1月9日、ここ最近の北陸の冬本当にめずらしく晴れ渡っていて、透明度も高そうだったので、新月期ということもあり平日ですが撮影を試みました。でも次の日は東京行きで始発に近い新幹線で移動です。あまり無理はできないので、撮影開始後できるだけ放っておけるようにセットアップしました。

最初に結果を示しておきます。ベテラン勢から見たらまだまだかもしれませんが、私としては自宅からこれだけ写るなら結構満足です。

light_BINNING_1_integration_DBE_PCC_AS_PS5





目的

今回の目的は、撮影はもちろんですが、月が出ていない時のQBPの効果を知ることです。

満月の日の撮影では、露光時間が約4倍に伸びました。月明かりが太陽光の反射で白色光と仮定した場合に、QBPの波長領域から考えた光量変化からの露光時間の伸びの予測4倍と、よく一致しました。

今回は新月期で、月の光がない場合にQBPで街明かりがどれくら除去できるかを見たいというのが目的の一つです。


ターゲット天体

ターゲットはいろいろ迷って、今のFS-60Qの焦点距離600mmとフルサイズの6Dの画角で撮りやすいものを考えました。計画の段階ではクラゲ星雲だったのですが、これをなぜか間違えてパックマン星雲を導入して明るい北西の方向を指してしまい、あれ?あんな方向だったかなと思い、さらになぜかクラゲに行く前にすぐ隣のモンキーを見たら気に入ってしまい、モンキーに決定。モンキーとクラゲをいっぺんに入れることも考えましたが、画角がギリギリなのでこの日はモンキー一本に決めました。フラットナーを購入したので、モンキーとクラゲの同時撮影はまたいつか試したいと思います。

でもなんでこんなことを書くかというと、最近はplate solvingがひたすら快適で、位置決めがものすごく簡単にしかも精度よく、再現性もありで進められるので、途中で迷っても全く問題ないからです。最初のラフな導入から、EOS6Dでの自動撮影、plate solvingでの解析と座標決定、ずれの赤道儀の位置へのフィードバック、再撮影と解析まで、全部リモートでできます。最近のASiairが羨ましくてまたplate solving始めたのですが、あまりに便利なので、そのうちにまとめ記事にでもしようかと思っています。


機材セットアップ

最近は自宅セットアップはほぼ固定です。でも先日のスターベースでフラットナーとレデューサーを購入したので、これからはちょくちょく入れ替えての撮影になると思います。
  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO3200、露光時間5分x25枚、計2時間5分
  • ガイド: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ、PHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 日時: 2019年1月9日、21時半頃から
  • 月齢: 3.4


撮影

さて実際の撮影です。その日の家族との夕食を振り切って三日月の地球照の撮影をしたのは前回書いたのですが、家族が食べ終わった後に戻って、一人寂しく夕食をとり、その後赤道儀を設置して撮影開始です。

外でのセットアップは、SharpCapでの極軸と、BackYardEOSでのピント合わせ、CGEM IIでワンスターアラインメントでの初期アラインメントだけです。あとは外でやることはないため一旦自宅に入ります。撮影もStick PCを用いてRemote Desktopで繋げているため、自動導入とPlate Solvingでの座標決定まで含めて、自宅でヌクヌクしながらなので非常に快適です。

実際の撮影ですが、露光時間を決めるためにいつも撮影しているくらいの設定として、ISO3200で露光時間3分で一枚撮ってみたのですが、まだまだ全然暗いです。とりあえず5分露光で写してみてびっくりしました。下がその撮って出しJPEG画像でなんの加工もしていないものです。すでにこんなにコントラストがあります。

LIGHT_6D_300s_3200_+3cc_20190109-22h27m23s267ms

背景の明るさをみると、まだ露光時間を伸ばせそうですが、5分でも私のこれまでの撮影の中では最長の部類に入るので、成功率を上げるために今回は5分で行くことに決めました。

ちなみにQBPフィルター無しの場合は、今回撮影することができませんでした。理由はフラット画像をその日のうちに撮る時間がなくて、フィルターを外してしまうとフラットが合わなくなる恐れがあったからです。その代わりに1年ちょっと前に撮った馬頭星雲が、同じ鏡筒、同じカメラ、同じ場所で、この日も月はなく透明度が良かったと覚えているので比較してみます。露光時間だけは違っていてこの時は3分で明るくなってまって、これ以上時間を伸ばそうとは思えなかったです。こちらも撮って出しJPGでなんの加工もしていません。

HORSE_LIGHT_6D_180s_3200_+10cc_20171128-01h26m49s143ms

見ての通りフィルター無しでははるかに明るくて、Photoshopで両方の背景を測光してみると、馬頭星雲の方が今回のモンキー星雲に比べて、ほぼ2倍明るくなっています。露光時間が5分と3分で、明るさが2倍なので、2 x 5/3 ~ 3倍となります。言い換えると、QBPのおかげで光害は3分の1程度に抑えられ、露光時間でいうと3倍時間をかけることができるということです。

実はもう少し改善されるのかと思っていましたが、この値は光源の種類や、光害のひどさに強く依存します。3倍くらいしか変わらなかったということは、逆にいうとそれほどひどい光害地ではないということが言えるのではないかと思います。

撮影ですが、次の日のこともあるので、23時くらいから仮眠をとりました。午前2時頃起きて片付けたのですが、後で見てみると0時過ぎで赤道儀が端まで行ってしまっていたみたいで、30枚中5枚が失敗でした。それ以前の25枚は星像を見てもほぼすべて点像で、全部成功。赤道儀がきちんと動いていた時だけ考えたら100%の成功率です!


画像処理

問題は画像処理でした。明るい恒星が赤でサチッてしまいます。赤だけ考えたらすでに露光時間が長すぎるか、ISOを落とす必要があるかもしれません。一方、青と緑は全然余裕があるので、例えばIRフィルターを入れて恒星の赤のサチりを抑えるとか、HDRように短時間露光の画像を撮っておくことなどを考えた方がいいのかもしれません。

実は関東に行っている間に、Light画像と以前撮ったBias画像だけで一旦処理したのですが、やはり周辺減光の影響が見られたので、自宅に帰宅して時間に余裕があった今日、PCの画面を元にフラット画像を撮影して再度処理をすることにしました。リニア処理は基本的にはPixInsightです。Ditherしているので、Dark補正はしていません。Integration後、DBEでカブリを取り、PCCで色合わせをしました。フラット画像は別で撮っているので、空からくるカブリはどうしても残ってしまいますが、私はPixInsightのDBE (DynamicBackgroundExtraction)で困らないレベルになります。ストレッチはAS (ArcsinhStretch)である程度出してから、Photoshopに引き渡しました。

問題はPhotoshopに引き渡す時点で、すでにいくつかの恒星が赤飛びしてしまっていることでした。いろいろ考えたのですが、Photoshop上でRedとGreenの差の絶対値を取り、星マスクを作ることで赤飛びしている星だけをうまく引き出すことができました。色バランスがずれてしまっていやなのですが、今回は仕方ないので、このマスクを使って赤飛びしたところを抑えました。こうして仕上げたものが、最初の画像になります。


QBPフィルターについて

今回は月が出ていなければ、QBPがあると自宅の庭の場合3倍ちょっとの露光時間を稼ぐことができることがわかりました。赤飛びなどの画像処理は多少苦労しますが、個人的には庭撮りでこのクオリティーなら、もう相当満足です。

新月期の休日前には遠くに足を延ばすかもしれませんが、月が出ていたり、新月期でも平日ならもう庭撮りで数を出した方が全然満足度が高いです。QBPフィルターがなければ、とてもではないですがこのような感想にはならなかったと思います。

自宅取りの見通しが出てきたので、もう少し真面目に撮影に取り組む気になってきました。先日フラットナーとレデューサーを手に入れたのも、このQBPの影響が大きいです。