原村星まつり直前、なぜこんな時に!?と生えてきたVixenのVISACことVC200L。梅雨の間ずっと我慢していたのですが、最後の最後でポチリヌス菌に感染してしまったようです。原村星まつりであまり買い物が進まなかった理由の一つがこれです。予算が厳しかったのです。




購入の理由

とにかくやりたいのがDSO(Deep Sky Object)、すなわち系外銀河などの長焦点での撮影です。長焦点でシャープな星像を撮影することができる鏡筒をずっと探していました。ラッキーイメージももう少し試したくて、短時間露光で揺れを排除して星像を絞る時に、シャープでないと意味がないという理由もあります。安価で、ハズレでなさそうなVC200Lが出るのをずっと待っていました。


手持ちのシュミカセはダメなの?

手持ちの機器のうち、長焦点に相当する鏡筒が口径20cmのCelestronのC8と、口径25cmのMEADEのLX200-25のF6.3仕様のもので、いずれもシュミカセ(シュミットカセグレン) です。シュミカセはシュミット補正板を入れた、カセグレン式の、鏡筒の長さを短くしたもので、重量も大したことなくコンパクトで扱いやすく、広く出回っている鏡筒です。

オリジナルのシュミットカメラは、球面収差とコマ収差と非点収差を解決しているいわゆるスチグマート条件を満たしていて性能的に有利である一方、鏡筒が巨大になる、撮像面を湾曲させなければならないなどの扱いにくさもあるおかげで、市販品としてはコンパクトなシュミットカセグレン式の方が圧倒的に数が出ています。一方、そのコンパクトさを実現するために、性能的に必ず妥協をしていて、スポットダイアグラムも星像が肥大していて、比較するとその違いはすぐにわかります。特に四隅に出てくるコマ収差は非常に目立つため、シュミカセの撮影は惑星などの中心像を生かすものが主となっています。

最近ずっと触ってきたLX-200-25ですが、スポットダイアグラムがあまり出回っていないのではっきりとはわからないのですが、F値が6.3と小さいこともあり、コマ収差が大きいです。コマ収差はF値の-2乗で効いてくるので、F10のC8に比べコマ収差は(10/6.8)^2 = 2.5倍にもなります。星像が単純に2.5倍伸びてしまいます。そのため撮影する場合にはコマコレクター が必須なのですが、質の良いものはコマコレクターだけでも高額なので、私はバーダーのMCPP MarkIIIを使っています。これはF値が6までしか対応していないのですが、F6.3のMEADEに入れてもある程度の改善があることがわかっています。

コマはある程度許容範囲に収まるのですが、もう一つの問題が片ボケ。光軸調整をしても、どうしてもいつも同じ側の片ボケが残ってしまいます。主鏡の向きがずれていると考えられるのですが、こちらはいつは直したいと思っていますが、全バラに近い形になるはずなので今は躊躇しています。

あとMEADEのシュミカセは少し重いこと。同サイズ(実際には少し違いますが)のセレストロンと比べると、無視できないくらいの重さの違いがあります。手持ちの赤道儀がCGEM IIなのですが、撮影をしようとすると鏡筒が大きく重いので慣性モーメントが大きくなってしまい、共振周波数が下がり揺れの振幅が大きくなるので、大きさとしてはギリギリか本当はもう少し頑丈な赤道儀が欲しいところなのです。

一方手持ちのC8は軽くて良いのですが、やはりスポットダイアグラムを見ると、シュミカセゆえどうしても星像はボテッとなってしまうのは避けられません。星像を改善するために、接眼側に補正レンズを入れたEdge HD800という同じ口径20cmのものが販売されていて、こちらも購入の候補の一つでした。


VISAC以外の候補

VC200L以外ではHD800が第一候補で、一時は新品で購入しようと思っていた時期もありました。

他の候補として、特に反射にこだわっているわけではなく、屈折でも構いません。スパイダーの光条線があまり好きでないので、屈折か、反射でも副鏡がスパイダーでなく補正板で固定されているものを探していました。でも屈折で大口径で長焦点でスポットダイアグラムが小さいのは、これまた値段的に全く手が出ないので、現実的な候補はなかなかありません。

他の反射では、ミューロンのCRC化されたものもかなり魅力なのですが、こちらも予算がグッとあがります。究極的にはCCA-250とかなんでしょうが、こちらは冗談でなく金額の桁があがり、今の財政では全く手が出ません。

安価に、自分の納得する範囲で満足できる鏡筒をずっと探していました。その一つの候補がVISACだったというわけです。


VISACにした理由

VISACを選んだ理由は、ひとえにものすごく鋭いスポットダイアグラムに期待したからです。Vixen独自の6次非球面の主鏡を採用したカタディオプトリック鏡筒で、バッフル内に3枚のフィールド補正レンズを内蔵、写野全域にわたってコマ収差・球面収差・像面湾曲を極限まで補正、写野周辺で星像15µmを達成しているそうです。このように宣伝文句だけ読んでいたらものすごく魅力的なのですが、悪い噂も多少聞きます。
  • 設計はものすごく良いのに、主鏡の精度が出ていなかったり、メカ的に弱かったり精度が出ていなかったりで、その設計思想を活かしきれていない。
  • 個体差で性能にばらつきがある。
などです。設計からも各種精度が必要そうなことは想像できるので、なかなか大変そうな機器なのかと思います。メーカーの方でもサポートは大変なのでしょう。

また、星像が悪かったとしても調整機構が隠されていて、ユーザーは基本的に調整することはしない方針のようです。その扱いにくさのせいか、中古で比較的安価で出回ることも多いです。今回のものは、ベルトバンドがついている古いものでしたが、専用アルミケースもついていたため収納や持ち運びにも便利で、適当な業者に回ったものではなく、天文が好きな人が昔の機材を手放したと判断。オークションで少し値が上がっても落とそうと狙っていました。

試したいのは、
  1. 設計の鋭いスポットダイアグラムは、シュミカセのボテっとした(と私は少なくとも思い込んでいる)星像と比較して本当にシャープな星像を結ぶのか?
  2. 調整機構がないが、もし星像がダメなら調整できるのか試してみたい。
といったところです。特に調整は全バラでも構わないと思っています。


いよいよファーストライト

さて、実際のフーストライトです。梅雨が明けてもなかなか晴れなかったのですが、昨晩22時過ぎは夕方に一面を覆っていた雲もすっかり消えました。上限過ぎの月も残っているので、撮影もあまりする気にならなく、むしろ絶好のテスト日和です。今回のファーストライトは自宅の庭で試します。架台はCGEM II。MEADEと比べてかなり軽いので、赤道儀としての強度は十分です。

IMG_7751

最初にアイピースで月を見てみました。アイピースはCelestronの8-24mmのズーム式で簡易なもの。雲間からの月ですが、像は非常にシャープという印象です。月と空のエッジを見ても色収差もほとんどありません。これはもしかしたら結構期待できるのかもしれません。

ピントの範囲もそれほどシビアではありません。減速機はあった方がいいですが、なくてもなんとかなりそうです。

テストがてらASI294MC Pro(冷却はしていない)で月の動画撮影をしてみました。テストなので極軸もきちんととっていないし、カメラの向きも適当です。1000枚をスタックしたものが以下になります。

Capture_ 22_42_33_22_42_33_lapl3_ap7557_RS2

画像を見ている限り、非常にシャープで特に問題になりそうなところはありません。以前撮ったFS-60CBの画像と比べても十分な解像度が出ています。

と思っていたのですが、以前C8で撮ったアペニン山脈付近を何気に見直してみましたら、こちらの方がはるかに高解像です。

comp_C8_VISAC

理由はいくつか考えられます。C8とVISACの焦点距離は2000mmと1800mmとそれほど変わらないはずですが、まずC8の時の撮影に使ったASI178MCの一素子のサイズが小さい(2.4um)ので、解像度は上がるはずです。しかもセンサーの大きさそのもが小さいため、C8の視野の中心部だけを撮っています。今回VISACで撮ったアペニン山脈はASI294MC Proが素子サイズの大きい(4.6um)センサーで、かなり視野の端を撮ったので、不利な点があるのは理解できます。でもそれだけでは説明できないくらい、C8の方が高解像度です。まあ、結論としては今回の撮影はピントが出ていなかったのではないかと。もしかしたらピントの範囲がもっと狭いのかもしれません。ここは一度カメラなども同条件にしてもう少し検証します。


気づいたこと

最初の操作でいくつか気づいたことがあります。
  • まず、とにかく軽い。MEADE 25cmよりははるかに軽いです。C8より軽く感じたくらいですが、実際にはC8が5.6kg、VC200Lが6.9kgとVISACの方が重いです。ベルトがついていたから持ちやすいのかもしれません。
  • 上にL字の小さな架台が付いていて、1/4インチのタップが切ってあるので、極望用のCMOSカメラなども載せることができます。
  • フォーカサーが結構ゆるいので、天頂付近に向けるとカメラの重みでずり落ちてきてピントがずれてしまいます。フォーカス固定ネジもあるのでいいのですが、もう少し固くてもいいかと思います。
全体的にちょっとヤワな気がします。値段から言ったら仕方ないでしょうか。その他は今の所不満などありません。


星像はどうか?

では肝心な星像はどうでしょうか?試しに、M57周りを撮影してみました。こちらも極軸もカメラの向きも適当で、ガイドも何もしていないので、露光時間を少し伸ばすと流れてしまいます。とりあえずASI294MC Proで常温、露光1秒、ゲイン470でRAW16をtifファイルに落とし、PixInsightでオートストレッチしてjpegに落としてあります。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG


四隅の画像も載せておきます。これまで4隅250ピクセルを切り出していましたが、スターベース のタカハシ鏡筒の実写画像に準拠し、300ピクセル切り出しにし、枠線を少し細くしました。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG_8cut

露光時間わずか1秒なのでノイジーなのは仕方ないとして、これを見る限り、コマ収差はほとんど出ていないし、四隅の星像も悪くありません。真ん中はM57の中心星と、その隣の星も普通に写っています。これは結構すごい。シンチレーションの具合もあるとは思いますが、やはりVISACのスポットダイアグラムはダテではないかもしれません。

この画像スタックすればもっとはっきりするはずです。同じ1秒露光をser形式のRAW動画で1000枚撮影し、上位600枚の計10分をAutoStakkert!3でスタックしてみました。画像処理は簡易なものです。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE

中心星もそこそこシャープに写っていて、四隅の崩れもありません。まあまあかなと思っっていたのですが、星を拡大するとどうもきれいな円になっていないことに気づきました。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE_cut

どの星も三角形に近い形をしています。星像としてはダメですね。一枚取りに戻ってよく見ると、星はやはり同様の形をしていることに気づきました。

ただし、この画像は1秒露光をスタックしたものでかなり鏡筒本来が持っている星像をそのままの形で表しています。これが10秒とかもっと長い時間露光した場合には機材の揺れやシンチレーションによるブレのためにこの三角の形は目立ちにくくなります。ただし、ラッキーイメジングを想定もしているので、短時間露光で星像が丸になるに越したことはありません。

また、これまで撮影したMEADEのコマ収差や片ボケよりはすでにはるかにましです。このことも考慮して、どこまで突き詰めるかを検討する必要があります。


まとめ

というわけで、星像に関して残念ながらはラッキーイメージングを考えた場合は許容範囲外と言っていいと思います。四隅まで鋭くて、途中結構期待していたのですが、最終的にはちょっとショックでした。気を取り直して調整の方法を探ることにします。少しだけ調べてみると、VC200Lではこのおにぎり型の星像が出ることが結構あるようです。どうも原因はネジの締めすぎ。また、コメントからの情報でスパイダーの影響が結構合って、星像が四角くなることもあるそうです。

原因がわかっていればとりあえずなんと取り除くては考えることができそうなので、まずは一安心です。先人の方達の知恵がありそうなので、一度中を見てみて調整がうまくできるかどうか探りたいと思います。