したので、ある程度のスキルも必要になってきます。こう考えると個人で電視観望のみの用途だとは少しもったいないレベルの機材の気がしますが、ただし、得られる画像はかなりのものであることは間違い無いので、興味がある人は検討する価値があるのかもしれません。
今回はこれまでとは方向性の違った豪華機材での電視観望でしたが、かなり楽しかったです。結論としては「ASI2400MC Proは価格はすごいが、得られる画像もやはりすごい!です。
お気軽電視観望というところからは程遠いことがわかり、今回は満を辞してのTSA120の登場です。さて、どうなることやら。
TSA-120にASI2400MC Proを取り付ける
前回FS-60CBでの反省を踏まえ、TSA-120でのセットアップです。
- まず、カメラセンサーの近くにホコリがついていた可能性があるので、ブロアーで吹き飛ばしました。
- 周辺が歪まないようにフラットナーを鏡筒側に取り付けます。
- FS-60CBで苦労した接続も、2インチアイピースが標準のTSA120なら楽勝です。カメラに付属の2つのアダプターは、2インチアイピース口の差し込み口の径に合うような48mmのものになっています。落下防止の意味も含めて、アダプターを2つ連結してカメラに取り付けます。
- 月は出ていないですが街中で明るいのでCBPをカメラのアダプターの先に取り付けます。
- カメラ本体をアイピース口に差し込みます。
- 架台もAZ-GTiでは当然荷が重いので、CGEM IIにします。
さあ、豪華セットで電視観望開始!
この状態でM42オリオン大星雲で比較します。今回も、西の空低くの沈みかけになります。FS-60CBではなかなか出なかったのですが、TSA-120では細部までかなり出ていることがわかります。ランニングマンも写りかけています。基本的にピクセルサイズが6μmと大きいため感度が高いためか、西のかなりひどい状況の空でも十分に映し出すことができています。
ただし、FS-60CBの時よりはましみたいですが、それでも周辺減光があります。実はこれ、周辺減光はひどいわけでは全くなく、普通の撮影時で出てくる周辺減光と同レベルです。電視観望では強度の炙り出しをリアルタイムでしてしまうために、どうしても周辺減光が必要以上に目立ってしまいます。
次に、馬頭星雲と燃える木です。一応見えてますが、あまりはっきりしません。周辺減光で炙り出し切れていないせいもありますが、そもそも隣の家の屋根に沈む寸前。これ一枚ライブスタックした次の画像は、屋根が入ってしまいました。
次はこちらも沈む少し前のバラ星雲です。画面をiPhoneで撮影したものです。
この時にSharpCapでキャプチャした画像が下になります。
この一部を拡大してよく見るとホットピクセルが多少あります。
でも解像度が高いので、引きで全体を見ている限りはそこまで目立たないようですが、スタック時間が長くなるとミミズのように伸びていきます。これはリアルタイムダーク補正でだいぶマシになります。
下はダーク補正をした場合。少し残りますが、細くなっていて実際の電視観望で全体で見ている限りはまず気になりません。
これ以降はの画像は全てダーク補正をしてあるものになります。
周辺減光をなんとかしたい
周辺減光を緩和できないか試してみました。次の画像はリアルタイムフラット補正をしたものです。iPad ProでColor Screenというアプリを使い、灰色に近い色を画面に出し、鏡筒の先端に当ててフラットを撮影しました。その際、画面が明るすぎたので露光時間を100msと短くしました。ちなみにLiveStack時は露光時間6.4秒ですが、一般にゲインさえ変えなければフラットフレームの露光時間を変えても問題ないはずです。
でもこれを見ると、どうも赤が過補正になってしまっています。この時はモノクロのフラットフレームを作成しました。
色別で補正具合が違うということのようなので、各色で補正しなくてはダメなのかと思い、次はカラーのフラットフレームを作成してフラット補正した場合です。ダーク補正が何か影響するのかとも考え、この一枚はダーク補正もなしです。
今度は白で過補正になっていますね。これまでも何度かSharpCapでフラット補正を試していますが、うまくいったことがありません。この日もこの時点で諦めました。以後はフラット補正はしていなくて、ダーク補正はしてあります。
春の銀河を電視観望
オリオン座が沈む頃の時間帯、春はあまりカラフルな天体はなく、鮮やかさでは寂しくなってしまいます。その代わり銀河はよりどりみどり。フルサイズなので広角ですが、十分に見応えがあります。
例えばしし座の三つ子銀河ですが、やはり周辺減光が大きいですが...、この画角だと拡大して一部だけ見た方がいいと思います。
実際、高解像度のカメラなので、拡大画像でも全く破綻しないんですよね。むしろこれがASI2400MC Proの真骨頂で、拡大しても得られた画像は素晴らしいの一言です。実際に見ているのに近い、iPhoneで撮影したものです。
もうツルッツルですよ。これで6.4秒露光で、ライブスタックでトータル20分ちょいです。
参考に、画面をキャプチャしたものも載せておきます。
中心部を拡大すればこんなふうにかなり見えるようになるので、たとえ2インチ対応の鏡筒でも電視観望の炙り出しで周辺減光がある程度残ってしまうことを考えると、フルサイズの広角なのを利用して導入で楽をして、目的の天体を画面中心に持ってきて、画面上で拡大というのが使い方としては現実的なのかもしれません。
ちなみに下は、10分の1の時間、ライブスタック2分の時の画像です。
20分と比べるとザラザラ感は残りますが、これでも電視観望なら十分過ぎるくらい綺麗なものになります。
拡大して比較してみます。左が20分スタック、右が2分スタックです。2分のほうがノイジーですが、逆に20分は画像が流れた縞ノイズが少し出ています。
ただ、拡大してこの程度なので、通常の電視観望ではたとえ2分露光のものでもかなり綺麗に見えたという印象になるかと思います。
20分スタック画像を簡易処理してみました。10分程度でパッとやったくらいです。流石に長時間かけた天体写真と比べるとダメですが、それでも十分鑑賞できるくらいにはなるのかと思います。
次はソンブレロ銀河です。20分露光です。周辺減光が目立たないように中心部を拡大しています。これだけ見えれば十分でしょうか。
最後はM51子持ち銀河です。これも20分露光で、中心部を拡大。少しノイジーですが、かなり細部まで出ています。これは結構すごい!
少しノイジーだったので、あっと思い、この段階でこれまで冷却していないことに気づきました。そのため、では冷却したらどうなるかを試しました。
ただし、その際、SharpCapを最新版にアップデートしたのですが、少し状況がわかったようです。ほぼ同じ条件で冷却をオンにしただけですが、明らかにノイジーになってしまっています。必ずしも最新版がいいわけではないようです。インターフェースは白の明るい部分がなくなり、改良されているようです。
そもそも電視観望は長時間露光ではないので、冷却がどこまで効くかは疑問で、今回は冷却に関しての効果の判断は保留としたいと思います。
とここら辺まで試して月が出てきたので終了。ASI2400MCとTSA-120での贅沢電視観望いかがでしたでしょうか?このレベルを観望会で、しかも大型画面やプロジェクターで見せることができたら、結構すごいと思います。
まとめ
ASI2400MC Proでの電視観望である程度わかったことをまとめておきます。
- 鏡筒をかなり選んでも、フルサイズの電視観望では周辺減光はどうしても目立ってしまう。
- リアルタイムダーク補正は結構効く。
- リアルタイムフラット補正は結構難しい。
- 感度、フルサイズの解像度、ダイナミックレンジは素晴らしく、電視観望でも撮影に近いレベルで画像を得ることができる。
ただし、このカメラの値段を調べてもらうとわかりますが、ちょっとというか、かなりのものです。電視観望のためだけに購入するのはなかなか勇気が必要で、今回は借り物だから実現できたのかと思います。撮影のためにこのカメラを購入し、そのついでに電視観望をするとかならまだ現実的でしょう。予算がある公共の天文台とか、個人でも余裕がある方は電視観望用途でも検討する価値はあるかと思います。ただ、今回私も口径や焦点距離、周辺減光などで結構苦労したので、ある程度のスキルも必要になってきます。こう考えると個人で電視観望のみの用途だとは少しもったいないレベルの機材の気がしますが、ただし、得られる画像はかなりのものであることは間違い無いので、興味がある人は検討する価値があるのかもしれません。
今回はこれまでとは方向性の違った豪華機材での電視観望でしたが、かなり楽しかったです。結論としては「ASI2400MC Proは価格はすごいが、得られる画像もやはりすごい!です。
コメント
コメント一覧 (6)
動画 : https://www.youtube.com/watch?v=iv-qDL9Br58
そんなレベルでは全然無いんですよね。今思うと、ビニル袋をかぶせて、同露光時間、同ゲインでスカイフラットを試すとよかったのかもしれません。その場合はかなり暗いのでできたフラット画像は結構ノイジーなはずで、それを回避するのにフラットダークが効く可能性があります。
http://hoshizolove.blog.jp/archives/40397152.html
やはり周辺減光で苦労されましたか。当方はいつも294MCPの電子観望で遊んでいますが、m4/3センサーでも周辺減光が気になります。また、Samさんと同じように、フラットは色ずれが起きます。カラーのフラットを作って合ったかな?と思っても、別の写野でバックグラウンドの明るさや色が異なると、フラットが合わなくなります。最近はフラットをあてるのはあきらめています。
私は294では周辺減光はそこまで気になりませんが、傾向はやはり同じですね。
リアルタイムフラット補正は本当に難しいです。たまにあっても、汎用性がないのですぐダメになります。実用度で言うとまだちょっと厳しい感じです。むしろ、Photoshopのレンズ補正みたいに、スライダーで調整してくれるようにしてくれればいいのにと思います。
それにしても2400MCPの威力はすさまじいですね。300~500ミリ程度の光学系と組み合わせて、いろいろな天体をズームしながら短時間に次々と眺めることができそうです。まさに「贅沢電視観望」ですね。
本当は一眼レフカメラレンズと組み合わせたくて、実は借り物なんですが、シグマのArtの105mmを用意してたんです。でも残念ながら手持ちのアダプターではピントが出ませんでした。超広角の電視観望も試したいのですが、接続の難しさも課題の一つです。