天の川の撮影記事を書いていますが、星が好きな天文っ子が天の川を撮影をしたい場合、初めて購入するカメラはどのようなものがオススメかという観点でメモしておこうと思います。

まず、お小遣いやお年玉などをやりくりして買うことになるので、高級機というわけにはいきません。だからと言ってコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)クラスだと、できることがかなり限られてきてしまいます。やはりここは一眼レフカメラで、入門機クラスを狙うのがいいのかと思います。今の日本で入門機クラスの一眼レフを選ぶとなると、ほぼCanonとNikonのどちらかからになるかと思います。他にミラーレス機も選択肢に入るかもしれませんが、あまり詳しくないので今回は考えないことにします。

一般的な写真を撮る場合Nikonに人気があったりしますが、星の撮影に限って最初に買うカメラと考えると、Canonの方が有利なように感じます。入門機から中級機までは長くCanon人気が続き、ハイエンド機では最近はNikonのD810Aが人気があるようです。CanonはEOS kissシリーズ、60D、6Dと比較的低ノイズのカメラがランクに応じて手の届く価格で販売されているのが嬉しいです。と言ってもkissシリーズはモデルチェンジを繰り返していますし、60Dもまだ現役ですが発売開始からはだいぶん立っています。6Dは後継のMark IIが発売されました。



おそらく今回最初のカメラということで、ターゲットとなるのはセンサーがフルサイズよりも少し小さいAPS-Cサイズの、比較的購入しやすいものになるかと思います。子供が新品で買うには60Dでもかなり高額な部類になるのかと思いますので、ここはkissシリーズ一択になるかと思います。

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娘のNatsuがこれまでためたお年玉を全部合わせて購入した、
我が家初の一眼レフEOS kiss X7。
当時お年玉残額残額2000円だとか。 


ではkissシリーズのどれを狙えばいいのか?普通は現行機種のX9かX9iになりますが、X9かX9iの違いはオートフォーカスについてが主なので、マニュアル操作がメインの星撮りにはあまり関係ないとすると安価な方のX9で十分かと思います。ひと世代前のX8iやX7iもまだ新品で手に入れることはできるようなので、こちらも候補になると思います。今あげた4機種はどれもバリアングル液晶付きです。液晶モニターをカメラ本体とは独立に傾けることができるので、撮影時カメラを大きく傾ける場合がある星の場合にはかなり便利な機構です。娘のNatusはそれでも予算が足りなかったのと、バリアングルの価値もあまりわかっていなかったので、バリアングルなしのX7にしましたが、今の所不満なく使っているようです。

結局のところ、天文っ子が最初に選ぶ「新品の」一眼レフというとEOS kissシリーズがおすすめということになります。

さて問題はここからです。天の川などの星景写真だけならいいのですが、星雲を撮影しようとすると上のカメラではどうしても不満が出てしまうかもしれません。理由は、星雲の赤い色をカットする赤外線カットフィルターというのがあらかじめどのカメラにも取り付けられてしまっているからです。そのため、星雲を撮影してもどうしても色が薄いということになりかねません。これを解決するためには、カメラに取り付けられている赤外線カットフィルターを取り外す必要があります。これを天体改造とか天体改造カメラにするとか言います。これは素人になかなかできるものではなく、普通は専門の改造業者にお願いすることになり、3万円!ほどの作業費が発生します。

さらに、天体改造をしたカメラはホワイトバランスが崩れてしまうので、星以外の通常の撮影をするのが大変になります。例えばホワイトバランスを無理やしずらしたり、外付けの赤外線カットフィルターをつけたりと、一工夫する必要がありあます。どうしてもバランスが取れなくて不満が残る場合もあります。天の川などの星景写真までで抑える自信のある場合は天体改造は無理にする必要はありません。星雲などのHα線という赤い色を鮮やかに出したい場合に必要になるだけです。また中には星雲を色が薄いながらも楽しんでいる人たちもいるということも事実です。

なけなしの全財産でカメラ本体を購入して、さらに改造にというわけにはなかなかいかないと思うので、ここで出てくる手段が、ヤフオク専門店などであらかじめ天体改造されているカメラを探すというものです。ただし、この場合はほとんど中古になります。初めて購入するカメラで中古を勧めていいものなのか?しかも改造済みカメラの場合にはレンズもついていない場合がほとんどです。実際にはレンズどころか、電池や充電器などの周辺機器が全くついていないケースも多々あります。周りに詳しい人がいればなんとかなるのですが、カメラが初めてで周りに聞く人がいない場合には、中古はなかなかオススメすることはできません

中古でもいいのでどうしても安く仕上げたいという天文っ子は、まずはカメラに詳しい人と仲良くなるのが先かもしれません。仲良くなると意外に入門クラスのレンズとかは余っていることも多いので、もしかしたら格安で譲ってくれるかもしれません。

それでも値段的には相当の魅力があります。中古の天体改造カメラまで視野に入れると、実はなんと低ノイズで一時期名を馳せた60Dが手に届く範囲に入ってきます。ネット上を丹念に調べると、たまに60Dの天体改造カメラが出ています。これは新品のEOS kissシリーズの本体価格とほぼ同じか、少し高いくらいです。こういったものを気長に出るのを待つという手もあります。kissシリーズの天体改造済みのカメラも比較的出回っていて、こちらを最初から狙うのも十分ありかと思います。


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我が家2台目の一眼レフEOS X7。バリアングルで便利です。
こちらは天体改造済みの中古で購入。



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上のX5と大して違わない値段で購入したEOS 60D。これもバリアングルです。 


最後に蒸し返すようですが、新品のもう一つの利点はレンズ付きがセットで買えるということです。標準レンズは使いやすいものが選ばれていますし、値段の割に性能もいいので、最初はレンズ付きの新品のほうがいいと考えるのも一理アリです。実際娘のNatusもダブルズームキットを買って、最初からレンズが2本あったのでかなり活用することができました。


まとめると、
  • 星を撮るカメラを考える場合、天体改造まで視野に入れて考えたほうがいい
  • そうすると新品だけでなく、中古も最初から考えたほうがいい
  • レンズも含めて考えると新品ならkissシリーズがお手軽で狙い目
  • 天体改造まで考慮して中古も考えたら中級機の60Dクラスも視野に入ってくる
と言ったところでしょうか。


でもこうやって考えると、値段のことといい、中古を考えなければならないことといい、なかなか中高生には厳しい趣味なのかもしれません。高校生ならアルバイトを頑張って、いい機材を最初から手に入れるというのもアリかと思います。私も十分な大人ですが、望遠鏡だけでなく、カメラの沼でもいつも苦労しています。それでも綺麗な天体を撮りたいと思うのは何故なのでしょう?業(ごう)なのですかね?


  1. EOS kissで天の川を撮ろう (その1): 撮影の準備  
  2. EOS kissで天の川を撮ろう (その2): 実際の撮影  
  3. EOS kissで天の川を撮ろう (その3): 画像処理  
  4. 番外編: 天文っ子のためのカメラ選択 
  5. 番外編: EOS 6Dで天の川を撮ろう