縞ノイズの考察の続きです。と言ってもほとんど成果なしです。

せっかくのASI294MCを撮影にも使えるのかどうかを判断するためには、縞ノイズ問題を解消しなければどうしようもありません。解決する手段さえあれば、気軽な撮影にも使えると目論んでいます。何れにせよ電視観望には十分(その1その2)なのですでに当初の ASI294MCの目的は十分に達していて、さらにあわよくば撮影もという贅沢な目標です。

具体的には、せっかく長時間撮影をしたしし座の三つ子銀河の画像を有効活用するために「縞ノイズ(斜めノイズ、縮緬ノイズ)」をなくすことですが、今回は少し絞って、
ということを探ることにしたいと思います。

試したことは、
  1. ホットピクセルのみの除去とクールピクセルのみの除去の比較。
  2. ダークフレームの効果。
  3. フラットフレームの効果。
  4. ダークフレームを使っての残っているホットピクセルとクールピクセルのさらなる除去。
  5. Maximum、Minimum、Medianの違いの確認。
などです。他にも色々試していますが、かろうじて意味があることがあることだけ挙げておきます。


1. ホットピクセルのみの除去とクールピクセルのみの除去の比較

1枚のRAW画像を、オートでホットピクセルのみ、もしくはクールピクセルのみ除去して、どちらが効いているかを試しました。結果は前回のあぷらなーとさんのコメントでの推測どおり、ホットピクセルの方が圧倒的に多くて、かなりの部分が除去されているのが確認できたので、一応除去ルーチンはそこそこうまく働いていることがわかりました。一方クールで除去が確認できたのはごく僅かでした。

問題はホットピクセル除去でもクールピクセル除去でも、いずれも除去できないものがまだ結構あることです。これが前回みたMaximumで残った起点に相当するものかと思われます。まずはこの除去を目指します。


2. ダークフレームの効果

1のPixInsightでオートでホット/クールピクセル除去に加えて、ダークフレームのみを使ってホット/クールピクセルがどれくらい変わるか見てみました。結果はほとんど効果なしです。理由はリアルタイム処理をしてみるとわかりました。オートで取れる数の方が多いからで、ダークフレームを使っても除去できる数はそれほど増えないからです。これはパラメータをいじって調整すればうまく残りのダメージピクセルも除去できるのではということを示唆しています。


3. フラットフレームの効果

2の処理に加えて、フラットフレームとフラットバイアスの処理を加えました。意外なことに残ってしまう起点の除去には、このフラットフレームの補正の効果が大でした。フラットバイアスの効果はほとんど関係ないです。残っていた色から判断して恐らくホットピクセルと思われているものですが、ほとんど除去できました。この状態で、もともとバッチ処理でやっていた処理とほぼ近いものになるはずです。ここでやっと最初の疑問の、フラットも含めた前回のバッチ処理で最後だけMaximumでintegrateした時に、輝点が出てこない理由がわかりました。


4. ダークフレームを使っての残っているホットピクセルとクールピクセルのさらなる除去。

それでもまだ少し輝点が残っています。もう少しだけなんとかできないかと思い、2でやったダーク補正のパラメータをいじることにしました。

IMG_3565

下の白丸を押してリアルタイム表示で、オートで幾つ補正されるかを見ながら、それ以上に(今回やったのは3倍の数くらいで、ホットで0.1、クールで0.04くらいにしました)パラメータ調整で補正できる数を増やすことで、残っていた輝点もほぼ除去されることがわかりました。


5. Maximum、Minimum、Medianの違いの確認

上記の3、4ですでに一枚の画像で輝点をほぼほぼ除くことはできるようになったので、これで残った輝点が原因なのかどうかがやっと切り分けられそうです。この状態で撮影した枚数全てで重ね合わせてみました。その際、Integrationのパラメータをデフォルトの「Average」から「Maximum」「Minimum」「Median」にそれぞれ変えてみました。

Average: 最初にバッチ処理でやったものと基本的には同等です。

01_Average

ただ、バッチ処理の時と違い、撮影失敗に近い星像が崩れたものや、人工衛星が通った画像を省かずに全て処理したので、その影響で星像がとりあえず丸いのですがちょっと大きいのと、人工衛星の線が出てしまっています。縞ノイズはやはり盛大に現れます。この状態で画像処理を進めても背景の縞が残ってしまい、不自然に背景を暗くするしかなくなってしまうので、許容範囲を超えています。

でもこのことは意外でした。輝点が十分無くなれば、この状態でも縞ノイズは消えると思っていたのですが、見ている限り元の輝点がある状態とほとんど変わりません。これの示唆するとことは輝点そのものよりも、「輝点を処理する時に出た影響」が各画像にコヒーレントに残ってしまうということでしょうか。

ここで少し考えて、前回フラット補正なしの時に試したのですが、ホットもクールも全く処理をせずに輝点を全て残してIntegrateしたものを見てみました。

nocosmetic_calibration_integration

よくみると明るさの違うRGBの点がいっぱいあります。完全な輝点でなくても、コヒーレントに残る色々な明るさのノイズがあるということです。これらを処理した時の残りがコヒーレントに現れて縞ノイズとして残るということでしょうか。というと、これはホットピクセル除去に関係なく、明るさが違うというころからも、むしろDebayer処理のところに問題があるのではと考えられます。ここら辺もすでにあぷらなーとさんが指摘してくれています。さすがにこれは処理しきれなさそうなので、ここで今回の検証は成果なしという結論に至りました。


Maximum: これまでの検証と同じく、Averageよりも明らかに縞ノイズは少ないです。

02_Maximum_DBE

最大の明るさが出るので、星像がAverageの時よりもブレるのと、人工衛星の線が一本濃く走ってしまっています。残った輝点もはっきり出てしまっています。一つ疑問なのは、右側のアンプノイズがなぜかAverageよりも小さいことです。これはなぜだかよくわかりません。少しだけ残っている輝点は出ているのでMaximum自体の処理はされていると思うのですが。


Minimum: 今回これが一番良かったです。

03_Minimum_DBE

縞ノイズはMaximumと同程度に除去されていて、画像処理をしてもそこそこ耐えうるレベルです。変な星像の乱れもありませんし、星も変に大きくなったりしていません。。ただ一点気になったことが、不必要に暗い(おそらくクールピクセルの残り)があると、そこだけガイドのズレのぶんだけ別の縞ノイズのように目立ってしまいます。でもまあ許容範囲でしょうか。


Median: 最初Mediumと勘違いしていて、Averageと似ているけど何か違いが出るかと期待したのですが、実はMedianでした。

04_Median_DBE

Medianはより飛び抜けたところを省いて重ね合わせるものということなので、人工衛星の軌跡などは取り除かれました。その代わりにノイズを少し犠牲にするそうですが、見た目ではよくわかりませんでした。いずれにせよ、縞ノイズに関してはAverageとほとんど同じで、効果はありません。



うーん、厳しいです。このままMinimumでいっても、今回に限っては画像処理に影響ないくらいにはなっているのでもうこれでも十分な気もします。それでも次はFlatAide Proでカラーカメラでうまく縞ノイズが除去できるかもう少しだけ試してみたいと思います。(2018/2/17追記: 試しましたが、やはりほとんど効果はありませんでした。モノクロでいつか試すことにしたいと思います。)


それにしてもPixInsightの操作方法にもだいぶん慣れて来ました。今回はフラットの補正がステライメージに比べて操作できる箇所が何もないのが少し気になりました。そのためか、まだ右側上部の大きなアンプノイズがフラット補正で取りきれなくて残ってしまっています。それでも他に色々いじれるパラメータがあるのはさすがです。昨日からまた雪が降り続いています。しばらくは天気は期待できなさそうなのでまた画像処理と機器の整備くらいになりそうです。