今話題のTopaz DeNoise AIをいくつか試してみました。少しクセのあるソフトで、相性の良い画像はものすごいノイズの改善が見られますが、合わないものは逆にノイズを増やしたりするようです。大雑把に言うと、ノイズだらけのものはキャパシティーを超えるようでノイズが残りますが、そこそこ気合を入れて処理をして、最後に残ったノイズを取るといったケースが得意なようです。

今回挙げるのはその中でも比較的成功した方のものです。この中には最初失敗して、その後うまくいったのも含まれてます。


オリオン大星雲

先日のAZ-GTiの経緯台モードで撮影した、初心者の撮影レベルを考えたくらいの画像に適用してみました。

まずは先の記事で出した、PixInsightとPhotoshop CCの通常の画像処理。

integration2_cut

次にTopaz DeNoise AIを適用したもの。

integration2_cut-denoise_DN

ザラザラ感はなくなるのに、ディテールがほとんど失われていません。むしろシャープさが増しているような感じです。DeNoiseすごいです。引き出せていない引き出しを開け切るような感覚です。

もう一つ、同じ元画像からの再処理です。ちょっと飛んでしまっているところもありますが、後でノイズが消せることを前提に、無理して最初から炙り出して、後からノイズを消した例です。

integration_cut2

結構見えにくいレベルの分子雲も出てしまっています。DeNoiseがあることを考慮した画像処理で進めると、まだまだ引き出す余地はあった言うことですかね。


6Dで初めて撮った星雲: 馬頭星雲と燃える木

調子に乗って、過去画像にも適用してみました。昔星マスクのテストで処理したEOS 6Dでほぼ初めて撮影した馬頭星雲です。まず下のが、当時処理した画像です。今見るとたくさんアラがありますが、その時は十分満足していました。

HORSE_7c_20171128-00h09m_x34_kb_masked_PS_photo_ps

スタートは、上の絵になる前の加工途中の元ファイルで、ステライメージでスタックして、デジタル現像でストレッチくらいまで処理し終えたところの画像です。以前はここからPhotoshopで星マスクを作りそのままPhotoshopで画像処理しました。

今回は強力な星マスクとしてStarNet++、ノイズ軽減にTopaz DeNoiseと、ツールが進化しています。あと、まあ、画像処理の腕もそれなりに進展はしているでしょう。と信じて、どんどん進めます。

そもそも、DeNoiseで後からある程度ノイズが軽減できるからと思い、処理途中に多少ノイジーになったとしてもあまり気にせず、むしろ分子雲とかを出す方向で進めます。今思うとカブリが残っている画像(かなりあぶり出せたのでやっと気づくことができた、当時は多分気づきもしなかったと思われます)なので、PixInsightのDBEを掛ければさらに良くなる気もしますが、とりあえず気にせずにそのままで進めます。

途中一旦処理を停止しました。ノイズが大きいためにDeNoiseでも処理しきれなかったのです。ポツポツになってしまいます。そこで、PhotoshopのDfineで一旦ノイズを軽減してみました。するとDeNoiseでもうまく処理できるようになりました。シャープさも十分に復元して、特に燃える木のところなんかは以前処理したものより解像度ははるかに増しています。既存のノイズ除去ツールとの併用もうまく使えばより効果的に処理することができそうです。

と、できた画像がこちら。

HORSE_LIGHT_6D_180s_3200_+7cc_20171128-00h09m41s_x34_SNP_star_ok

うーん、2年くらいたって多少はいろんな技術が上がっているとはいえ、あまりに違いすぎます。本当に同じ素材かと思いたくなるくらいです。ちょっとやりすぎの感もありますが、テストなのでまあよしとします。

これでも2年前はマスク処理が初めてうまくいったと、そこそこ満足していたんですよ。特にStarNet++との組み合わせは相当いいです。恒星をなくした画像を見ると、恒星を抜いたところの跡がいつも結構汚いのですが、それもある程度緩和してくれます。まだまだ元の画像には処理し損ねている余地が残っていたんだということを思い知らされました。


昨年末撮った魔女の横顔

馬頭星雲は2年前のものだったので、流石に技術に差がありすぎました。では、つい最近、年末に撮影し画像処理した魔女の横顔はどうでしょうか?まずは当時の元画像です。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_mask_all2a_cut

自宅からノーフィルターで撮影したもので、思ったより出るものだと自分なり満足していました。でもスターリンクでしょうか、たくさんの衛星痕と、バンディングノイズに悩まされて背景を少し暗く抑えています。これをDeNoiseで処理することを前提に前に戻って画像処理します。

スタートはPixInsightで処理しStarNet++で星雲部分と恒星部分に分けたところから始めます。DeNoiseはバンディングノイズもかなり軽減してくれます。それでもこの時のノイズは、特に衛星痕が酷かったらしく、完全に除去することはできませんでした。結果はというと、バンディングノイズが軽減できた分だけ背景もよりあぶり出せた感じです。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_DN-denoise_cut

でもよく見ると、魔女の部分のディテールは失われてしまっています。これはDeNoiseのせいというよりも、かけている時間が10分の1くらいで、ディテールを出す手間を惜しんでしまったからだと思います(というか、どうやって出したかすっかり忘れてしまった...。よく出してたなと思います。)。

それでも背景の分子雲に関しては、十分な成果は出るようです。ノイズが目立ってあえて押さえていたところを、やっと解放できるような感覚がいいです。当然ですが、一つ上の馬頭の改善と比べると2年間分の技術が上がっている分、絞り出せる余地もある程度少なくなっています。馬頭のときほどは差が出ません。

これらのことから、DeNoiseをうまく使ってノイズ除去された仕上がり画像だけ見ると、画像処理の上手い人と下手な人の差が分かりにくくなるということを示唆しています。うまい人は油断できなくなり、初心者は逆にチャンスとなりますね。


先日の太陽のプロミネンスにSharpn AIを適用

さらに、先日3nmのHαフィルターでコントラストが上がった画像

15_45_23_lapl4_ap1555_IP2_color_cut

を、DeNoise AIではなく、今度はTopaz製の別のソフト「Sharpen AI」で再処理してみました。注目したのはプロミネンスとスピキュールのみで、光彩面は無視します。さらに差がわかりやすいようにモノクロにしています。上のカラー画像でも十分に出ていると思っていましたが、処理すると遥かに鮮明になります。

15_45_23_lapl4_ap1555_IP2_SAI_cut

もうスピキュールがトキトキ(すみません、名古屋弁です)ですね。Sharpenも十分なパフォーマンスを示してくれます。ここまで情報が入っていたのかと思えるくらいです。ただしここまで出てくると、擬線もいくつか出ているのではと思います。今回はテストなので見栄えだけ気にしていますので、ご了承ください。

Sharpen AIの方は「Sharpen」「Stabilize」「Focus」の3つのモードがあって、だんだん強くなるようですが、カラー画像で試すと偽色が出ることがあって、取り合えず「Sharpen」のみが使えています。ノイズキャンセルもDeNoiseの方が強力なようです。どうもお互いに、名前を冠していない機能は制限されたようなものを搭載しているような感触です。処理過程でいうと、DeNoiseの方にもシャープ機能はついているし、Sharpenにもノイズキャンセル機能はついています。確かに少しだけ違うかもしれませんが、根本的にはあまり大きな差はないように思えます。


まとめ

一言で言うと、やはりDeNoise AIもSharpen AIもすごい。最後に処理するだけでもいいのですが、あらかじめ後でノイズが消せること前提で画像処理を進めると、途中でかなり思い切った炙り出しができます。StarNet++やDfineなどと組み合わせて使うのも、さらに効果的になるのかと思います。

その一方やりすぎると、ここは違うだろうと言う模様が出てくることもあります。例えばHIROPONさんが以前指摘していたように、縞状のノイズはさらに縞を拡大する場合があります。今回の画像にもそういったものが少し残って(例としてあえて残して)います。例えば馬頭星雲の馬の右側の縞とかです。

こう言った簡易なツールが出てくるのは個人的には歓迎です。特に初心者にとってはノイズの処理は相当敷居が高いはずです。このツールは有料になりますが、かなり初心者の画像処理の負担を軽減してくれると思います。

また、天文マニアにとっても、やはりノイズには常に悩まされるので、このようにディテールを壊さずにノイズを軽減してくれるツールはとても助けになります。これまでもいろいろノイズ除去に関するツールは使ってきましたが、いまのところこのTopazのDenoiseは最強に近いと思います。

ただ、月や、惑星など、正確さを求めて丁寧にやっている方たちには、こう言った処理ツールは心配のタネというのも理解ができます。偽の情報が出てくる可能性は否めません。

私のようなとりあえず綺麗に見えればいいというレベルでは、腕の無さを補完してくれるありがたいツールです。使うべきところと使わない方がいいところを、うまく分けていけばいいのではないかと思います。

これまでの天体画像も様々な画像処理テクニックの恩恵を受けています。これからもっとすごい技術が出てくるかもしれません。新しい技術だからと頑なにならずに、柔軟に受け入れていけばいいのかと思います。