2月某日、関東方面に用事があったので、少し足を伸ばして相模原に移転したという三基光学館にいってみました。

以前の三基光学館は秋葉原4天文ショップ(御徒町駅からシュミット、スターベース、三基光学館、KYOEIの順に回る)の一つだったので、星を始めた2016年後半くらいからちょくちょく覗いてはいたのですが、その頃はごくごく一般の客でした。2017年のCANPに三基光学館の店長さんも参加されていて、物理出身ということで夜中の談義で随分と盛り上がったのがきっかけでよく話すようになりました。でも、その後すぐに体調を悪くされたようで長期休業していました。再開時は相模原に移転するということでしたが、なかなか再開しないのでずっと心配していました。少し前にやっと再開したということで、ちょっとほっとしていましたが、なかなか店舗まで行く機会がなく、今回やっと訪れることができました。

相模原のしかも田名という相模川近くの結構田舎の方なのですが、アクセスはそれほど不便でもなく、都心からだと京王線で橋本駅まで行ってバスに乗るのがいいみたいです。橋本駅からのバスは20分おきにはあるので、少し待つかもしれませんがそれほど大変ではないです。他にも横浜線淵野辺駅や相模線上溝駅jからのバスもあるようですが、1時間に2本程と、本数が少なくなるようです。橋本駅からバスに乗ると30分かからないくらいでしょうか、「田名バスターミナル」で降ります。バス料金は300円ちょっとでした。ターミナルからは歩いて数分なので、すぐです。


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新しい店舗は結構広い場所で、駐車場があるため車で来るお客さんが多くなり、むしろ秋葉原の時より人は増えたかもしれないとのこと。持ち込みの機材も増えたので、中古買取りも進んでいるみたいです。

店に入ると、久しぶりでしたが私の顔もきちんと覚えていてくれて、すっかり元気になっているようで何よりでした。相模原になった理由は実家だからとのことです。写真にはギリギリ写っていませんが、三基書房という本屋さんがすぐ隣にあり、ご家族が経営されているようです。秋葉原まで通うのが大変だったので、実家にお店を移したというのが移転の理由だそうです。

店の中は、いくつかの望遠鏡と、最近話題になっっているiOptronの赤道儀が何種類か置いてあります。iOptron赤道儀のCEMシリーズには軸からの回転を見ているエンコーダーがついるモデルがあり、例えばCEM25ECは12.3kgまでの荷重でピリオディックエラーがなんと0.3秒という驚異的な値を叩き出しています。値段も20万円代半ばと、十分リーズナブルな範囲です。エンコーダーなしのタイプのCEM25Pでもピリオディックモーション10秒以下と、それでも全然悪い精度でなく、こちらは10万円代半ばと一気に買いやすくなっています。他にも型番にECが付いているモデルは同様のエンコーダーがついていて、中でも最高機種のCEM120EC2は最大荷重52kgでピリオディックエラーが0.15秒以下と、ものすごい性能ですが値段も80万円程度と、こちらもものすごいです。でもこの対荷重でこの性能なら、十分価値ありではないかと思ってしまいます。他にも、ウェイトバーの取り付けも工夫がしてあって、回転軸からずらしてありぶつかりにくくなっているなど、各所に色々な工夫がしてあるようです。

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店長のMさん、すっかり元気そうです。机の上にもiOptronの赤道儀がのっかています。

三基光学館の特徴は何と言ってもアリガタプレートでしょう。下の写真を見てもわかるように、各種サイズのアリガタプレートを自前で取り揃えています。簡単な穴あけくらいなら、写真奥に写っているボール盤でサクッと空けてもらえるそうです。垂直な穴を自宅で空けるのはなかなか難しいので、ありがたいかもしれません。私は、ジャンクボックスに転がっていたVixen規格のアリガタを長さ別に2種類、あとC8用に富田式ロックを購入しました。

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さて、面白いのがここからです。店の中には天文関連の書籍や雑誌も置いてあるのですが、ランダウ=リフシッツの場古典や砂川先生の量子力学など、あまり天文に関係ない本が一部並んでいます。理論物理系と聞いていたので、それでもここまでは驚かなかったのですが、「他にも恩師の本が...」とのことなので聞いてみると、T先生の宇宙物理学という本が置いてあるというではありませんか。あれ?と思い、何でよく知っているT先生が...?とよくよく聞いてみたら、何と1990年代の何年間か同じ大学の同じキャンパスにいたことが判明しました。研究室までは同じではないですし、歳も少し離れていたのですが、同じ建物の同じフロアに一時期一緒にいたことは間違い無いので、当時、もう25年くらい前のことですが、顔を合わせていても全くおかしくありません。おおーっ!と一気に盛り上がり、いろいろ話が進みました。その当時実は私もこの近くに住んでいたので、地元ローカルな話から、店長さんの卒業してからの天文遍歴など、この業界の裏話とかも交えていろいろ聞くことができました。富山に来たY君の話も当然話題にのぼりました。Y君は昨年末に三基光学館に訪れたそうです。店長から見たら同じ天文部の後輩にあたるとのことです。彼みたいな若い子にはやはり期待してしまうというのは、私も店長も共通した意見でした。

VixenのVSDの話や、PENTAXのEDHFとSDHFの違いの話、TAKAHASHIの大型屈折の苦労話など、これまで知らなかった話も面白かったです。CCDにゲイン設定がないというのは目からウロコでした。露光時間で調整するだけなんですね。確かに原理を考えたらそうかと妙に納得し、これまでCMOSカメラしか触ったことがないことを思い知らされ、いろんな意味で新鮮でした。そんな中で印象深かったのが、ものを仕入れて売るというよりも、調整なども含めてお客さんと自分自身も楽しみたいという言葉でした。この思いがあるので、過去のショップでなかなか合わないこともあり三基光学館として独立したとのことです。でもせっかく独立しても秋葉原が遠いのが辛かったそうで、毎回実家の相模原から2時間くらいかけて秋葉原まで通っていて、週何日かは寝袋でお店に泊まっていたそうです。それで体を壊してしまい、やっとここ相模原の実家の店舗に落ち着いたとのことです。新しい店舗では目の前の駐車場で観望会をやったりして、地元の人たちや近くの同級生にも好評だったとのことで、秋葉原だとできなかった試みができているようです。神奈川では唯一の天文ショップのはずなので、近くの天文ファンにとっては便利になるのではないかと思います。


すごく盛り上がったのでついつい長居をしてしまい、結局3時間ほど話し込んでから帰路につきました。 あいにく平日だったので他のお客さんがほとんどいなかったのですが、あまりに長時間話していて申し訳ないくらいでした。でも店長さんからも楽しかったと言ってもらえたので嬉しかったです。お仕事の邪魔になっていなければいいのですが、私も久しぶりに天文談義で長時間話すことができたので、とても楽しかったです。

実はここ、妻の実家のすぐ近くで、すごく馴染みのある場所です。妻の実家からわずか2kmくらいの距離なので、歩いてもいけないことはないくらいです。今回は長居しすぎて実家の方には寄れなかったのですが、今度から妻の実家に来た時には必ず三期光学館の方に立ち寄ることになりそうです。

さらに川の方に目を向けると、歩いて1kmもないくらいで行くことのできる「相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら」があります。タガメを見ることができるなど、オススメスポットです。三基光学館に行った際には、こちらもぜひ立ち寄ってみてください。