もう先々週になってしまいますが、3月8日金曜日の帰宅後、ちょっと疲れていたのですが新月期で天気も良かったので、かねてより試したかったAZ-GTiによる2軸ガイドを試してみました。これができると、かなり軽量コンパクトな撮影システムになるので、海外や登山でも持っていけそうです。

撮影対象はM42、オリオン大星雲です。画像処理に時間がかかってしまったので、記事にするのに時間がかかってしまいました。撮影結果を先に示しておきます。本来ガイドを試して星像を見るテストなのですが、今シーズン最後のオリオンになるだろうことと、撮影時間1時間弱にしてはそこそこ出たので、AZ-GTiで(まだまだ稚拙ですが)ここまでは出るという指標として、きちんと画像処理までしたものをあげておきます。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark

富山県富山市下大久保 2019/3/6 21:23-23:04
f=600mm, F10 + AZ-GTi(赤道儀モード)
EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW)
300sec x 11frames 総露出時間55分 + HDRのため3sec x 12
PixInsight , Photoshop CCで画像処理




AZ-GTiのこれまでの経緯

これまで、これまでAZ-GTiを赤道儀モードも含めていろいろ試してきました。
  1. AZ-GTiのファーストテスト
  2. AZ-GTiの赤道儀化(その1): ハードウェア編
  3. AZ-GTiの赤道儀化(その2): ソフトウェア編
  4. AZ-GTiの赤道儀化(その3): 極軸調整とオートガイド
  5. AZ-GTiの赤道儀化(その4): Stick PCでのガイドとTips

実際4のところでガイドも試していますが、露光時間が30秒と短すぎたのでまだちゃんとしたテストにはなりませんでした。その後、この赤道儀モードでもう少し時間をかけた撮影を試みました。
  1. 昨年11月2日にAZ-GTiの赤道儀モードでノーガイドでテスト。
  2. 11月3日にAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、接続問題で断念。
  3. その後、ブログの記事にはしていませんが、11月15日に少しくらい山の方に行ってAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、ISO1600、3分で13枚だけとって、そのうち成功はわずか2枚、Maybeが5枚で、失敗6枚とほとんどダメだったので、検証は失敗。原因は風が強くて全く点像にならず。
と、現状はこういったところです。

この頃はまだQBPフィルターを手に入れる前なので、自宅ガイド無しで露光時間90秒が最長、山の中のガイドありでも3分が最長で、その代わり特に自宅だと露光時間の短さを補うためISOが6400と高めです。それからだいぶん日にちが経ってしまいましたが、今年の目標の中にはまだAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドは入っていました。なかなか天気が良くなかったり、途中レデューサーフラットナーのテストも入ったりしたのですが、それらのテストも一巡して、FS-60CBだった鏡筒もやっとエクステンダーを付け直して、焦点距離600mmのFS-60Qに戻りました。やっと久しぶりのテスト再開です。


目標

さて、この「AZ-ZGiでの2軸ガイド」計画の目標ですが、具体的には
  1. 焦点距離600mmの鏡筒をAZ-GTiの赤道儀モードで稼働し、2軸のガイドを実現すること。
  2. フルサイズのカメラで撮影して、少なくとも3分以上の露光で、赤道儀起因の流れが十分無視できる程度の撮像が得られること。
  3. 撮影枚数のうち、8割以上の成功率を実現すること。
の3つです。これは海外へ行く時など、できる限り軽量で実用的な撮影ができるという条件から設定しています。この目標が達成できれば、十分海外へ持っていっても使い物になると考えることができます。

1については上で書いたように、赤道儀化テストの4番目や、昨年11月15日にシステムとしては稼働しているので、すでにほぼ目標達成です。2については上記の3に書いてあるように、3分で2枚だけ成功しているのですが、風が弱かった時での成功で、もしかしたらピリオディックモーションがたまたま小さかった時のみの成功かもしれません。なので主にここからの検証です。

機材とソフトウェア

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: AZ-GTiを赤道儀モードで使用
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO3200、露光時間5分x11枚、計55分 + HDR合成のため、3秒x12枚、バイアス画像100枚、ダーク画像5秒x15枚、フラット補正無し(撮影後、フラットを撮る前にセッティングを変えてしまったため)
  • 初期アラインメントおよび追尾ソフトウェア:iPhone上でのSynScan Pro、その後Windows10上のSynScan Pro
  • 自動導入および視野確認: Carte du Ciel + SynScan Pro AppのASCMOドライバー、Astro Trotilla + BackyardEOS
  • ガイド時のソフトウェア: Windows10上のSynScan Pro AppのASCMOドライバーにPHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • ガイド機器: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 日時: 2019年3月6日、21時23分から
  • 月齢: 29.6(新月)、天気快晴、風が少々
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


セットアップ

まずはAZ-GTiを赤道儀モードで稼働させることが前提です。経緯台モードでも2軸ガイドができるという情報もありますが、私はまだ試したことがありません。

AZ-GTiでの2軸ガイドのポイントの一つは、SynScan App用のASCOM driverをインストールして、PHD2からのガイド信号をSysScan経由でAZ-GTiにフィードバックすることです。すなわち、PC上で信号のやり取りはほぼ済んでしまうために、ケーブルとしてはガイドカメラからのUSBケーブル一本、あとは今回の場合BackYard EOSを使ってディザーガイドをしているため、PCとEOS 6DをつなぐUSBケーブルが一本の、計2本です。AZ-GTiの電源は乾電池で内臓、EOS 6Dの電源も電池のため内臓で、AZ-GTiの駆動はWi-Fi経由なので、本当にケーブル2本、もしディザーをしなくてカメラ単体でとるのならわずかケーブル1本での2軸ガイドが可能です。

さらに今回の場合、Stick PCを使い、PC自身も三脚あたりに取り付けてしまったため、本当にコンパクトな2軸制御システムとなりました。Stick PCの操作はWiFi経由なので、自宅からぬくぬくと撮影、モニターをすることができます。


実際の撮影

極軸合わせはいつも通りSharpCapで行いました。一つだけポイントを挙げておきます。

AZ-GTiは構造的にそこまで頑丈ではないです。SharpCapの極軸合わせで90度視野を回転させる場合、手で回す際はウェイトバーがついているところのネジを緩める必要があるのですが、その時全体が大きくたわんでしまいます。90度回す時はモーターで回転させた方がはるかに精度が出ます。

さて、実際の撮影はフル自動導入の赤道儀とほぼ同様に扱うことができます。これは、Carte du CielなどのプラネタリウムソフトでAZ-ZTiを制御して自動導入することもできますし、Astro Tortillaなどでplate solvingすることもできるので、撮影した写野から位置を特定することもできることを意味します。ようするに、操作性だけ言えば大型で高機能な赤道儀に全然遜色ないということです。

視野が決まれば、あとは撮影です。QBPを使っているので、5分露光くらいまでは十分耐えることができます。ISOは3200としました。撮影中は自宅にいたのですが、今回は星像が気になってしまい、仮眠をとったりすることができませんでした。というのも、最初のうちはガイドは非常に安定していたのですが、30分くらいしてからガイド星の位置が結構頻繁に飛びはじめたのです。しかもピリオディックモーションが出ないはずの赤緯の方です。時に上に行ったり、時に下に行ったり、ガイドがかなり頑張って補正しているようでした。何か調子が悪いのかと思って外に出たらすぐに納得しました。明らかに風が強くなっていたのです。どうやらAZ-GTiは、撮影レベルになるとやはり外乱の影響を受けやすくなってしまうようです。もちろん三脚などでも変わると思うので、もう少し大型の三脚に載せてもいいかもしれませんが、それだと売りのコンパクトさが損なわれてしまいます。使えるのは風が強くない日限定でという制限をつけた方がいいかと思います。

この頃は冬も終わりに近づき、オリオン座も西に傾く時間がはやくなってしまっているので、結局撮影に使えた時間は21時半くらいから23時くらいまでと1時間半で、総露光時間は55分と1時間を切ってしまいました。


撮影結果

結局14枚撮って(ただし、撮影最後の西に沈んで影になった3枚はカウントから覗きました)11枚が成功でした。と言っても衛星が大きく通った一枚も失敗とカウントしたので、星像という意味では実際には14枚中12枚が成功と言っていいと思います。86%の成功率なので、目標達成といっていいでしょう。

隅の星像を(自作プログラムを改良して8隅が出るようにしました。)拡大してみます。大体のガイド性能までわかると思います。ただし、AZ-GTiのそもそものピリオディックモーションが+/-75秒程度とかなり大きいので、ガイドをしてもその影響を取り去ることはできません。また、風の影響も多少あります。

星像がまともと判断したものの中でベストに近いもの。まあまあ、丸になっていますが、やはり完全ではなく、わずかに斜め方向に伸びています。

M42_LIGHT_6D_300s_3200_+7cc_20190308-21h47m38s110ms_8cut


星像がまともと判断したものの中でワーストに近いもの。ここら辺までが許容限界としました。スタックすると多少は平均化されるのですが、拡大すると明らかに縦方向に伸びています。主に風の影響です。

MAYBE_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h50m46s955ms_8cut


また、下のように風の影響で星像が2つに分かれてしまっているものもあります。一瞬大きな風が吹いたのかと思われます。これはもちろん使えないとしました。

BAD_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h57m53s875ms_8cut


画像処理

画像処理は今回のテーマでないのですが、1時間弱にしては結構出すことができたので少しだけ書いておきます。

結果は一番上の画像を見ていただくとして、とりあえず処理してみると分子雲が結構出てきたので、少し強調してみました。露光時間が短いのでまだ粗いですが、自宅撮影でQBPがあればここら辺までは出せることはわかりました。また、青を出す方法も少しわかってきました。といっても、トーンカーブで青の真ん中らへんを持ち上げるだけですが。やはりQBPだと青色が出にくいので、少し強調してやる必要がありそうです。

最後に、全てスタックして画像処理をした画像(一番最初に示した画像)の星像です。やはり、ごくわずか縦長になってしまっています。どれくらい歪むかは風の強さによるかと思いますが、あとは歩留まりで調節するのかと思います。私的にはここら辺までなら、まあ許容範囲です。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark_8cut




まとめ
  • AZ-GTiの赤道儀モードで、PHD2とSynScan用のASCOMドライバーを使った2軸ガイド撮影はそこそこ実用レベルで使用することができる。
  • 具体的には焦点距離600mm程度なら、露光時間5分でもある程度の歩留まりで星像は安定する。
  • ただし軽量システムのため、風に弱い点は否めない。
なんとか目標の歩留まり8割にたどり着きました。軽量コンパクトな撮影システムの構築という目的はある程度達成したと思います。次回海外へ行く時や、登山(多分することはないとわかっているのですが...)で持っていくシステムとしては完成です。このシステムは電視観望システムを含んでいるので、海外とかでのデモンストレーションもできることを考えると、当分コパクトシステムはこれで行くことになりそうです。やはり2軸制御できるところがポイントです。惜しむらくはピリオディックモーションです。もう少し小さいと星像ももっと安定すると思うのですが、この価格でそこまで求めるのは酷かもしれません。SWATなどの方がここら辺は利がありそうです。

AZ-GTiの購入から半年ちょっと、すごく楽しめました。軽量撮影システムとしてはこれで大体完成なのですが、本当に撮影で普段使いをするかというとこれはまた別問題。やはり風に弱いという欠点があるため、車が使える時や、自宅では頑丈な赤道儀を使っての撮影になるかと思います。あ、でも電視観望ではAZ-GTiは完全に主力ですよ。

AZ-GTiは、特に天文を始めたばかりの人でも、アイピースでの観察から電視観望、経緯台モードでの簡易撮影から、赤道儀モードでの本格的な撮影までこれ一台で相当楽しめるはずです。コストパフォーマンスを考えたら間違いなくオススメの一品です。