プロローグ

前の日の土曜日、富山市科学博物館で8ヶ月ぶりに再会した小学5年生の女の子。ものすごく熱心な子で、その日は雲が多くて目的のアンドロメダ銀河もなかなか見えなかったので、よかったらうちで見ますかと親子でお誘いしたら、早速次の日、日曜日の夜に来てくれることに。




準備を張り切りすぎて

到着は19時頃になるとのこと。なので夕方17時くらいからゆっくり準備を始めます。でもちょっと張り切りすぎて、惑星用にMEADE25cm、広角電視観望で50mmレンズ、FS-60CBでもう1組電視観望。あと、すばる用に双眼鏡を2つ、星座ビノを5個くらいと、なんかフルコースになってしまいました

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19時過ぎに電話が。しかも、お互いに知り合いのU一家も一緒に誘ってきてくれました。なのでIさん一家がMちゃん(今日ようやく名前を聞きました)とお母さん、あとUさん一家が小4女の子、中1男の子と両親の、2家族。計6人のお客さんでした。


皆さん自宅に到着

ちょうど木星を導入しているときに到着。早速見てもらいましたが、やはり温度順応がまだまだでいまいちシャープさに欠けます。実は夜中に火星を撮影しようと思っていたのでMEADEにしたのですが、観望会のことだけを考えてC8のほうが良かったかもしれません。

Uさんのところはお父さんが天文好きで、この日もBORGの70mmくらいのを持ってきてました。Uさんのところの子供二人も多分星は好きなのでしょう。でも今回はMちゃんに圧倒されてしまいます。


もう興味津々

まず一番最初から、Mちゃんだけは赤道儀のCGEM IIに興味津々。「自分で導入してみる?」と言って、コントローラーを渡したら「わーっ!いいんですか?」とすごく嬉しそう。土星の導入をしてもらったのですが、やり方は一度言うだけで完璧に覚えてしまいます。「じゃあ次は火星導入してみたら」とかいうと、もう勝手にどんどん進めていきます。

すごいのは、火星の自動導入時は鏡筒が大きく動くのですが、きちんとケーブルが噛まないかとかさりげなく気を使ってることです。もちろん私は何も言ってませんよ。こんな子なら安心して機材も触ってもらえます。

でも初期アラインメントを木星一つしか合わせてないため、離れているる火星の導入はずれてしまいました。そうしたら「これファインダーってどこにあるんですか?」と聞いてきます。普段私はあまりファインダーを使っていないことを反省して、急遽ファインダーを付けます。もう一度木星に入れてもらって(もう完全にMちゃんに任せてます)、ファインダーの調整もMちゃんにやってもらいます。ファインダーも最初Vixenのものと違うので少し戸惑ってましたが、すぐに慣れて自分できちんと合わせてました。その後、火星も勝手に導入してしばらくすると「入った」と。そのときに基準星の置き換え方法を教えたら、これも次のベガとかで自分で置き換えもやろうとしてました。



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MEADEはミラーシフトが大きいので、KASAIのフォーカサーでピントを合わせてもらいましたが、これも戸惑っていたのは最初だけ。子午線越えの場合アイピースの上下が逆になったりしてしまいますが、アイピースを上に向けるためにフォーカサーを回転するときに必ず落とさないように手を添えるとか、基本がきちんとできています。おそらく自分で経験してどこが大事か知っているためか、ホントにほんの一言言うだけで、あとは物凄く丁寧に気をつけて、考えながら操作してます。多分かなり自分で星を見てポルタを使い込んでいるからだと思いますが、危ない操作を避けることも、自分で何度か機材を落として学んだのではないかと思います。なんかもう、お手本のような子です。

MEADEでM57を導入しようとしていたので「まずベガで基準星を置き換えるといいよ」と言うと、もう手慣れたものできちんとやっていました。面白いのは、ハンドコントローラーのボタンの英語が読めないのです。ここら辺はさすがに小学生で、なんか可愛かったです(笑)。結局、どのボタンがどの機能か覚えてしまったみたいで、今度は「DEEP SKY」ボタンを使ってM57も導入してました。見えた時の喜び具合もすごい反応で、他の子や大人の星雲を見たときの反応は結構一般の人に近い「ふーん」というのに対し、もう大興奮で一人キャーキャー叫んでました。


Mちゃんのポルタ

さて、だんだん木星と土星が低くなってきたので、MちゃんのポルタIIを出してもらって、自分の望遠鏡でも見てもらいました。聞いてみると、持っているアイピースは6.3mmと20mm。もう手慣れたもので、惑星の導入は一瞬。しかも最初っから6.3mmで導入までしてしまうみたいです。せっかくなので、私の部屋で少し機材を見てもらい、ついでにポルタに付いてこない10mmと40mmのアイピースをあげることに。昔星まつりで安く買ったものですが、私が使うよりMちゃんに使ってもらった方が遥かに役に立ちそうです。

外に戻ると早速40mmのアイピースを使って、M31を導入しはじめてました。実は、昨日科学館の観望会で一緒だった県天のメンバーのKさんが自宅のすぐ前に住んでいて、今日のことも聞いていたので顔を出してくれて、いろいろMちゃんに教えてくれていたようです。M31は恒星とか惑星は違って、導入するのはなかなか大変です。Mちゃんも最初相当苦労してましたが、Kさんの教え方がうまいのか、じきに自分で導入できるようになり、あっという間に慣れてしまったようです。初めてM31が導入できた時の喜びようはもうすごくて、こんなに喜んでくれるならアイピースの何本でも惜しくないと本気で思いました。


電視観望と眼視での比較

眼視もある程度見たので、次は電視観望です。最初広角電視観望から始め、北アメリカ星雲とかサドル付近を見てもらいました。

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ついでにM31を50mmの広角電視観望で見てもらいました。前日の科学館で雲であまり見えなかったので、少なくとも晴れていて光害も少ない場所でのM31は形もわかって好評でした。

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そんなこんなで、あっという間にUさん一家が帰宅する時間になりました。せっかくなので、M57だけでも見てもらおうと、FS-60CBでの電視観望にASI294MCを付け替え、画面に映し出します。先ほどのMEADEでの眼視と比べて明らかにカラフルなので、今度は皆さん「きれーい!」。

再びMEADEでも導入し直し、改めてみんなで眼視で比べて見てみます。見比べはやはり面白くて、特に眼視のモノクロと比べると電視観望での色が映えます。でも「眼視のいいところもあるんです」とキチンと両方のいいところを説明しました。

さらに帰ろうとしているUさん一家を引き留め、M27亜鈴状星雲を電視観望でもMEADEでも導入し、再び比較。眼視の方はM57よりさらに淡くなるので、見るのが難しい人もいたみたいです。

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ちょうど21時頃でしょうか、ここで明日の月曜に学校があるUさん一家が帰宅。Mちゃんの勢いがすごすぎて、Uさんのところの子供2人が乗り切れてなかった気がしたので、少し心配でしたが、家族みんなでお礼を言ってくれました。

あ、そうそう、うちの妻を含めてお母さん同士は3人でずーっと何か話してました。あとで妻から聞いたら、最近Uさんのところの上の子も中1でなかなか家族のお出かけに着いて来なくなったとのこと。そういえば確かに、しきりに上の子の方が「もう帰ろう」と言っていました。うちの子もそうですが、だんだんと自分の世界を作っていくので、しかたないのかなあと思います。


Mちゃん格言

その後もMちゃん、独走体制で一人でハンドコントローラーに入っている天体を片っ端から導入していきます。私とKさんは横で微笑ましく見ていました。詳しい人はもうわかると思いますが、ハンドコントローラーに登録されているほとんどの天体、特にDSOはこんな街中では見えません。途中でMちゃんもそのことに気づいたみたいで、少し話しているとしみじみとした口調で「最近、自分の望遠鏡だと見えないものが多いことがわかった」とのこと。もうポルタと経緯台だと限界なのかもしれません。

あと、本も紹介しました。聞いてみると持っているのは星の図鑑くらいだそうです。興味を持ち始めたのがわずか1年前、仕方ありません。それでこの進化はすごいです。でも私も逆に、小学生で読めそうなものがなかなかありません。とりあえず誠文堂新光社の「メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド」を見せると爛々と目を輝かせています。「貸してあげるからいつか返してくれればいいよ」というと、「お母さんにスマホで表紙の写真撮っておいてもらう。自分で買う。」とのこと。その時ボソッとつぶやいたのが「メシエ全部覚えられそう...」。うーん、楽しみな子です。

最後にFS-60CBの電視観望でM31を見てみました。すでに少し薄雲がかかってきていましたが、それでも構造まで見えるM31に親子共々びっくりしてたようで「図鑑と一緒だ」と叫んで、スマホで画面を映して待ち受け画面にしていました。ここら辺は普通の子供っぽくてかわいいものです。

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21時過ぎくらいでしょうか、一瞬で空が曇ってきて、電視観望もM31ももう中心だけがボヤーっと見えているだけ。「これがさっきのアンドロメダ銀河...?」となんだかガッカリして寂しそうでした。

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なんでもこの日の午前が授業参観か何かで、明日は月曜でも学校はお休み。このまま晴れていたらオリオン座が上がってくる0時頃まで居座ってそうでした。うちは全然いいのですが、流石に天気はどうしようもなくここで解散。この時でしょうか、「オリオン大星雲は緑に見えるくらい」とさりげなく言うのですが、私はいまだにM42に色がついて見えたことがありません。「赤とかピンクとかは?」と聞くと「それは見えたことがない」とのこと。一緒に見てたお母さんも色はついて見えないと言っています。子供の方がやはり目の感度がいいのでしょうか?なんともうらやましいです。

後片付けをしながら「キャップがなくなったー」とか騒いでずっと探していました。結局見つからなかったのですが、多分ポケットの何処かから出てくる気がします。道具を大切にするのはとてもいいことだと思います。とにかく、とても楽しかったらしく、「科学館より凄かった」とのこと。科学館の方には少し申し訳ないですが、それよりも私の方が楽しませてもらった気がします。Mちゃんの反応や星に対する純粋さを見ていると、ほんとに嬉しくなってきます。「またいつでも来ていいからね」と言って見送りましたが、ほんとにいつ来てもらってもいいくらいです。これからどんどん成長していくのか、そのうち飽きてしまうのか、もちろん本人次第ですが、やる気がある限り応援してあげたいと思います。


お菓子美味しかったです

あ、そういえばIさんのところからも、Uさんのところからもお土産いただきました。でも私の家族、気を使ってもらうのが苦手で、実は手土産とか無しの方がいいんです。なので「今度からは手ぶらで気楽に来てください」と伝えました。でも困ったことに、富山の「手ぶらで来てください」は「何か持ってきてね」と同義らしいのです。うちはアメリカ暮らしが長かったので、手土産を持っていく文化に慣れてないので、もしうちに来ることがある場合は、本当に手ぶらで来てください。星仲間として来て欲しくて招待してるので、気兼ねすることなく何度も来て欲しいのです。

でもなんでこんな話を珍しく書いたかというと、Iさんのところが実はケーキ屋さんらしいのです。最初「自前のお菓子を持ってきた」と言うので、見てみたら絶対どこかで買ってきたもの。それでよくよく聞いてみるとケーキ屋で「あ、確かに自前だ」というオチだったのです。うちからも近いので、今度お店の方にも行ってみようと思います。こうやって関係ができていくのは、逆に狭い富山のいいところですかね。

どれも美味しかったです。でもUさんの持ってきてくれた「カイコのふん入りコーヒー」、インパクト強すぎて、まだ誰も飲んでいません。私もちょっと様子見です。いや、もちろん美味しいとは思いますが...。