前回の、3.5nm Hαフィルターがブロッキングフィルターとして使えるかの理論編の続きで、実際に撮影してみた実践編の結果です。


注  意

今回の使用法はPST、そして3.5nm Hαフィルターも含めて、本来想定される使用方法とは大きく異なります。この記事の目的は、決してこの使用方法を推奨するわけではなく、あくまで可能性を探る目的として、テスト的に試すものです。もし、この記事を見て追試や似たような方式を試される方がいたとして、何かトラブルになったとしても、本ブログは何の責任も負うことはできません。また、試験中に使用されるフィルターを提供して頂いた国際光器さんにも、一切の責任はありません。もし試される場合は、くれぐれも自己責任の範囲内でお願いいたします。

また、安全にはくれぐれも気をつけてください。一般的に太陽観察は危険を伴います。太陽はその強力な光源のために、直接、またはレンズを通して見ると、最悪失明の恐れがあります。少なくとも私はPSTの改造後、今回のテストも含めて一切眼視では見ていません。太陽像を確認する場合は、必ずカメラで撮影するようにしています。万が一、フィルターが割れていたなどの事故もあり得ます。カメラだけならば物の事故で終わりますが、目の場合は取り返しがつかないことがあります。

繰り返しますが、安全には最新の注意を払い、くれぐれも気をつけて、あくまで自己責任の範囲内でお願いします。


それではここからが今回の記事になります。

実際に3.5nm HαフィルターをBFの代わりで使って撮影してみる

そもそも、なんで10月の小海で3.5nm Hαフィルターを受け取って、11月には撮影していて、それでこんな時期の記事になったかというと、実はあまりいい結果がでなくて記事自体がお蔵入りになりかけていたからです。

昨年11月のある日、晴れていたので早速のテスト。とりあえず、これまで使っていたPSTを久しぶりに取り出してきて動作確認をします。そもそもずーっと太陽は停滞期。昨年4月の黒点以降、イマイチ盛り上がりに欠けます。なのでこの日も黒点はもちろん、プロミネンスもほとんど何もない状況。

撮影してみて、特に10cmPST自身動作に問題はなく、光彩面の模様は普通に見えます。この像を基準とします。下はBFはオリジナルのままで実際に撮影した画像で、撮影後画像処理をしたものです。

2019-11-04-0535_5-Capture_lapl5_ap2568_IP
BF換装前のオリジナルの状態。これを基準にします。

基本的にはSharpCapで撮影して、Registaxでスタック、ImPPGで模様を出します。本来はここからPhotoshopでフラット補正やカラー化、トリミングなどしますが、今回は比較だけのためImPPGで止めておきます。

さて、肝心のBFを3.5nm Hαフィルターで置き換えた場合です。まず、そもそもBFがアイピース止め口と一体になっているので、BFをを外してしまうとアイピースやカメラをきちんと固定することができません。今回の場合は仕方ないので、マスキングテープを利用して仮止めします。

IMG_8581

固定方法は雑ですが、とりあえず撮像を見ることはできます。ピントも普通に出すことができました。

まず、撮影していてPCの画面を見て思ったのが「明るい」でした。これは当然で、元々のBFよりも波長透過域が広いので明るくなるのは正しいです。でも模様が明らかに少ない気が。Registax直後の画像がこれです。

2019-11-04-0659_0-Capture_lapl5_ap1306

というか、ほぼのっぺらぼうです。この時点では「あー、これはダメかな」と思っていました。その後、ImPPGで模様だし。その際ガンマを相当下げたらやっと少し見えてきました。

2019-11-04-0659_0-Capture_lapl5_ap1306_IP

なんとか光彩面の模様も見えたか?と言ったレベルでしょうか。明るさで隠れていた情報は画像処理で多少引き出せたのかと思います。それでも元のオリジナルのBFに遥かに劣るように見えます。

少し詳しく見ると、分解能に関してはそれほど悪いとも思えない一方、コントラストは明らかに悪いです。エタロン自身は同じなので分解能はそこである程度決まってしまい、その後出てくる余分な光があるかどうかでコントラストが決まってしまうような気がします。

それでもさすがにこのレベルだと撮影としては使い物になりません。ただ、元のBFでの画像も意外なほどボケボケなので、たまたまその日がシンチレーションが悪かったということもあるかと思います。一応その週末に確認のために、再度撮影をしてみました。

1週間後に撮ったオリジナルBFでの太陽と

2019-11-09-0239_2-Capture_lapl5_ap1950_IP

BFを3.5nm Hαフィルターで取り替えた場合の画像です。

2019-11-09-0235_6-Capture_lapl5_ap2085_IP

残念ながらこの日はさらに差が広がってしまいました。と、ここら辺で今回の取り組みは諦めとなりました。


結論とまとめ、そして今後の展開

まあ、結論としては「3.5nm Hαフィルターをブロッキングフィルターとして使うと、かろうじて像をあぶり出すが、実際の撮影レベルで使うには厳しい」と言ったところでしょうか。うーん、せっかく面白いアイデアだと思ったのに、非常に残念です。とりあえずBFの「代わりとして」使うことは諦めることにします。もしこれがいい成果を出せたなら、BFを安価に大口径化できたはずなのですが。

もし興味があって追試される方がいるかもしれませんが、BFを抜いた状態になりますので、安全にはくれぐれも気をつけてください。今回の散々な結果を見て試したいと思われる方はほとんどいらっしゃらないとは思いますが。

ところで、そもそもなんで11月にお蔵入り状態だった記事が、2月のこの時期に突然復活したのか?それはつい最近3.5nm Hαフィルターを使って進展があったからです。ここでクイズです。

Baader製3.5nm Hαフィルターを使って確認できた
進展とはいったいどんなものだったでしょうか?

何か思いついた方はコメント欄に書いてみてください。全然難しいことではありません、むしろ単純です。ヒントは、近頃凝っている電視観望でのフィルター使用の経験が生きているということです。


起死回生の案の実際は、次の最終回の記事で。乞うご期待。