初の中判レンズ
先日秋葉原のキタムラに寄った際に、ちょっと面白いオールドレンズを手に入れました。PENTAXの6x7マウントのSMC TAKUMARレンズの75mm/f4.5と200mm/f4を2本まとめ買いです。値段は2本合わせても1諭吉さんちょっと。格安です。
今回の購入の狙いは単純で、中判レンズのような大きな面積で使われていたならば、現在のフルサイズカメラで使えばレンズの中心像だけを使うことになり、周辺減光なども少ないのではないかというものです。
帰りの新幹線の中で早速物色
購入時、店頭でレンズを覗かせてもらったら、特に黄変などもなく、外観もきれい。少しゴミが見えたのですが、ブロアーを貸してもらって吹いたらほとんどなくなったので全く問題なし。即買いです。でも実は75mmの方が200mmに比べて3倍近い値段だったんです。なのでむしろ200mmはおまけです。
実はオールドカメラレンズについてはあまり詳しくないのですが、6x7は55mm × 70mmに相当し中判カメラに分類されるとのこと。現在のデジカメの主流のフルサイズの24mm x 35mmと比べても、辺で倍以上、面積だと4倍以上大きな像を写すことができるレンズだったようです。調べてみると、アサヒペンタックス6×7(1969年7月発売)シリーズ用のレンズで、今回購入したモデルは1975年には少なくとも存在していたみたいです。実際いつ作られたものかはわかりませんが、モデルとしては45年ほど前で、私がまだ鼻たれ小僧だった頃です。
さてこれらのレンズ、実際には写りはどうなのでしょうか?半世紀近くたった星の撮影で使い物になるのでしょうか?
機材と撮影条件
手持ちのEOS 6DにPENTAX 6x7レンズを取り付けるために、K&Fというメーカーの変換アダプターを購入しました。アマゾンですぐに手にはいります。このアダプター取り付ける時は多少硬いですが、無理してはめ込むほどではありません。取り付け後のガタですが、レンズが回転する方向に少しあります。回転方向なので、撮影には影響はないと思っていいでしょう。それ以外の方向は上下左右に触っても全く揺れることはありません。
実は一時期、同じ中判のMAMIYAレンズで同様のことを試そうとしたのですが、変換アダプターが高すぎて断念したことがあります。なのである意味、PENTAXでのリベンジということになります。
今回はまず75mmの方を試してみました。
取り付けて実感したのですが、とりあえずまあ、でかいレンズです。
さて、撮影機材です。
- カメラ: Canon EOS 6D HIKIR改造
- レンズ: ASAHI PENTAX Super-Muti-Coated TAKUMAR/6x7 75mm f4.5
- 撮影条件: ISO1600、露光時間90秒 x 99枚、総露光時間2時間28分30秒
- 赤道儀: Celestron CGEM II
- 撮影場所: 富山市自宅
- 撮影日時: 2019年11月9日午前2時43 - 5時14分
- 撮影枚数: 99枚
四隅の星像
まずは試しに一枚、JPG撮って出しです。
次に、四隅を見てみます。。
- 拡大して見てみると、中心像はほぼ丸。やはり4隅が僅かに歪みますが、私的には十分許容範囲です。いや、むしろ購入した値段が値段なのでこれなら文句はないでしょう。
- 周辺減光もさすが中判、ほとんどフラットに近いです。右側が暗く見えますが、これは撮影時右の方が天頂に近く、実際の空がより暗いからです。
- 気になっていたハロですが、この時点ではほとんど確認できません。これは期待以上でした。画像処理が進むともっと明らかになっていくと思います。
- 気になったのが、無限遠が出ているかです。焦点リングを無限の方向に回すと、星像は小さくなっていきます。かなり小さくなったのですが、最小を超えて大きくなるところまでは確認することができませんでした。
- また、絞りは横にマニュアルかオートを選べるスイッチがあるのですが、マニュアルの時のみ絞りを調整できます。問題は手を離すと勝手にオートになってしまうので実質絞りは使えず、いつもf4.5のままです。この仕組みはよくわからなかったです。何かテープとかで固定するしかないのでしょうか?
オリオン座周辺の撮影
遡ること、この撮影の2日前の11月6日、本当に久しぶりに夜に晴れたので、同画角での撮影を敢行しました。月の沈む(明けて7日の)0時半頃から薄明まで、約5時間。平日なのでセットアップして撮影開始したらあとは寝ていましたが、朝起きて片付けがてら画像を見てみると、撮影開始ほぼ直後から雲が出始め、全枚数の8-9割方、どこかに雲がかかっていました。画像処理までしたのですがさすがに無理があったので、再度11月8日の金曜(実際には明けて土曜)の夜中からリベンジ撮影です。
この日は月が沈むのが3時近くと遅いのですが、空は快晴。次の日は休みなので、本当は暗いところまで遠征に行っても良かったのですが、最近近所でクマに襲われた事件を連日聞いているので、妻から一人遠征のストップが出て結局自宅での撮影になりました。まあ、まだ初機材のテスト撮影なので自宅で十分でしょう。星は瞬いていますが、昼間も立山がよく見えていたので、透明度は良いようです。
午前2時すぎ、機材を準備し始めますが、前々日と全く同じセットアップなので楽なもんです。SharpCapで極軸もきちんと取っても、2時40分頃には撮影開始となりました。撮影開始後はもう眠いので、そのまま就寝です。
画像処理と結果
朝起きて機材を片付け、画像を無事に回収してチェック。全ての枚数で綺麗に撮れていることがわかりました。そのままフラット、バイアス、ダークを新たに撮影し、画像処理に入ります。フラットはiPadのColor Screenというソフトで白色を出し、iso100, 100msで50枚撮影、バイアスは1/4000秒でiso1600で100枚撮影、ダークは同じiso1600、90秒露光で50枚撮影です。
基本的に処理ソフトはPixInsight。Batch Processingでほぼ自動処理。その後、DBEで残ったカブリ除去とPCCで色合わせ。適当にストレッチしてからPhotoshop CCに引き渡します。
今回は途中、最近はやりの星を除去できるStarnet++を使いました。ここからコマンドライン版のMac版をダウンロードして展開。あとは処理したい画像を同じフォルダにコピーしてきて、
./rgb_starnet++ ファイル名.tiff
とやるだけです。処理時間はきっちりと計っていませんでしたが、15分程度だったでしょうか?出来上がった画像が以下です。かなり綺麗に星雲のみ分離できます。
そこから元画像との差分で星だけ取り出したものがこちら。
M42の一部のみ残っていますが、まあ優秀なものです。
その後、Photoshop CCで処理しましたが、背景と恒星が分かれているので処理が随分楽です。懸案だったハロはほとんど出てきませんでした。結果が以下のようになります。
目的だったIC2188魔女の横顔星雲も、Sh2-264エンゼルフィッシュ星雲も綺麗に出ています。バーナードループ は電視観望とかでうっすら見たことがありますが、今回初めて写すことができました。実は魔女の横顔もエンゼルフィッシュも初めて撮影しました。さすがにこの領域は盛り沢山ですね。
あ、初と言いましたが、実はむかーし三脚固定撮影でバーナードループ を試したことがありますが、あれは5秒 x 100枚で完全に遊びです。今回は、やっとまともな撮影となりました。
中判レンズを使ってみて
うーん、PENTAXの中判レンズでのテスト撮影のつもりが自分では結構というか、かなり満足のいく仕上がりになってしまいました。狙い通り周辺減光が少ないことと、ハロがほとんどなかったことが幸いでした。
200mmも早めに使ってみたいです。手持ちのFS-60CBにレデューサをつけると255mmです。それより少し画角が広いくらいです。
実はもう一本、ちょっと前にNIKKORの135mmのオールドレンズもジャンクで購入したのですが、こちらもまだ未テストです。
あと、Starnet++がなかなかいい仕事をしてくれるので、あぶり出しがしやすいです。自宅のニワトリで光害フィルターもなしでこれだけ出せるのなら十分な満足です。
今年は晴れている日が少ないので久しぶりの撮影でしたが、十分に楽しむことができました。
コメント
コメント一覧 (6)
そうなんですよね。。フィルム時代はハーフを除き35ミリフルサイズは最小型フォーマットだったんですよ。。4×5まで仕事で使ってましたが今思い返すとでかいネガでしたね。中判はセンチですが大判はインチなので(笑)8×10エイトバイテンと読みました。などはフィルム詰めるのが大変で、、、裏表間違うと勝手に裏面照射で裏ネガになるし。。。(笑)
ちなみに、ロクヨンゴ、ロクロク、ロクナナ、シノゴ。。。ここまで日本語なのに何故その上が英語読みなのかいまだに謎です(笑)古い中判レンズですとマミヤのロクナナ用アポを除けばタクマーが優秀な気がします。ハッセル用やローライ用のツアイスでもデジタルだとあまりよろしくないかと。。日本のレンズ設計は収差を取る方向ですが、海外のはわざと残すんですよね。かつて我々はそれをレンズの味と呼びました(笑)
このカメラは「自動絞り」なので、シャッターを切った瞬間だけ絞られます(構図を決め、ピントを合わせる時は明るい視野のまま)。でもそれだと「被写界深度」の確認ができないので、根元の「自動絞り解除レバー」をマニュアル方向に動かして、実際に絞ってみるのです。この状態でロックするには、レバーを持ち上げ気味にしてズラします。元に戻す時は押し下げます。
67のボディで使う時はこの使い方ですが、他のカメラでマウントアダプターをかませると「実絞り測光」を行う必要が生じます。その際にはレバーをロックしたままにして、手動で絞ります。
お使いのレンズでも、持ち上げてズラして見てください。
私は昔のカメラのことをほとんど知らないので、こういったコメントは大変ありがたいです。
日本は昔から収差を減らす方向というのはなんかわかる気がします。収差が残ることを味とかいうんですね。星でなかったら個性とかになるので多分正しいのですね。でもやはり星の場合は収差はないに越したことはないです。
テストだったので別に中判ならどこのものでもよかったのですが、Pentaxはアダプターと合わせても入手しやすかったのでたまたまです。でも結果としては良かったのかもしれません。
なるほど、やっとあの絞りの意味がわかりました。
シャッターを切った時だけ絞りが入るとは。確かにレンズのカメラ側の面につまみが出ていて、それを触ると絞りも動いたのですが、今やっとその意味がわかりました。
マニュアルの絞りスイッチも理解できました。確かにファインダーをのぞいた時に絞りが欲しい時もあるので、それを測定するためというわけですね。
というわけで、どうもありがとうございました。
昔のレンズは色々な意味で新鮮です。
まあ、実際のところ、星と星雲は、地球からの距離が全然異なるので、分けて処理しても許される気がします。
マスク処理の究極のような感じです。FacebookでSDさんも使っていると言っていました。
星雲を楽に炙り出せるようになるのはいいのですが、再び合成する時の恒星の境目が気になるのに注意でしょうか。あと、全然分離できないケースがあるようです。長焦点のM57で試した時ですが、どうも恒星があまりはっきりしていないようなものは全くダメみたいです。