M13でのTSA-120とVISACの比較から、どうやら単純にはVISACの方が分解能が上のようです。以前、TSA-120とASI178MCで全く分解能のでなかったM51を、連休中にVISACで再度撮影してみました。




今年初稼働のVISAC

そもそも、TSA-120での撮影の時は透明度も全然よくなくて、風がかなり強く鏡筒が揺れていたので、出来上がりはボケボケ状態で、無理矢理炙り出したような状況でした。焦点距離が900mmと短いので、M51は結構小さく出てしまいます。そこでセンサーサイズが小さく、分解能を出す意味でピクセルサイズが小さいASI178MCを使ったのですが、感度がASI294MCとかに比べると4分の1くらいなので、淡い星雲には不利に働いたのかと思います。

さて、今回は焦点距離が2000mmと倍以上になりASI294MCで感度もいいので、前回よりも少なくとも有利なはずです。口径も120mmから200mmになり光量も2.7倍くらいになるので、それも有利に効くはずです。その一方、これまでの経験からシリウスBトラペジウムではTSA-120の方が有利だったように、星像のシャープさという点ではもしかしたら不利な点が出てくるかもしれません。

さて、この時の撮影用のソフトはまだN.I.N.A.ではなく、APTを使っています。実際にはM13より以前に撮影しています。この日は透明度もそれほど悪くなく、風もたいしたことありません。


やっと画像処理

M13の方を先に処理し出してしまったので、M51の画像処理は後回しになってしまってました。週末の日曜になってやっとやる気が出てきました。

まず撮影した結果をそのままRAWで見てみます。おーっ!一枚でも解像度はすでに前回よりはるかに上っぽいです。

L_2020_05_11_21_28_11_Bin1x1_300s__15C_RGB_VNG

でも少し拡大してみると、

L_2020_05_11_21_28_11_Bin1x1_300s__15C_RGB_VNG_cut

あれ?おにぎり星像、また出たか!? 
M13の時は大丈夫だったのに〜!?
夏になると出るのでしょうか?

しかたないので、三角星像は画像処理で何とかすることにして、とりあえず進めます。

スタックまではいつものPixInsightです。今回もダークは以前の使い回し、フラット補正はサボってなしです。あ、一つトラブルがありました。最初、BatchPreprocessingが途中でスターアラインメントのところで止まってしまったのです。探ってみると、Debayerで色がおかしく出てしまています。よくわからないので、マニュアルで最初から探っていくと、どうやら一番最初のCalibrationのダーク補正のところでおかしくなっているようです。

心当たりを探ってみると、今回StickPCではなく、もっとパワーのあるSurfaceマシンで撮影して、その際APTを新規に入れたものを使ったのです。その際、オフセットの値をきちんと確認しなくて、小さな値を入れてしまっていたことが原因です。ダークファイルは使い回しで、そのオフセットはライトフレームよりも大きかったのです。ダーク補正をする際に、大きくオフセットを引きすぎてRGBのうちRとBの背景が0より小さくなってしまって、完全に緑がかった色になってしまっていました。

ここでどうするすればいいか、困ってしまいました。結局やったことは、PixInsightのHistgramTransformationの「shadow」を上げてmaster dark frameのオフセットを小さくしてみたことです。

dark_offset_cut

画面はわかりやすいようにDebayerしてカラー化してオフセットを取っていますが、実際にはBayer配列のままやっています。でもこの方法で本当に正しいのかよくわかりません。いずれにせよ、これで作ったmaster dark frameでダーク補正をすることで、背景が真っ暗になるようなことはなくなりました。そのままBatchPreprocessingでも最後まで処理できるようになりました。

その後、ABEとPCCで処理し、ArcsinhStretchで途中までストレッチして、最後はHistgramTransformationでストレッチしてPIはおしまいです。

次のトラブルは、StarNet++があまりうまくいかないことでした。大きな星は分離できてますが、細かい星がほとんど分離できません。

light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_SNP

light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_SNP_cut

何が原因か知りたかったので、とりあえず今回は2つ試して見ました。
  1. 一つはもう少しストレッチして明るくしてからStarNet++をかけて見ましたが、こちらはほとんど影響なしで分離できる星は変わりませんでした。
  2. 次にやったのが、MorphologicalTrasnformationで三角を丸に直してからStarNet++をかけて見ました。そうすると、もう少し分離でき流ようです。どうやら星の形(真円に近いという意味)を見分けて判断していることが分かります。
でも結局はかなりMorphologicalTrasnformationをかけなくてはならず、星雲部分や背景まで崩れてくるので、こちらも適用は諦めました。結局StarNet++で大きな星だけが分離できた状態で画像処理を進めました。その代わりに、分離できた分だけの恒星部の画像を作って、それをMorphologicalTrasnformationで三角になったのを少し緩和しました。


結果

画像処理の結果です。

「子持ち銀河M51」
light_BINNING_1_integration_ABE_PCC_AS_all_PS3_cut
  • 撮影日: 2020年5月13日21時22分-23時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro + サイトロン QBP (37.5mm)
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: APT、ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x26枚 = 2時間10分 
  • PixInsight、Photoshop CC、StarNet++、DeNoiseで画像処理

今回はかなり分解能も出ています。M101に続いて、焦点距離の長い口径の大きい鏡筒を使えば、光害地でQBPを使って、もう少し小さい系外銀河の撮影もそこそこ可能だということが分かりました。

画像処理でVISAC特有の三角星像もそこまで目立たないくらいにはなりました。でも、前回のM13で三角になることはなくて、なんでM51は三角になったのでしょうか?赤道儀の向きにも依存しているのかもしれません。もしそうだとすると、光学的な問題というよりは、メカ的な振動の可能性もあり得ます。こちらはもう少し調べてみます。


まとめ

富山の明るい北の空で、何とか系外銀河を狙う目処がやっとついてきました。おにぎり星像はまだ問題ですが、四隅で流れるようなことはないので画像処理の範囲である程度補正することはできます。それでももう少し、根本的に何が原因か探りたいと思います。