前々回の記事でトラペジウムのE星、F星が見えたことを書きました。



その後のコメントと、Twitter上で、シリウスBの話で盛り上がりました。


TSA-120でシリウスBを見ることは可能か?


その中で、多分すばる関連の方だと思いますが、沖田さんという方が口径とシーイングとシリウスBの関係をグラフ化してくれました。



この計算によると12cmでもシーイングによっては十分に見えるようです。Lambdaさんによると、反射だと20cmギリギリで、計算結果も感覚とあっているとのこと。コントラストの良い屈折ならばもう少しいけるはずではないかとのことです。

そんなこともあり、できればTSA-120でシリウスBを見てみたいと思い挑戦してみることにしました。


3月2日、シリウスB初挑戦

さて、一昨晩のことです。21時過ぎでしょうか、雲もありましたが、一部で星が見えているので早速TSA-120のセットアップ。前回の経験から、極軸は出来る限り正確に合わせておいた方が導入も正確だし、ずれていかないので落ち着いてみることができるため、SharpCapで極軸を1分角程度の範囲には合わせておきます。

まずはオリオン座のトラペジウムを導入し、前々回の記事の再現です。カメラは分解能的にまだ余裕はありそうなので、ASI178MCからASI294MC Proに変更しました。294の方が感度がいいので暗い星が見えるだろうことと、センサー面積が広く広角で撮ることができるので、M42の全体像と一緒に撮影とかできるかと思ったからです。

とりあえずカメラの映像を見てみると、まあ、揺れていますがE星はPCの画面上でも確認できます。F星は見えるような見えないような。ラッキーイメージ的にたまに見える時があるので、以前の状態をある程度再現することができていると判断。そのままシリウスに向けます。

ところが画面上でいくら露光時間やゲインを変えようが、ヒストグラムで炙り出そうが、伴星があるようにはかけらも見えません。埒があかないので、その後アイピースに変えてみました。アイピースは3.5mmまで試したので、約250倍と倍率程にはそれほど悪くないはずです。そもそもディフラクションリングがほとんど見えません。シリウス自身もピンピンチカチカ弾け飛んでいるように見えます。

前回のトラペジウムの時に、セレストロンの3倍バローを使ったら収差のせいで逆に見えにくくなったと書いたのですが、Twitter上で宮路泉さんが「それなら」と貸してくれたTeleVueのPowerMATEの4倍をダメ元で使ってみることに。TeleVeu製は初めてで、これまでこんな高級機使ったことありません。このPowerMATEは位置出しが大変で、結局2インチの延長筒を3つ鏡筒側に取り付けて、その先にPowerMATEを取り付けることでやっと焦点を出すことができました。

延長筒3つとPowerMATEで結構な長さと重さですが、さすが2インチ。各固定もしっかりしているのでほとんどブレることはありません。目で見ている限り収差は分かりませんが、倍率を上げているので多少暗くなることもあり、結局シリウスBが見えることはありませんでした。

本当はカメラも試したかったのですが、23時頃には雲がかなり広がってきてしまい、結局この日は諦めることに。シリウスB結構難敵です。


見えなかった原因は?

その後、少し計算してみました。TSA-120にASI294MCを取り付けたときのCMOSセンサーの1素子のピッチが0.96秒角と判明。画面上でざっくり1ドットが1秒ということになります。シリウスの伴星の離角が2020年頃は11秒くらいとのこと。ということは、画面で見えているシリウスの中心から11ドット離れたくらいのところにシリウスBがあることになります。撮影した画像を見てみると贔屓目に見ても中心から10ドットくらいまではシリウスの明るさで完全に支配されているような状態。ちなみにシリウスAは-1.09等級、シリウスBは8.44等級。さすがに10等近く差がある伴星を見るのは、今の状態では厳しでしょう。

やはり、シンチレーションがひどいようです。目で見てもチカチカゆらゆらしているので、この状態では程遠いです。やはり口径の大きいのが必要なのでしょうか?


3月3日、ついに!

次の日の19時過ぎ、子供を迎えにいかなければならなかったのですが、外を見たら快晴。星の瞬きもパッと見、ほとんどありません。これはチャンスと思い、子供の迎えを「ごめん!」と言って妻に頼んで、早速TSA-120をセットアップです。極軸も同じようにきちんと取ります。連夜同じことをすると、前のセットアップが残っているので楽なもんです。極軸合わせも、ものの5分とかからず。

今日のポイントは、下の写真のように、むかーし、最初に行った原村の星まつりで買った2インチのフリッパーミラーを入れたこと。

IMG_9634

そもそも延長筒を一つつけて、フォーカサーを相当伸ばしたところでピントが出ているので、多少の物をつないでも全然焦点内に入りそうです。鏡筒からの長さが必要なPowerMATEもこれで多少使いやすくなるはずです。これまでほとんどこのフリッパーミラー使っていなかったのですが、やはりアイピースとカメラの切り替えが楽ですごく便利です。惑星撮影にでも使えば良かったですが、そもそも多分アイピースをほとんど使ってこなかったので、フリッパーミラーの必要性も感じてこなかったのだと思います。

リゲルで初期アラインメントを終え、とりあえずはリゲルBを確認。一番倍率の高い3.5mmで見ますが、こちらはファーストライトで見た通り、余裕で見ることができました。次にシリウスを導入して、まずはやはり基本のアイピースでの観察。愛機CGEM IIの導入精度もまあまあで、西の空のリゲルから東の空のシリウスに赤道儀が反転しましたが、それでも3.5mmで視野内に入るくらいの一発導入です。

その途中ですでに分かったのが「あれ?今日はディフラクションリングがはっきり見えるぞ!」ということ。そもそもピントを合わせていく最中に、何重ものリングが小さくなっていく様子がはっきり見えます。これまでこんなことはありませんでした。ピントを合わせ切ると、随分とシリウスが小さい印象です。

しばらく見ていると、多分2、30秒でしょうか、

明らかに小さな星があります!シリウスBです。
しかも一発で確証が持てるくらいはっきり見えます。

「え?こんなにあっさり見えていいの?」というような状態です。何度見直しても同じ位置にいます。これはさすがに見間違いのレベルではありません。


シリウスBを撮影してみる

次にCMOSカメラで撮影を試みます。カメラは昨日と同じASI294MC Proですが、冷却はしていないです。温度を見たら8℃くらいだったので、冬場のこともありそれほど熱くはなっていないようです。

SharpCap上の設定は、最初は露光時間もゲインも適当でしたが、それでもすぐにシリウスBらしきものが見え始めました。結局一番良かった設定が、露光時間100ミリ秒、ゲイン140とかでした。その時の画像です。ROIで640x480ピクセルに制限して、ヒストグラムで炙り出して、画面に見えたものをそのまま画像に落としています。一枚画像で、スタックとかもしていません。

Capture_00005 19_57_55_WithDisplayStretch

ちょっと分かりにくいので、シリウス周りをトリミングして、画像を拡大してみます。

Capture_00005 19_57_55_cut

下の方にはっきりと写っています。


シリウスBの離角

でも上の画像、拡大してサイズ変更した時に補完されてしまって滑らかになっているので、ピクセルのドットが消えてしまっています。なので、拡大前の画像も載せておきます。

Capture_00005 19_57_55_cut


ちっちゃいですが、この画像を今見ているPC上で拡大してみてください。写っているピクセルの数を数えることができます。(と思ったけどダメでした。ブログにアップする時点でドット間が補完されてしまうようです。)オリジナルの画像で実際に数えてみるとシリウスAの中心からちょうど11ドット目にシリウスBが写っています。最初の方に書いた通り、1ドットが1秒角なので、やはりちょうど11秒角くらい離れたところにいることがわかります。これはシリウスBであることの確実な証拠の一つですね。

追記: PC画面で拡大した画像の画面をiPhoneで撮影してみました。PC画面の直接撮影なので少し色が変になってしまっていてシリウスBが緑色に見えてしまっています。そででもこれでドットの数を数えることができると思います。

IMG_9640



その後

拡大してみてみると、シリウスBが写っているのが1ピクセル少々なので、本当はここでPowerMATEを試して解像度を稼ぐべきだったのですが結局できませんでした。

実は見ている間に、時間と共にシンチレーションが悪くなってきたのか、多分10分くらいの単位でしょうか、明らかに見え味が落ち始めました。そのせいもあって、その後確認のために、もう一度トラペジウムに戻って色々試したのですが、これは次回の記事で書くことにします。なのでお借りしたPowerMATE、結局まだ試すことができていません。宮路泉さん、今しばらくお待ちください。手持ちのバローと合わせて比較してみたいと思っています。

ちなみに、トラペジウムから帰ってきて今一度シリウスBを見てみたのですが、もう揺れ揺れで全くみることができなくなっていました。どうやら冬場の一瞬の奇跡の時間だったのかもしれません。


まとめ

とにかく、シリウスBをやっと初めてこの目で見ることができました!いやあ、うれしかったです。

普通は数十cmの口径の鏡筒で見るのがほとんどで、本当に12cmという小口径で見えるのかと疑問で、Twitterで教えてもらったVixenの10cmで見ることができたという情報が頼りでした。その画像を見るとディフラクションリングが余裕で見えているので、やはりシンチレーションに依存するのかと予測はしていましたが、実際に試してみると本当にその通りでした。しかも時間とともにシンチレーションが悪化していく様子も体感することができ、こんなに状況は早く変わるんだという感想です。冬で環境が悪いはずでしたが、本当にわずかの貴重な揺れの少ない時間だったようです。

TSA-120の性能も改めて信頼できると言うことがよくわかりました。コントラスト良く見えるのも屈折ならではなのかと思います。トラペジウムの時にも同じことを言いましたが、本当にこの鏡筒手に入れて良かったです。

さて、ここから少しずつTSA-120と使った撮影に入っていこうと思います。乞うご期待。