SCA260の1作例目としてM33をLRGBで撮影、2作例目としてNGC253を同じくLRGBで撮影しました。




その時の一番の問題点が「揺れ」。今回はこの揺れを軽減しようという試みです。


現状確認

SCA260の重量が15kgで、今使っている赤道儀CGEM IIの耐荷重が18kgです。一見、耐荷重以内で大丈夫かと思えそうです。実際SCA260を発注する時も「できるだけ大口径が欲しいけど、重量はまあ大丈夫だろう」と気軽に思って決めたのですが、SCORPIOの店長さんの予測では「かなり厳しいのではないか」というものでした。

実際に撮影を始めてみたのですが、明らかに赤道儀の赤経体の動きのモードで揺れやすいのがわかりました。3分間露光では揺れが大きすぎて星像が全く丸になりません。露光時間を1分にして、かなり甘い基準にすることである程度の歩留まりで撮影画像を救い出すことができるくらいです。

赤道儀の対荷重は重さだけで決まるのではなく、より正確には慣性モーメントで決まるはずです。慣性モーメントは質量と、回転軸からの距離の2乗の積になります。同じ重量でも、回転軸から離れたところに質量が集中していれば慣性モーメントが距離の2乗で大きくなり、逆に近くに質量が回転軸中心に寄っている方が慣性モーメントは急激に小さくなります。慣性モーメントが小さければ、共振周波数は高くなり、かつ固くなるために同じ外力に対して揺れの振幅は小さくなります。

その観点でSCA260を見てやると、下部にロスマンディー互換のアリガタが付いているのはいいとして、上部にも同じ長さの汎用的なアルミプレートが付いています。

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加えて、アルミ製のごついハンドルを上のプレートに付けていたり、ガチガチに強化してそこそこ重くなったガイド鏡を上部に取り付けているので、慣性モーメント的にはさらに不利な状態です。

今回これらを取り外して、慣性モーメントを小さくして、共振周波数を上げ、最終的に揺れを小さくするような改造をしてみます。


取り外したもの

実際に鏡筒上部についているものを取り外してみて重さを測って見ると、プレート類だけで913g、ガイド鏡と合わせると何と1655gもあります。重量だけ見てもトータルの約1割を占めているので無視できないようなレベルです。

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慣性モーメントとして赤経体の回転軸からの距離で考えると、上のアルミプレートの位置は下のアリガタアルミプレートから2.5倍ほど離れています。距離の2乗で効くので、上のプレートを1枚外すことは下のプレートを6枚外すくらいのことに相当します。これはかなり大きな差です。

プレートを外した代わりに、持ち運びしやすいように軽めのハンドルを取り付けることにしました。適したネジ穴の幅が92mmと分かったのですが、この92mmにあったハンドルがなかなか見つかりません。唯一見つけたのが、モノタロウで買えるRSブランドの2本セットものです。プラスチック製で軽いです。



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ただし、ネジ穴がM5なので、M6ネジを差し込める様にM6ピッタリのドリルで穴を広げてやります。もともとはねじ山がきちんと収まる様にザグリが入っていましたが、今回は無視してザグリ穴はそのままに、長めのM6ねじで上から蓋をする様に取り付けました。

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穴を広げたので強度が少し心配でしたが、片方のハンドルだけで持っても全く問題なさそうです。念の為基本的には2つのハンドルを同時に持つことで、仮に一つ壊れたとかでも落下しないように扱いたいと思います。

また、ガイド鏡はオフアキに取り替えました。ただし、極軸調整や初期導入にはガイド鏡クラスのカメラがあると便利なので、これまで使っていたものを小判鮫方式で下のプレートの前部に取り付けることにしました。

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このガイド鏡は撮影を始めたら取り外すので、撮影時の重量増加にはならずに揺れは抑えられるはずです。仮に小判鮫状態で取り付けたままでも、上のプレートに取り付けた状態と下のプレートに取り付けた場合では、赤経体の回転軸から見ると距離が4分の1ほどになります。慣性モーメントでは16分の1ほどになったことになるので、揺れに対しては無視できるくらいになります。

揺れとは関係ないですが、接眼部を見直してオフアキ、ホイール、カメラの向きを揃えました。各ネジの間に円カッターで余っていたクリアファイルを切って作ったリングを嵌め込み、厚さ調整をしてネジの回転位置を調整します。微調整はクリアファイルにセロテープを貼ることで位置を合わせました。

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さてこれらの改造で、撮影時の揺れがどれくらいになるのか、結果が楽しみです。