天文に興味を持ち始めてから初の皆既日食でした。楽しみにして色々準備はしていたのですが、そこは冬の北陸。天気は厳しいことは予想していましたが、2018年1月31日が平日なことと、雪のため遠くに遠征するわけにも行きません。ましてやこの日は全国的に天気は下り坂。まあ見えればいいかくらいの気持ちで自宅の庭で撮影のセットアップをしました。
夕方空を見ていると晴れ間も少しあり、満月が昇ってくるのも時々見えています。機材は広角の35mm+EOS 6Dで移動と欠け具合をみるためと、アップでFS-60Q(f=600mm)+ASI294MC(フォーサーズ)をAdvaned VXで追っかけ。雲が多かったので広角は意味がないと早々と諦め、アップのみにかけました。 キャプチャーソフトはいつもは月の時はFireCaptureなのですが、ゲイン変動が激しいので使い慣れているSharpCapをRAW16モードで使い、.serファイルで保存しました。
この日は雲があまりに多いのでずっと外で待っている気にもならず、StickPCを利用しての自宅の中からのリモートでの撮影になりました。月や惑星の場合できるだけコマ落ちなしで撮りたいために、まともなUSB3.0が使えるノートPC(私の場合Macbook Pro)にするのですが、午後8時から午前1時と5時間にわたる長時間のためバッテリーが持たないことと、雲が多くて適度にコマ落ちした方が雲の影響が平均化されるので、むしろ転送速度の遅いStickPCの方が適していました。StickPCは外部バッテリーを使えるので、3.3V換算で20000mAの大容量バッテリーでこれくらいの時間なら余裕で持たせることができます。
時間変化も大きいのとファイルサイズが大きくなりすぎるてディスクが溢れても困るので100フレームを基本にしました。露光時間とゲインは雲のかかり具合で大きく変わるので、リモートで見ながらSharpCap上でその場合わせです。
実際の撮影は20時少し前くらいからです。欠け始める前はうっすら雲がかかっていましたが、まだ結構見えます。ところが程なくして雲が厚くなってしまって半分諦めモードに。しばらくして雲間にちらっと見えるとCMOSカメラ越しでは欠けている様子がよくわかります。すかさず雲間の明るく写るところを狙って何ショットか撮影します。下はだいぶんかけてきた時。
問題は皆既に入ってからくらいです。雲が相当厚くなってしまって、ほとんど見ることができなくなってしまいました。それでも時折カメラでは輪郭が映るので、その時を狙って何ショットか撮りました。下の撮って出し画像を見てもらってもわかりますが、かなりひどいものです。撮影の合間にちょくちょく外に出て双眼鏡や裸眼で見ようとしたのですが、部分月食は雲で暗いのか月食で暗いのかの見分けがほとんどつきません。暗くなった皆既中は雲越しにほんとにあるかないかくらいの、うっすら赤っぽく見えただけです。ほとんど見るに堪えなく、それでも何とか見えるようにしてしまう高感度カメラがいかに優秀かを改めて思い知らされました。
画像処理ですが、実は今回雲が流れまくっている動画ばかりです。なんとか画像を抽出しようとAutoStakkert3をはじめ、Registax6、AviStack2、どれもうまくいかなくて最後は昔のAutoStakkert2も試しました。もともとダメな動画は、パラメーターをどういじってもどうやってもうまくスタックできず、その一方でうまくいく動画はどれでやってもうまくいきます。あえて言うならAviStack2が一番強力でしょうか。でも時間がかかりすぎます。4144x2816の画像約50枚のスタックで、4コア使って2時間近くかかりました。少し破綻したところは残りますが、AutoStakkertやRegistaxではどうしようもなかった動画もかろうじて見えるくらいまで持っていってくれました。それでもさすがにこの処理速度では実用的ではありません。結局あきらめてAutoStakkert3でがんばってみることにしました。
今回このような悪条件のために、AutoStakkert3をかなり使い込まざるを得ず、色々気づいた有用なことがいくつかあるのでメモしておきます。今回は月で試しましたが、機能を理解すれば惑星にも応用可能かと思われます。特に、私自身これまでなかなか意味が分からなったたパラメータとかも結構あったので、多分他の方にも参考になるかと思います。
今回は雲が多く、そもそも動画自身のクオリティーが低いので、画像処理が大変で、月食の日からかなり時間がかかってしまいました。結果はこの記事の一番最初に貼った画像になります。改めて見ると、この悪状況の中、一応欠け始めから終わりまで追っていて、よくここまで画像処理で炙り出せたなというところでしょうか。もちろんスタックしているにもかかわらず、天気がいいところの一発どりにもはるかに及びませんが、それでもまあ満足です。眼視の方も、この悪天候の中かろうじて見えたと言っていいくらいのレベルですが、撮影も眼視も含めて初の皆既月食をいろいろ楽しむことができました。
次回今年の7月は条件が今回ほどいいわけではないですが、今一度リベンジしたいと思います。あとは3年後でしょうか。また楽しみです。
富山の自宅での撮影。全て雲間の悪条件から苦労して炙り出した画像です。
上から右回りで、19時57分、20時55分、21時22分、
皆既に入って22時04分、22時35分、22時53分、
皆既から出て23時58分、0時07分です。
上から右回りで、19時57分、20時55分、21時22分、
皆既に入って22時04分、22時35分、22時53分、
皆既から出て23時58分、0時07分です。
夕方空を見ていると晴れ間も少しあり、満月が昇ってくるのも時々見えています。機材は広角の35mm+EOS 6Dで移動と欠け具合をみるためと、アップでFS-60Q(f=600mm)+ASI294MC(フォーサーズ)をAdvaned VXで追っかけ。雲が多かったので広角は意味がないと早々と諦め、アップのみにかけました。 キャプチャーソフトはいつもは月の時はFireCaptureなのですが、ゲイン変動が激しいので使い慣れているSharpCapをRAW16モードで使い、.serファイルで保存しました。
最初の頃、まだ月が見えていた時分です。
これ以降雲がどんどん多くなっていきました。
これ以降雲がどんどん多くなっていきました。
この日は雲があまりに多いのでずっと外で待っている気にもならず、StickPCを利用しての自宅の中からのリモートでの撮影になりました。月や惑星の場合できるだけコマ落ちなしで撮りたいために、まともなUSB3.0が使えるノートPC(私の場合Macbook Pro)にするのですが、午後8時から午前1時と5時間にわたる長時間のためバッテリーが持たないことと、雲が多くて適度にコマ落ちした方が雲の影響が平均化されるので、むしろ転送速度の遅いStickPCの方が適していました。StickPCは外部バッテリーを使えるので、3.3V換算で20000mAの大容量バッテリーでこれくらいの時間なら余裕で持たせることができます。
時間変化も大きいのとファイルサイズが大きくなりすぎるてディスクが溢れても困るので100フレームを基本にしました。露光時間とゲインは雲のかかり具合で大きく変わるので、リモートで見ながらSharpCap上でその場合わせです。
実際の撮影は20時少し前くらいからです。欠け始める前はうっすら雲がかかっていましたが、まだ結構見えます。ところが程なくして雲が厚くなってしまって半分諦めモードに。しばらくして雲間にちらっと見えるとCMOSカメラ越しでは欠けている様子がよくわかります。すかさず雲間の明るく写るところを狙って何ショットか撮影します。下はだいぶんかけてきた時。
21時22分、雲間を狙っての撮影。動画のうちの一枚。
雲間といっても薄雲は常にかかっていてい、
たまたま少しだけ明るくなったような時です。
雲間といっても薄雲は常にかかっていてい、
たまたま少しだけ明るくなったような時です。
上の動画をスタックして、画像処理をしたもの。
かなりマシになりますが、やはり雲の影響は大で、
どうしてもシャープさにかけてしまっています。
かなりマシになりますが、やはり雲の影響は大で、
どうしてもシャープさにかけてしまっています。
問題は皆既に入ってからくらいです。雲が相当厚くなってしまって、ほとんど見ることができなくなってしまいました。それでも時折カメラでは輪郭が映るので、その時を狙って何ショットか撮りました。下の撮って出し画像を見てもらってもわかりますが、かなりひどいものです。撮影の合間にちょくちょく外に出て双眼鏡や裸眼で見ようとしたのですが、部分月食は雲で暗いのか月食で暗いのかの見分けがほとんどつきません。暗くなった皆既中は雲越しにほんとにあるかないかくらいの、うっすら赤っぽく見えただけです。ほとんど見るに堪えなく、それでも何とか見えるようにしてしまう高感度カメラがいかに優秀かを改めて思い知らされました。
22時04分の撮って出し画像。動画のうちの一枚です。
一応高感度カメラだと写っていますが、
実際の眼視では赤いぼんやりくらいにしか見えません。
一応高感度カメラだと写っていますが、
実際の眼視では赤いぼんやりくらいにしか見えません。
上を画像処理した後の皆既日食。
この日の富山でこれくらいまで出せれば上等でしょうか。
雲の厚さが刻々と変わるので、ゲインも露出時間もバラバラです。
色も基準となる色がよくわからないので、多分に想像が混じっています。
この日の富山でこれくらいまで出せれば上等でしょうか。
雲の厚さが刻々と変わるので、ゲインも露出時間もバラバラです。
色も基準となる色がよくわからないので、多分に想像が混じっています。
画像処理ですが、実は今回雲が流れまくっている動画ばかりです。なんとか画像を抽出しようとAutoStakkert3をはじめ、Registax6、AviStack2、どれもうまくいかなくて最後は昔のAutoStakkert2も試しました。もともとダメな動画は、パラメーターをどういじってもどうやってもうまくスタックできず、その一方でうまくいく動画はどれでやってもうまくいきます。あえて言うならAviStack2が一番強力でしょうか。でも時間がかかりすぎます。4144x2816の画像約50枚のスタックで、4コア使って2時間近くかかりました。少し破綻したところは残りますが、AutoStakkertやRegistaxではどうしようもなかった動画もかろうじて見えるくらいまで持っていってくれました。それでもさすがにこの処理速度では実用的ではありません。結局あきらめてAutoStakkert3でがんばってみることにしました。
今回このような悪条件のために、AutoStakkert3をかなり使い込まざるを得ず、色々気づいた有用なことがいくつかあるのでメモしておきます。今回は月で試しましたが、機能を理解すれば惑星にも応用可能かと思われます。特に、私自身これまでなかなか意味が分からなったたパラメータとかも結構あったので、多分他の方にも参考になるかと思います。
- CPUコアに余裕があるなら、真ん中の「Status」の横にある「Cores」を最大にしておくと処理速度が圧倒的に早くなります。元々の1コアと最大の8コアで5倍くらいは速度が違いました。
- AutoStakkert3で月をスタックする場合、普通は「Surface」モードにするのですが、雲が常時流れているのと、ゲイン変動が激しくサチッたり暗すぎる部分がかなりあるので、スタックした像がぐちゃぐちゃになってしまいます。最初の方はPlanetモードを主に使いました。ただ、「Planet」モードのアラインメントはどうも明るい部分を追いかけているようで、雲が流れて明るい部分がずれていくようなもののスタックは得意でないようです。
- 結局「Surface」と「Planet」は散々迷いましたが、最後は決定打が出て一択の方法に落ち着きました。一番良かったのは「Surface」できちんと緑枠の「image stabilization anchor」を(コントロールキーとクリックで)特徴ある点にきちんと置いた時でした。模様がきちんと出ているところや、エッジのところです。これはものすごく重要で、この位置によって出来上がりの画像が全く違ってきます。逆に、アンカーを画面の中の特徴のない適当なところに置いた「Surface」モードはボロボロで、「Planet」モードの方がましです。
- Reference Frameの「Double Stack Reference」は雲などの悪条件の時はチェックしておいた方がいい結果が得られる場合が何度かありました。
- 2)Analyseの結果のQualityとは明るさがメインのようです。他にも見ているところはあるかもしれませんが、少なくとも明るさはQualityの一つの指標になっているようです。なのでサチっているところが多いと、そこがクオリティーがいいと判断されることがあるようで困りました。
- 2)Analyseが終わった時点で、画像が出ている画面の上の方の「Play」ボタンを押したときにターゲットが大きく揺れているようならその時点でダメです。逆に言うと、例えば揺れが後半に出ているなら、揺れていない範囲まではスタックしても大丈夫です。もし前半早いうちから揺れていたら、これ以降どうオプションをいじってもまともな画像になりません。
- スタック枚数が少ないと、意外に変な凸凹が出て悪い結果になることが多いです。「Play」ボタンを押したときに揺れていさえしなければ、スタック枚数をできるだけ多くした方が滑らかになり明らかにいい結果が得られます。
- 悪条件の時ほどAPサイズは大きい方がいいです。今回はデフォルトの4つの設定の中では「200」が一番いい結果でした。細かいとブロック状のノイズが出る時があります。また出来上がった画像の解像度を比べると、APサイズを大きくとった方が細部まで出るようです。
- ブロックノイズを消すもう一つのテクニックが、画像の暗部分やはっきりしない部分にAPを置かないことです。Min Brightの値を大きくしてAPが置かれる面積を小さくしてやると、ブロックノイズが出にくくなります。その代わり、スタックの精度がなくなるので、画像がずれることがあります。
- それでも消えないブロックノイズに悩まされましたが、最後はAPのサイズを300とか400とかデフォルトよりも大きくして、APの数を10点ほどにしてうまくノイズを消すことができました。
今回は雲が多く、そもそも動画自身のクオリティーが低いので、画像処理が大変で、月食の日からかなり時間がかかってしまいました。結果はこの記事の一番最初に貼った画像になります。改めて見ると、この悪状況の中、一応欠け始めから終わりまで追っていて、よくここまで画像処理で炙り出せたなというところでしょうか。もちろんスタックしているにもかかわらず、天気がいいところの一発どりにもはるかに及びませんが、それでもまあ満足です。眼視の方も、この悪天候の中かろうじて見えたと言っていいくらいのレベルですが、撮影も眼視も含めて初の皆既月食をいろいろ楽しむことができました。
次回今年の7月は条件が今回ほどいいわけではないですが、今一度リベンジしたいと思います。あとは3年後でしょうか。また楽しみです。
コメント
コメント一覧 (4)
月なら、曇りでも何とかなるってことですか・・・。
色合いは、こればっかりは、雲越しの皆既月食は誰もみたことないはずなので、誰も正解わからないでしょう。
何とかなるというか、せっかくの皆既月食なので無理やり何とかしたというか...。
聞いている限り富山勢はどこも似たり寄ったりでほとんど撃沈だったようですが、どうでしょうか?
惑星撮影の応用ですが、あの雲でも多少見えるくらいにはなってしまうのは結構驚きました。ただ、記事の通りスタックはかなり苦労しました。
普通の月ならこんな曇りの時は絶対撮影なんかしませんよね。
Autostakkertの"Surface"は本来、月面のクローズアップのように、画面全体に被写体が広がっている写真に使うモードなのですが、"Planet"だと輝度重心(COG: Center of gravity)を重視して解析することになってしまうので、今回のような悪条件だとうまく動作しないのでしょう。普通の条件なら、おそらくPlanetでうまく解析できると思います。
悪条件時にAPサイズが大きい方がいいのも全くその通りですね。シーイングが悪い時の惑星写真もAPサイズを小さくすると破綻しがちです。日本の気流を考えると、数字の小さい設定はあまり使う場面がないかもしれません(^^;
AviStack2は、月面クローズアップなどには無類の強さを発揮するんですが、古いソフトゆえか、いかんせん速度が遅すぎるのが……。なので、こいつを使うときはバッチ処理に投げて、寝てしまうことも少なくありません。新しいバージョンが出てくれると嬉しいんですが、実質7年以上も放置状態が続いているところを見ると望み薄かもしれませんね。
いえいえ、AutoStakkertでこれまでいかに適当にやっていたかバレてしまいます。条件のいい時に撮った動画はほとんど問題なかったので、いい訓練になりました。いろいろ機能を比較してなので今回は時間がかかってしまいました。
関東の方は天気良かったみたいですね。ブログ見ましたが、観望会状態だったとか。羨ましいです。あと、Cafe TEMOの記事もよかったです。わたしもマスターに会ってみたいです。
COGの話はかなり納得です。厚さの違う雲が常時通り過ぎるために、明るいところが常に移動しています。さすがにこれだとダメみたいです。
なるほど、Surfaceは本来もっと拡大しての撮影なんですね。でも今回はこのモードに助けられました。いろいろ触っているとどんな動画が得意なのかとかわかってきます。惑星にも応用したいと思います。