電視観望用システムとして長らくタカハシのFS-60QとAdvanced VXを使ってきたのですが、赤道儀が重いことと、天体写真撮影に使えるレベルの精度があり電視には少しもったいないので、もっと簡易なシステムをずっと考えてきました。機材がだいぶ揃ってきてたのと、かなり安いもので揃えているので、いくらか改造などが必要でしたが、そこらへんのことをまとめて書いておきます。


まず機材です。

1. 鏡筒

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胎内星まつりで購入した、iOptronの口径80mmで焦点距離400mm、F5のかなり明るいものです。アクロマートレンズですが、電視には十分でしょう。軽いので持ち運びも楽ですが、部品はプラスチックも多く、値段相応といったところでしょうか。使ってみて一番の問題は、ピント調節の部分に相当ガタがあり、つまみを反転すると視野が思いっきりずれるところです。それだけでなく、ピント調節つまみが軽すぎで、天頂に近いところを見るとアイピースの重みでピントがずれてしまうことがあります。この問題を解決するために、アイピースを取り付ける部分を分解して、筒の内側の対物レンズに近い側にパーマセルテープを二重にして貼り付けました。その結果、適度につまみが重くなったことと、なによりガタが相当減りました。少なくとも実用上困らない程度のレベルになりました。

実際に使ってみるとわかるのですが、鏡筒側の接眼部分を相当伸ばさないと焦点が合わないこともわかりました。CMOSカメラはまだいいのですが、普通のアイピースをつけるときはアイピースの延長アダプターが必要になります。

そうすると今度は伸ばしたアイピースが、次に書いてある片持ち経緯台の台の部分に当たってしまいます。それを避けるためには鏡筒を前方に取り付けたいのですが、付属のアリガタプレートでは長さが足りません。そのため、長めのアリガタプレートを既存のアリガタプレートに重ねる形で、長めのネジで鏡筒に取り付けました。これで鏡筒部を相当前方に持ってこられるようになり、接眼部が台に当たってしまうようなことは避けることができます。ただしプレート取り付けの際、接眼部を丸ごと外さないと、鏡筒内側のナットが落ちてしまって、再度はめることができないことに注意です。

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2. 自動導入機能付き経緯台

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CelestronのNextStar 4SEの架台部分をオークションで落としたものです。これも軽くて、自動導入機能がついていて、しかも自動導入の精度も、追尾の精度もそこそこ出るので重宝します。経緯台と三脚の間の隙間にネジで胎内の星まつりで手に入れた、水準器を取り付けました。

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水準器のプレートに穴が空いていて、三脚側にもちょうどいい穴が空いているので、M6ネジとナットとワッシャーで固定しました。

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これで星が雲で隠れがちな時などの初期アラインメントの精度がかなりましになります。例えば、観望会はじめはまだ明るいうちに始めることが多いので、明るい惑星のみが見えたりでなかなか初期アラインメントが難しい状況になります。それでも見はじめなければならないので、そんな時は惑星アラインメント機能(Solar System Align)が便利です。月でもアラインメントが取れるのもポイントです。少なくとも惑星アライメント機能が電視で使うぶんくらいの精度は十分にあることもテストできました。

(2017/10/21 追記: ちなみに、Nexterの初期アラインメントは3つの星を合わせるSkyAlignよりも、水平さえ出してしまえばAuto Two-Star Alignが一番手間が少なくて、導入の失敗も少ないです。最近はこちらの方を主に使うようにしています。)


3. カメラ
CMOSカメラは2種類使い分けています。
  • 月などの明るい天体で高解像度が欲しい場合にはASI178MC
  • 星雲などの淡い天体を見たい場合にはASI224MC
です。最近凝っているのは月の方で、PCの画面の解像度よりもカメラの解像度の方が細かいので、画面でかなり拡大しても破綻しません。その場で拡大するとまるで月を探検しているような気分になります。


4. Software
Windows10上でSharpCapで画面を表示しています。SharpCapの詳しい使い方はここを参照してください。PCを置く机も必須です。コストコで買ったColemanの70cm四方の折りたたみ机を使っています。椅子も落ち着いて見るためにはあった方がいいでしょう。



実際に観望会で使ってみて

そんな折、昨日の富山市天文台の「天文台まつり」でお客さんがいるところで実際に使ってみました。まず、これまでより圧倒的に軽いので、持ち運び設置など、全てにおいて楽です。また、単3乾乾電池8本での駆動で、しかも本体に内蔵できるので、外部の重いバッテリーなども必要ありません。充電式の1.2Vでも問題なく使えています。

特に夏季の観望会はまだ明るいうちから始まることが多いので、星が出ていない状態で初期アラインメントが必要となります。これまではAdvanced VXで木星くらいが見えた段階でろくに極軸も取らずに、とりあえずファインダーで入れて見える状態にして、そのままお客さんがひっきりなしでくるので自動導入するだけの極軸精度が出ないというのが毎回のことでとても苦労していました。今回上で書いたように、水準器をつけて水平を出せるようにして、月での初期アラインメントを本番で試して見ました。水平さえ出せばそこそこの精度で、一度導入すると電視レベルだと実用上30分くらいは月はほぼその位置にいてくれます。ずれても少し直す程度です。

いくつか欠点もわかって来ました。ファインダーの類がないので、最初は相当低倍率のアイピース(45mmとか使っています)か何かで導入してやらないとダメです。CMOSカメラのセンサーが小さすぎて、初期アラインメント時の導入は厳しいです。

カメラの画面の表示にはSharpCapを使うのですが、Windosw10のタブレット機能を使うと拡大、縮小が画面をタッチしてできます。ただし、任意の場所を見るには画面をスクロールしなくてはならず、その操作にてまどいます。iPadくらいにもっとこなれたインターフェースがあると助かるのですが、Windowsだとなかなか厳しいかもしれません。

それでも電視観望用としては、重さ、手軽さ、精度などを考慮して、必要十分なパフォーマンスを得られることがわかりました。鏡筒も経緯台もかなり安く仕上げているので、CMOSカメラが一番高価な天文機器になるくらいです。これからもますます活躍してくれそうなセットアップになり、やっと少し満足してきました。