手持ちのStick PC、MiNISFORUM S41ですが、値段と性能の良さから天文界隈でも使っている方が意外なほど多いのかと思います。その小ささにもかかわらず、スピードも十分。なかなか微妙な立ち位置のStick PCの中で、久しぶりに出た高評価の実用的なものです。



これまでの状況

その中で唯一の弱点が電源。特にバッテリー駆動だとどうも不安定です。

これまで3種類のUSBバッテリーを使用して、そのうち2種は起動不可だったり、途中で落ちることが多かったです。唯一少しまともだったのがLess is moreというところの100Wまで出せるというバッテリーです。起動不可という経験はしたことがなく、テストでは不安定なことはありませんでした。

その後、Less is moreを実戦投入したのですが、撮影中に落ちてしまうということが何度かありました。いずれもSharpCapのPolar alignやファイルをまとめて触ったりするような高負荷なときです。今のところ、純粋に撮影だけしていた時に落ちたことはありません。それでも撮影が止まるのが怖いため、何度か落ちるのを経験した以降は使うのを諦めて、結局今はAC100V出力がある大容量バッテリーに、S41に付属のACアダプターを使って電源供給をしています。

もう少し汎用的にならないかと思うので、いったいどれくらいの電流になると落ちるのか調べてみようと思い、少し測定してみました。


まずは分解

測定に先駆けて、S41を分解して少し中を見てみました。

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電源部をもう少し見てみます。

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付属のACアダプターのType Cコネクタの出力をStick PCにつないで、テスターで少し測定してみました。USB Type Cコネクタを使ってますが、形だけ使っているみたいで信号のやりとりはなく、電源とグランドピンだけしか使っていないみたいです。確かにこれだとUSB出力のバッテリーでは、大きな電流は流せないはずです。元々USB2.0は5Vで0.5Aまでしか流せない規格で、USB3.0でも5V、0.9Aです。その後USB PDなど色々拡張して20V x 5A =100Wとかまで使えますが、これはあくまで規格にのっとた信号のやり取りをした場合のはずです。なので、今回のように電圧ピンだけ使っているような場合では電圧が出ないはずなので、落ちる可能性が高いのは理解できます。


Ankerのバッテリー

では実際にどれくらいの電流が流れているの測定してみましょう。使ったのはUSBチェッカーです。

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写真ではAnkerの13000mAのバッテリーをつなげています。上の写真は起動前の状態です。

5回くらい起動テストして、起動さえしなかったことが2回ありました。その場合は再起動を繰り返した場合と、止まってしまった場合がありました。それでも起動することもあり、起動した後は特に操作しなければ安定です。

ここの状態からソフトを立ち上げ負荷をかけますが、Ankerの場合SharpCapとStellariumを立ち上げたくらいで落ちることが多いです。落ちた後は0.87Aでほとんど動かなくまります。

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落ちる前にその負荷の高い時の電流を見ると、なぜか1A-1.5Aくらい普通にでてるんですよね。しかも大きな電流でも落ちない時もあり、さらにプレートソルブとかもかけてやります。すると一瞬ですが2Aを超えることもあります。

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これはどういうことなのでしょうか?そもそも規格で0.9Aしか出ないと思ってましたが、2A出すこともできるみたいです。

このAnkerバッテリー、負荷が低い時は安定する時もありますが、高負荷にしていくと必ず毎回最後は落ちました


Less is moreのバッテリー

Ankerの結果はあまりよくわからないですが、気を取り直してこれまで落ちにくかったLess is moreの100W出せるというバッテリーにつなぎ変えてみます。このバッテリー、Amazonで買ったのですが既にリンク先が切れていました。60Wのものは見つかりましたが、100Wの代替のものは無いみたいです。

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ほとんど落ちることはなかったので、思いっきり負荷をかけます。CPUパワーは100%です。見ることができた最大電流は2.5A越え。

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ただし電圧が4.8V台全半まで落ちてます。2A位までは5Vを保ってますが、2Aを超えると供給電圧が落ちていくようです。StellariumにSharpCapでPolar align、プレートソルブをかけながらStellariumをグリグリ動かすととうとう落ちました。でも落ちる瞬間に電流がものすごく高いかというと、そうでもありません。フラフラしてますがCPUパワーが100%で頭打ちなので、平均では2A切ってます。

ここで言えることは、Ankerのものよりは確実に落ちにくいということくらいで、それでも高い負荷だと落ちることは落ちます。5回くらい試しましたが、ただ1度どう負荷をかけても落ちない時があって、その時は諦めて自分で電源を落としました。


付属のACアダプター

次に試したことが、ではACアダプターに繋げた時にどれくらいの電流が流れるか確認することです。でもこれも不思議なことに、2.3A位までは見ましたが2.5Aとかを見ることはできませんでした。CPUパワーが100%で頭打ちで、それ以上電力を使うことができないからかなと思ってますが、はっきりした理由は不明です。

一つだけ言えることは、どれだけ高負荷にしても落ちることは一度もなかったことです。


まとめ?と言えるのか...

結局今回試したことで定量的にはほとんど何も言えませんでした。定性的には
  • バッテリーを使う限りは、多少の違いはあるが、負荷がかかると落ちることを避けることは出来なさそう。
  • 付属のACアダプターが唯一まともな電源で、少なくとも高負荷などで落ちることは確認できなかった。
ということくらいです。逆に疑問点の方が多く
  • USBバッテリーで何の規格のやりとりもなしで2A以上も出せるのか?
  • 逆にいうと、ここまで電流出せるのになぜ落ちることがあるのか?
  • 落ちる理由は何か?もしかして電圧降下が直接の理由なのか?
など、わからないことだらけです。

今回はUSBチェッカーの表示だけを見たので、もっと速い速度で応答を見れば何か分かるかもしれません。もう少し原因がわかれば、何か手を打つこともできるかもしれませんが、USBの範囲でやろうとすると規格外のことになるので、無難に付属のACアダプターを使った方がいい気がしています。

あと、今考えてるのがラジコン用とかのもっとシンプルなバッテリーを使うことです。これをType Cの端子だけ100円ショップで見つけてきて変換アダプターを作るとかだとうまくいく気がします。もちろん自己責任になります。