前回のEVOSTAR 72EDの記事で、フルサイズ領域での星像を、鏡筒そのものと、SkyWatcher純正の専用レデューサー、実際の星像を撮影して評価してみました。



さて今回の記事はフラットナーを試しています。

「え?フラットナー?EVOSTAR用のフラットナー
なんてありましたっけ?」

と言う方、正しいです。ありません。

今回の記事はEVOSTAR 72EDにタカハシのマルチフラットナーが使えるかどうか試してみたというテスト記事です。SkyWatcherとタカハシの両方から怒られてしまいそうな(笑)記事です。


タカハシマルチフラットナー1.04x

タカハシの「マルチフラットナー1.04x



は別売りの「マルチCAリング」と呼ばれる長さの異なるアダプターリングを取り付けることによって、タカハシ製のFC50からFS152まで対応できるかなり汎用性のあるフラットナーです。私もFS-60CB用とFC-76用のリングを持っていて、フラットナー本体は使い回しが効くので非常にコストパフォーマンスのいいフラットナーになります。

性能も申し分なく、例えば以前比較した記事の中の新旧のフラットナーのところを比較していただければわかりますが、以前の専用品よりもはるかに綺麗な点像を実現します。




今回これを汎用的なフラットナーとして、専用フラットナーのないEVOSTAR 72EDに適用してみたらどうなるかと考えてみました。前回レデューサーでは星像が改善することが分かったのですが、レデューサーなので当然焦点距離が短くなります。鏡筒そのままの焦点距離で撮影したいこともあるはずです。


EVOSTAR 72EDへの接続方法 (その1)

さて、タカハシ製マルチフラットナーのEVOSTAR 72EDへの実際の取り付けですが、少し面倒です。

マルチフラットナーの取り付けネジ径がM56x0.75というものらしいのですが、そのままだとEVOSTAR 72EDに取り付けることができません。今回はレデューサーに付属されていた、アダプターリング(下の写真)を使用することで問題を簡易的(ある意味無理矢理)に回避しました。

まずは鏡筒本体に付属の2インチスリーブを回転して取り外します。そこにレデューサー付属のアダプターリングを取り付けます。この状態でフラットナー本体を取り付けことができるのですが、実は微妙にネジ径は同じなのですが、ピッチが違うようで、途中で止まってしまい最後までねじ込むことができません。この時点ですでに怪しい取り組みになるので、気になる方は真似しないでください。でもこんなことを気にしてると何もできません。今回の記事を最後まで読むとわかりますが、もっと怪しくなります。とにかく、当然ですがメーカーのサポート外のテストになりますので、試してみたい方は決して販売店の方に問い合わせるようなことはしないでください。あくまで自己責任でお願いします。

さてこのレデューサーに付属のリングですが、結局SkyWatcherの独自規格のようで、いろんなところの情報とノギスでの実測でM54オスとM56オス(普通は雄ネジ側の径で測定するのでこちらのネジ径が正しい値となります。ただし誤差は含みます。)という微妙なネジ径の違いを変換するリングということになります。ただし、M56のピッチを測ってみると1mmのようで、タカハシ標準の0.75mmとは違うので、同じ径のようですが直接の互換性は無いようです。便利なので別売りしてくれれば良いのですが、さすがに難しいでしょう(おそらく後述のSkyWatcher製のカメラ回転リングで代用できそうです)。

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ED72レデューサーに付属の、アダプターリング

さらに写野の回転を考える場合は、回転装置などを取り付けた方が良いかと思います。レデューサー付属のアダプターリングを使うことで、タカハシの「カメラ回転装置(SKY90用) [KA21200]」を(フラットナー接続時と同様に)無理矢理にですが取り付けることはできます。取り付け場所はアダプターリングとマルチフラットナーの間になります。実際やってみるとネジ径が違うはずなのにカメラ回転装置の場合は結構すんなり最後の方までネジ込めます。その後はマルチフラットーをそのまま取り付けることができるので、この方が素直かもしれません。

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左から順に、鏡筒本体、レデューサー付属のアダプターリング、
タカハシ製カメラ回転装置、マルチフラットナー、タカハシ純正カメラアダプター


EVOSTAR 72EDへの接続方法 (その2)

もう一つのマルチフラットナーのEVOSTAR 72EDへの接続方法です。こちらは実際には試していなくて、推測になりますのでご了承ください。レデューサーを持っていなくて、変換アダプターリングがない場合の話です。EVOSTAR 72ED専用のカメラ回転リングというのがあります。



このページを見るとレデューサー付属のアダプターリングの代わりに使っているので、これがそのまま使えるかもしれません。二千円と安価ですし、カメラ回転装置も兼ねるので便利かと思います。上の(その1)で紹介したタカハシ製のカメラ回転装置を使わなくてよくなるので、かなり節約できます。

それでもタカハシのマルチフラットナーを取り付ける際のネジ径は(その1)で示した通り、ピッチが1mm
と0.75mmで微妙に違うのできちんとははまらないはずです。あくまで、自己責任で納得しながら試すことになります。繰り返しになりますが、私は自身は今回この回転リングを試していないので、アイデアのみのお話です。試す場合は人柱になることを覚悟して、自己責任でお願いいたします。

さて、ここでふと気づいたのですが、私がお借りしているのはEVOSTAR 72ED(だと思います)で、現在シュミットさんのページに載っているのがEVOSTAR 72ED IIになります。ホームページには「※初期型との外観の違いは鏡筒長がわずかに短くなっています。レンズ性能等は従来のモデルと同等です。またロゴ等も変更はありません。」と書いてあるので、外観以外にもしかしたら違いがあるのかもしれませんし、そもそも外観も新旧見比べないと分からないです。ので、イマイチ変更点が不明で、もしかしたら自分のところにあるのもすでに新型のIIなのかもしれません。(追記:  シュミットさんに電話で聞いてみました。現在手持ちのものはIIで確定。初期型のものとIIとの違いは本当に鏡筒長以外、ロゴなどからはほとんど分からないそうです。)

問題はカメラ回転リングがホームページの説明によると「※初期型EVOSTAR72EDにはお使いいただけません。」となっていることです。もし手持ちで初期型のEVOSTAR 72EDをお持ちの方は(どこがダメなのかはわかりませんが)おそらくうまくいかないと思いますので、注意してください。


マルチフラットナー以降の接続

さて、やっとマルチフラットナーまで接続できましたので、さらにその後ろの接続に行きます。

フラットナーの後ろにはタカハシが販売している、それぞれの鏡筒に適合したマルチCAリングと呼ばれるアダプターリングをつけるのですが、これが今回色々試してみるところです。今回は手持ちのマルチCAリング 60CとマルチCAリング 70を試します。

アダプターリングの後ろには、タカハシ純正の「カメラマウントDX-60W(EOS) [KA20245]」を使っています。EOS用とNikon用があるのに注意してください。私はCanonなのでEOS用、Nikonの場合は同ページで購入できますが、型番が違います。ポイントは、この部分をタカハシ純正以外の代替品に変えてしまうとバックフォーカス長が変わってしまい、きちんとした比較ができなくなるので注意が必要です。自分で何種類もマルチCAリングを試す場合は、この限りではなく、サードパーティ製でも構わないと思います。

ここまでできたらあとは、手持ちの一眼レフカメラを取り付けるだけですね。

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やっと準備が整いました。それでは実際の撮像を見てみましょう。


マルチCAリング 60C

まずはFS-60CBに使っているマルチCAリング 60Cを試します。FS-60CBが焦点距離355mmなので、今回のEVOSTAR 72EDの焦点距離420mmに一番近いからです。

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IMG_5431_cut

お、結構うまく補正されています。フルサイズではまだ少し流れていますが、APS-Cでは十分許容範囲でしょう。いやいや、素の鏡筒の星像から見たらすでに相当な改善で、マルチフラットナーとりあえず十分使えそうです。


マルチCAリング 76

次に、FC-76に使っているマルチCAリング 76を試します。FC-76が焦点距離600mmなので、今回のEVOSTAR 72EDの焦点距離420mmより多少長いです。

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CAリング60Cの時に比べると、同程度か若干CAリング76の方が星像の流れが大きいくらいでしょうか?

むしろ、CAリングの長さが1cm以上短くなっているのに、星像がそこまで変わらないのはなぜなのでしょう?答えは次でわかります。


マルチCAリング無し

リング長で星像が多少なりとも変わることが分かったので、今度はマルチCAリングを外してしまいました。その時の星像です。

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IMG_5434_cut

これはAPS-Cでさえも全然ダメですね。

マルチCAリングのラインナップを見てみると、焦点距離の長い鏡筒用のものほど、マルチCAリングの長さが短いです。ということは、リング無しだと全然補正できなくて、CA76でもまだ補正が足りない、EVOSTAR 72EDがFC-76とFS60CBの間の焦点距離なので、CA60Cだと過補正になっているのではという推測ができます。


最後の無理矢理、マルチCAリングゆるゆる撮影

CA76だと短すぎ、CA60Cだと長すぎということのようです。それではここでCA76を緩めて少しだけですが長さを伸ばしてみましょう。ネジの箇所はマルチフラットナーとCAリングの間、CAリングとカメラアダプターの間の2箇所あります。それぞれネジ山に2回転くらい引っ掛けただけなので、ガタガタしていますが、1箇所で2.5mmくらい伸ばすことができました。合計5mm程度伸びていることになります。この状態で撮影してみました。

下がその時の星像です。ただし、ガタガタしているために少しカメラ側が下がって、光軸がずれている可能性があります。

IMG_5435

IMG_5435_cut

いや、これは今までで一番良いんではないですか!!

ガタつきのために上下で少しだけ差が出ていますが、ほとんど誤差の範囲くらいです。これだけうまく補正できるのなら、マルチフラットナーでの補正を真剣に考えても良さそうです。

ここから考えると、マルチCAリング 76よりも少し長い、マルチCAリング 60 (60Cとは違うことに注意、60Cは相当長いです。) が一番適していそうだということが分かります。実際にはCA60だと1-2mm足りないかもしれないので、ガタつかないようにプラスチックシートなどでリング状のスペーサーを作って、微調整しながら少し伸ばして使うといいかもしれません。


少し考察

この記事を書いている途中で気づいたのですが、実は同様のことは天リフさんでもすでにFOT104で試されていました。



というか、天リフさんの記事のことすっかり忘れていて、最初は自分で考えたいいアイデアだと思って喜んでいました。改めて天リフさんの記事を読み直してみると、今回のテストやらなくても良かったのではというくらいのかなり詳細なレポートでした。ちょっと悔しいです。でも、よく内容を見比べてみると今回の結果に驚くほど一致しています。今回の記事もマルチフラットナーの汎用性の実証の一つくらいにはなったと思いますので、まあ、やってよかったかなと。

ところで、今回の結果を考えてみると、バックフォーカス長が相当重要だということが分かります。これはタカハシというメーカーが一眼レフカメラの接続まで純正オプションを揃えることで初めて成り立つ状況です。

では、CCDやCMOSカメラでの撮影はどうなのでしょうか?この場合は純正オプションはないので、結局自らテストしながら最適バックフォーカス長を調整していかなければいけません。これまでバックフォーカス長を気にしたことがあまりなかったので、少なくともレデューサーやフラットナーをつけるときは、これから気をつけなければということに気づかされました。

といったこともあり、前回のレデューサーの記事はカメラまでの部品をSkyWatcher推奨の純正品で揃えてバックフォーカス長をあわせた方が良いのでは、というような書き方にしています。でも実際にそこまで色々試したわけではないので、多少の許容範囲はあるでしょうし、それぞれの場合でテストしながらやっていくのが正しい道なのかと思います。


まとめ

今回は、メーカーを跨いだフォーカサーの試用テストをしてみました。タカハシ製のマルチフラットナーは汎用フラットナーとしての可能性を大きく秘めています。これは天リフさんと同じ結論かと思います。バックフォーカス長が調整できるような可変のリングが存在すれば、さらに応用範囲が広がると思います。

新しい可能性がある一方、メーカーの指定条件からは外れてしまうので、規格の違いなどもあり試行錯誤が必要となります。タカハシさんのほうがこのような使い方を喜ばない可能性も十分にあり得ます。

ユーザーとしては、こういったことを面白いと楽しめるなら、色々試してみるといいでしょう。もしくは、こういったやり方は不安だという方もいらっしゃると思いますので、やはりその場合はメーカー推奨のやり方で進めながら撮影に臨まれる方がいいかと思います。

個人的には、光学という誰でも自由に試すことのできる物理現象の範囲の話なので、手に入る設計のレンズなどを好き勝手に使いながらやるというので正しいのかと思います。うまくいかない時も当然あるので、それは自己責任でということを納得しながらやれば、いろんな応用範囲が広がっていくのかと思います。メーカー指定の範囲外でうまくいかないことを、メーカーに文句を言ったり問い合わせたりするのは、この場合筋違いです。

いや、何より楽しいのが一番で、こういった自由なテストをできること自体が天文趣味の醍醐味だと思っています。とりあえず楽しくて仕方ありません。


最後、おまけの裏話に続きます。