うわさですごいと聞いていたCAN(CCD Astronomy Network)の年一度の集まりのCANP2017に、車で富山から栃木県大田原市まで参加して来ました。CANPといってもテントに泊まるとかするわけではなく、普通の大きな部屋に集まってする天文の研究会です。

当日夜中の1時頃に目を覚まし、シャワーを浴びたり準備をしたりしていたら結局出発は3時頃になってしまいました。長距離なので余裕を持っての出発です。高速で夜明けに見た金星が印象的でした。途中横川で少しだけ仮眠をとった以外は至って順調で、8時頃には矢板インターを出て、少し寄り道をして9時頃には現地に到着しました。

研究会は午後からでまだ余裕があったので、付属の天文館という施設に行って来ました。ホテル宿泊者は料金が100円になるので一旦フロントに行ったりして、ちょっと開始時間の9時半に遅れてしまいましたが、客は朝も早いので私一人。三鷹光器の65cmのカセグレン型反射望遠鏡で金星を、タカハシのTSA-102で太陽を見せてもらいました。65cmは福島のスターライトフェスティバルで行った星の村天文台の65cmと同じものらしく、設置の際には色々助言をもらったとのことでした。途中お客さんが二人増え、3人で星座紹介の映像を見ておしまい。市でこれだけの施設を持っているのは羨ましいです。


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天文館が終わってもまだ時間があったので車の中で少し昼寝をして、昼少し前に会場に行ってみると準備が始まっていたので、お手伝いがてら受付を済ませました。その間に自分の展示の準備をしました。今回初参加ながら電視観望を実物とともに展示紹介させて頂きました。いつものRevolution ImagerASI224MCです。Revolution Imagerは50mmのCマウントレンズをつけてモニターに表示し、ASI224MCはFS-60CBに取り付けて展示しました。さらにパワポで自動で流れる3分くらいの紹介ファイルを作ってそれをずっと繰り返して流しておきました。準備の途中から興味を示してくれる方が何人もいらっしゃいました。実はこの展示をしていいのかどうか少し心配していて、というのも、元々この研究会はCCDでできるだけ綺麗に天体を写すというものから始まっているので、観望会用の一般の人向きとはいえとりあえず色付きで星雲が見えるというコンセプトが受け入れられるかどうかわからなかったからです。でも実際にはその心配は全く杞憂で、やはり観望会で同じように星雲をアイピースで見せて、写真などで見た星雲との違いにがっかりして帰って行く人たちを見ている人も多いので、かなり共感を得たようです。特にRevolution Imagerは計算機いらずの手軽さが伝わったのか、日本で買うことはできないのかと何人かの方から聞かれました。初日の公演が終わってからの展示の紹介の時には全員の方に説明を聞いてもらえ、かなり電視観望の宣伝になったと思います。

さて、メインの講演の方ですが、 さすがに噂通りレベルが高くてとてもおもしろいです。
  • 最初の天文のための電子工作は実物のSS-Oneを交えての話で、回路も好きな自分としては非常に興味深いものでした。マイクロステップモーターが自動導入の最高速度と最小分解能の比を良くするというのは知らなかったので参考になりました。
  • 次の引退後の天文ライフのお話は、タイトルからは全く想像できない天体ドームのリモート制御の話で、施設レベルの電源が必要になるなど自分の経験を交えての話で、将来天文ドームを持つ時にとても役に立ちそうでした。定年後20年も楽しめるなら、天文はすごくいい趣味なのかと思います。
  • 木星の話は閃光のビデオがインパクトがありました。富山の方が撮ったそうですが、隕石などが落ちた時に出る光だそうです。惑星は最近少し試しているので、聴きやすかったです。月惑星研究会に報告してほしいとのことでしたが、自分のレベルで報告していいものなのか少し心配です。質問したら構いませんとのことでしたが...。
  • 初日最後の話はRAW現像でノイズが落とせるという話で、空間的にスタックをするというが原理のようです。DXOというソフトに実装されているとのことですが、高い方のエリート版を買わないとこの機能はついてこないので注意とのことです。ディテールを壊さずにノイズを減らす威力はかなりのもののようでした。

4つの講演後、展示紹介があり、6人の展示を司会の方がインタビューする形式で紹介していきました。
  • 個人的には極軸にエンコーダー付きのシャフトを入れてピリオディックモーションを減らす機器が興味を引きましたが、値段もなかなかのものでした。
  • 展示の一つに、日本でもトップクラスの方の写真が紹介されていて、そのクオリティは圧巻でした。司会の方自身も興味があるようで、すごく細かいところまで突っ込んでインタビューしていました。
  • 大ベテランの方の写真や機器の紹介があったのですが、私は自分の紹介が終わったところでホッとしてあまり聞けていなくて、記憶に残っているのがフライパンと鍋を使ったタカハシのミューロンの鏡筒部の改造で、海外でこれで組み立てたとのことです。夜中の懇親会でこの方にこれまでの望遠鏡の歴史の写真をいろいろ見せていただいたのですが、すごい数で、どれも個性的で面白いです。幾つの望遠鏡を作ったのかお尋ねしたのですが、どういう定義で幾つと数えたらいいのかわからないとの答えでした。要するに数え切れないくらいたくさんということです。
  • 他にも4Kカメラの紹介や、日食の撮影機器の紹介など、まだ手を出せていない分野のものですが、どれも機器としてはとても面白そうなものでした。 
  • 自分の展示の紹介もなんとか思っていることを伝えることができました。あくまで観望会などの目的で究極的に天体を綺麗にみるものではないので、もしかしたらこんなものはあまり価値がないとか言われるかもとも思ったのですが、インタビューでも色々聞かれ、その後もかなりの人から好印象のコメントや質問をいただいたので嬉しかったです。
その後の夕食を兼ねた懇親会では、色々な方とお話しさせていただきました。天文雑誌の天体写真コーナーによく名前を見る方たちもたくさん来ていましたし、自分で機械工作や電気工作したりする方や、独自で天体ソフトを開発している方もいて、普段ではなかなか聞くことのできないとても有益な話をたくさんすることができました。特に画像解析に関してはこれまでプロブラミングをしたことがないので、実際の開発の話なども聞け、すごく参考になりました。

真の意味での懇親会は9時以降に始まる第2部からでしょう。宿泊部屋の何部屋かが解放され、そこに10人20人と入り込み、それぞれ色々なテーマで気のあった人たちとの話が 、色々なところで始まります。みんな星や宇宙が好きな人ばかりなので、どこもすごく盛り上がります。かなり専門的なことから、本当にどうでもいいくだらないこと、ここではかけないような裏話まで、夢のような時間でした。私は二部屋をはしごして、1時半頃に自分の部屋に戻ったら、そこでもまだ話が続いていて、結局2時過ぎまで話していました。

朝は寝坊して7時半過ぎに起こされたのですが、急いで朝食をとり、部屋を後にして2日目の公演に入ります。
  • 一つ目の講演は撮影に関しての、恐らく今の日本の天体写真で最も活躍されている方のお話です。この講演には参りました。お話自体もとてもうまく、なんども笑いが起こったのですが、それにも増して内容が素晴らしかったです。すごいレベルで、緻密に、計画的に、理念を持って、論理立てて撮影を進めています。もちろん撮影に時間をかける努力もしていて、その姿勢にも驚かされます。短期間の間に多くの入賞をされているのも当然というくらいの進め方で、すごく納得させられました。なかなか真似もできないでしょうし、真似をしても仕方ないのですが、その方向性や姿勢は自分にないところなので、できる限り取り入れるべきだと強く思いました。
  • 次の天体写真の活用についての話は、CGクリエイターらしい切り口で、面白い映像を紹介してくれました。また、惑星状星雲と超新星爆発の色と元素の関係を考えるなど、科学的に考えると面白いという話はすごく共感できました。
  • アストロアーツのステライメージの紹介講演がありました。私は11月に前バージョンを買ったばかりなので、まだ最新版にバージョンアップしていないのですが、思ったより進化していてバージョンアップの価値があると思いました。日食撮影ソフトの紹介もあり、次の日食撮影の講演と合わせて、ほんの数分の皆既日食にかける情熱が伝わってきました。今回の皆既日食はアメリカで、私は見に行きませんが、太陽を始めていたらどうしても行きたくなっていたかもしれません。

帰りに仲良くなった方を乗せて駅まで車で行きました。その中で教えてもらったのですが、まだまだ関西にも面白い方達がたくさんいるようです。来年は関西の開催ということでますます楽しみです。帰り道、マヨネーズとんこつラーメンというちょっと変わったラーメンを食べてから富山までまた5時間の運転でした。途中眠くて少し昼寝したのですが、無事に自宅に着くことができました。

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二日間の研究会でしたが、とても濃い内容で、来ている方も興味深い方が多く、たくさんの方と知り合いになることができました。初参加で温かく迎えていただきありがたく思っています。来年もぜひ参加したいと思っています。