白濁したレンズを納得済みで購入したFC-76を使って、干潟、三裂、猫の手星雲撮影した画像の仕上げです。いろいろ紆余曲折して時間がかかってしまいました。
まずは前回の記事で使った、3枚の画像をまとめて仕上げてみました。FC-76とFSQ-60の2機種で、FC-76は180秒と300秒露光の2枚、FS-60Qは300秒露光が1枚です。総露光時間はそれぞれ30分なので、計1時間半分の画像があるわけです。
まずPixInsightのStarAlignment機能を使って3枚をあわせてスタックするのですが、鏡筒が違うので星像には微妙なズレが出てしまいました。
このずれはデフォルトの位置と回転のみでは補正しきれないので、StarAlignmentのいくつかのパラメータを調整します。
触ったところは「Registration modl」を「2-D Surface Splines」にしたこと。これは2次元スプライン補間で画面全体を歪ませるモードです。でもこれだけだと不十分で、さらに「Distortion correction」をチェックしたこと。これは非線形な歪みを修正するとのことです。これで周辺部までずれずに綺麗に星像を合わせることができました。
ここで問題に気づきます。
まず、FC-76が1.04倍のフラットナーを使っているので焦点距離は624mm、FS-60Qは600mmとFS-60Qの方が少し広いエリアを写しています。FS-60Qで写したの画角の中に、FC-76で写したエリアが全て入ってれば何の問題もなかったのですが、FS-60Qへの切り替え時に時間がなくて焦っていていくつかの確認工程を省いてしまい、狭いFC-76の方にしか写っていない部分があることに気づきました。しかもカメラの回転角のチェックも甘かったので、回転でも15度位ずれていたようです。
共通する部分だけを取り出そうとすると、かなりトリミングしなくてはいけません。それに加えて、FS-60Qの星像がピンボケで肥大していること、おそらく口径が小さいことによりノイジーに見えることなどを鑑み、FC-76で撮影した2枚のみを使うことに決めました。
しかしここでもまた問題が発生。PixInsightのImageIntegration機能(スタックのことです)は何と最低3枚からしか動かないようです。他のソフトに行くか迷って、それでもいろいろ調べていると、PixInsightの英語のフォーラムの中に同じ画像を登録してしまえばいいと言う記述を見つけました。このページを見つけるためにgoogleで検索したワードは「pixinsight integration two image sources」です。では、なぜこのワードが出てきたかというと、PixInsightで2枚のみでIntegrationしようとしたら
"This instance of ImageIntegration defines less than three source images."
と出てきたからです。普通 "source images" という単語はパッとはなかなか出てきません。このようにエラーメッセージからヒントを得て、PixInsightとつけて検索してやるとすぐに
"ImageIntegration can't integrate 2 images? - PixInsight"
というページが2番目に出てきたと言うわけです。ちなみに日本語のページではこのような情報を見つけることはできませんでした。
さて、2枚の画像を2回登録して4枚にしてスタックしてやると無事に完了。ただし、少しカブリが残っているようなので、DynamicBackgroudExtractionで暗黒帯もなさそうな暗い部分を6-7点ほどのみ選んでカブリを除去しました。少し色がずれているようなので念の為PhotometricColorCalibrationをして、その後ScreenTransferFunctionでAutoStretchをして、HistgramTransformationで適用します。あとはPhotoshop CCに引き渡し、画像処理です。
Photoshopで色々いじって、最終的にできたのが以下の画像です。
普段あまりしていないのですが、今回は少し茶色いモジャモジャも出してみました。でも高々トータルで1時間分の画像なので、まだまだノイジーです。ところでこのモジャモジャ部分って名前あるのでしょうか?モジャモジャの間の黒い部分は暗黒帯でいいんですよね。
あと、参考に四隅の切り出し画像を示しておきます。FC-76に新フラットナーをつけたもので、300秒露光したJPG撮って出し画像をオートストレッチしたものです。6Dなのでフルサイズです。これを見る限り、ほぼ点像ですね。新フラットナーいい仕事しています。
今回白濁したレンズが付いているFC-76で撮影して、上で示したくらいまで写すことができました。これがオリジナルのFC-76に比べてどれくらい劣っているのかはまだわかりませんが、少なくともまともなFS-60Qに比べて、遜色ない程度に撮影することはできるのは示すことができたのではないかと思います。
ではこの白濁の度合いはどうなのでしょうか?これだけ写るのならそもそも大した白濁でないのじゃないか?という疑問も出てきます。単に大げさに騒いでいるだけではないかということです。なので今一度自分自身でも確認の意味を込めて、まとめておきます。
最後の疑問、これからもこの白濁レンズFC-76を撮影に使うかと言うと
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今回は間違いなくこれからも使います。だってホント、全然問題に思えないんですもの。
3枚の画像を合わせて処理
まずは前回の記事で使った、3枚の画像をまとめて仕上げてみました。FC-76とFSQ-60の2機種で、FC-76は180秒と300秒露光の2枚、FS-60Qは300秒露光が1枚です。総露光時間はそれぞれ30分なので、計1時間半分の画像があるわけです。
まずPixInsightのStarAlignment機能を使って3枚をあわせてスタックするのですが、鏡筒が違うので星像には微妙なズレが出てしまいました。
例として右上隅の様子。星像の下半分が二重になっています。
上半分がずれていないように見えるのは
画角のずれで重なり合っていない部分だからです。
上半分がずれていないように見えるのは
画角のずれで重なり合っていない部分だからです。
このずれはデフォルトの位置と回転のみでは補正しきれないので、StarAlignmentのいくつかのパラメータを調整します。
触ったところは「Registration modl」を「2-D Surface Splines」にしたこと。これは2次元スプライン補間で画面全体を歪ませるモードです。でもこれだけだと不十分で、さらに「Distortion correction」をチェックしたこと。これは非線形な歪みを修正するとのことです。これで周辺部までずれずに綺麗に星像を合わせることができました。
結局2枚だけ使うことに
ここで問題に気づきます。
まず、FC-76が1.04倍のフラットナーを使っているので焦点距離は624mm、FS-60Qは600mmとFS-60Qの方が少し広いエリアを写しています。FS-60Qで写したの画角の中に、FC-76で写したエリアが全て入ってれば何の問題もなかったのですが、FS-60Qへの切り替え時に時間がなくて焦っていていくつかの確認工程を省いてしまい、狭いFC-76の方にしか写っていない部分があることに気づきました。しかもカメラの回転角のチェックも甘かったので、回転でも15度位ずれていたようです。
共通する部分だけを取り出そうとすると、かなりトリミングしなくてはいけません。それに加えて、FS-60Qの星像がピンボケで肥大していること、おそらく口径が小さいことによりノイジーに見えることなどを鑑み、FC-76で撮影した2枚のみを使うことに決めました。
2枚だとダメ!?
しかしここでもまた問題が発生。PixInsightのImageIntegration機能(スタックのことです)は何と最低3枚からしか動かないようです。他のソフトに行くか迷って、それでもいろいろ調べていると、PixInsightの英語のフォーラムの中に同じ画像を登録してしまえばいいと言う記述を見つけました。このページを見つけるためにgoogleで検索したワードは「pixinsight integration two image sources」です。では、なぜこのワードが出てきたかというと、PixInsightで2枚のみでIntegrationしようとしたら
"This instance of ImageIntegration defines less than three source images."
と出てきたからです。普通 "source images" という単語はパッとはなかなか出てきません。このようにエラーメッセージからヒントを得て、PixInsightとつけて検索してやるとすぐに
"ImageIntegration can't integrate 2 images? - PixInsight"
というページが2番目に出てきたと言うわけです。ちなみに日本語のページではこのような情報を見つけることはできませんでした。
さて、2枚の画像を2回登録して4枚にしてスタックしてやると無事に完了。ただし、少しカブリが残っているようなので、DynamicBackgroudExtractionで暗黒帯もなさそうな暗い部分を6-7点ほどのみ選んでカブリを除去しました。少し色がずれているようなので念の為PhotometricColorCalibrationをして、その後ScreenTransferFunctionでAutoStretchをして、HistgramTransformationで適用します。あとはPhotoshop CCに引き渡し、画像処理です。
最終画像
Photoshopで色々いじって、最終的にできたのが以下の画像です。
富山県富山市下大久保 2019/6/25 22:02-23:21
FC-76 + QBP + 新フラットナー+ CGEM II + EOS 6D(HKIR改造)
f=624mm, F8.2, ISO3200, 露出180秒x10枚 + 露出300秒x6枚, 総露出60分
PixInsightでダーク、フラット補正、スタック, Photoshop CCで画像処理
普段あまりしていないのですが、今回は少し茶色いモジャモジャも出してみました。でも高々トータルで1時間分の画像なので、まだまだノイジーです。ところでこのモジャモジャ部分って名前あるのでしょうか?モジャモジャの間の黒い部分は暗黒帯でいいんですよね。
あと、参考に四隅の切り出し画像を示しておきます。FC-76に新フラットナーをつけたもので、300秒露光したJPG撮って出し画像をオートストレッチしたものです。6Dなのでフルサイズです。これを見る限り、ほぼ点像ですね。新フラットナーいい仕事しています。
まとめ
今回白濁したレンズが付いているFC-76で撮影して、上で示したくらいまで写すことができました。これがオリジナルのFC-76に比べてどれくらい劣っているのかはまだわかりませんが、少なくともまともなFS-60Qに比べて、遜色ない程度に撮影することはできるのは示すことができたのではないかと思います。
改めて白濁が見えやすいように撮ってみました。
一様でもなく、濃いところ薄いところもあります。
結構ひどいことがわかるかと思います。
一様でもなく、濃いところ薄いところもあります。
結構ひどいことがわかるかと思います。
ではこの白濁の度合いはどうなのでしょうか?これだけ写るのならそもそも大した白濁でないのじゃないか?という疑問も出てきます。単に大げさに騒いでいるだけではないかということです。なので今一度自分自身でも確認の意味を込めて、まとめておきます。
- 対物レンズが白濁したFC-76をスターベース名古屋店で閉店直前に格安で購入しました。白濁があるため、タカハシ直営店ではジャンクとみなしてそれだけの値段しかつけることができなかったということです。
- 昼間明るいうちに見てみると、接眼側からアイピースを外してのぞいてみると対物レンズは真っ白近く。これはダメだろうと半分諦めながら実際にアイピースで覗いてみたのですが、解像度にため息が出て、少し眠い気もするが、白濁なんか全く気にならないレベルの鏡筒であることがわかりました。
- 眼視で月を見ると、FS-60Q年隠して多少コントラストが低下するところがわかりましたが、単体で見たら(少なくとも私レベルでは)絶対気づかないくらいの影響しかなかったこと。
- 撮影でも、と言うよりは眼視よりもさらに白濁の影響は少ないのでは、という今回の撮影結果を得たこと。
最後の疑問、これからもこの白濁レンズFC-76を撮影に使うかと言うと
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今回は間違いなくこれからも使います。だってホント、全然問題に思えないんですもの。
コメント
コメント一覧 (10)
対物レンズの白濁について、こんなに影響ないとは思いませんでした。自分のFC76も購入価格相当のコストをかけてクリーニングしてもらいましたが、曇りの感じは新品で購入したFS60CBにはとても及びません。
でも、資料として送っていただいた光軸調整やロンキーテストの映像では明らかに綺麗なっていることがわかるので、こんなもんだと納得していました。
撮影作品としては、ちょード素人自分なので、シビアに画像処理できるようになれば、その辺のコントラスト不足なんかに気付けるのかなあと思っていますが、意外と気付かずいってしまうかも。
そう考えると、多少のクモリで激安の鏡筒があれば買い!なんですね。梅雨なのでニョキニョキと生えてくるか、気絶から目がさめると物が届いていることになりそうです。
白濁問題と、光軸調整やロンキーテストとは別かと思います。改善された調整結果が来たということは、少なくとも撮像に影響する範囲で改善されたということなので、それだけでも出した価値があるのかと思います。
実は、今回の購入に至ったのは白濁問題よりも、スタべ名古屋の店長さんの「光軸調整は工場でしてあるから。」の一言でした。調整一回分のコストに毛が生えたくらいの値段で買えると思ったからです。「白濁?これだけ安いなら、まぁ、いっかぁ。」くらいの気持ちでした。
屈折はなかなか自分では調整できないので、調整してあるかどうかはとても重要です。特に安価なジャンクなどでは、調整を別で頼むとそのコストの割合が高くなってしまいます。と、ここまでは最初からある程度考えていましたが、白濁は元々は完全に諦めていて、実際ダメだと思っていました。これだけ影響がないという結果は予想していなくて、これは本当にラッキーでした。
理系に対する興味として、いつも天文関係を覗いているのですが、知識としては一般写真の方の人間です。
このレンズの白濁が現物でどの程度かは分かりませんが、一般的にレンズ内にクモリがある場合のコントラスト低下は光が強いほど顕著になるので微弱な光をとらえる天体撮影では極小の影響度なのかもしれません。明るく面積の大きい発光体などでは、たぶん、白濁の影響を感じるのではないでしょうか(月?)。
一般写真の実感として、クモリが解像度に影響する感触はほとんどありませんし、クモリの影響は主にディープシャドーの締まりのなさと強光源のフレア量などです。これらを合わせて考えると、なんとなく、今回の実験の結果もしっくりくるような気もします。しかし、はたから見てもものすごくはっきりした白濁で不思議ですが。
門外漢が失礼いたしました。
はじめまして、写真の知識は星から以外ほとんどないので助かります。
月をアイピースで見ることは一度やってみました。記事にもしていますが、比較したらコントラストが多少悪くなるのはわかりますが、単体で見抜けるかというと、多分私には無理なレベルです。
やはり一般写真でも曇りが解像度にはあまり影響なく、明るいところが暗いところに入り込むのが主な現象なのですね。星では光害がある場合と等価な気がします。炙り出しに相当する作業で回避するのは通常のことなので、やはり星にはあまり影響がないというのは正しいのかもしれません。
あと長焦点なので、対物レンズあたりに手をかざして一部視野を遮っても少し暗くなるだけです。これと同じで、局所的に白濁が分布していても、こちらもあまり影響ないのかもしれません。
定性的なところは多少納得できてきました。やはり定量的な評価が欲しくなってきます。
まさか実写でここまでの性能を叩き出すとは。
色んな「定説」や「お作法」が存在するアマチュア天文道ですが、やはり「あきらめずに、まずはやってみる」というのが大切なんだと再認識させる良記事ですね。ある程度一定の濃度をもつ面積体が付着しているのだと仮定すると(多数の小面積体が分散配置している夜露やカビと比較して)意外に実害が少ない物なのかもしれません。冷静に考えると反射望遠鏡のメッキが部分的に劣化している場合でも実用に耐えるケースもありますものねぇ。
とにかくビックリ仰天です。
ありがとうございます。
確かに夜露は撮影していてもすぐにわかりますね。でもこの白濁の正体はカビと言われているようです。どこまで影響あるのか、もしかしたら今回の白濁はひどく見えてもたまたまラッキーな範囲に収まっていたというだけかもしれません。
アマチュア天文の世界もまだまだ色々謎があって楽しいですね。
白濁問題、おもしろいです。
実は白濁ではないのですが、シュミカセのCPの曇り(結露)時の画像について感じたことがありました。
単純な話、前面のレンズが曇ると「フォギーフィルター」効果のような像になると思っていたのですが、「ナローバンドフィルター」を使っているとその影響は非常に小さいです。にじむとかぼやける事もなく、ただ露光量が減っただけという感じです。
ちなみにナローだと露光中に雲が通過してもにじむこともコントラストが落ちることも白くなることもなく、ただ露光量が落ちるだけです。
今回QBPフィルターを使われているようですが、コレがいい仕事してるのかもしれません。
なるほど!これは面白い情報ですね。QBPで結露の経験はまだ無いです。
確かにQBP有り無しで白濁がどうなるか比べてみる価値があるのかもしれません。
時間があるときに今度試してみます。
とても興味深い結果で、いろいろ考えているうちにコメントが亀レスになってしまって、すみません。
「レンズの白濁」がどう作用するのか、と、考えてみました。あくまでも結果をみての考察に過ぎませんけど…。
次の2点に集約されるのではないかと思いました。
1. 解像度の低下(白濁は波数空間でのマスクに相当)
2. 光の拡散によるバックグラウンドノイズの増加
1. は、惑星面の細かい"解像度"には効いているとは思いますが、jpgの85%と100%の違いのような世界だろうと想像します。
直焦点撮影のようなところでは全く見えない世界だと思いますし、ある種の「絞り」を入れたのと同じともいえるかもしれません。
2. の影響はあると思います。が、像を結んでない光の多くは写野の外に行くでしょうから、思ったほどの影響がないのですね(!)。
ミソは、「写っているのは像を結んだ光」ということなんだな、と、改めて思いました。(像を結ばない光はどこかに散る)
こんにちは。こちらのブログでは初めましてですね。
もう嬉しくって、わーいLambdaさんからのコメントだー!という気分です。
Lambdaさんのブログすごく面白くて、鏡筒アルミ巻き巻きとか自分でも試してみるつもりです。試したらまた結果書きますね。流体に絡んでいたとのことですがそこら辺の考察はまさに秀逸です。
さて、白濁問題ですが、程度の差こそあれ影響はないはずはありません。ご指摘の通り、解像度にも効くでしょうし、バックグラントに広がってコントラスト低下を引き起こすのも正しいでしょう。ただ、その影響がもっと出るかと思っていたのですが、思ったよりというか、普通に白濁のないレンズで撮ったものですと言っても、私だと絶対に気づくことはできないくらいのレベルでした。こうやって考えてしまうと、一体レンズの汚れってなんだということになります。Lamdaさんがいう通り「像を結んだ光」というのがとても納得できてしまいます。むしろ、対物レンズの汚れがあまり効かないということが一般の人でも気楽に扱える機材となり得ているのかもと考えてしまいます。
木人さんが言っているように、波長が限られると影響が見えにくくなるのもまた一理ありそうです。今回の結果はQPDを使っているので、そう言った意味ではたまたまなのかもしれません。こういった領域は、単純に良いものを使えという方向になってしまうので、なかなか評価は進まないと思いますし、あまりやる価値があるかどうかさえもわからないので、手付かずの部分になっているのかと思います。きちんと評価すれば再利用できる機材もあると思います。でもそうすると逆にジャンク相場が上がってしまったりして、それはそれで安い機材で工夫する人にとっては不幸になってしまうのかもしれません。
またコメントください。アイピースの評価記事も楽しみにしています。今後ともよろしくお願いいたします。