一つ気にになっていることがありました。この間購入したPENTRAXのTAKUMAR LENS、言わずとしれたオールドレンズです。このようなオールドレンズにはアトムレンズとかトリウムレンズなどとも呼ばれ、性能の向上を図ったレンズの可能性があります。前回の撮影で思ったよりも収差も少なかったので、もしかしたらアトムレンズなのではと思い調べてみました。
アトムレンズとはレンズ基材に微量ながらも放射性物質である酸化トリウムを混ぜ、高屈折かつ低分散を実現させ、現在のフローライトレンズと同じような効果を狙ったものです。屈折率が高いとその分同じ厚さでもより光を曲げることができるため、レンズを薄くすることができその分湾曲を防ぐことなどができるというわけです。
ただ一つ、欠点があって、古いアトムレンズは覗いてみると黄変とか言って、劣化で黄色く見えるなどの特徴があるそうです。この黄変は製作後数年で出てくるそうで、アトムレンズが生きのこらなかった理由の一つが、黄変が短期間で出てきたことがあると言われているようです。黄変は屈折率などには関係ないので、ホワイトバランスが崩れることや、透過率が下がるなどの弊害はありますが、星撮りでは後の画像処理が入るために、それほど大きな問題にはならないと考えられます。
今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4とは別に、NIKONのオールドレンズを50mm/f1.4と35mm/f1.4の2本持っていて、こちらもアトムレンズの可能性があります。実際のところ、どれがアトムレンズに相当するのかよくわからなかったので、今回この4本を市販の簡易放射線カウンターで測定してみることにしました。
測定の前に、黄変の具合を見てみます。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4になります。
上のNIKKOR2本は目で見ると明らかに黄色くなっています。特に35mmの方はかなりはっきりわかる黄変です。50mmのほうは、写真で見るとわかりにくくなってしまっていますが、目で見ると誤差の範囲でなく黄色いです。今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4の2本は目で見る限り黄変のような兆候は見られませんでした。
実際の測定結果は以下のようになります。上がレンズのフロント側、下がレンズのカメラ側になります。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4です。出来るだけセンサー位置をレンズ中心になるようにおきました。木の棒が置いてあるのはレンズ面にセンサーが触れるのを防ぐためです。
まずは今回購入したPENTAXの2本ですが、レンズの上に乗せて測ってみても表示は0.1μSv/h程度と、あまり普通の場所での値と変わりません。NIKKORの50mmも同様です。ところが、NIKKORの35mmに近づけた途端に0.3とかに跳ね上がりました。レンズの前で測ると最終的に2μSv/h程度、レンズの裏に至っては4μSv/h以上にまでなりました。
日本の年間平均自然被曝量が2mSv程度とのことなので、500時間身につけていて自然被曝量程度になります。通常使用では全く問題のないレベルです。
昔、この35mmのアトムレンズを使って、ASI294MCを取り付けて固定撮影でオリオン座付近を撮ったことがあります。
フォーサーズサイズのセンサーでも星像は4方向に伸びていっているのがわかります。今回手に入れたPENTAXの75mmの方が、フルサイズでも星像がかなりマシなので、アトムレンズが必ずしも絶対的に性能がいいというわけではなく、あくまで相対的には性能のいいレンズが作れたということでしょうか。しゃんすがあれば今一度晴れた時に試して見たいと思います。
アトムレンズの実測をしているページは探すとすぐにいくつも見つかります。それでも、NIKKORレンズにはアトムレンズは存在しないのではというページもあったり、今回の35mm f1.4がアトムレンズだという記事はありましたが、実測している記事は私が探した範囲では見つけることができませんでした。
アトムレンズは黄変だけで判断するのも難しそうです。NIKKORの35mmと50mmを比較すると明らかな差はわかりますが、単体で50mmだけを見ても黄色く見えるので、迷うかと思います。
PENAXのTAKUMARも、収差が少ないのでもしかしたらアトムレンズかもと思っていたのですが、完全に気のせいでした。やはりきちんと測定などして確かめることが大事です。今回自分で測定し色々調べてみて、実際にいつの年代のどこのメーカーのレンズがアトムレンズの可能性が高いのか、どれくらいの放射線量なのか、どのくらいの時間使っていると危険なのかの目安など、実感として納得しながらわかることが多かったです。こうやってみるとアトムレンズはかなり限られていて、古いレンズで黄変していても、アトムレンズは意外に少ないのかもしれません。
あ、それでもやはりあぷらなーとさんは持っていて、しかもきちんと実測してました。
最初の方でアトムレンズは星撮りに問題にならないと書きましたが、あぷらなーとさんによると、放射線にセンサーが反応してノイズになるとのことです。さすがあぷらなーとさんの解析です。私はまだまだこの域には程遠いです。
アトムレンズとは
アトムレンズとはレンズ基材に微量ながらも放射性物質である酸化トリウムを混ぜ、高屈折かつ低分散を実現させ、現在のフローライトレンズと同じような効果を狙ったものです。屈折率が高いとその分同じ厚さでもより光を曲げることができるため、レンズを薄くすることができその分湾曲を防ぐことなどができるというわけです。
ただ一つ、欠点があって、古いアトムレンズは覗いてみると黄変とか言って、劣化で黄色く見えるなどの特徴があるそうです。この黄変は製作後数年で出てくるそうで、アトムレンズが生きのこらなかった理由の一つが、黄変が短期間で出てきたことがあると言われているようです。黄変は屈折率などには関係ないので、ホワイトバランスが崩れることや、透過率が下がるなどの弊害はありますが、星撮りでは後の画像処理が入るために、それほど大きな問題にはならないと考えられます。
測定対象としたレンズ
今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4とは別に、NIKONのオールドレンズを50mm/f1.4と35mm/f1.4の2本持っていて、こちらもアトムレンズの可能性があります。実際のところ、どれがアトムレンズに相当するのかよくわからなかったので、今回この4本を市販の簡易放射線カウンターで測定してみることにしました。
今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4
昔手に入れたNIKKOR50mm/f1.4と35mm/f1.4
黄変の具合
測定の前に、黄変の具合を見てみます。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4になります。
上のNIKKOR2本は目で見ると明らかに黄色くなっています。特に35mmの方はかなりはっきりわかる黄変です。50mmのほうは、写真で見るとわかりにくくなってしまっていますが、目で見ると誤差の範囲でなく黄色いです。今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4の2本は目で見る限り黄変のような兆候は見られませんでした。
実際の放射線量の測定
実際の測定結果は以下のようになります。上がレンズのフロント側、下がレンズのカメラ側になります。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4です。出来るだけセンサー位置をレンズ中心になるようにおきました。木の棒が置いてあるのはレンズ面にセンサーが触れるのを防ぐためです。
レンズのフロント側。
レンズのバック側(カメラ側)
まずは今回購入したPENTAXの2本ですが、レンズの上に乗せて測ってみても表示は0.1μSv/h程度と、あまり普通の場所での値と変わりません。NIKKORの50mmも同様です。ところが、NIKKORの35mmに近づけた途端に0.3とかに跳ね上がりました。レンズの前で測ると最終的に2μSv/h程度、レンズの裏に至っては4μSv/h以上にまでなりました。
日本の年間平均自然被曝量が2mSv程度とのことなので、500時間身につけていて自然被曝量程度になります。通常使用では全く問題のないレベルです。
アトムレンズの写り具合
昔、この35mmのアトムレンズを使って、ASI294MCを取り付けて固定撮影でオリオン座付近を撮ったことがあります。
フォーサーズサイズのセンサーでも星像は4方向に伸びていっているのがわかります。今回手に入れたPENTAXの75mmの方が、フルサイズでも星像がかなりマシなので、アトムレンズが必ずしも絶対的に性能がいいというわけではなく、あくまで相対的には性能のいいレンズが作れたということでしょうか。しゃんすがあれば今一度晴れた時に試して見たいと思います。
まとめ
アトムレンズの実測をしているページは探すとすぐにいくつも見つかります。それでも、NIKKORレンズにはアトムレンズは存在しないのではというページもあったり、今回の35mm f1.4がアトムレンズだという記事はありましたが、実測している記事は私が探した範囲では見つけることができませんでした。
アトムレンズは黄変だけで判断するのも難しそうです。NIKKORの35mmと50mmを比較すると明らかな差はわかりますが、単体で50mmだけを見ても黄色く見えるので、迷うかと思います。
PENAXのTAKUMARも、収差が少ないのでもしかしたらアトムレンズかもと思っていたのですが、完全に気のせいでした。やはりきちんと測定などして確かめることが大事です。今回自分で測定し色々調べてみて、実際にいつの年代のどこのメーカーのレンズがアトムレンズの可能性が高いのか、どれくらいの放射線量なのか、どのくらいの時間使っていると危険なのかの目安など、実感として納得しながらわかることが多かったです。こうやってみるとアトムレンズはかなり限られていて、古いレンズで黄変していても、アトムレンズは意外に少ないのかもしれません。
あ、それでもやはりあぷらなーとさんは持っていて、しかもきちんと実測してました。
最初の方でアトムレンズは星撮りに問題にならないと書きましたが、あぷらなーとさんによると、放射線にセンサーが反応してノイズになるとのことです。さすがあぷらなーとさんの解析です。私はまだまだこの域には程遠いです。
コメント
コメント一覧 (11)
と思っていたのですが、有ったのですね、
オールドNIKKORを買う事は無いので、出会わないと思いますが、
PENTAXのオールドレンズはPマウントも67マウントも大量にあります。
黄変は確認していませんが、使うことも無く、売れるわけもなく・・・
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/1825321.html
あと、、自分の持っている分ではSMCタクマー105mmF2.8は放射線は測定されませんでした。
いずれも35mm用のレンズです。
私が知ってる限りでは35mm用のタクマーの50mm系ですね。ご使用のレンズは6cm×7cmをカバーするイメージサークルがあるので、中心部分のみの使用ですから余計に結果が良かったのでないでしょうか。とは言ってもオールドレンズでは中心でも青や赤のハロ巻きの出るのが多いので、優秀なんでしょうね。
私のタクマーの場合とは異なり、前玉側からも放射線が出ているのですね。酸化トリウムを含有したレンズの配置が異なるか複数枚使用されているということでしょうかねぇ。興味深いです。
私の記事では線量の数値に直接言及していないのですが、記事中の写真には数値が写っちゃっているので、補足しておきますね。
※私の測定ではsamさんの場合とは異なり、レンズ面から(撮像素子位置程度に)やや離して測定した点、測定値には(メーカー仕様を信じるならば)γ線のみではなく荷電粒子(β線)の線量も含んでいる点の2つが異なります。
NIKKORにアトムレンズがないという記述を見つけることができるのですが、やはりきちんと確かめないとわからないものですね。
PENTAXの中判なら星撮りでもそこそこ使えそうというのが前回の結果ですが、もちろん今の最新のレンズには敵わないでしょうし、使えるかどうかの基準も人それぞれかと思います。
でも大量にあるなら惜しいですね。私だったら今のデジタルで使えるかどうか片っ端から試したくなると思います。今日はこれから東京出張なので、時間があればまたキタムラ覗くかもしれません。
やはり測定していますか!どうもアトムレンズは焦点距離35とか50mm付近の標準レンズに近いものがほとんどみたいですね。これは標準レンズで試して他に応用する前に短期で消えていった技術だからでしょうか。
今でこそ危険かもしれないという認識ですが、当時はそこまでの認識はなかったのではないかと思います。そうでなければ製品化などされないですからね。それよりも短期で製造中止になったのは黄変の方が問題だったのではないかと。
やはりアトムレンズが採用されたのは50mmとかの標準に近いレンズですよね。他の焦点距離でも、もし存在するのならですが、アトムレンズの効果を検証してみたい気もしています。
PENTAXの6x7の75mmですが、なんであんまりハロが出なかったのかはもう少し検証する必要があるかもしれません。そもそも撮って出しjpegが赤にかなり寄っていたので、赤ハロが見えにくかっただけかもしれません。でも少なくとも青ハロはほとんど確認されなかったので優秀なのかなと。4隅は少し歪みますが、私の数少ない経験と比べるとFS-60CBに純粋レデューサをつけたのと同等くらいだと思うので、まあ十分優秀なのか思います。別焦点距離でもう何本か欲しいです。
線量の値を出すかどうかは迷ったのですが、やはり簡易測定で誤差は大きいとしても実際にどれくらいの量なのかは、一例として示しておいた方がいいと判断しました。あるページでは6μSv/hが測定されたという記述もあるので、誤差があるにしても数μSv/hは現実に出ていると考えることができます。製品として存在した事実、また今もなお中古市場には出回っている事実もあるので、オーダーレベルでもある程度定量的な情報を共有することで、あくまで自己的にですが使用時間に関する制限みたいなものも考えることができるのではと思います。
測定器の仕様についてはあまり調べていませんでした。またマニュアルとか読み直してみようと思います。
現在、鉛ガラスはほぼ同じ光学特性をもつエコガラスと言う鉛フリーの代替光学ガラスに置き換えられています。鉛ですら代替が可能になっているので、昔行われたトリウムフリーやカドミウムフリーで開発されたガラスも、比較したことはないけど、多分同等の光学特性をもつガラスになっているはずです。
そう考えれば、アトムレンズが優れた性能をもっている、というのはただの伝説なんじゃないかなぁという気がしています。(現に優れているのかもしれないが今のガラスで同様の設計をすればできるはず、という意味で)。アトムレンズが出せなくなった直後は多分性能が落ちたんでしょうが・・・。
なお、昔の表を見てみると、トリウム含有ガラスは光学性能以外に耐候性が特に優れているようでした。
今や原料の酸化トリウムは少量でも倉庫から見つかるだけで大変な騒ぎになるので、当時規制が入ってからは使用不能状態になったはずです。
トリウムはジルコニウムにも不純物として入っていて、ジルコニアボールなんかは結構放射線が検出されます。ジルコニア包丁なんかは結構純度が高そうなので検出器で反応はしないかなぁ。
今は技術が進んでいるので、フローライトとか代替品はたくさんあるのかと思います。今となってはもしかしたら高性能のレンズを安価で手にいれることができるということくらいでしょうか。それよりも中判のレンズが安価なほうがメリットなのかもしれません。
でも懲りずに一昨日またPENTAXの6x7の105mm f/2.4を手に入れてしまいました。黄変もかなり進んでいて、こちらはアトムレンズのようです。同じ焦点距離ではないのですが、これで一度撮影してみて、性能がどうなのか見てみたいと思っています。
ジルコニア包丁なんてものもあるんですね。ジルコニウムボールでもトリウムを除去してあると謳っているものもあるみたいなのですが、そうでないのもあるかと思うので検出されるのかもしれません。宝石のジルコニアもやはり不純物を含みますが、いずれも(当然ですが)健康被害が出るレベルでは全くないようです。