この記事は、星と自然のフェスタの1日目の続きの記事となります。



今回の「星と自然のフェスタ」の目的の一つが、電視観望のデモをすることでした。最初は個人的に披露すること考えていたのですが、ちょっと前にシュミットさんの方から提案があり、店頭で解説と実演をしてもらえないかということでした。CP+で講演の機会を与えてくれたこともあるので、二つ返事でOKしました。

当初は電視観望の「解説」と、晴れれば「実演」、あとは「質問コーナー」など、結構きっちり考えていたのですが、実際はもうめちゃくちゃでした。解説でどんなことを話すかとかも考えていたのですが、全部吹っ飛んでしまったのです。


実際の準備

「星と自然のフェスタ」の初日、午後3時頃からでしょうか、駐車場とシュミットブースをちょくちょく行き来し、機材などを持ち込み、一緒に実演をするスタッフのWさんと夜の電視観望実演の準備を始めました。大雑把な担当として、WさんがSCA260、私SamがFMA135です。カメラは最近注目のCeres-CとNeptune-C II。しかも面積の狭い1/3インチのCeresをSCA260に使い、1/1.8インチの広い方のNeptuneをFMA135に使います。より狭い範囲を見ること、より広い範囲を見ることに特化します。

この設定は共に両極端ですよね。片や口径260mmの大望遠鏡、片や口径わずか30mmの赤ちゃんのような望遠鏡です。元々は大口径長焦点は惑星とか月を見て、小口径単焦点は星雲を見ようとか言っていたのですが、実際には同じ星雲や銀河を極端なセットアップで見たときの比較が、思ったより楽しかったのです。両極端は元々Wさんのアイデアなのですが、こう言った比較ができるのもリアル星まつりの魅力の一つかと思います。


テスト?本番?

私はFMA135を担当なので、まずは自分の使い慣れたFMA135とノートPCを用意します。カメラと架台のAZ-GTiはシュミットさんのものをお借りしました。接続しようとしていた大型モニターにHDMI端子が無かったなど、色々トラブルはありましたが、結局2台のノートPCをテーブルの上の大きな箱の上に乗せることで高さを確保し、見やすくしようということになりました。

カメラもAZ-GTiも自分のではないので、かなり明るいうちからテストを始めます。16時過ぎくらいだったと思います。月は見えていますが、まだ木星も見えていないくらいの明るさでした。

地面が土なので水平の安定性があまりよくありません。月の導入でさえうまくいかないので、三脚を少し地面に押し込むようにして固定し、水平をきちんと出します。何度か導入を試すと、やっと月も一発で入り、その頃には木星も目ではまだ見えませんが、カメラでは確認できるようになってきました。この頃から少しづつお客さんが集まってきました。

木星が目で辛うじて見えるようになってくると、続いて土星も入れてみますが、なんとか視野に入ってきます。もう一度、一から月、木星、土星とアラインメントを取り直し、だいたい準備完了です。空を見上げると、1等星が少しづつ見え始めていました。西の空はまだ明るく、オレンジから青のコントラストがとても綺麗でした。

少し遠くの天体を試したくて、見えたらラッキーくらいでM31アンドロメダ銀河を導入します。まだ空は一部明るくて、月も煌々と出ているのに、淡いながらも、なんとアンドロメダ銀河が見えてしまったのです!しかも口径わずか30mm。目では数えるほどしか見えない星も、カメラ上では散りばめるように写っています!誰かが「うぉ!こんなに明るいのにアンドロメダが見える」とか叫んだからでしょうか、一気に空気が変わり、ここからどっと人が集まってきます。

この時点では光害防止としてCBP(Comet BandPass)フィルターを付けていたのですが、銀河の場合は白色光に近いのでかなりの情報を欠落してしまいます。そのため銀河を見るときはCBPを外すようにしました。するとまだ明るい中でもさらにM31の形がハッキリします。これ以降、星雲を見るときはCBPと取り付け、銀河を見るときはCBPを外すということをしました。

この日の小海の空は透明度が良かったのかもしれません。時間とともに徐々に暗くなってくると、アンドロメダもどんどんはっきりしてきて、腕の構造までかなりはっきり見えてきます。電視観望で口径わずか30mmでここまで見えるというのは、初めて見た人には相当なインパクトなのかと思います。機材の実物も目の前にあるわけで、そのコンパクトさにさぞ驚かれたことでしょう。

6ACCD9BD-8D43-4C25-AD6A-721F14A55E16
PCの画面が飽和してますが、FMA135でアンドロメダを映している時です。
写真はあまり撮れなくてこれくらいしか残っていませんでした。 

「19時まではテストです。19時から本番です。」と何度言ったことか。ごめんなさい、全く守れませんでした。そのまま本番の時間になだれ込んでしまって、テストと本番の境なんて全くなかったです。考えておいた「解説」は全て吹っ飛びました。実際のものを見せる「実演」の方が遥かに説得力が大きかったのです。「質問コーナー」も計画していましたが、準備している最初の時からほぼ質問攻めで、ずーっと質問コーナーが続いているような状態でした。

結果として、設置から初期アラインメント、導入、SharpCapでどう炙り出すかを一連で繰り返し示していたことになります。細かい操作も、一連の実演の中でごくごく自然に見せることができたのかと思います。


数多くの質問

実演している間じゅう、質問がひっきりなしに飛んできました。
  • 「なにで見てるの?」という質問には、機材を指差し「高性能カメラと小さいけれども高性能な望遠鏡で見ています。」、皆さんコンパクトさにビックリします。
  • 「どこを見てるの?」では、「この望遠鏡が差している方向で、カシオペアとペガスス座の間くらいです。」
  • 「初期アラインメントで天体が全然入らない」 -> 「北の方向はある程度適当でもいいが、水平をとるのが大事。AZ-GTiの水準器はあまり精度がないので、付属三脚の水準器を見るのがいい。あと鏡筒の水平を水準器を使って撮るのも忘れないように。こうすると、少なくとも最初に入れた天体の『高度』はかなりあっているはずなので、あとは左右に振ってやれば画面に入ってくるはず。」
  • 「自動導入がうまくいかない」-> 「まずは目的の天体の近くの明るい恒星を入れて『ポイント&トラック』すると、精度が上がる。」
  • SharpCapの使い方では「自分でやったけどあまり綺麗に見えない」というので、「まずはライブスタックよりもヒストグラムでのあぶり出しが重要です。」と見えない最初の設定と、あぶり出して見やすくなった設定を実際に見せて、比較しました。
  • 「ライブスタックでうまくスタックされていかない」という方もいて、「検出した星を四角でマークして見えるので、まずはその機能をオンにしてうまく星が検出できているか確認するといいですよ」とアドバイス。
などなど、星が少し好きな一般の人から、電視観望に興味を持っている初心者、果ては明らかにベテランと思われるような方まで、ほぼずーっと質問攻めでした。できる限りわかりやすく答えたつもりでしが、どうでしたでしょうか?


実演で見たもの

実演の際、その場で見たものを列挙しておきます。
  • 月、木星、土星、M31、M27、M57、M45、M33、M15(球状星団)、網状星雲、北アメリカ星雲、ステファンの5つ子、エッジオン銀河
などです。

操作と話すのに必死で写真がほとんど残ってないのですが、長時間LiveStackしていたためにSharpCapのフォルダに自動保存されていたものを簡易的に画像処理をして載せておきます。

Stack_17_38_56_16bits_150frames_600s_cut
M31 アンドロメダ銀河

Stack_19_52_05_16bits_75frames_600s_cut
M33 さんかく座銀河

M31は露光時間4秒でゲイン350。M33は少し淡いので8秒露光でゲイン350。このときは共にCBPは外しています。LiveStackでのトータル露光時間は両方とも10分になります。もっと短くてもそれほど出来上がりに差はないのですが、自動保存の設定が10分だったというだけです。これで少し画像処理をすると、上のようになります。電視観望の途中で記録的に残したファイルから処理したものとしては、そこそこ見えるのではないでしょうか?

その一方、電視観望特有の問題もあって、例えばよく見るとホットピクセルと呼ばれる明るい点がミミズのように這いずり回ってしまっています。これはリアルタイムダーク補正をしてやるか、もしくはSCA260で使っていたCeres-Cなどに搭載されているDPSテクノロジーと呼ばれるホットピクセルやコールドピクセルをハードレベルで取り除くような技術があると目立たなくなります。


カメラごとの比較

FMA135:
こんな小さいのに、アンドロメダ銀河の腕まで見えるのは流石にインパクトがあったようです。また、M33の形がわかるのも、みなさん驚いていました。比較的大きなアンドロメダの全景や、北アメリカ星雲の全景を見えるためには、これくらいの短い焦点距離と広いセンサー面積が必要です。

今回見た中で、FMA135で見やすいもの、見にくいものを揚げておきます。
  • FMA135が適しているもの: 月の全景、M31、M27、M45、M33、北アメリカ星雲
  • FMA135でなんとか楽しめるもの: M57、M15(球状星団)、網状星雲の全景(もう少し広く見たい)
  • FMA135だと厳しいもの: 月の詳細、木星、土星、ステファンの5つ子、エッジオン銀河

SCA260:
大口径と長焦点(カメラのセンサー面積が小さいことも含め)を生かして、小さいものを分解能よくみることができます。M57やM27もかなり細かいところまで炙り出せます。また、M33などは中心部に近いところのみ見えますが、中心付近の腕の細かい構造や、赤ポチと呼ばれるHα領域も電視観望で見えてしまいます。
  • SCA260が適しているもの: 月の詳細、木星、土星、M57、M27、M15(球状星団)、ステファンの5つ子、エッジオン銀河
  • SCA260でなんとか楽しめるもの: M33
  • SCA260だと厳しいもの: 月の全景、M31、M45、網状星雲、北アメリカ星雲

二つを比較すると、まず口径差が約10倍、値段差も約10倍と、圧倒的な違いがあるにもかかわらず、インパクトではFMA135が全然負けていなくて、意外なほど見える対象が多いことがわかります。口径の小ささが逆にインパクトを増しているような状態です。その一方、SCA260の細かい分解能を見ていると、FMA135では絶対に辿り着けない大きな壁があることもわかります。結局は見たい天体に対して適材適所というわけですが、見える天体がかなりオーバーラップしているということも特筆すべきかと思います。この二つの極端な比較は、リアル星まつりならではと思います。

108D4638-A716-4E4F-BA75-27F4BAFFCDF5
数少ない写真の一つで、比較で撮っていたものです。
M15を見てるときです。上がSCA260で、下がFMA135。
ともに球状星団として見えていますが、
この画面で見てもSCA260の分解能がすごいことがわかります。 

実際の操作を見ながらの解説で、お客さんもかなり楽しんでくれていたようです。あるお客さんが帰り際に「今日は本当にここに来てよかったー。」としみじみとつぶやいて去っていったのが聞こえてきました。ここまで喜んでくれたのなら、実演を引き受けた甲斐が本当にあったというものです。


知らなかったお客さんの多さ

説明をしていて、そこそこお客さんが来ているのはわかっていました。でも後ろの方の様子はあまりわからないので、実際どれくらいの人が来てくれていたのか実はよくわかっていませんでした。後で知り合いのTwitter投稿写真を見てちょっとびっくりしました。





なんかすごいことになっていたみたいです。後ろの人がきちんと画面など見えていたかちょっと心配になってしまいました。

終了予定時間の20時をすぎて、やっと少し周りを見渡す余裕が出ました。この頃、WさんがSCA260でエッジオン銀河を見せていたのですが、私の方は実は寒くて寒くて凍えてました。指先も冷えていて、だんだんPCの操作もやりにくくなってきていました。さすがに疲れてきたのかと思います。時間的にもちょうどいいころなので、ここで終了となりました。


疲れ果ててしまって...

その後、片付けをWさんと、その場にいたM87JETさんに手伝っていただき、車に機材を戻しました。そこで少し服を重ねて、靴下も厚いものにしたのですが、それでも寒くてホテルに移動してずっと行けなかったトイレに行き、ロビーで暖をとっていました。食事を取ろうと思ったのですが、すでに全てのキッチンカーは閉まっていて、ホテルのカレーもちょうど片付けているとこでした。

後から考えると、ここら辺の判断が色々間違ってたんですよね。まず終わったら機材を片付けずに、そのまましばらく待っていて個人で電視観望を始めたりすれば良かったのです。ですが実際には前日の睡眠不足もあったのでしょう、一仕事やり切った感じで、そんなことを考える余裕もないくらい疲れてしまっていました。

ホテルで暖をとっていると、かんたろうさんから呼び出しの電話が。天リフ編集長とか、皆さんキャンプ場のところで集まっているとのことです。暖かくなってやっと少し落ち着いていたので、重い腰を上げホテルから移動。

キャンプ場では、先日出版された「星空撮影塾」を送っていただいた成澤さんや、星景写真で有名な塚原さんなど、主に星景関係の方々が集まっていました。嬉しいことにspitzchuさんが電視観望用にNeptune-C IIを買ってくれたとのことでした。でもお腹も空いていて皆さんとあまり話す余裕もなく、朝に買ってポケットに入れていたおにぎりを食べても全然足りずに、申し訳なかったのですが私は早々と退散。

9F74DE7A-FA41-46E1-BF96-A6E184F2624C

車に戻ってから、夕ご飯の調達にコンビニまで買い出しに行くことにしました。コンビニで少し多めに食事と飲み物を買って、そのままコンビニの駐車場の車の中で食べます。よほどお腹が空いていたのか、ぺろっと平らげてしまいました。この時点で22時頃だったでしょうか、そのまま会場へ戻るのですが、お腹も膨れたせいか耐えられないほど眠くなってしまい、途中の道の脇のスペースに車を止め寝てしまいました。

目が覚めたらなんともう0時半頃。あせって会場へ戻って、歩いて一回りしてみるのですが、少し雲も出ていたせいかほとんど人もまばらです。キャンプ場のあたりに何人か話している人がいるので声をかけたら、たまたま成澤さんでした。この頃には私もやっと元気になっていて、初めて成澤さんと少しまともに話すことができました。同じ場所にいた成澤さんの友人で最近撮影とか始めたIさんも交えて、一緒にしばらくのんびり話しました。

その頃にはそこそこ曇っていたのですが、成澤さんは曇りを利用して朝焼けを撮影しに行くというのです。もうほとんどの人が撮影は諦めているような状態なのに、さすがプロのカメラマンです。プロ根性と言っていいのかわかりませんが、もう考え方から全然違います。一番いい時間帯に寝落ちしてしまって完全にあきらめモードの私とは雲泥の差です。

午前2時頃だったでしょうか、成澤さんが出発し、残ったIさんと話していました。聞いたら元々成澤さんのファンだということで、色々コンタクトを取っているうちに一緒に行動などするようになったとのことです。まだ若い方で結婚したばかりとのこと、奥様を連れてきているらしいのですが、既に車の中でお休みだそうです。ついてきてくれるのがそもそも素晴らしいです。今回うちの奥さんもかなり誘ったのですが、車中泊ということを言った途端全く相手にされなくなりました。Iさんは本格的な撮影機材を揃え出したのもまだ最近で、家族が増える前の買えるうちに機材を揃えておいた方がいいとかいう話で盛り上がりました。

朝は目標のホテルのビュッフェに行くと決めていたので、2時半頃でしょうか、私も退散して寝ることに。寝る前のトイレに行く途中で、ちょうどオリオン方面だけ晴れていて空を見ていたら、いのさんと、朝にお会いした金沢のドブソニアンを出している方と会って少しだけ会話しました。その後戻って駐車場を一回りしたのですが、もうほとんど誰も外に出ていなかったです。

後から聞いたら、最初の頃は空も快晴で、駐車場ではヒロノさんはじめ、ドブソニアンで見ている人も結構いたらしく、またメイン会場ではXRAYさんや智志君らが電視観望していたらしいです。ちょっと羨ましかったですが、今回はシュミットさんに実演でとてもいい経験をさせてもらったので、十分満足でした。

車で戻ってすぐにまたぐっすり寝てしまったのですが、明け方はかなり寒くなり、さらに服を着込んだりしました。7時に起きる予定が、目が覚めたら既に8時。2日目の様子は次の記事で書くことにします。