3月3日の雛まつりの日の夜、月の出が22時18分なので、夕方から準備すればしばらくの間撮影できそうです。狙いは迷ってましたが、早い時間なので季節遅れのカリフォルニア星雲にすることに。結構大きいので、FC-60CBと6Dで視野角的にもちょうど良さそうです。今回も狙いは自宅でフィルターなしでどこまで写るのか? (2021/3/19 追記: 勘違いで、CBPが入ったままでした。)ISO800で、露光時間3分にして、6Dのヒストグラムで見て一番明るい青が1/3くらいでした。
前回Sh2-240を同じセットアップで撮っていて、まだ機材はそのままの状態でほとんど残っています。なので、準備も時間で済み、仕事から帰って、夕食後から用意しても20時過ぎくらいには撮影を開始できました。撮影時間はちょうど月が昇る22時半ころまで。実際には西に傾き屋根に隠されて終了となりました。その後すぐに空が霞んできて曇りのようになったのでここで撤収です。
後でチェックしてみると39枚撮影して使えるのは36枚。3枚は屋根が入っていました。星像が流れているようなものはありません。後半になるに従って西の空に傾くので明るくなってきてしまうのですが、今回はそれらも全部使うことにしました。
次の日フラットとフラットダークを同ISO800、1/400秒で128枚撮影し、ダークは以前撮った同じ範囲の温度をものを使用してWBPP(WeightedBatchPreprocessing)で処理。最近WBPPがメジャーアップデートされて2.0になり、かなり変更がありました。以前のバージョンから使っている人はまあ普通に使えるかもしれませんが、1箇所だけ注意。全てのファイルを登録後、新しくできたControl PanelタブのFLATのところでファイルを選択すると右側にオプションが現れます。これまではライトフレームはカラーかどうか選択するためにCFAオプションがあったのですが、今回からFLATもCFAが選べるので、もしフラットフレームもカラーで撮影したなら必ずCFAオプションにチェックを入れます。
今回のバージョンから処理過程を図にしてくれるのですが、FLATのCFAがオフのままだと下の写真のようになって、フラットが適用されていないのが分かります。
きちんとFLATのCFAをオンにすると
のように、きちんとフラットが適用されていることがわかります。
さて、その下のSeparate CFA scalling factorはまだよく理解していないのですが、とりあえず今まで通りオフでやってみました。ただ、オンにするとRGBで別々の係数を使い、オフだとまとめて一つの係数を使うということです。今回のフラットフレームはカラーバランスが取れていないので、もしかしたらオンにした方がいいのかもしれません。
出来上がったライトフレームをいつも通りDBE、PCC、ArcsinehStrech、HT、StarNetなどで処理をして、Photoshopに渡してさらに炙り出し。とりあえずできたのがこれです。
恒星がいまいち鋭くないとかいくつか不満はありますが、これはこれで完成です。さあ、ブログと書こうと今に至っているわけですが...
...と(既に画像処理も終えて、このブログを書くために改めてダークファイルの数を)チェックしていて変なことに気づきました。WBPPのControl PanelにmasterDarkが多数枚登録されているのです。
そしてDarksタブを見てみると露光時間ごとに一枚づつ、多数のmasterDarkが登録されているのが分かります。
ところが、試しに今回撮影したフラットフレームとかライトフレームを登録してもこんな変な状況にはなりません。ダークフレームのみこのような状況になります。
ファイル名からdarkというのを取り除いたり、ヘッダ情報を見たりいろいろしたのですが、原因はもっと単純なことでした。ダークファイルが存在する上流のフォルダ名に一つでも「master」という文字が含まれているとこのような状況になってしまうようです。例えば今回は以前撮ったダークフレームを使い回したために「master」というフォルダの下に、さらに露光時間やISO別に幾つかのフォルダに分散してためてあったものを使ったために起きた問題でした。例えば「master」を「mas」とか抵当に名前を変更してダークフレームを登録するだけで、masterDarkでない普通のダークフレームとして登録されます。
さてさて、間違った多数の1枚偽masterDarkファイルで処理したものときちんとダークを登録して処理した画像と、で画像の差はあったか興味がある方もいるかと思います。拡大すると正しいダークを登録した方が明らかに黒い小さな点がなくなる、もしくは緩和されていました。差がわかる部分を拡大して比較ものが下の画像です。左が間違ったもの、右が正しいものです。このような小さな点が画像全面に散らばっています。
ただ、最終仕上げに影響があるかというと、ドット単位くらいの話ですし、間違ったダークと言っても多少の補正はできているので、拡大してじっくり見ない限りはわからないレベルでしょう。
ちなみにこの「master」というフォルダ名、ダークだけでなく、バイアスやフラットを登録する際にも全く同じことが起きて、いずれもマスターファイルとして認識されてしまいます。これだとあまりにも制限が多いので、そのうちもう少し良い方法で解決されると思いますが、PixInsightを使う際にはmasterというのは特別な意味を持つので、むやみやたらに、少なくとも読み込む画像ファイルに関するところには使わないほうがいいでしょう。
このあとまた一通りの炙り出し過程をすませ、不満だった恒星部をもう少し出します。ついでに赤いところももう少しだけ。
Dark補正の違いはほぼ何も影響がないですが、2回炙り出しをやったのでいい訓練となりました。自宅でフィルターなし、2時間弱でこれくらい出るのなら、気楽でいいのかもしれません。
それでもやはり背景はノイジーなのは否めません。分子雲がもう少しあるはずなのですが、もっとはっきり出す技術をまだ確立できていません。今回2時間弱と短かったので、まだまだ撮影時間を伸ばしてみるのもいいのかもしれません。もしくはISOをもう少し上げて恒星がサチるのには目をつぶり、背景を重点的に出すことを考えてやってみるのもいいのかもしれません。
あ、そうだ真ん中らへんの一番明るい星の左のなぜか明るく見える星。ここだけボワッとにじみが出ています。そもそもこんなに明るい星でもないですし、もっと明るい星でもこんな滲みは出てません。ここのファイルはそれほど目立つにじみでもなく、いまだになぜか理由がわかりません。とりぜず理由がわかていないのでそのままにしています。
いつものAnotationです。
2年ちょっと前の2018年11月に撮影したカリフォルニア星雲です。
これは直接比較していいものなのでしょうか?記録を見ると撮影時間30分となっています。露光時間も約4倍、画像処理も今と全く違うので、淡いところも全然見えるようになっています。さすがに今回の方が圧倒的に進歩していますね。
PixInsightのWBPPですが、まだメジャーアップデート直後でこなれ切れていない気がします。自分の慣れのこともありますし、また不具合などもあると思ってしばらく付き合っていくべきでしょう。
実際にはこれまであやふやだったフラットのCFA処理とかもはっきりしたり、コントロールパネルも見やすくていいです。これからもWBPPの進化に注目していきたいです。
「カリフォルニア星雲(2): 撮り増し」に続く
前回Sh2-240を同じセットアップで撮っていて、まだ機材はそのままの状態でほとんど残っています。なので、準備も時間で済み、仕事から帰って、夕食後から用意しても20時過ぎくらいには撮影を開始できました。撮影時間はちょうど月が昇る22時半ころまで。実際には西に傾き屋根に隠されて終了となりました。その後すぐに空が霞んできて曇りのようになったのでここで撤収です。
後でチェックしてみると39枚撮影して使えるのは36枚。3枚は屋根が入っていました。星像が流れているようなものはありません。後半になるに従って西の空に傾くので明るくなってきてしまうのですが、今回はそれらも全部使うことにしました。
WBPP 2.0
次の日フラットとフラットダークを同ISO800、1/400秒で128枚撮影し、ダークは以前撮った同じ範囲の温度をものを使用してWBPP(WeightedBatchPreprocessing)で処理。最近WBPPがメジャーアップデートされて2.0になり、かなり変更がありました。以前のバージョンから使っている人はまあ普通に使えるかもしれませんが、1箇所だけ注意。全てのファイルを登録後、新しくできたControl PanelタブのFLATのところでファイルを選択すると右側にオプションが現れます。これまではライトフレームはカラーかどうか選択するためにCFAオプションがあったのですが、今回からFLATもCFAが選べるので、もしフラットフレームもカラーで撮影したなら必ずCFAオプションにチェックを入れます。
今回のバージョンから処理過程を図にしてくれるのですが、FLATのCFAがオフのままだと下の写真のようになって、フラットが適用されていないのが分かります。
きちんとFLATのCFAをオンにすると
のように、きちんとフラットが適用されていることがわかります。
さて、その下のSeparate CFA scalling factorはまだよく理解していないのですが、とりあえず今まで通りオフでやってみました。ただ、オンにするとRGBで別々の係数を使い、オフだとまとめて一つの係数を使うということです。今回のフラットフレームはカラーバランスが取れていないので、もしかしたらオンにした方がいいのかもしれません。
あとは画像処理
出来上がったライトフレームをいつも通りDBE、PCC、ArcsinehStrech、HT、StarNetなどで処理をして、Photoshopに渡してさらに炙り出し。とりあえずできたのがこれです。
恒星がいまいち鋭くないとかいくつか不満はありますが、これはこれで完成です。さあ、ブログと書こうと今に至っているわけですが...
あれ?ダークがおかしい
...と(既に画像処理も終えて、このブログを書くために改めてダークファイルの数を)チェックしていて変なことに気づきました。WBPPのControl PanelにmasterDarkが多数枚登録されているのです。
そしてDarksタブを見てみると露光時間ごとに一枚づつ、多数のmasterDarkが登録されているのが分かります。
ところが、試しに今回撮影したフラットフレームとかライトフレームを登録してもこんな変な状況にはなりません。ダークフレームのみこのような状況になります。
ファイル名からdarkというのを取り除いたり、ヘッダ情報を見たりいろいろしたのですが、原因はもっと単純なことでした。ダークファイルが存在する上流のフォルダ名に一つでも「master」という文字が含まれているとこのような状況になってしまうようです。例えば今回は以前撮ったダークフレームを使い回したために「master」というフォルダの下に、さらに露光時間やISO別に幾つかのフォルダに分散してためてあったものを使ったために起きた問題でした。例えば「master」を「mas」とか抵当に名前を変更してダークフレームを登録するだけで、masterDarkでない普通のダークフレームとして登録されます。
さてさて、間違った多数の1枚偽masterDarkファイルで処理したものときちんとダークを登録して処理した画像と、で画像の差はあったか興味がある方もいるかと思います。拡大すると正しいダークを登録した方が明らかに黒い小さな点がなくなる、もしくは緩和されていました。差がわかる部分を拡大して比較ものが下の画像です。左が間違ったもの、右が正しいものです。このような小さな点が画像全面に散らばっています。
ただ、最終仕上げに影響があるかというと、ドット単位くらいの話ですし、間違ったダークと言っても多少の補正はできているので、拡大してじっくり見ない限りはわからないレベルでしょう。
ちなみにこの「master」というフォルダ名、ダークだけでなく、バイアスやフラットを登録する際にも全く同じことが起きて、いずれもマスターファイルとして認識されてしまいます。これだとあまりにも制限が多いので、そのうちもう少し良い方法で解決されると思いますが、PixInsightを使う際にはmasterというのは特別な意味を持つので、むやみやたらに、少なくとも読み込む画像ファイルに関するところには使わないほうがいいでしょう。
仕上げ
このあとまた一通りの炙り出し過程をすませ、不満だった恒星部をもう少し出します。ついでに赤いところももう少しだけ。
- 撮影日: 2021年3月3日20時26分-22時29分
- 撮影場所: 富山県富山市
- 鏡筒:Takahashi FS-60CB + マルチフラットナー
- フィルター:
無しSIGHTRON CBP - 赤道儀: Celestron CGEM II
- カメラ: Canon EOS 6D(HKIR改造, ISO800, RAW)
- ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
- 撮影: BackYard EOS、露光時間180秒x36枚 = 1時間48分、ダーク50枚(ISO800、露光180秒)、フラット128枚(ISO800、露光1/400秒)、フラットダーク128枚(ISO800、露光1/400秒)
- 画像処理: PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AI
それでもやはり背景はノイジーなのは否めません。分子雲がもう少しあるはずなのですが、もっとはっきり出す技術をまだ確立できていません。今回2時間弱と短かったので、まだまだ撮影時間を伸ばしてみるのもいいのかもしれません。もしくはISOをもう少し上げて恒星がサチるのには目をつぶり、背景を重点的に出すことを考えてやってみるのもいいのかもしれません。
あ、そうだ真ん中らへんの一番明るい星の左のなぜか明るく見える星。ここだけボワッとにじみが出ています。そもそもこんなに明るい星でもないですし、もっと明るい星でもこんな滲みは出てません。ここのファイルはそれほど目立つにじみでもなく、いまだになぜか理由がわかりません。とりぜず理由がわかていないのでそのままにしています。
いつものAnotationです。
過去画像との比較
2年ちょっと前の2018年11月に撮影したカリフォルニア星雲です。
これは直接比較していいものなのでしょうか?記録を見ると撮影時間30分となっています。露光時間も約4倍、画像処理も今と全く違うので、淡いところも全然見えるようになっています。さすがに今回の方が圧倒的に進歩していますね。
まとめ
PixInsightのWBPPですが、まだメジャーアップデート直後でこなれ切れていない気がします。自分の慣れのこともありますし、また不具合などもあると思ってしばらく付き合っていくべきでしょう。
実際にはこれまであやふやだったフラットのCFA処理とかもはっきりしたり、コントロールパネルも見やすくていいです。これからもWBPPの進化に注目していきたいです。
「カリフォルニア星雲(2): 撮り増し」に続く
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