年末の土曜日、天気が悪かったのですが、夕方明るいうちに少し晴れ間が見えてきたので、いつもの富山市科学博物館の観望会に顔を出しました。今回で今年は最後の官房会になります。到着した時には相当晴れ間が広まっていたので、すぐに電視観望セットを用意。でも準備が終わることにはまたかなり雲が広がってきました。

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今はコロナ禍で、観望会も予約制で50分の2部制になっています。各回20人程度とのことです。それでもこの日は天気が悪く、最初の部は人数は予約の半分程度。最初少しだけ観望しますが、月が少し見えたくらいです。実は一瞬アンドロメダ銀河を入れましたが、雲越しでお客さんに見せるレベルではありません。こんな日は室内に入ってお話が中心になります。 科学博物館の職員の方が季節に沿ったスライドを用意しています。しかも毎週来る常連さんもいるので、毎週ネタが変える必要があり、用意するのが大変かと思います。今回はオリオン座のギリシア神話です。月の女神アルテミスとの仲を心配した兄アポロンが罠を巡らして、アルテミスにオリオンを弓で打たせてしまう悲しいお話です。

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お話が終わると外に出て少しだけ観望しますが、ほとんど何も見えず、電視観望でごく稀に月の輪郭が見える程度でしょうか。残念ながら、一部はここでおしまい。次の2部の人たちが来始めました。

2部の人の中に、いつものMちゃんがいました。残念ながら、写真展の時に会った男の子は名簿には載っていましたが今回は天気が悪いせいか不参加のようです。この間声をかけたのですが、ずっと天気が悪くてなかなか自宅観望会に誘うことができません。晴れたらぜひ二人とも遊びに来て欲しいです。学芸員さんの話が終わっても天気が悪かったので、そのまま部屋でMちゃんとお母さんと少し話すことに。

お母さんによると、Mちゃんがとにかくカメラを欲しがっているとのこと。しかもよくよく聞いてみたのですが「普通のカメラの方がいろいろ使えるはずなのに、なぜか『赤いやつ』が欲しいらしい」と言うのです。ハハーァなるほどと思いました。Mちゃん曰く「もうポルタIIでは星雲が淡くてなかなか見えない」ということが悩みで、何人かの人に勧められたらしく、ZWOのカメラが欲しいみたいなのです。でも残念ながらクリスマスでもサンタさんはカメラはくれなかったとのこと。やはり小学生にはカメラは相当高価な部類になります。

ASIのどの機種かまではわかっていないようでしたが、冷却のことは高価になることも含めて効果についてもきちんと理解していました。センサー面積が重要で、面積が大きくなるほど効果になるというのがまだ理解できていないようです。「あ、でもコンピューターがいるよ」と言ったら「コンピュータは持ってるから大丈夫」とのこと。一応どう使うかのイメージはできているようです。

最近はもうお母さんにとっては、だんだん理解の範囲を超えてきたらしくて、子供の質問にきちんと答えることができなくなってきとのことです。このまま機材を買い与えていいものなのか真剣に悩んでいるようでした。機材だけの問題なら私の余っているものを貸してもいいし、色々助言することもできるのですが、問題はそういうことではなく、このままのめり込みすぎていいものかを心配しているようです。私自身の考えは、興味のある時期というのは長い目で見たら人生の限られた時間のうちのことなので、その興味が続くうちにどこまで深く追求できるかが鍵だと思っています。そんなこともありお母さんには「理科とか、数学とかには役立ちますよ」とアドバイスしたら「今も理科と算数しか勉強しないんです!国語とか、英語とかどうなるのか心配で...」とのこと。それを聞いて、国語は論理性、英語はどうせ読むようになるので、ああ大丈夫だと思ったのですが、やはり問題はのめり込みすぎのことのようです。

Mちゃんに一眼レフカメラも勧めてみましたが、目的がどうやら眼視でなかなか見えない淡い天体を電視観望のようなもので見たいようです。確かにその気持ちはよーくわかります。あれは本当に楽しいですから。Mちゃんは、高校生になってアルバイトでお金を貯めて買いたいというようなことを言っていました。すごくいい子です。でもそれだとまだ5年後くらいの話です。お母様の心配がなければ、いろいろ手助けしてあげたいのですが、どういう結論になるのか、少し待ってみることにします。

個人的には今だったらまずAZ-GTiを手に入れたほうがいい気がします。必要ならカメラは私が提供します。それでどんどん好きなように進んで、もっと星好きになってもらえれば...と思うのは勝手なマニア心ですかね。お母様の心配ももっともな気もします。

結局、観望会の時間も過ぎて何組かが残って、外に出てみると少しだけ晴れてました。月と、運良く東の低空の一部が空いていたので、オリオン大星雲を入れてみました。雲越しでしたが、少しだけM42が見えて、残っていた人たちみんなすごく喜んでくれました。あ、Mちゃんと仲の良い子がいるのに気づきました。聞いたら同じ学校の3年生の女の子です。まだ最近、11月くらいから参加し始めたとのことで、最初に来た時にMちゃんとたくさん話をして仲良くなって、それから毎回来てくれているようです。こうやって毎週続けていくことで仲間が増えていく場を提供できている富山市科学館の取り組みは素晴らしいと思います。

さて、後片付けも終わってオフィスに顔を出したら、ケーキが。実はMちゃんの家はケーキ屋さん。お母さんが差し入れてくれたシュトーレンをみんなで頂きました。と言っても、アルコールが入っているとのことで、実際に食べたのは家についてからです。

観望会も終わって、21時半頃ですが、食事がてら「かつや」に行ったのですが、食べているとちょうど後片付けが終わった学芸員さんの一人がが入店してきました。声をかけて、一緒の席で食べることに。まだ30前くらいの若い方で、なんで富山市科学博物館に来たのかかとか、それまで電波望遠鏡で研究していたのかとか、いろいろ話を聞くことができました。

実は今、富山市では別の場所にある富山市天文台をどうするか議論されていて、そのことについてもいろいろ話すことができました。現在富山市天文台は2018年に起きた土砂崩れと施設の老朽化で、それからずっと休館中です。予算をかけて復活させるのか、新しい場所に移転するのか、もうやめてしまうのか揺れています。一番心配しているのが、科学博物館で観望会を続けているのでもう天文台はなくてもいいのではと思われてしまうことだそうです。毎週観望会を続けていることが逆に仇になってしまうかもしれないというのです。そんなことは絶対あるはずがありあません。これだけ熱心に観望会を続けていることがどれだけ富山の子供たちの理科の興味に貢献していることか、きちんと評価すべきだと思います。富山はおそらく全国でも珍しく富山市天文台とアマチュアの富山県天文学会が非常にうまく噛み合って実績を上げてきたところです。このまま天文台がなくなってしまうのはあまりに惜しいです。富山県天文学会のメンバーの中でも活発な議論がされています。なんとかいい方向で富山の天文活動が続いていって欲しいと思います。そのためにできる協力は惜しまないつもりです。