今回、富山県天文学会にいらっしゃったSさんという方が生前使われていた天文機器を譲り受ける機会がありました。大量の機材があり、どれも古いものですが中には自作のものや大変貴重なものもありました。

事の始まりは、9月中頃に富山県天文学会のNさんがたまたま立山でSさんの奥様とお会いして、Sさんが使っていた機材が残っているというので見に行ったが、古いものが多くの引き取るのを断念したというメールでした。すぐにNさんに連絡を取り、一度見させてもらえないかとメールを出したのですが、その後なかなか時間も取れず、今日に至ってしまいました。

このブログでもいくつか記事にしていますが、星がものすごく好きでもなかなか望遠鏡を手に入れられない子がいます。本格的な機材は子供の教材だと思ってもなかなか手を出せる値段でないし、ホームセンターなどの安いものはどれを買っていいかわからないというような話を何度か聞きました。あくまで個人でできる範囲ですが、星まつりや中古でジャンククラスものもを格安で見つけてきて、クリーニングとメンテナンス、不足の部品などを足して、必ず自分の目で実際の見え味を確かめてから、子供が買えるような範囲の値段で譲っています。将来星を本格的に星を見るとしても、興味をつなぐ最初の一本になってもらえればいいと思っています。

ところが、ジャンク機材はセットで買うと格安なのですが、足りない部品があるとそれだけを追加するのに、時としてジャンクセット以上の値段になってしまうようなことがあります。Sさんの機材も古いと聞いていたので、部品取りに使わせてもらうだけでもありがたいと思って申し出ました。

昨晩電話でSさんに連絡を取り、早速今日の午前中に娘のNatsuを連れてSさん宅に機材を見せてもらいに行きました。車で40分くらいのところで、住所を聞いていたいので場所はすぐにわかりました。すでに機材をガレージ内に出してくれていて、大きな木箱が一つと、あとは鏡筒が何本かありました。息子さんが昨晩のうちに出しておいてくれたとのことです。

早速、木箱を開けてみたのですが、中身はなんとタカハシのTS式の屈折で、口径80mm、f=1200mmのかなり大きなものです。状態もかなり良いものでした。

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もう一つ段ボール箱に入った、Family800と書かれた、三脚と経緯台がセットになっているものもありました。メーカー名がどこにも書いてなかったのですが、どうもVixenだとかアトラス光学だとかのものらしいのですが、よくわかりません。こちらは口径50mmで入門用なので、小学生くらいにちょうどいいのかもしれません。アイピースがなかったので適当に追加するのと、経緯台が貧弱なので微動経緯台に変えるなどして使いやすくして譲りたいと思います。

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もう一つ段ボール箱があって、その中に3つの鏡筒が入っていました。こちらも面白いです。まずプラスチック時代のBORGのアクロマートです。口径は100mm、焦点距離が不明なのですが、鏡筒の長さがBORGらしく短いので、せいぜい600mm程度でしょう。一度自分の目で見る必要がありますが、軽いので中学生くらいでも使いやすいかもしれません。

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もう一つは写真真ん中、EIKOWの口径60mm、f=910mmの当時としては標準的なものですが、EIKOWの望遠鏡はまだ一度も覗いたことがないのでとても楽しみです。これも子供が使いやすい大きさかと思います。

最後の一つ、写真右が、これもメーカー不明なのですが大物です。なんと口径102mm、f=1000mmです。中国製らしいのですが、こんな大きな口径の屈折は扱ったことがないので、マウントするだけでも大変かもしれません。こちらも色々試してみたいと思います。

鏡筒を見ている最中、奥様が「なんかまだ三脚とかもあるんですよね。」とかおっしゃるので、「ぜひ見させてください!」とお願いしたら、どうぞどうぞと隣の倉庫に案内してくれました。上を見上げると倉庫の上部に木製の三脚がゴロゴロしています。Natsuにハシゴを使って登って取ってもらうと、なんとSさんの自作らしき三脚です。それも5本も。自宅に帰って5本を比べながらよく見てみると、作っていったであろう順序がわかって、徐々に工夫が凝らされていく様子がわかります。最初は三脚ベースの部分が木製でした。そのせいか多少グラグラしていたのが、後半は金属の三脚ベースになります。また最初のうちは伸縮式の足でしたが、それも最後は一本の木になっています。格段に頑丈さが増していく様子がわかります。おそらく色々試行錯誤されたのかと思います。最後の2台は揺すってもほとんどぐらつきがなく、実用上全く問題ないレベルに仕上がっています。素晴らしのは、木製三脚を畳むということをきちんと考えて作ってあって、三脚の真ん中がきちんと折り畳めるようにうまい金具を見つけてきています。しかもさらなる工夫をしてあって、下の写真を見てもらえば分かりますが、その金具に丸い穴が空いていて、そこにアイピースが置けるようになっていて、お皿とかも必要ありあません。市販の三脚よりも手軽にたためてコンパクトで、この三脚を見るだけでもよほど凝った方だったことがわかります。奥様によると、なんでも趣味のために旋盤まで持っていたとかで、ぜひ一度ご存命のうちにお話ししたかったと思いました。

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さらにさらに、「そういえばまだ他にも三脚が...」とかいうので見せていただくと、なんと三脚だけでなく赤道儀までついていて、一つはタカハシのEM-1、もう一つはMIZARのものです。共にモーター駆動で、自動追尾もできそうです。EM-1には、多分MIZAR製でしょうか、10cmくらいのニュートン反射の鏡筒の筒だけが載っていました。反射鏡がなかったのですが、なんでも天文台で磨いてもらったものがもともとついていたとか。もしそうならおそらく今となっては貴重なものかもしれません。今回は見つからなかったのですが、また何か見つかったら来てもらっても構わないとのことなので、もしかしたら将来どこかから鏡が出てくるかもしれません。

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今回かなりの量の機材があったのですが、本当に全部いただいていいのかと改めてお聞きすると、なかなか片付かないのと、使い道がなくていつか捨てるだけなので、子供とかにも使ってもらえるなら嬉しいとのことでした。自作の三脚など、Sさんの相当想いの詰まったものを使わせていただくということで、奥様にお断りしてNatsuと一緒に仏壇で手を合わさせていただきました。

他にもNatusが奥様手作りの和布で作った巾着をいただいたり、昔の本を何冊かいただいたりと、大変よくしていただきました。いただいた本の中の一冊、小泉八雲の「怪談」はあまりに古くて本から幽霊が出てきそうで、帰ってから下のSukeが「すごい怖そう」と大喜びしていました。「宇宙FBI」だとか、「市の24時間レース」など、タイトルだけ聞いても面白そうで、今となっては古本屋にも並ぶことがないような貴重な本ばかりです。


今回本当にたくさんの機材をいただきました。Sさんを紹介してくださったNさん、そしてSさんの奥様、本当にありがとうございました。きちんと整備して、未来の天文っ子のためにできる限り有効に使わさせていただきます。


最後にですが、ある程度機材の整備が進んだら、是非Sさん宅に夜に一度今回の機材を持っていって、Sさんが生前見ていた星空を、奥様やご家族に見ていただけたらと思っています。準備ができたらぜひ声をかけさせて頂きますので、今しばらくお待ちください。