土曜の夜に、久しぶりにニュートン反射型のBKP200を覗いてみました。その結果はまた別で書くとして、なんと光軸がかなりひどいことになっています。気合を入れて一から調整し直しました。

実はBKP200の光軸調整の記事は以前にも書いたことがあります。 この時は光軸調整アイピースとレーザーコリメートタイプの光軸調整ツールを使いましたが、今回は光軸調整アイピースのみを使いました。そうすることで一つ気づいたことがあったのでメモがわりに記事にしておきます。


普通の反射式の光軸調整の手順

0. 光軸調整アイピースをアイピース差込口に挿入し穴からのぞいて最初はめちゃくちゃで、何も揃っていません。この状態から始めます。

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1. まず、副鏡に映っている主鏡の「センターマーク」が、「光軸調整アイピースの十字ワイヤー」の真ん中に来るようにします。調整方法は、副鏡のお尻についている3つのネジ押しネジと真ん中の推しネジです。3つの押しネジは、一つを緩めて2つを締めるとかがいいでしょうか。3つの押しネジがどれも固い場合があるので、そんな時は真ん中の引きネジを少し緩めてやると調整しやすくなります。まずここでセンターマークを自由に移動できるようになるくらい色々いじって感覚を掴むといいでしょう。

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写真ではわかりにくかもしれませんが、手前の太いピンボケの十字の線の中心と、さっきまでずれていた主鏡のセンターマークが一致しています。


2. 次に、主鏡の3箇所のネジをいじって、主鏡が映している映している「光軸調整アイピースの光取入れ口の中心の黒丸」を、「光軸調整アイピースの十字の中心」と合わせます。この際、主鏡のネジも押しネジと引きネジになっているので、まずは径の小さい押しネジの方を3つとも緩めてしまい、引きネジで合わせて、全部あったところで押しネジを締めて固定するといいでしょう。中くらいの黒い丸は副鏡のセルが主鏡に写っているものですが、オフセットがついて固定されているために、あまりこの黒丸にこだわっても意味がありません。


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写真では「太い十字」と「光軸調整アイピースの光取入れ口の中心の黒丸」をあわせています。


と、普通の合わせ方ではだいたいここでおしまいです。ここまでの解説は「反射 光軸 調整」などと検索するとすぐに出てきます。

ちなみに、「光軸調整アイピースの十字の中心」とその外側の白い円は「光軸調整アイピースの斜めの光取入れ口」が主鏡に映ったものです。下の写真を見ると、大きな白丸の中心が黒丸になっているのがわかると思います。

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さて問題はここからです。この状態で改めて上の写真の光軸調整アイピースを覗いたものを見てみると、「センターマーク」と「光軸調整アイピースの光取入れ口の中心の黒丸」はあっているのですが、スパイダーの十字」が下の少し左方向にずれてしまっています

このずれを見て、やっともう一つの自由度があると気づきました。「接眼部の傾き」です。接眼部の構造をよく見ると、鏡筒部に固定されいるところで3つのネジがあるのに気づきます。


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白い筒の周りの一番内側にある3つのネジ(写真には左上と下のネジが写っています)
で接眼部全体の角度を変えることができる。


これで接眼部全体の傾きが調整できるのです。この部分の自由度の調整はレーザーコリメートタイプの光軸調整器を使っている場合は気付くことができませんでした。



接眼部の角度調整

ここからの合わせ方は結構めんどうで、根気がいります。
  1. まず、上の調整が一度済んでいていて、「センターマーク」と「光軸調整アイピースの十字」と「光軸調整アイピースの光取入れ口の中心の黒丸」があっているのが前提です。
  2. 接眼部の3つの(小さなイモネジタイプの)押しネジと引きネジのセットから、副鏡セルが大きくずれているように見える方向に一番近いネジセットを選びます。そしてそのネジセット引きネジを緩めて、押しネジを締めます。この際押しネジの締めは1回転とか決めておくことが重要です。
  3. この状態で、上記の1、2を再び合わせ直します。きちんと合わせたら、先ほどと比べて「スパイダーの十字の交点」が真ん中に寄ったかどうかを見ます。もし寄らずに離れて行ったのなら、押しネジを今度は逆に2回転緩めて、引きネジを締めます。
  4. その際に、もし引きネジを締め切っても押しネジがゆるゆるなら、接眼部のそのネジの位置でのプレートが鏡筒に接してしまって、これ以上調整できないことを意味します。こんな時は、今締めたネジではなく、残り二つのネジを今度は押しネジを締める方向に進めます。
  5. 最初の1、2を再び繰り返して、「センターマーク」と「光軸調整アイピースの十字」と「光軸調整アイピースの光取入れ口の中心の黒丸」があったら、また「スパイダーの十字の交点」が真ん中に寄ったかを判断します。うまく真ん中に寄っているならその方向が正しいです。
  6. これを「スパイダーの十字の交点」が完全に真ん中に一致するまで、他の2つのネジでも同じことを繰り返します。(実際には3つのネジのうち2つをいじれば原理的には合うはずです。)

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接眼部の角度もきちんと合わせると、このように全て同心円状にすることもできます。


ポイントはかなりの回数をこなす必要があるので、最初の方でセンターマークを自由自在に移動できるくらい感覚的に3つネジの調整を身につけることが必須になってきます。

上の写真は実はまだ少しスパイダーがずれていて、むしろ副鏡セルの黒い丸が中心にあってしまっています。副鏡セルはオフセットがついているので、スパイダーをきちんと合わせるとこの黒丸はすこし左(主鏡側)にシフトします。


さて、ここで一つ疑問が湧いて来ます。実際には最後の接眼部の角度を合わせるプロセスは必要があるのでしょうか?答えはNoだと思います。少し考えてみます。最後のプロセスをしないで、最初の1、2だけをすませるとします。この状態は、アイピース中心からの光軸が副鏡(のどこかの点)で反射されてセンターマークまで行って、その後、主鏡に反射されアイピースの中心まで戻って来ることになります。これはレーザーコリメーターを使った光軸調整と全く同じ状態となります。普通はこれでいいので、その後のプロセスは必要ないだろうというのが答えです。

ではこの状態では何がずれているのでしょうか?まず、アイピースからの光軸が副鏡のどこに当たっているかは不明です。また、副鏡での反射角も90度の保証は全くありません。副鏡からの反射光も鏡筒の中心軸とはずれていますし、主鏡も鏡筒に対して垂直に配置されていません。それでもアイピース、副鏡、主鏡だけに注目すると、アイピースから出て戻って来る光が保たれているので、問題ないのです。


最後にですが、今回は試していませんが、このように光軸調整をしたとは、実際に星を見て焦点内外像で微調整をする必要があるでしょう。