先日、名古屋に帰省したときに生えてきたFC-76を、自宅に帰ってから実際に試してみました。

FC-76はフローライトレンズを使った口径76mm、焦点距離600mmのアポクロマート鏡筒です。往年のタカハシの作り込み感が半端なく、質実剛健、細部ものすごく丁寧、高級感に溢れていて、持っているだけでも満足感が満たされます。レンズキャップが鋳造物で、重いので下を向けると落ちてしまうと購入時に注意を受けました。キャップだけみても今では考えられないこだわりです。元々はファインダーもあったようですが、今回はファインダーはついていませんでした。でもどうせCMOSカメラで電子ファインダーにしてしまうので特に問題ありません。問題は対物レンズ。結構な白濁です。その分本当に、その場で決断できるくらい格安でした。

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レンズの白濁について

いろいろ調べてみると、この白濁現象は1987年くらいまでの初期のFCシリーズに使われたレンズの反射防止膜がモノコートだった時代のものに、時間が経つとどうしても起きてしまうようで、避けようがないとのこと。1987年より後の後期型のマルチコートになったものはこのような白濁現象は起きないとのことです。

白濁が起きる場所は、弱いと言われている2枚目のフローライトではなく、最初の一枚目の対物レンズの背面(接眼側)だそうです。確かによく見てみると、表面は綺麗。中のどこかが汚くて、ちょうどその表面に見えるレンズの裏面くらいの位置に見えます。

結構ひどいので、この白濁をなんとかできないか調べてみました。まずタカハシはもう清掃や再コーティングなどは受け付けていないようです。(2019年5月11日追記: スターベース東京で確認したところ、現在でも清掃、調整を受け付けているとのことです。)他のメンテナンス会社でも、いくつか清掃をしてくれるところが見つかりました。自分で分解して、レンズ研磨のようなことをして強者もいるみたいです。一眼レフカメラの昔のレンズの白濁除去で探すと、アルカリ溶液でコーティングを除去してしまう例も見つかりました。

おそらく今回のものはコーティングの劣化なので、コーティングを除去してしまえば白濁は無くなるだろうと予測しています。その代わり反射防止の効果がなくなるので、一般的には4%ほどの反射が出てしまいます。ARコートは普通1.数%の反射率に抑えてくれるので、3倍くらいの反射光が出ることになります。大したことないかもしれませんが、多重反射でゴーストにもつながるので注意が必要です。

あと、自分で分解してクリーニングする場合には、光軸調整をきちんとして元に戻さないとダメなようです。私は屈折の光軸調整はごくわずかしかなく、全然自信がないのが正直なところです。これを機会に屈折の光軸調整に挑戦してもいいのかとも思いますが、タカハシなのでやはり躊躇してしまう気持ちもあります。まあとりあえずこの白濁が実際にどれくらい影響するかよくわからないので、まずは一度覗いてみることにしました。


FC-76の実際の見え味

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接眼側から対物側を覗いても、白濁がはっきり分かるので心配でした。とりあえず手持ちのタカハシの鏡筒バンドでサイズが合うものに取り付けて、アリガタを噛ませて赤道儀に載せました。アイピース口も元々25.4mm用ですが、手持ちのVixenの31.7mm交換アダプターで現行のアイピースが使えるようにします。アイピースはとりあえずそこらへんにあった、Vixenのポルタに付属の格安のものです。

昼間の景色を見てみます。白濁のひどさからあまり期待していなかったのですが、覗いた瞬間、その見え味にうっとりしてしまいました。もちろん白濁の影響はあるのでしょうが、アイピースで見ている限り全く気になりません。多分コントラストは落ちているのでしょう。確かに少し眠い気もします。それでも収差の少なさ、カリッカリの分解能の良さ、これで2諭吉さんちょっとなら十分すぎるくらいの性能です。FS-60Qでもそうですが、やっぱりフローライトっていいんですかね。分解清掃はもっと白濁が耐えられなくなるくらい進むまでしないことにしました。電視観望用にと考えていましたが、この分解能だともったいないくらいです。新型フラットナーを持っているので、うまくいくと撮影にも使えそうです。

試しにFC-76にASI294MC Proをつけて直焦点で撮影してみました。.serファイルで動画で撮影した一枚をjpegにまで落として、上下ひっくり返したものです。画像処理は何もしてません。拡大してみるとわかりますが、遠くのBSアンテナの4つのビスまできちんと写しこんでいます。ぱっと計算すると、ビスの直径が13秒角くらい、ビスの円を描いている黒線が3秒角くらいで、これだけみるともう少し出てそうです。3秒角でもすでにエアリーディスク径の2倍くらいなので、まあ相当なもんです。

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実は同じ構図でMEADEの25cmと比較していたのですが、分解能は口径と焦点距離の分FC-76が不利なはずなのに、口径差3倍以上でもFC-76も決して負けていません。焦点距離を合わせたら口径の差は消えてしまいそうなくらいです。それよりも考えさせらたのは画像の安定度で、軽いこともあるでしょうし、光軸調整が流石にタカハシレベルなのもあるのでしょうか、むしろFC-76の方がブレないです。この件もう少しまとまったらまたレポートします。

というわけでかなり使えそうなので、まずは鏡筒バンドとアリガタプレートなど、実戦配備に耐えうるように少し予算を割くことにしました。


GW特集の記事、もしかしたらもう一本書くかもしれませんが、こちらはちょっと時間がかかるかもしれません。