SharpCapのツールのカメラの性能評価機能を使い、手持ちのZWO社のCMOSカメラ
  • ASI224MC
  • ASI178MC
  • ASI294MC
の3台について測定、比較してみました。測定結果に示す各値の意味については以前の記事が参考になると思います。ASI294MCについては今回新たに測定し直していますが、結果はReadNoiseがよりダークな環境で測定することに気をつけたためか、多少良くなっている点を除いては、かなり一致しているので、そこそこ信頼がおける結果になっているのではないかと思います。



測定方法

まず、測定方法を簡単に書いておきます。SharpCapにカメラを接続し、認識させてから、「Tools」メニューから「Sensor Analysis」を選びます。下の方に出てきた測定エリアの指示に従えばいいのですが、いくつか気づいた点を書いておきます。 

まず、映している画面の中で、赤い四角で囲まれているところのエリアのみ測定します。なので、例えば画面中央部と4角では結果が違う可能性があります。選んだエリアが暗すぎたりすると、下の写真のようなメッセージが出ます。

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ある程度は自動でゲインや露出時間を変えて測定してくれますが、基本的には次の写真にあるように、ピークが一本ピンと立っているような状況がいいみたいです。その一方、精度よく測るには暗い方がいいようなことが書かれていますが、あまり暗いとあるところから進まなくなってしまって迷いました。そんな時はもう少し明るい状況にすると進み出します。

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最初はコンバージョンファクターの測定です。測定が始まると上の写真のように、横軸ADCのカウント、縦軸ADCのノイズの分散でプロットしてくれます。その傾きをコンバージョンファクターとしています。ここで注意ですが、本来この測定はゲインを変えて何度も測定すべきですが、SharpCapではコンバージョンファクターはこの一回しか測定していません。それにゲインの変化分を換算して、簡易的に種々のゲインでのコンバージョンファクターを求めているようです。測定し終わると、次の写真のようになります。ダーク測定の後にゲインを変えているようですが、右のグラフがいくつも出るわけではないので、やはり簡易的な計測なのだろうと思います。

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最初の測定が終わると、次にカメラに蓋をかぶせてダーク状態で読み出しノイズの測定をします。このとき光が漏れていると、読み出しノイズに余分な信号が入ってしまい、読み出しノイズが大きく計測されてしまうようなので注意です。カメラに蓋をして、さらに暗い所へ持っていくなどの工夫が必要かもしれません。

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ダーク測定が終わると上の写真のようになるので、再び蓋を取って、最後の測定に入ります。内部ゲインや露光時間を変えて色々測定しているようですが、ここはあまり何をやっているかわかりません。この時に十分な明るさがないと、全然先へ進まなくて同じ設定を繰り返しするような状態になってしまうことがあります。こんな時はもう少し明るくして見てください。

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測定が終わると、数値とともに測定結果を記したグラフ(注: 次に示すグラフとは別の測定でとった写真なので少し値が異なって来ます)が出てきます。

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測定結果

さて今回は上のような測定方法で、3つのカメラを測定してみました。結果は以下のようになります。

comp



結果を見ると、ZWOに示してあるグラフ(ASI224MC, ASI178MC, ASI294MC)と比べて、かなり一致していることがわかるかと思います。また、上で出したグラフはZWOが出しているグラフと表示形式を少し変えてあるのに気づくと思いますが、以下で説明していきます。

測定結果を見ていて思ったのですが、ZWOのグラフのGAIN(e-/ADU) (コンバージョンファクター)のところの縦軸がリニアになっているのはどうしてもいただけません。内部ゲインが高いところで0付近になっているためほとんど見分けがつきませんが、これは0付近でオーダースケールで0に近づいていくことに意味があるので、これは対数スケールで書くべきです。今回測定したグラフは対数スケールにしてあります。こうするときちんと直線になっていて、意味があるのがわかると思います。


考察

さてこのグラフを少し考察してみましょう。まず最初に思ったことが、Full Wellの値に果たして意味があるのかということでした。そこで試しに、ASI294MCにある「Full Well」の値を「e/ADU」で割ってみましょう。測定の数値結果を以下に示します。

ASI294MC_number



一番右の欄に計算結果も書いていますが、どの「Gain Value」に対しても全てぴったり16384になるのがわかる(ちなみにASI224MCの場合は全てぴったり4096になります。)と思います。これはADCの14bitのカウント数16384が最初にありきで、それを実測した「Gain Value」で割っているだけで、その結果を「Full Well」と呼んでいるだけだということがわかります。なので、示したグラフの上二つはほとんど同じことを言っていて、二つのグラフを両方とも示す意味は本当にあるのかと思ってしまいます。

本来のFull WellとはSensorの出力で制限される値を測定すべきなのですが、全てのゲインで測定していない簡易測定なのでこんな結果になってしまったか、もしくは測定していてもADCのbit数の制限でリミットされてしまっていて、少なくともセンサー本来が持っているFull Wellで制限された値が示されているわけではないことがわかります。このことは、言い換えるとセンサー本来はもっと出力できるのに性能がADCで制限されてしまっているか、もしくは簡易測定のためにADCに制限されたように見える、よくわからない結果になってしまっていると言えます。

それでも実際には高ビット化をしようとして、例えば安易に16bitADCにしようとしても、16bitの性能を引き出すのはノイズや転送速度、データ量の観点から普通はとても難しいので、14bitだからと言って一概にダメだということは全くありません。むしろこの価格で14bitで、転送速度まできちんと出ているというのはすごいことで、賞賛こそすれ非難できるようなことは何もないでしょう。


次に考えたことは、Read NoiseをADCのカウントにしてやったほうがわかりやすいのではないかということです。今回出したグラフはZWOのものにさらに追加してあって、一番下に書いてあります。これは単に一つ上の「Read Noise(e)」を「e/ADU」で割っただけなのですが、16384に対してどれくらいノイズとして明るさの変動があるかという目安になります。先のノイズの記事でも書きましたが、この「
Read Noise(ADU)」の意味は、内部ゲイン500の時、ノイズ100くらいだとしたら、明るさのバラツキが100カウントくらいで収まる範囲が68%に収まっている。200カウントのバラツキは98%に収まっているということです。200カウント以上のバラツキは2%くらいしかないですが、それでも0ではありません。300カウント以上は統計的にはわずか0.13%ですが、これはかなり0に近いのですが、ピクセル数が4144 x 2822 = 11694368もあるので、そのうち0.13%だとすると15200ピクセルくらいは300カウント以上飛んだ明るさを持つので、決して少ないわけではありません。

もちろん各ピクセルには信号を測定した際の平均的な明るさがオフセットとして乗っかるので、明るいピクセルはノイズは目立ちにくいでしょうが、暗いピクセルはノイズが目立つことになります。また、これは読み出しノイズについてのみ話しているので、他のノイズの兼ね合いで、意味のあるノイズだったり、無視できるノイズだったりします。例えば長時間露光してしまえば読み出しノイズは無視できます。逆に短時間だと読み出しノイズによって制限されてしまったりします。ここら辺は以前のノイズの記事をご参照ください。こうやって考えると、測定結果がやっと実際に目にしているノイズに近いものになってくることがわかります。


今回はわかったことは、メーカーの提示している仕様と、実測はかなり一致していること。ただしきちんと意味を考えないと、グラフを見ていても意味のある情報が得られないことなどです。


次に考えている目標は、スペックシートからそのカメラの性能がノイズや写り具合も含めてきちんとわかるかどうかということ。これはもう少しまとまったら、またそのうちに記事にしたいと思います。