一眼レフカメラを持っていて、星を撮ることに興味があるけど、かなり難しいんじゃないかと思われていませんか?

今回は中2の娘のNatsuが持っている機材で実際に撮影をしてもらいます。挑戦してみるのは天の川です。天の川なんて敷居が高いと感じるかもしれませんが、星雲や星団に比べたら望遠鏡なども必要なく、初めての夜空の写真としてはちょうど手頃なターゲットで、満足感も得られます。マニアが「うーん」と唸るような写真を撮るのは簡単ではないですが、天の川を写してみるだけなら意外なほど綺麗に、しかも入門用の機材でも十分に写ります。自分で撮った天の川の写真は格別ですよ。

というわけで今回は入門記事。一眼レフカメラに興味を持っている方、一眼レフカメラを買って星の写真を撮ってみたいという方が対象です。レンズも標準セットについてくるものを使います。


機材

まずカメラ本体ですが、ここではNatsuが愛用しているCanonのEOS kiss X7で試すことにします。一眼レフとしては一番買いやす部類の入門機です。軽量で女の子が持っても全然楽に扱えそうです。レンズはダブルズームキットについてきた二つのレンズのうち、より広い範囲を写すことができる焦点距離18-55mm 、絞りF3.5-5.6の方を使います。

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Natsuの愛機EOS kiss X7

もちろん一眼レフカメラならNikonなど他のメーカーでも構いませんし、レンズも焦点距離が短めのものなら入門用のもので構いません。もっというと、一眼レフカメラでなくても構わないのですが、「シャッター速度(露光時間)」と「ISO」と呼ばれる感度を調整できるカメラなら試してみる価値はあるかもしれません。最近のスマホのカメラは意外なほど感度がいいものも多いので、新しい機種なら天の川を写すことも可能かもしれません。一応ここでは、EOS kiss X7相当の入門クラスの一眼レフカメラで試していくことにします。

そのほかにもう一つ、どうしても必要なものがあります。三脚です。あまり軽くてグラグラしたものはブレてしまうかもしれませんが、普通にカメラ屋さんで売っているものなら十分かと思います。ものすごく頑張れば、うまくカメラの下に何かを入れて多少傾けることで三脚なしで撮影することも不可能ではないですが、逆に大変になるばかりなので、三脚は一つは持つことをお勧めします。ちなみにうちの娘は中国製の無名ブランドの三脚を中古で格安で手に入れたもの使っていますが、とりあえず最初はこんなのでも大丈夫です。

あと少し、無くてもいいのですがあると便利なものを書いておきましょう。一つはレリーズ。リモートシャッターでもいいです。シャッターを手で押すとどうしてもブレてしまいます。レリーズやリモートシャッターがあればぶれずにとることができます。まあ、最初は気をつけて手で押すのもいいでしょう。でもブレが気になるようになったら少し考えた方がいいです。

もう一つがレンズヒーターです。天の川が良く見える夏といえども、長時間撮影していると湿気でレンズが曇ることがあります。ヒーターは曇りを抑えてくれますが、これも最初はなくても構いません。しばらくの間は曇らないでしょうし、もし曇ったラレンズペーバーなどで拭き取れば大抵は大丈夫です。拭き取るのが面倒と感じてきたらレンズヒーターを探してみてください。



光害のない場所を探す

天の川を撮影するときにとにかく一番重要なことは、暗い場所を探すことです。どれだけいい機材を持っていても、都会の真ん中で天の川を写すことは至難の技です。逆に、ものすごく光害の少ない場所で撮影したら、入門用の機材でも驚くほど綺麗に天の川を写すことができます。街から離れた場所、例えば夏のキャンプなんかに行ったときに、空を見上げたらものすごい星が見えたという経験は一度くらいはあることかと思います。そのような場所なら天の川撮影は十分できるはずです。

暗いところに行って車から降りて、あれ?何も見えないと思っても諦めないでください。車のライトで、目が明るいところになれしまっている状態では天の川は見えません。少なくとも暗い状態で何分か待って、改めて天の川が目で見えるか確かめて見てください。空にうっすらと白いモヤモヤしたものが天の川です。人間の目は光を溜め込むことができないので、写真ほどはっきりとは見えないことも覚えておくべきでしょう。うっすら見えるくらいならカメラで撮れば十分に見えてきます。


季節と時間も大事です

場所と同じくらいに必要なのが、季節と時間です。夏の方が濃い天の川を楽しむことができます。冬も天の川は出ていますが、夏に比べたらとても薄いです。そもそも天の川とは地球から見た銀河の断面方向を見ていて、夏の南の方角が銀河の中心方向を見ることになるからです。基本的には春先なら夜中以降の遅い時間、夏なら一晩中、秋なら日没からしばらくの間と思えばいいでしょうか。どの時期でどの時間に見るといいかもっと調べたい場合はプラネタリウムソフト、例えば無料のStellariumなどを使うといいでしょう。




もう一つ見栄えに大きく関係するのが月です。月は天の川に比べてものすごく明るいので、基本的に月が出ているときは天の川撮影には向きません。月が邪魔するかどうかも先ほどのStellariumで調べることもできますが、月の満ち欠け月の出入りの時間がわかるサイトもありますので、利用するといいでしょう。私はiPhoneで「Diana」というアプリを使って調べています。アンドロイド用もあるみたいです。


透明度

さらにもう一つ重要なことがあります。もちろん天気は重要で雲が出ていたらダメなのですが、それだけではなくて「透明度」というのが天の川の見え方にかなり効いてきます。これはなかなかわからないかもしれませんが、昼間に遠くの山がはっきり見えるなんていう日は透明度が高い日が多いです。富山では立山の見え方が日によって大きく違い、たまに驚くほどはっきり見えます。こんな日は天の川日和です。


実際の遠征

こうやって見ると、実は天の川を撮影できる日は思ったより少ないことがわかります。夏前後で、暗い場所に遠出ができる休日前とかで、新月期に近くて、天気が良くて、かつ透明度が高い。都会に住んでいてい忙しい人だと、年に何日チャンスがあるかわからないくらいかもしれません。それにもめげずに撮影に行くわけですから、チャンスだと思った日にすぐに出発できるように事前準備をきちんとしておく必要があります。

まず忘れ物はないか?メインの機材は
  • カメラ本体、レンズ、三脚、レリーズ、ヒーター
などです。でもそれだけではありません。例えば
  • メモリーカードは入っていますか?十分な空き容量はありますか?
  • カメラの電池は充電されていますか?予備の電池もあった方がいいかもしれません。
  • 小さなライトがあった方がいいかもしれません。スマホのライトなどでもいいですが、他の人の迷惑にならないように、あまり明るくないもの、できれば赤いライトが望ましいです。赤いライトがなければ、赤い透明のフィルムをライトのところに貼っておくだけでもいいです。赤いフィルムがなければ、サランラップに赤いペンで色をつけて貼っておくだけでもいいです。
夏だからよっぽど大丈夫かと思いますが、山の上などは思ったより寒いかもしれません。
  • 防寒対策
もしておいた方がいいともいます。また、虫刺されに悩まされることも多いので、
  • 虫除け
もあった方がいいでしょう。あとはお腹が空いたときの夜食とかでしょうか。

あと、安全にも気をつけてください。暗いところなのでなかなか見通しがききません。できるなら昼間に一度下見に行っておいた方がいいかもしれません。山の中だと熊が出ることもあります。音楽を鳴らすなど、音を出していた方が動物たちも寄ってこないので安心です。最初はできるなら一人よりも、複数人で行く方がいいと思います。天の川の絶景ポイントには天文を趣味とする先客がいるかもしれません。話しかけてみると色々教えてくれるかもしれませんし、何より仲間がいた方が何かあったときも安心です。



撮影練習

さて、実際の撮影に入りますが、以下で説明することを時間のある昼間のうちに練習しておいた方が絶対にいいと思います。昼間の明るいうちに色々なスイッチを確認しながら、それこそカメラを見なくても手で触るだけでどこにどのスイッチがあるかを知っておくと、当日の暗い中での撮影がものすごくスムーズになります。星の撮影は基本的に全てマニュアルモードで行います。
  1. カメラの上部右のダイアルを回してMのところに合わてマニュアルモードにします。もしレリーズを使う場合は、自動的に外部からコントロールできるバルブモードにしておきます。
  2. 実際によく忘れるのが、レンズ本体の設定です。レンズのところに切り替えスイッチがありますが、マニュアルフォーカスモード(MF)、手振れ補正(STABILIZER)はオフにします。
  3. カメラの背面のメニュー(MENU)ボタンで色々設定します。まず、撮った画像の保存ファイル形式はできるだけいいものを選びましょう。JPGなら一番圧縮率が低くファイルサイズが大きいもの。できるなら後で色々加工しやすいようにRAWで残しておいた方がいいです。私はファイルサイズは大きくなりますが、基本的にRAW+JPGで両方とも残すようにしています。
  4. ホワイトバランスは白色蛍光灯か白熱電球のほうが夜空の色に近く見えます。本当はきちんとホワイトバランスを合わせた方がいいのですが、RAWで撮っておけば後から変更できるのでそれほど気にしなくてもいいです。オートホワイトバランスは何枚も撮影していると途中で色温度が変わることがあり、統一処理ができなくなるため、やめておいたほうがいいと思います。
  5. 絞りはレンズの一番明るいところに合わせます。Fの値を一番小さくするという意味です。今回の標準レンズの場合F3.5にします。星像が変な形になる、周辺減光がひどいなどという場合は少しFの値を大きくして絞ります。注意することは、あえてきちんとF値を設定しないとFが勝手に大きくなったままになってしまって撮影してしまうことがあるので、必ず確認したほうがいいです。
  6. ノイズリダクションなどの機能は基本的に全てオフの方がいいと思います。ただし、後で画像処理をすることが前提です。画像処理をしない場合は長時間ノイズキャンセル機能はオンにしてもいいかもしれませんが、撮影できる時間が半分になってしまうので時間がもったいないです。
  7. 液晶画面の明るさは普通の設定だと明るすぎるののと、暗さに慣れた目を戻さないように一番暗くします。
  8. ピントを星に合わせるのは意外に難しいです。できるならば昼間に(距離はレンズによりますが)数キロメートルと十分離れたところを見ながらピントを合わせて、その位置でピント調節リングをテープなどで固定してしまいます。ちょっと高いですが、パーマセルテープが便利です。レンズによりますが、必ずしも無限遠の設定で本当にピントが合うというわけでもないので、きちんと確かめたほうがいいです。
  9. シャッターを押す際の星像のズレを防ぐために、レリーズやリモートシャッターを使うなら、昼間のうちに操作に十分に慣れておいて下さい。
  10. 一度、三脚に乗せてカメラがきちんと固定できているか、ガタがないか、方向を変えることができるかなどもチェックします。暗闇で三脚に固定するのも、カメラの向きを変えるのも、明るいところとは勝手が違います。
  11. 意外にも、レンズキャップや、レンズの付け替えなども暗闇では大変です。外したレンズキャップをしまう場所もあらかじめ決めておいた方がいいでしょう。
  12. 小さなライトを用意しておくといざという時に楽です。ライトには赤いフィルムを貼るなどして、暗闇に慣れた目を戻さないようにする工夫などが必要です。
  13. ISOや露光時間、F(絞り)を変える場合のスイッチの位置を改めて確認しておくといいでしょう。これらは暗闇で何度もいじる必要があるので、手探りだけでスイッチの位置がわかるようにしておく必要があります。
  14. 撮影した後に、何秒間画像を表示するかの設定も見直しておきましょう。4秒くらいが適当でしょうか。また、撮影画像を後から見る方法もきちんと確認しおきましょう。青い三角マークのプレイボタンですね。撮影画像を表示した状態で、拡大する方法も練習しておきましょう。撮影した画像のピントが合っているかどうか、その場で確認したくなるものです。

ここまでをとにかく昼間のうちに準備してしまいます。できるならば、これらのことは真っ暗なところでもできるように、暗い場所で何度も練習しておくことをオススメします。

さて実際の撮影ですが、本番当日の撮影をする前に余裕があるなら、別の日に事前に夜の星の撮影を試すといいです。多少周りが明るい自宅からとかでもいいので、夜空を写してみてください。意外に星が写ることにびっくりすると思います。十分な練習をしてから、本番の当日の撮影に向かいます。



実際の撮影

さて、いよいよ本番です。練習も繰り返して準備は万端なはずです。臆せずに撮影開始といきましょう。
  1. もし昼間にピントを合わせ忘れていた場合は、Live viewで明るい星を映してから、それを5倍か10倍で拡大して、一番小さく見えるところにフォーカスリングを合わせます。パーマセルテープなどで固定したほうがいいでしょう。慣れないとこれが一番難しいかもしれません。後から画像を見て、ああピントがずれてたと後悔することがないようにきちんと合わせましょう。
  2. ライブビューモードは楽ですが、カメラの温度が上がりすぎてノイズが出やすくなります。基本的にライブビューは切って撮影します。
  3. さて、天の川にカメラを向けます。方角ですが、天の川は東の空から出始め、時間とともに徐々に立ち上がってきます。夏だと南側にそびえ立つ雄大な天の川が楽しめることでしょう。目で天の川が見えるくらいならそちらにカメラを向けてください。
  4. 画角はこんなサイトや、Stellariumでも手持ちの機材を登録すれば(実はこの機能結構便利です。)計算できたりしますが、まずは実際に撮ってみた方が早いでしょう。18mmでも天の川の濃い部分なら結構な範囲が入るはずです。
  5. その際、水平度はきちんと取るといいでしょう。X7は水平出しの機能がないので、三脚についている水準器があればそれを利用するといいでしょう。
  6. ここから最後のパラメータ選びになってきます。ISO感度とシャッター速度です。ISO感度をいくつにするかは周りの明るさによるので、何枚か試し撮りをして決定します。感度はノイズに直結するので、ノイズが目立たない程度の最大のISOを探します。機種やレンズにもよりますが、ISO1600か3200くらいが適当かと思います。最初あまりノイズを気にしないのなら6400とかでもいいと思います。今回の撮影ではこれまでの経験上ISO3200に統一しようと思います。
  7. シャッター速度(露光時間)ですが、レンズの焦点距離や方角にもよりますが、30秒くらいまでだと拡大しなければなんとか星が流れずに見えます。余裕を持って20秒くらいまでが適当かもしれません。今回はの撮影では多少拡大してもいいように20秒にしようと思います。
  8. 実際にシャッタを切って(レリーズがあれば露光時間を設定してからレリーズのスタートボタンを押して)しばらく待ちます。一番ドキドキする瞬間です。露光時間の20秒がすぎて画面が液晶モニターに映し出されると思います。天の川は写りましたか?目で見るよりはるかに濃い天の川が見えているのに驚くことと思います。もしここでまだ、天の川としては大したことないなとか思ってもがっかりしないでください。画像処理でもう少しあぶり出して見栄え良くすることができます。
  9. その後、画角などを合わせ直して、何度か撮り直します。明るすぎたり暗すぎたりしたら、ISOを小さくしたり大きくしたりしてちょうどいい明るさになるように変更します。
  10. レリーズなどでずっと連続して撮影すれば、後からタイムラプス映像などもできますね。

とにかく、事前の練習がすごく有効だと思います。暗い中で、手だけでボタンの位置を覚えてしまうくらいにしておかないと、実際の撮影ではなかなか上手くいかないでしょう。

とりあえず今日はここまで。明日から3連休。高気圧で全国的に天気もいいようです。カメラを持って出かけましょう。私もこれから娘と一緒に実際の撮影に行ってきます。


次回は「その2」実際の撮影の様子です。
さらにその後、撮ってきた画像の処理を予定しています。できるだけ無料のソフトで済ませたいと思います。