バイアスノイズで少しやり残したことがあるので、試しておきます。


疑問: バイアスフレームをマスターバイアスで補正してみたら?

前回、バイアスフレームを何枚かスタックしてリードノイズを求めてみましたが、枚数のルートで減っていくはずのリードノイズが実際には理論通りに減っていきませんでした。すべてのバイアスフレームに載っている共通のノイズがあると考えられたからです。

それでは、多数のバイアスフレームをスタックして最後に残った共通のバイアスノイズ(PixInsight用語では「マスターバイアス」というそうです)で、各バイアスフレームを補正してから、改めて何枚もスタックしたらどうなるのでしょうか?面白そうなので試してみましょう。


予測

単純に考えるとこんな予想ができます。
  • 前回の測定で、最後まで残った全バアスフレームに共通にあるノイズがさっぴかれるので、理想的に枚数のルートに比例してノイズが少なくなっていく。
  • 最終的にはあるオフセット(一定の輝度という意味)を持った、のっぺりした画像になる。
この予想は、実際に試す前に頭だけで考えたものです。さて本当にそうなるのか、もし違ったとしても実際にどこまで迫れることやら。


測定

さて、実際に試してみましょう。

マスターバイアスは再現性もチェックするために、前回撮影したのとは別に新たに撮影し直しました。枚数ですが、できる限りノイズの少ないものということで、1024枚重ね(て平均し)たものにします。このマスターバイアスで各バイアスフレームを先に補正してから1024枚スタックします。それでもノイズは単に理想的なものを1024枚重ねたものより、(マスターバイアスが足し合わさった分)ルート2倍大きくなるはずです。その分だけ理想的な枚数のルートでノイズが改善されるというのからはずれてくると思います。(と、ここら辺のズレくらいまで実際の測定前に頭の中で考えました。)

また、バイアスフレームも新たに撮影しました。マスターバイアスを作った際の1024枚でもいいのかと思ったのですが、それだと同じものから同じものを引いただけになってしまい、本来残って欲しいノイズもゼロになってしまうかと思ったからです。


結果


今回も1、4、16、64、256、1024枚の比較です。青色の理想的な場合と、緑色のマスターバイアスで補正されたもの赤色のマスターバイアスで補正されていない(前回と同じ)ものを載せています。あと、わかりやすいように縦軸をlogスケールにしました。理想的だとグラフは直線になります。

03_readnoise_vs_gain_02_masterbias


考察

さて、結果を改めて見てみます。マスターバイアスで補正したものは明らかに理想的なラインに近づいています。1024枚の時は同じ程度の(相関のない)ランダムなノイズを2回足し合わせていることになるので、理想的な場合に比べてルート2倍程度大きくなるはずです。無相関なノイズは足しても引いても2乗和のルートになるので、ルート2倍ということです。1.4倍くらいのはずが、実際には1.8倍くらいなので、それでも理論値より少しだけ大きい値になっているようです。256枚のところにも少なからずその影響が出ています。計算上は1.25のルートなので、1.18倍ですが、実際には1.24倍です。さらにマスターバイアスの枚数を増やせば1024枚のところでももっと理想的なラインに近づいてくるでしょう。


少し補足です。まずは1枚重ねで単純にマスターバイアスを引くことを試したのですが、平均値が同じものを差っ引くことになってしまうので、ADU(輝度)が0付近に行ってしまい、その影響で標準偏差も0に近い小さな値になってしまうことがわかりました。そのため次のようにして解決しています。
  1. まずマスターバイアスの平均値の半分の輝度を持ち、標準偏差0の全くのっぺりした画像を、PixInsightのNewImageで作成します。
  2. それをマスターバイアスから引くことで、マスターバイアスの平均値を半分にしました。
  3. そうやって作ったマスターバイアスを、それぞれのバイアスフレームから引きます。
  4. その結果、平均値が輝度0より十分に大きな、マスターバイアスで補正されたバイアスフレームを作り出しました。
IMG_6322


この過程を経て初めて正しそうな結果を得ることができました。


もう一つ、実際に処理した画像を比べてみましょう。左上の奥のがマスターバイアス補正をしていないもの、右下の手前の画像がマスター補正をしたもの。ともに1024枚スタックした時の画像で、輝度は揃えてありますす。

IMG_6328

PCの画面を直接撮影したので、モアレが少し残ってしまっています。見にくいところもあると思うのですが、それでもマスターバイアスで補正をすると残っていた縦線が明らかに消えているのがよくわかると思います。



まとめ

今回わかったことまとめておきます。
  • 全バイアスフレームに載っている共通のコモンノイズが存在する。
  • そのノイズは、多数枚のバイアスフレームをスタックして作ったマスターバイアスを使って、補正することができる。ただし、オフセットごと補正してしまうことに注意。
  • バイアスコモンノイズをさっ引いたバイアスフレームはかなり理想的なランダムノイズに近い。
と言ったところでしょうか。

うーん、今回はかなり予想通りにいったので、結構満足です。予測できなかったところは、マスターバイアスで単純に補正すると平均値が0になってしまい、ばらつきも少なくでしまうことでした。これは通常の画像処理でいう、オフセットをあげて暗い部分を切ることに相当します。

というわけで、画像処理は嘘をつかないということがかなりわかってきました、、、と言いたいところなのですが、すでに少しダークノイズを試していて、こちらはなかなか一筋縄ではいかないみたいです。また余裕ができたらまとめます。


それはそうと、今回新たにバイアスファイルを2000枚ほども撮影してしまいました。すでに合計3000枚、あぷらなーとさんにだんだん迫ってきてしまいました。やばい、これはやばい。まっとうな道を行きたかったのに(笑)。