バローレンズを使い太陽を拡大して撮影すると、干渉縞のようなシマシマが出てくるということに悩んでいたのですが、HBさんのコメントからニュートンリングであると判明し、カメラ側を傾ければ解決することが示唆されました。
少しまとめておくと
今回手に入れたTilt mountはASI製のもので、取り付けると下の写真のようになります。傾ける時のネジの長さが3mm位、ネジとネジの間の距離が5cmくらいなので、3/50 * 180/pi ~3.5度くらいまで傾けることができそうです。
その際に、傾けることにより焦点がずれるのではないかという心配もありますが、センサーサイズがASI178MCの場合1/1.8インチなので、長編で14mm程度。これを最大3.5度傾けた時、焦点距離のずれで0.84mm程度のずれとなります。ずれの許容範囲はDavid Cortner氏のThe slow blogによると、The New CCD Astronomyという本のp39に、問題になるくらいの焦点距離の位置の誤差が
で表されると書いてあって、例えば今回焦点距離400mm、口径40mmのF10のP.S.T.に5倍のバローをつけるとF50と等価なので
となるので、0.84mmに比べて十分大きいため許容できることになります。今回はP.S.T.を改造して口径80mmとかにしているので、一番小さくなることを考えると、Fが5とかになり、3倍のバローで見たときに、
とかになるので、上の0.84mmは問題になってくるかもしれません。その場合は傾きの角度をもう少し小さくすればいいのかと思います。
さて、今回のtilt mountをつけた場合と、つけない場合の比較です。2018/3/24に試しました。
上の写真を比べると分かりますが明らかに効果ありです。これで拡大しての撮影にも目処がつきました。このあと曇ってしまったので、実際の撮影はまた次の機会です。
あともう一つ、P.S.T.と一緒にジャンクでSolarMax40を手に入れたのですが、どうも当初からほとんど効果が見えないというか、像がおかしくなるので、とうとう分解を試みました。するとエタロン部分が壊れていて、二つの鏡が分離してしまっていることがわかりました。これではさすがに機能しないはずです。
まあ、壊れたついでなので色々見ることにしましたが、まずスペーサーですが、適当に割れたかけらのようなスペーサーを周り5箇所と真ん中に一つ配置しています。こんな形でいいのか?と思うのと、あとはどうも接着はオプティカルコンタクトのようでした。オプティカルコンタクトとは、機材表面がある程度以上に平坦になって来ると分子間力が働いてくっつくというものです。機材同士を同様の材質にすることもポイントなのですが、うまくクリーニングができたらまたくっつけることはできるかもしれません。もしくはピエゾ素子を3つ挟んでアラインメントと鏡間の距離を変えるようなものにするか。電圧を屋外で確保する必要があるので、ドライバを作る必要がありそうです。
あと、調整リングを回しての波長の調整機構ですが、何の事は無い、真ん中に棒が一本ついていて、リングを回すとその棒が押されてエタロンの中心部分に圧力を加えるだけです。エタロンはP.S.T.付属のものと同じく、スポンジ状のものの上に置かれている状態で、圧で微妙な角度が変わることで、透過波長を調整するだけのようです。コスト削減のためとはいえ、さすがにこれではきちんと調整するのは厳しい気がします。
少しまとめておくと
- バローレンズなどを使い拡大して撮影しようとすると、焦点距離を長くすることに等価なので、F値の大きな光学系になってしまいます。
- F値が小さいということは焦点距離に対して相対的に口径が大きいために、いろいろな方向から光がやってきます。
- 逆にF値が大きいということは相対的に焦点距離に対して相対的に口径が小さいということになり、光は光軸中心付近だけの限られた方向から来ることになります。そのために、カメラ付近に汚れなどがあると、一方向から来る光に照らされて汚れがセンサー面に影を落とします。
- これがバローで拡大して撮影するとゴミが目立つ理由で、一眼レフカメラではわざと絞りを絞ってF値を高くした状態で汚れを目立たせてから、センサークリーニングをするようです。
- ニュートンリングは一般的に平行に近い2つの平面に垂直に単色光(今回はHαなので単色光に近いはず)を入れて、その入射軸と同じ方向から見ると見えます。
- ニュートンリングが今回見えたこともゴミが目立つことと同じ理由です。そもそもセンサー面と、センサー付近の平行に近い面、例えば保護板やフィルターなどで、干渉縞ができるのですが、F値が低いといろんな方向からの光で拡散されて見えなくなっているだけで、F値が大きくなると一方向からの光で照らされるのでニュートンリングも目立って見えるようになります。
今回手に入れたTilt mountはASI製のもので、取り付けると下の写真のようになります。傾ける時のネジの長さが3mm位、ネジとネジの間の距離が5cmくらいなので、3/50 * 180/pi ~3.5度くらいまで傾けることができそうです。
カメラの下についているのがTilt mountです。
少し傾いているのがわかると思います。
少し傾いているのがわかると思います。
その際に、傾けることにより焦点がずれるのではないかという心配もありますが、センサーサイズがASI178MCの場合1/1.8インチなので、長編で14mm程度。これを最大3.5度傾けた時、焦点距離のずれで0.84mm程度のずれとなります。ずれの許容範囲はDavid Cortner氏のThe slow blogによると、The New CCD Astronomyという本のp39に、問題になるくらいの焦点距離の位置の誤差が
f^2 * 2.2 [um]
で表されると書いてあって、例えば今回焦点距離400mm、口径40mmのF10のP.S.T.に5倍のバローをつけるとF50と等価なので
50^2 * 2.2 = 5500[um] =5.5[mm]
となるので、0.84mmに比べて十分大きいため許容できることになります。今回はP.S.T.を改造して口径80mmとかにしているので、一番小さくなることを考えると、Fが5とかになり、3倍のバローで見たときに、
15^2 * 2.2 = 495[um] =0.495[mm]
とかになるので、上の0.84mmは問題になってくるかもしれません。その場合は傾きの角度をもう少し小さくすればいいのかと思います。
さて、今回のtilt mountをつけた場合と、つけない場合の比較です。2018/3/24に試しました。
P.S.T.に5倍バローをつけて撮影。センサー面の傾き無し。
ニュートンリングが見えています。
ボケているのはスタックしただけで、Wavelet変換などまでしていないからです。
ニュートンリングが見えています。
ボケているのはスタックしただけで、Wavelet変換などまでしていないからです。
同様にP.S.T.に5倍バローをつけて撮影。
Tilt mountをつけてセンサー面を傾けています。
傾けた角度は最大の半分くらいなので1.7度程度。
ニュートンリングが消えているのがわかります。
Tilt mountをつけてセンサー面を傾けています。
傾けた角度は最大の半分くらいなので1.7度程度。
ニュートンリングが消えているのがわかります。
上の写真を比べると分かりますが明らかに効果ありです。これで拡大しての撮影にも目処がつきました。このあと曇ってしまったので、実際の撮影はまた次の機会です。
あともう一つ、P.S.T.と一緒にジャンクでSolarMax40を手に入れたのですが、どうも当初からほとんど効果が見えないというか、像がおかしくなるので、とうとう分解を試みました。するとエタロン部分が壊れていて、二つの鏡が分離してしまっていることがわかりました。これではさすがに機能しないはずです。
エタロンの写真です。ガラスの破片のようなスペーサーが見えると思います。
くっついているように見えますが、撮影用にただ置いただけで、二つに別れてしまっています。
くっついているように見えますが、撮影用にただ置いただけで、二つに別れてしまっています。
まあ、壊れたついでなので色々見ることにしましたが、まずスペーサーですが、適当に割れたかけらのようなスペーサーを周り5箇所と真ん中に一つ配置しています。こんな形でいいのか?と思うのと、あとはどうも接着はオプティカルコンタクトのようでした。オプティカルコンタクトとは、機材表面がある程度以上に平坦になって来ると分子間力が働いてくっつくというものです。機材同士を同様の材質にすることもポイントなのですが、うまくクリーニングができたらまたくっつけることはできるかもしれません。もしくはピエゾ素子を3つ挟んでアラインメントと鏡間の距離を変えるようなものにするか。電圧を屋外で確保する必要があるので、ドライバを作る必要がありそうです。
右の黒いリングの真ん中に棒が出ていて、
それでエタロンを押すだけのものすごく単純な構造です。
それでエタロンを押すだけのものすごく単純な構造です。
あと、調整リングを回しての波長の調整機構ですが、何の事は無い、真ん中に棒が一本ついていて、リングを回すとその棒が押されてエタロンの中心部分に圧力を加えるだけです。エタロンはP.S.T.付属のものと同じく、スポンジ状のものの上に置かれている状態で、圧で微妙な角度が変わることで、透過波長を調整するだけのようです。コスト削減のためとはいえ、さすがにこれではきちんと調整するのは厳しい気がします。
続き P.S.T. (その12): 3度目の撮影で奇跡の一枚が
コメント
コメント一覧 (5)
SM2-40エタロンの記事で来ました。
私も落下品らしいフィルターを買ってしまいました。
ただ、エタロンが完全に破損までは行ってなくて、元々の位置からかなりズレている状態になってる程度だったので、ダブルスタック用としては機能しました。
しかし、やはり構造は酷いですよね。
元々のエタロンの組付け精度をユーザーに丸投げしてる感じで・・・。
PSTくらいの値段ならまだしも、SMだとそれなりに高価なのに。
ちなみに石川在住ですので、もし太陽観察イベントでもあれば(コロナ収まってからでしょうが)伺えるかも?
まきさんはじめまして。
エタロンをこの値段にしているのがそもそも驚異的なのかと思います。研究用だと一桁高かったりします。PSTはまだしもSMは数が出ないのでさらに利益を出すのが難しいのかと。その分シンプルな構造にしているのでしょう。
太陽は金食い虫ですよね。PSTが入門用で10万からですからね。でも面白いのも事実で、エタロンみたいな部品で見えないものが見えるのはすごいことだ思います。早く太陽活動が活発になってほしいです。
石川ですか、機会があればぜひぜひ。
撮影と画像処理はきちんと手を出せてないのでさっぱりですが、PSTのジャンクニコイチ等々遊んでいます。
富山は以前学生時代に住んでました。(五福)
今でもタージマハルのカレーは食べに行きます。
金沢店無くなっちゃったので;
ではまたm(__)m
あ、ではあの大学だったのですね。私もちょくちょく行くことがあります。タージマハルというのがあるのですね。まだ行ったことがないです。今調べたら美味しそうなので、今度行ってみます。
ニコイチとは面白いです。でも眼視だと危険なこともあるので、くれぐれも気をつけて下さい。私は怖いので改造物は眼視はしていません。カメラのみで、最悪機材の破損で抑えるようにしています。
・・・私は結構危険な奴かもですm(;__)m