9月30日、飛騨コスモス天文台で観望会がありました。前半は以下の記事で。
今回の記事はその途中くらいから、観望会が終了した後のアイリス星雲を撮影した話と、残った人でDSOの眼視観望をしたお話です。
スタッフさんも解散し、最後のお客さんも帰られた23時前頃から、本格的に撮影の準備に入ります。普段富山での自宅撮影は、日本海側ということもあり北の空が明るいのですが、飛騨まで来ると北の空は十分暗くなります。北の空をスマホで簡易測定するとSQMで21.4程度でした。むしろ南が高山市の明かりで少し明るいくらいです。なので、ここにきた時に撮影は北の空を中心に撮影することがいいのかと思います。
今夜の目的はケフェウス座にあるアイリス星雲です。青く綺麗に輝く、散光星雲の仲間になります。アイリス星雲はNGC7023と言われることもあるらしいのですが、正確にはLBN 487もしくはCaldwell 4というのが正しくて、NGC7023はアイリス星雲の中にある散開星団のことを指すそうです。
機材はTSA120とEOS 6D。ここ最近モノクロ撮影できしたが、少し広角を狙いたいため、フルサイズのカラーとしました。ハロ防止にUV/IRカットフィルターを入れましたが、6Dだと赤外にそこまで感度は無い
はずなので必要なかったかもしれません。それらをいつものCGEM IIに載せます。実は機材の設置のほとんどは観望会が始まる前の夕方に済ませていました。
準備の途中にかんたろうさんが、SharpCapの極軸設定に興味があるというのでお見せすることに。かんたろうさんはPole Masterを使ったことがあるらしくて自分の中で比較していたようですが、SharpCapの極軸調整の方があまりに簡単に思えたらしく、苦笑い状態でした。SharpCapのこの機能は有料版でのみ使えるのですが、年間2000円とお小遣い程度です。カメラも汎用的なCMOSカメラが使えるので、カメラを既に持っている方には安価に精度の良い極軸調整が実現できます。
夕方の時点で撮影用のBackYardEOSでのカメラの認識がうまくいかなくて、観望会中の撮影をあきらめたので、準備はそこからの再開です。接続はBYEを立ち上げ直したらうまくいきました。これは過去にもあった現象です。もう一つは、ユーザー認証がうまくいかなかったことです。認証というのでネットワークが必要と思ったのですが、実際にインターネットは必要なく、なぜかユーザー名だけが必要でした。しかもパスワードはBYEが覚えていてくれたようです。これまでこんなことはなかったので、何かバグっぽい振る舞いです。
その後は比較的順調で、カメラのピント出しと水平出し、アイリス星雲の導入もすぐにうまくいきました。今回はアイリス星雲を右に、ゴースト星雲Sh2-136(vdB 141)を左に入れての構図です。6Dの設定は露光時間300秒、ISO1600、オートガイドもうまくスタートして撮影開始です。この時点で23時20分くらいだったでしょうか。
この時間まで残っていたMちゃんが撮影中のPCの画面を見て、「星が見えていないところがある」と気づきました。分子雲です。画面の時点で分子雲がはっきりと確認できているくらいなので、仕上がりが楽しみなのです。問題は月の出が0時40分で、この時点では時間があまりとれないと思っていました。
撮影開始でちょっと余裕ができたので、隣に設置しているかんたろうさんのOrionの25cmニュートン反射で眼視体験をさせてもらいます。25cmだとかなり大きく、重さは20kg程度とのことです。でも赤道儀がJPなので全然余裕みたいです。
これまでもかんたろうさんには、牛岳などで眼視で色々見せてもらっています。この日もすでに観望会中に二重星団など見せてもらっていましたが、ここからはかなりたくさんのものを見せてもらい、あまり眼視経験のない私にとってはいい経験となりました。見させてもらった順に行きます。
実は私、この日10月2日の月の出は0時40分だと思い込んでいました。でもなかなか月が出てきません。山の下に隠れているのかなと思っていましたが、0時を越えていたので10月3日の月の出を見る必要があったんですね。午前1時48分が月の出とブログを書いてて気付きました。だから月が出てこなかったのですね。時間がないと焦っていたのですが、思いっきり間抜けです。
月と言ってもかなり新月に近く暗いので、結局午前2時半頃まで撮影してました。途中、ガイドが一旦止まってしまっていたようです。午前2時前に気づいて、再度ガイドを動かしたのですが、後でチェックしたら、0時40分くらいから1時50分くらいまで止まっていたようです。星像が流れてしまっていてかなりの枚数を捨てることになってしまいました。撮影が終わってからチェックしてみると、見事にガイド鏡が曇ってしまっていました。
その後片付けをして帰宅は午前3時頃。かんたろうさんは昇ってきたシリウスのBを見ようと頑張ってましたが、流石に厳しいようでした。午前4時頃に自宅に到着。次の日は朝から2度目のワクチンだったので、そのまま片付けもせず寝てしまいました。
夜露が心配だったので、次の日曜日の朝、家を出る前に機材を出して陰干しです。
後日、自宅で部屋の白い壁を利用したフラットとフラットダークを撮影。フラットは最近ずっとこれですが、鏡筒に袋などを被せることもなく、明るい壁を直接撮影しているだけで、楽でいいです。これでフラット補正が合わなかったことは意識している限りありません。ただし、壁への光の当たり方で輝度が方向によってかわることがあるので、PixInsightのABEの1次で補正する必要があることがあります。また、天体撮影が終わった後に別の日にフラットが撮影できるので楽でいいのですが、逆に言うとフラット撮影が終わるまではカメラを外したくないので、次の撮影に使えないとかが欠点でしょうか。
バイアスとダークは過去のものを使い回しなので楽なものです。
画像処理はいつものようにPixInsightのWBPPから。途中特に不具合もなく終了。その後、ABEを(主にフラット撮影時の明るさのスロープを取るため)1次で一回、(メカニカルシャッターの影での下部のS/N低下と、画角がずれていった際の特に上下の枚数不足を補正するため)2次で一回かけます。分子雲のモクモクを残したいため、今回はDBEは使いません。PCCも順調。
結局露光時間が高々2時間なので、やはりノイズが大きいのは否めません。適度にツールを駆使し、多少見栄えがいいように調整します。
結果です。
左側のゴースト星雲は一部でバンザイ星雲?とも言われているらしくて、バンザイをした人の姿が確認できます。
ちょっと解像度不足でわかりにくいのですが、本当は二人います。もう少し露光時間を伸ばしてノイズを減らす必要がありそうです。
あとはいつものAnnotationです。デフォルトの設定だと寂しかったので、今回はLBNなどを追加しました。
今回はほぼ初めての北の空の撮影になります。実際北の空に近いのは、自宅から撮影したN51子持ち銀河くらい。 この時も撮影時間不足か、今見ると解像とてきにあまり満足ではありません。ナローも始めたので、今後自宅でも北の空を撮影していきたいと思います。
あと、眼視体験はかなりインパクトがありました。ちょうど双望会も重なったので、結構な刺激をうけています。最近のLambdaさんの焦点ずらしのアイピースの件も興味があります。手を出すかなあ?ハマるとまた大変だろうなあ?
今回の記事はその途中くらいから、観望会が終了した後のアイリス星雲を撮影した話と、残った人でDSOの眼視観望をしたお話です。
撮影準備再開
スタッフさんも解散し、最後のお客さんも帰られた23時前頃から、本格的に撮影の準備に入ります。普段富山での自宅撮影は、日本海側ということもあり北の空が明るいのですが、飛騨まで来ると北の空は十分暗くなります。北の空をスマホで簡易測定するとSQMで21.4程度でした。むしろ南が高山市の明かりで少し明るいくらいです。なので、ここにきた時に撮影は北の空を中心に撮影することがいいのかと思います。
今夜の目的はケフェウス座にあるアイリス星雲です。青く綺麗に輝く、散光星雲の仲間になります。アイリス星雲はNGC7023と言われることもあるらしいのですが、正確にはLBN 487もしくはCaldwell 4というのが正しくて、NGC7023はアイリス星雲の中にある散開星団のことを指すそうです。
機材はTSA120とEOS 6D。ここ最近モノクロ撮影できしたが、少し広角を狙いたいため、フルサイズのカラーとしました。ハロ防止にUV/IRカットフィルターを入れましたが、6Dだと赤外にそこまで感度は無い
はずなので必要なかったかもしれません。それらをいつものCGEM IIに載せます。実は機材の設置のほとんどは観望会が始まる前の夕方に済ませていました。
準備の途中にかんたろうさんが、SharpCapの極軸設定に興味があるというのでお見せすることに。かんたろうさんはPole Masterを使ったことがあるらしくて自分の中で比較していたようですが、SharpCapの極軸調整の方があまりに簡単に思えたらしく、苦笑い状態でした。SharpCapのこの機能は有料版でのみ使えるのですが、年間2000円とお小遣い程度です。カメラも汎用的なCMOSカメラが使えるので、カメラを既に持っている方には安価に精度の良い極軸調整が実現できます。
夕方の時点で撮影用のBackYardEOSでのカメラの認識がうまくいかなくて、観望会中の撮影をあきらめたので、準備はそこからの再開です。接続はBYEを立ち上げ直したらうまくいきました。これは過去にもあった現象です。もう一つは、ユーザー認証がうまくいかなかったことです。認証というのでネットワークが必要と思ったのですが、実際にインターネットは必要なく、なぜかユーザー名だけが必要でした。しかもパスワードはBYEが覚えていてくれたようです。これまでこんなことはなかったので、何かバグっぽい振る舞いです。
その後は比較的順調で、カメラのピント出しと水平出し、アイリス星雲の導入もすぐにうまくいきました。今回はアイリス星雲を右に、ゴースト星雲Sh2-136(vdB 141)を左に入れての構図です。6Dの設定は露光時間300秒、ISO1600、オートガイドもうまくスタートして撮影開始です。この時点で23時20分くらいだったでしょうか。
この時間まで残っていたMちゃんが撮影中のPCの画面を見て、「星が見えていないところがある」と気づきました。分子雲です。画面の時点で分子雲がはっきりと確認できているくらいなので、仕上がりが楽しみなのです。問題は月の出が0時40分で、この時点では時間があまりとれないと思っていました。
かんたろうさんの25cmで眼視体験
撮影開始でちょっと余裕ができたので、隣に設置しているかんたろうさんのOrionの25cmニュートン反射で眼視体験をさせてもらいます。25cmだとかなり大きく、重さは20kg程度とのことです。でも赤道儀がJPなので全然余裕みたいです。
これまでもかんたろうさんには、牛岳などで眼視で色々見せてもらっています。この日もすでに観望会中に二重星団など見せてもらっていましたが、ここからはかなりたくさんのものを見せてもらい、あまり眼視経験のない私にとってはいい経験となりました。見させてもらった順に行きます。
- まずはリゲルBから。まだリゲルは出てきたばかりで東の低い空にあります。それでも左の揺らめいている光芒の中に時折小さな星を確認することができます。これは後ほど再度確認することになります。
- 続いてぎょしゃ座の散開星団。多分M36かと。その後、双子座の散開星団M35。これは隣りにNGC2158という小さな散開星団があるそうです。小さい方は私にはかなり淡く見えましたが、そらし目で十分確認することができました。
- 次がM42の中のトラペジウム。さすがにE、F星までは見えませんでした。それよりも少し引いたM42の弓なりの形が見事でした。かんたろうさんが、帰ってしまったMちゃんに「見せてあげたかった」としきりに呟いていました。
- その近くの、うさぎ座クリムゾンスター。赤い星と言われていますが、かなり濃いオレンジに見えました。
- 燃える木を導入してもらいましたが、かんたろうさんは見えると言っています。私もそらし目を駆使し、かろうじてわかりました。でも多分、かんたろうさんほど見えてないと思えるようになってきました。眼視はおそらく知識が必要です。どこに何があるか、わかっているのといないのでは、(多分)全然見え方が違います。そう言った意味では、近くのアルニタクも見えているので、(さかさまになってはいますが)どこに燃える木があるかもわかっています。それでもかんたろうさんとは見え方に差がある気がします。もしかしたら自分の目は暗いところの感度低いのかもしれません。これまで生きてきて、サングラスを欲しいと思ったことが一度もありません。眩しいのに強いということは、暗いものに対する感度は逆に無いのかもしれないとこのとき思いました。
- リゲルが昇ってきたので、再度リゲルBに挑戦します。今度は光芒がもっと小さくなり、常にはっきり見えるようになってきました。
撮影完了までと帰宅
実は私、この日10月2日の月の出は0時40分だと思い込んでいました。でもなかなか月が出てきません。山の下に隠れているのかなと思っていましたが、0時を越えていたので10月3日の月の出を見る必要があったんですね。午前1時48分が月の出とブログを書いてて気付きました。だから月が出てこなかったのですね。時間がないと焦っていたのですが、思いっきり間抜けです。
月と言ってもかなり新月に近く暗いので、結局午前2時半頃まで撮影してました。途中、ガイドが一旦止まってしまっていたようです。午前2時前に気づいて、再度ガイドを動かしたのですが、後でチェックしたら、0時40分くらいから1時50分くらいまで止まっていたようです。星像が流れてしまっていてかなりの枚数を捨てることになってしまいました。撮影が終わってからチェックしてみると、見事にガイド鏡が曇ってしまっていました。
その後片付けをして帰宅は午前3時頃。かんたろうさんは昇ってきたシリウスのBを見ようと頑張ってましたが、流石に厳しいようでした。午前4時頃に自宅に到着。次の日は朝から2度目のワクチンだったので、そのまま片付けもせず寝てしまいました。
夜露が心配だったので、次の日曜日の朝、家を出る前に機材を出して陰干しです。
画像処理と結果
後日、自宅で部屋の白い壁を利用したフラットとフラットダークを撮影。フラットは最近ずっとこれですが、鏡筒に袋などを被せることもなく、明るい壁を直接撮影しているだけで、楽でいいです。これでフラット補正が合わなかったことは意識している限りありません。ただし、壁への光の当たり方で輝度が方向によってかわることがあるので、PixInsightのABEの1次で補正する必要があることがあります。また、天体撮影が終わった後に別の日にフラットが撮影できるので楽でいいのですが、逆に言うとフラット撮影が終わるまではカメラを外したくないので、次の撮影に使えないとかが欠点でしょうか。
バイアスとダークは過去のものを使い回しなので楽なものです。
画像処理はいつものようにPixInsightのWBPPから。途中特に不具合もなく終了。その後、ABEを(主にフラット撮影時の明るさのスロープを取るため)1次で一回、(メカニカルシャッターの影での下部のS/N低下と、画角がずれていった際の特に上下の枚数不足を補正するため)2次で一回かけます。分子雲のモクモクを残したいため、今回はDBEは使いません。PCCも順調。
結局露光時間が高々2時間なので、やはりノイズが大きいのは否めません。適度にツールを駆使し、多少見栄えがいいように調整します。
結果です。
- 撮影日: 2021年10月2日23時21分-10月3日0時31分
- 撮影場所: 岐阜県飛騨市飛騨コスモス天文台
- 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー
- フィルター: SVBONY 2インチUV/IRカットフィルター
- 赤道儀: Celestron CGEM II
- カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
- ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
- 撮影: BackYard EOS、露光時間300秒x24枚 = 2時間0分
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、DeNoise AI
左側のゴースト星雲は一部でバンザイ星雲?とも言われているらしくて、バンザイをした人の姿が確認できます。
ちょっと解像度不足でわかりにくいのですが、本当は二人います。もう少し露光時間を伸ばしてノイズを減らす必要がありそうです。
あとはいつものAnnotationです。デフォルトの設定だと寂しかったので、今回はLBNなどを追加しました。
まとめ
今回はほぼ初めての北の空の撮影になります。実際北の空に近いのは、自宅から撮影したN51子持ち銀河くらい。 この時も撮影時間不足か、今見ると解像とてきにあまり満足ではありません。ナローも始めたので、今後自宅でも北の空を撮影していきたいと思います。
あと、眼視体験はかなりインパクトがありました。ちょうど双望会も重なったので、結構な刺激をうけています。最近のLambdaさんの焦点ずらしのアイピースの件も興味があります。手を出すかなあ?ハマるとまた大変だろうなあ?
コメント
コメント一覧 (2)
露出条件からするとヒストグラムピークは左1/3程度でしょうか?
元画像も側で見てましたがなかなかあれからここまではもってこれません。
わきまえて、フィルム風を目指すことにします。
眼視は今回とても楽しかったですね!
M42の高倍率はMちゃんに見せたかった!
先日改めてシリウスとトラペジウムに挑戦して何とか見ることできました。
来年あたり、30センチが増えてる可能性大ですwww
かんたろうさん、ありがとうございます。
暗い空なので3分の1もなかったです。4分の1以下です。ちなみに今週自宅で同じ設定で撮ったら半分くらいのところまで来たので、ISOを半分にして撮影しました。SQMで1くらいは違うので2.5倍くらいの明るさの違いがあるのかと思います。
でもアイリス中心が飛んでしまっているので、もう少し画像処理に時間をかけても良かったかもしれません。ただ、露光時間が短いのでノイジーなのは否めなくて、これくらいの誤魔化しが限界なのかもしれません。
眼視体験ありがとうございました。私も相当楽しめました。30cmくらい欲しくなってしまいますね。いや、もっとでしょうか。そうするとやはりドブくらいしか手がないんですよね。究極は自作ですね。