先日のスターライトフェスティバルでもそうでしたが、電視観望が盛り上がりを見せているので、これから電視観望を始めたい人のために、機材や説明などを簡単にまとめておきます。

電視観望は、高感度のCMOSカメラなどを使い、ライブビューで星雲や星団を見ることができます。特に星雲に色がついて見えるので、観望会などで披露すると大きなインパクトがあります。また、大人数でモニターを共有して見ることができるので、もうちょっと移動してみてとか、次はあれが見たいとかワイワイガヤガヤ話しながら天体をみんなで楽しむことができます。



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電視観望システムの一例。


1. 鏡筒

高価な鏡筒はあまり必要ありません。400mm以下の焦点距離の短いものがいいです。口径は大きい方がいいですが、意外にも60mmもあればなんとかなります。

ここで使っているもの
  • タカハシFS-60CB:  焦点距離355mm、 口径60mm
  • iOptoron White Light Solar Scopeのフィルターがないもの: 焦点距離400mm、 口径80mm(安価だけど入手が難しいかも)
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写真はFS-60Qで焦点距離600mm。
真ん中のエクステンダーをはずすと焦点距離355mmのFS-60CBとなる。


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iOptron鏡筒。アクロマートの比較的安価なもの。


まだ試していませんが、iOptronの代わりに入手しやすいCelestronのTravel scopeの70mmが焦点距離が400mmと短くていいかもしれません。これだと1万数千円で入手できます。

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トラベルスコープ。入手しやすく安価です。

私は使ったことがないですが、他にもEYBELLなどで販売しているRFT80Sが安価で入手しやすいのでいいのではとコメントに寄せられています。


2. 赤道儀もしくは経緯台

自動導入が付いているものが望ましいです。自分で星雲など導入できる方は自動導入にこだわる必要はありませんが、できれば自動導入があった方が次々と天体を移動できるので圧倒的に楽しいです。追尾機能がないと短時間で追いかけなければなりませんが、後述のソフトが秀逸なので、追尾機能なしでも少しの時間だけなら可能です。

ここで使っているもの
  • Celestron社のAdvanced VX: 高機能の割に安価です。電視には安定性、精度ともに十分です。
  • Celestron Nexster 4NEの架台部分: 架台だけ購入しようとすると難しいですが、中古などで安価に出ています。自動導入がある中では軽量で精度もそこそこあるので実用的です。
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Advanced VX。電視には十分すぎるくらいです。


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Nexterの架台。軽くていいのですが、架台だけの入手は難しいかもしれません。


3. カメラ

できるかぎり高感度のものがいいです。SONYセンサーを使っているものが感度がいいものが多いです。

ここで使っているもの
  • ZWO社製 ASI224MC: 星雲星団用に感度のいいCMOSカメラを使っています。
  • ZWO社製 ASI178MC: 月など見る場合は、感度は落ちますが、より高解像度のCMOSカメラを使用しています。
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写真はASI178MC。ASI224MCも見た目は同じような構成です。


SONYの提唱するSNR1sという値を参考にするとよく、他にもASI185MC、ASI290MCなどが候補になります。


4. コンピューター

Windows7以降が走るもの。重要な点は上にあげたCMOSカメラがUSB3.0接続なので、USB3.0ポートを持っているコンピューターが必要です。USBケーブルはCMOSカメラに付属されているのでそれを使えばいいでしょう。


5. ソフトウェア
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Sharpcapでバラ星雲を電視しているところ。


SharpCapが使いやすいです。いくつか試しましたが、電視用ではスタック機能が充実しているSharpCapが一番だと思います。バージョン2.9や3.0台のSharpCapはフリーですが、バージョン3.1以降のSharpCap "Pro"から有料になりました。年間ライセンスで10ポンドとのことです。Proの方はPolar Alignment, Dark Subtraction, Flat Frame Correction, Assisted Focus and Scriptingなどがついていますが、電視だけならProの機能はほとんど使わなくてもすむので、まずはProでないほうのフリーのものから試して、必要ならProのライセンスを手に入れるのがいいのかと思います。

ここでは簡単にポイントだけ挙げておきます。
  • 最初は露光時間800msくらい。
  • ゲインは最大から一段階(50)か二段階(100)落としたくらいが使いやすいです。ASI224MCで500くらいでしょうか。
  • Gammaは50で標準。
  • Brightnessは色を出すために最大の240(ASI224MCの場合)。
(SharpCapのバージョンが3.0以下の古い場合)
  • White Balance(R)はオートに設定すると発色が自然になります。
  • White Balance(B)は90程度の高め。
  • Display ControlsのGamma、Contrast、Brightnessは最初はどれも1でいいと思います。
(SharpCapのバージョンが3.1以上の新しい場合)
  • 右パネルの中にある、ヒストグラム(Display Histogram Streatch)を開き、そこにある雷のようなマークのボタンを押してください。かなり見栄えが良くなるはずです。

  • 星雲や星団が見えたらおそらく淡くノイジーなので、Live Stackをオンにします。映っている星の位置を自動認識し、それらの星が重なるよう自動的に画面を重ねていくので、多少画角がずれていってしまっても長時間スタックができます。うまくいくと時間とともに劇的にノイズが減ってきます
  • Live StackのHistgramタブのところの調整がかなり効きます。バージョン3.0以前の場合は横軸の下のつまみをヒストグラムが盛り上がるところらへんに合わせると、背景が黒で締まって、かつ欲しい色を落としません。左の縦軸もいじって見てください。淡いところをあぶり出すのに有効です。バージョン3.1以降にはヒストグラム機能が一新されました。ボタン一発である程度の最適化をしてくれます。
  • それでも淡い天体で見にくい場合はDisplay ControlsのContrastを1増やす、Brightnessで補正、Gammaで好みにというような順にいじっていくといいと思います。(こちらの機能はバージョン3.1以降ではなくなっています。)
これ以上の詳しい使用方法は


にまとめてありますのでご覧ください。


6. アクセサリー
  • UV/IRカットフィルター: ASI224MCの場合赤外にかなりの感度があるため、ホワイトバランスが崩れ赤色が強調されがちです。安価なものでいいので、31.7mmの紫外線、赤外線をカットできるフィルターがあると色が自然になります。
  • 0.5倍レデューサー: 焦点距離400mmでも長すぎる場合があります。これはCMOSカメラのセンサーサイズが小さいため、一部分だけを拡大してみているような状態になるからです。安価なものでいいので0.5倍程度の31.7mmのねじ込み式のレデューサーがあるといいでしょう。Amazonなどで安く出ています。アンドロメダ銀河の全体が入るくらいになります。安価なものなので当然周辺星像が流れたりすることがありますので、ご注意ください。

7. その他
  • コンピューターを載せる小さな屋外用の折りたたみ机などがあるといいでしょう。
  • 画像を調整したりする必要があるので、落ち着いて椅子に座るとやりやすいです。屋外用の折りたたみ椅子があるといいでしょう。


さて、機材は揃いましたか?

8. それでは電視観望を試してみましょう!
  1. 鏡筒、赤道儀もしくは経緯台をセットします。極軸など、初期でのアラインメントは、アイピースなどで確認し、取れているものとします。
  2. 計算機にCMOSカメラをUSB3.0でつなげます。
  3. CMOSカメラを鏡筒のアイピースに入れてネジを締めて固定します。
  4. Sharpcapを立ち上げ、Cameraのところから接続したカメラを選択し、カメラの画面が現れるのを確認します。
  5. ゲインと露出時間を上げていくと、カメラ画面が明るくなってくるはずです。
  6. 鏡筒でピントを合わせます。
  7. この時点でカメラを空の方を向けていれば、晴れた夜空なら都会でも驚くほどの数の星が映るはずです。
  8. さあ、いよいよ電視の始まりです。見たい星雲や星団に鏡筒を向けてください。この際自動導入があると簡単に入るはずです。ただし、センサーのサイズが小さいのでかなり狭い範囲を見ています。もし想定している天体が何も入らなければ、自動導入の精度がずれているものと思われます。今一度初期アラインメントなどを繰り返してみてください。この際、カメラを使って再度初期アラインメントをするとセンターを出しやすいので、アイピースの時より精度が上がると思います。
  9. 何か星雲らしき面積を持ったものが写ったら、Sharpcapのパラメーターを上の説明を参考に調節します。
  10. Live stackをオンにします。ノイズがどんどん落ちてきて、星雲に綺麗な色がついてくることだと思います。
  11. 観望会などで披露して見ましょう。みんなでその場で色付きの星雲を共有して見ることができます!

昨日富山市天文台で見た惑星状星雲M57です。お客さんが結局誰もこなかったのですが、せっかくなのでPCの画面をiPhoneで写真に撮って見ました。こんなのが見えたら大成功です。印象としてはこの写真に写っているのとほとんど同じようなものをその場で見ることができます。皆さんも是非とも電視観望を楽しんでみてください。


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M57の電視の様子。


もっと詳しいことは、以下の記事を読んでみてください。
  1. 高感度CCDでの試み
  2. 機材1 - CCD
  3. 電視用ソフトの紹介 - SharpCap
  4. 観測例1 - 口径60mmでのテスト
  5. 観測例2 - 牛岳
  6. 2台目のCCD
  7. 軽量化と安価な電視システムの模索


最後に

電視観望は、眼視や一眼レフカメラの撮影のちょうど間の、橋渡し的な手法なのかと思います。シャープさでは眼視に勝つことはできませんし、鮮明さでは画像処理をした撮影画像にはかないません。ですが、今見ている、まさにその場で星雲に色がついて見えるだけでもかなりインパクトがあると思います。各地の観望会でこの電視という手法が広まると嬉しいです。

わかりにくいことや、質問などありましたら、コメント欄に書き込んでください。できる限り答えようと思います。もちろん、うまくいったというレポートなども書き込んでくれると嬉しいです。


次は実践編です。