昨晩、関東から来ている知り合いの小学6年生の女の子がお母さんと一緒に自宅に来て、庭で望遠鏡でみんなで星を見る機会がありました。星に特別な興味があるわけでなく、普通の子供と同じく「わー見てみたい」という、ごくごく一般の子供だと思います。特に土星を見たいと思っているらしく、以前やっと行くことができた国立天文台の観望会では、たまたま天気が悪くて土星を見ることができなかったと悔しがっていました。

今回は子供はその子一人だけだったので、試しに最初からSCOPETECHの二つ穴ファインダーで自分で星を導入をしてもらいました。最初だけ慣れなかったのですが、ものの数分もするとすぐに二つの穴に通すことはできるようになり、そのあと20mmのアイピースで倍率40倍(鏡筒が800mmの焦点距離なので)だと、そのまますでに視野にターゲットが入っていて簡単に導入までできてしまいます。

まずは慣れてもらおうと、星の名前を言わずに「あの明るい星を入れてみて」と言って、木星を導入してもらいました。 40倍だと縞の認識が難しく、何の星かわかってもらえませんでした。次に9mmのアイピースで100倍近くにすると縞も少し認識できたみたいで、何となく木星とわかるようでした。でもまだピンと来なかったようですが、導入のいい練習にはなりました。

次に土星を入れてもらいました。これも「あの明るい星を入れてみて」と言ったので、土星とは告げていません。20mmのアイピースでの感想は「細長い星が見える」と言い、本人は土星とは認識できていません。

そうこうしているうちに、土星が雲に隠れてしまい、代わりに雲から月が出て来たので、月を導入してもらいました。20mmだと少し倍率が低いので、9mmにしてもらうとクレーターもはっきり見えて来て「すごく綺麗」と喜んでいました。

面白いのはここからで、また土星が雲から出て来たので、今度も土星と言わずにもう一度20mmアイピースで自分で導入してもらって真ん中に入れてから、9mmのアイピースに変えてもらって倍率を上げて見てもらいました。しばらくピントを合わせていると突然「わぁ土星だ!すごいすごい!ママ見て見て!」と大興奮で叫び出しました。やっと今見ているのが土星だとわかった瞬間です。初めて自分で土星を導入して、初めて土星をみて、初めて土星と認識できたわけです。そばで見ていてこちらも嬉しくなってきました。

その後、「上の明るい星(ベガ)も望遠鏡で見たい」と言い出したので、「もうできるはずだから自分で好きなのを見てみたら」と言って放っておいたのですが、やはりすぐに月に戻っていって、また月が綺麗だといいながら、だいたいこの日は解散でした。

この最後の行動も示唆に富んでいます。恒星はやはり点光源で違いが出ないので、すぐに飽きてしまいます。そして、月は子供にとってやはり何度も見る価値があるくらい、魅力的であることがわかります。クレータも珍しいし、うさぎの模様が拡大して見えるだけでも面白いのです。最近、一般の人向けの観望会を通して、意外なほど月に人気があり、また月を拡大して見たことがない人がいかに多いかということがわかってきました。

ところが、望遠鏡を手に入れた子供が、月を見て、惑星を見て、じゃあ次に何をしたらいいかは、子供自身もわからないだろうし、私もいいアイデアがありません。もちろんいい機材を持っていて、一眼レフカメラなんかも持ってたら撮影などに走ることもできるでしょうが、よほど興味が強い子でない限り、子供だけでその方向に行くとはなかなか思えません。

ちなみにその子は天の川を目で見たことがないらしく、「天の川を見て見たい」と言っていたのは一つのキーかもしれません。天の川は意外に望遠鏡よりも双眼鏡、しかも低倍率が楽しいということは知らないでしょうし、説明してもなかなか理解してもらえません。たとえ理解してくれたとしても、低倍率の双眼鏡を子供に購入してあげる親は一体何人いるでしょうか?普通は双眼鏡よりは、望遠鏡。望遠鏡のあの形は子供にとっては憧れなのです。

子供がどうやったら望遠鏡を手に入れたくなるか、性能や値段も含めて子供に適した望遠鏡まで、ある意味情報過多のこの時代にどうやったらうまくたどり着くことができるか、せっかく手に入れた望遠鏡を子供はどうやって長く楽しめばいいのか、いろいろ考えさせられます。

原村星まつりである方がこんなことを言っていました。「誰でも天文が大好きになる瞬間がある。そういった瞬間を経験した人が、今こうやって集まっているんだ。」

遠方から原村に来るくらいのマニアになる必要はないと思いますが、今回の土星が、この子にとって星が大好きになる瞬間になってくれると嬉しいです。