5月26日の土曜日、やっと休日お時間の取れる昼間に晴れてくれました。星は夜なので平日で仕事があっても何とかなるのですが、太陽は昼間なので休暇でないとじっくり撮影できないのです。この日は午前中は曇っていましたが、午後からはそこそこの晴れ。CMOSカメラの比較に夕方まで太陽にじっくり時間を割くことができました。

太陽撮影のこれまでのことをまとめると、2月に太陽用にPSTをジャンクで購入。CMOSカメラでピントが合うように改造。その後、40㎜のPSTの口径を80㎜100㎜と増やす。当初はASI178MCで撮影していたが、ASI294MCでかなりの解像度で撮影できることを確認。今月初のモノクロのASI290MMを購入。どのカメラが一番きれいに撮れるのか確かめてみたいというのが現在です。

ASI178MCASI294MCでは、センサーの長辺が1/1.8inchと3/4inchで画素数が3096と4144ドットなので、一つの素子サイズはASI178MCのほうが小さく分解能が高いと言えます。一方感度はSNR1sを見てもASI294のほうが高いです。ただ、分解のそのものはASI294MCでもドーズ限界とコンパラなので足りていないわけではありません。そうすると感度だけでこれほど仕上がりが変わるのか?というのがこれまでの疑問点です。

新兵器のASI290MMは感度はASI294MCとほとんど同じ、モノクロなので分解能はさらにいいはずです。なので単純に考えたらASI294MCを超える画像が得られるのではと淡い期待を抱いているわけです。

前置きはこれくらいにして、まずはASI290MMを太陽撮影に投入した時の率直な感想を書いておきます。モノクロは圧倒的にエタロンの調整がしやすいです。カラーだとものかなり見にくかったノートPC画面でのHαの模様の確認が圧倒的に改善されました。これはカラーカメラでソフト上でモノクロ表示した場合でも全く太刀打ちできないくらい、モノクロカメラのPC画面での表示は改善されます。黒点やモジャモジャもよく見えるので、これでピントを合わせることも全然可能になります。これはもうわざわざし恵下まで見るまでもなく圧倒的にASI290MMの勝ちではと思うくらいでした。


測定1

これを利用してASI290MMでエタロンの回転角を少しづつ変えて撮影し、どのような状態が一番いい仕上がりになるかを試してみました。左上に黒点が見えたので、黒点を画面中心にしています。

撮影方法はこれまでと同じ、P.S.T.に口径10cm、F10のアクロマート鏡筒を取り付け、ASI290MMで撮影しています。露光時間は5ms、500フレーム撮影してうち400フレームをスタックしています。エタロンの角度以外はほぼ同じ条件にしていますが、エタロンの角度によって画面の明るさが変わるときはカメラのゲインを調整しサチらないようにしています。ゲインは270-280程度です。

撮影ソフトはSharpCapで、RAW16ビットでserファイルに書き出し、Autostakkert3!でスタック、ImPPGでデコンボリューションとアンシャープマスクをしています。比較しやすいように疑似カラー化はせずに、モノクロのままにしてあります。

結果です。エタロンを回転させていった順に載せていきます。トータルのエタロンの回転角は10度くらいでしょうか。微々たるものです。

2018-05-26-0708_0_lapl6_ap6277_IP
可視光撮影に近い状態といえます。黒点の周りに白いシミ
(名前はあるのでしょうか?)が見えていて、
Hαによる模様はまだほとんど見えていません。

2018-05-26-0708_7_lapl6_ap6307_IP
白いシミが小さくなってHαが目立ってきます。

2018-05-26-0709_0_lapl6_ap6297_IP
白いシミはさらに小さく、Hαが細かく出てきています。

2018-05-26-0709_3_lapl6_ap6311_IP
ここら辺がHαの分解能Maxでしょうか。白いシミはほとんど見えません。

2018-05-26-0709_6_lapl6_ap12697_IP
ピークは越えた感があります。


2018-05-26-0709_9_lapl6_ap6305_IP
Hαが薄くなってきています。

2018-05-26-0710_4_lapl6_ap6497_IP
再び可視光撮影に近くなります。

驚くべきことは、仕上がり具合がエタロンのちょっとした角度で全然違うということです。カメラの違いなんかよりも、まずはエタロンの回転角できちんと最高分解能を出せるようにすることが先決ということです。これまで太陽の下でのカラーカメラだとPC画面が見にくくて、どこら辺がいいのか全然判断できていなかったので、まったく精度も再現性もなかった(例えばこのページで奇跡の一枚とか言っていました)わけです。例えば、黒点の周りの白い大きなシミが見えているということは可視光撮影をしているのと同様に過ぎないということなどもやっと今回理解することができました。

PC画面と仕上がり具合の関係をだいたい把握できたので、ASI290MMならばこれ以降PC画面でエタロンの角度がどのくらいがいいのかその場で判断できるのかと思います。物凄く簡単にいうと
  • PCの画面で細かく模様が見えていると仕上がりの分解能も上がる。
  • ただしPCの画面の見かけの解像度は露光時間とゲインでいとも簡単に変わるので注意。
  • 模様が見えていないようでも、ゲインを落とすなどして暗くして細かい模様が見えてくるならばOK。
といったとことでしょうか。

同様の撮影を左上のもう一つの黒点周りでも行いました。順番に載せていきます。

2018-05-26-0742_2_lapl6_ap6443_IP
Hαの模様も見えていますが、まだ可視光撮影に近いです。

2018-05-26-0742_7_lapl6_ap6304_IP

2018-05-26-0743_4_lapl6_ap6604_IP

2018-05-26-0743_8_lapl6_ap6491_IP
ここら辺がMaxです。

2018-05-26-0744_1_lapl6_ap6444_IP

2018-05-26-0744_3_lapl6_ap5047_IP
PCの画面で見ていても下の方が明るくなり過ぎて
模様も何も見えなくなってしまいました。

こちらも結論は同じです。エタロンの一番いいところを探すことが、ひたすらHαの分解能をあげることにつながります。



測定2

さて、ASI290MMでエタロンの位置がある程度確定することが分かったので、次にエタロンをそこそこいい位置に調整して、その後エタロンに触らずにカメラだけ交換して撮影し、画像処理まで仕上げてみました。カメラ交換の際に毎回ピントだけは合わせ直しています。また、比較しやすいように同じ領域になるように画像をトリミングしています。


2018-05-26-0728_1_lapl6_a_red_IP_ASI178MC
ASI178MC


16_19_38_lapl6_ap2625_red_IP_ASI294MC
ASI294MC


2018-05-26-0709_3_lapl6_ap6311_IP
ASI290MM


エタロンは触っていないのですが、ピント合わせの関係上アイピース差込口に奥まで入っていないため、カメラ交換の際に光軸中心位置が変わってしまい、その後黒点がカメラ中心になるように赤道儀を振って合わせているので、明るいところの位置が変わってしまっているようです。そのことが分解能に影響している可能性があるのに注意です。

また、ASI294MCは間違えて動画でなく静止画で保存してしまったので、5ms露光ですが、2fpsくらいでゆっくり保存していたのでトータルの撮影時間は長く、500フレームで5分くらいかかっています。ちなみに、AutoStakkert!3で静止画を初めてスタックしてみたのですが、500フレームでも全く問題なくスタックできました。

そのような条件のミスはありながらも、結果を比べると分解能の差は明らかで、

ASI178MC<ASI294MC<ASI290MM

といったところでしょうか。モノクロのASI290MMが一番細かく見えていて、ASI178MCが冴えないです。ただしこれには二つの要素が絡んでいると推測しています。


1. まずはセンサーの一素子のサイズ。これだけ考えたらより小さいASI178MCが一番トクなはずで、仕上がり画面の分解能はASI294MC<ASI290MM<ASI178MCと上とは逆の順序になるはずです。ASI290MMはモノクロなので、分解能でも2倍トクするとしてもASI294MC<ASI178MC<ASI290MMという順序のはずです。ですが上のほうでも書いたように、一番粗いASI294MCでさえもドーズ限界と同等なので、物理的な素子サイズはあまり結果に効いてこないのかと思われます。あえていうなら、やはりASI294MCの素子サイズの粗さが少目立って、細かいところの描写がしきれていないように見えます。


2. もう一つ気づくことが、コントラストです。ASI178MCとASI294MCでは、ASI294MCの方が細かい描写は少し負けていますが、コントラストと言えばいいのか、模様の強弱はよりはっきりしていると思われます。実はこれは画像処理にも関係するのですが、ASI178MCの方が画像処理に苦労するのです。ASI294MCの方がはるかに簡単にこのレベルの画像が出ます。KYOEIのMさんがいっていたのですが、Full well(飽和電荷容量)の違いではないかと。ASI178MCもASI294MCも同じ14bitカメラですが、飽和電荷容量が全然違います。詳しくはここを見てください。もっと簡単に言い換えると、ASI294MCの方がよりノイズが小さいとも言えますし、ASI294MCの方がより実質的なダイナミックレンジが大きいとも言えます。


ではASI294MCとASI290MMの比較ではどうでしょうか?分解能はASI290MMの方が圧勝ですが、コントラストというか、立体感のようなものはASI294MCの方がまさっているような気もします。撮影したときのゲインが両方とも260と280でほぼ一緒くらいです。そのときのダイナミックレンジは11bitと9bitなので4倍くらいASI294MCの方がいいです。これが効いている可能性もありますが、単に影響の大きい画像処理のせいかもしれません。今一度できる限り同条件にして再比較してみたい気もします。

あと、ASI294MCの素子分解能はおそらく足りていないので、バローで拡大すると改善するかどうかも試してみたいです。それでも下の画像のようにASI294MCのセンサーの大きさを生かして、全体が一度にかなりの高解像度で撮影できるのは相当の魅力です。

2018-05-26-0811_0_lapl6_a_red_IP_RGB