ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2024年05月

今回の記事は座学です。太陽撮影でよく見ているプロミネンスですが、ほとんど何も知らないことがよくわかりました。関連する事柄を調べたので、メモがてら書いておきます。

そもそもの疑問は、黒点から出ていた2本の線ですが、Hαからズレたところで見えていて、Hαだと見えないと謎だったのですが、ドップラーシフトで青側に寄ったガスの噴出だということです。


でも、ズレたということは元々はHαのみで見えるということになりますが、太陽内部から出てくるときにHαで吸収されていると思っていたので、なぜHα以外の波長で輝度がないのかが疑問でした。要するに、このガス噴出と思われるものは、Hαの吸収線なのかHαの輝線なのかという疑問です。

このガスの前に、もっと身近で毎回撮影しているプロミネンスも同じ疑問が出てきます。縁(へり、リム)のところに出ているプロミネンスはご存知の通り、PSTなどの太陽望遠鏡でHαからズレると途端に見えなくなり、背景の黒だけが見えるようになります。この現象から推測すると、Hαでよく見え、周りの波長の輝度ははるかに小さい、輝線ということがわかります。

一方、プロミネンスが光球面上に存在すると、今度はダークフィラメントと呼ばれて、周りより温度が低いので暗く見えます。この場合はHαを見たときに、光球面の明るい周りの波長がカットされて残ったHαのみが見えるというわけです。この場合は二通り考えることができ、光球面の特徴的な模様とともにダークフィラメントも見えてくるような吸収線と考えることもできますし、そもそもHαのみに輝度を持っている輝線と考えることもできます。

では、そもそもプロミネンスってなんなのでしょうか?少し調べるとわかりますが、プロミネンスとは低密度で百万度以上の高温プラズマ中に浮かぶ、高密度の1万度程度の低温プラズマとのことです。ここでいう、高温プラズマとはコロナのことです。高度百万キロ程度の希薄なコロナの中に、プロミネンスが雲のように濃く存在しているということです。そしてその低温プラズマは採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となるとのことです。太陽の縁のあたりに見えるプロミネンスの場合、背景は希薄なコロナで何も見えず(Hαやその周りの波長では輝いていない)、Hαで見るとプロミネンスのみが見えるということです。

ダークフィラメントも基本的には同じものですが、背景が光球面ということだけが違います。吸収と放射でHαに明るさを持つことは同じですが、背景が明るいためにHα以外では真っ白になってしまい、Hαのみを見ると温度の低いダークフィラメントが暗く写るということです。

プロミネンスがプラズマだったなんて全然知りませんでした。また、なんでHαのみで見えるのかの理由も深く考えたことはなかったのですが、輝線で輝いているということもはっきりわかりました。

このプロミネンスですが教科書レベルの本で調べると、大きく分けて静穏型プロミネンスと活動型プロミネンスの2種類に分けられるそうです。
  • 静穏型は数週間大体同じ形を保つもので、全体の構造はほぼ静止状態、ただし内部のガスは数km/秒くらいでゆっくり流れ落ちている。
  • 活動型は運動状態にあり数分から数時間で形を変えるもの。
我々が普段撮影するのはほとんどが静穏型なのかと思います。活動型は変化が相当速くて大規模な変化が多く、フレアとも大きく関係するため、その名の通り相当活発なもののようです。活動型はタイムラプスなどでは変化がよく見え、迫力ある映像になるのかと思います。

活動型はさらに以下のようにいくつかの種類に分けられるということです。
  • 噴出型プロミネンス
  • スプレイ
  • サージ(ジェット型プロミネンス)
  • ループプロミネンス(ポストフレアループ)
最初の噴出型プロミネンスは静穏型プロミネンスが突然不安定になり上昇や消失してしまう現象で、上昇速度は数百km/秒でかなり速いです。フレアとも関係があり、噴出型プロミネンスが発生するとフレア現象が起こることも多いそうです。

スプレイはフレアからガスがバラバラに飛び散りながら噴出する現象で、速度がさらに速く500-1200km/秒。噴出型プロミネンスとの違いは、噴出型プロミネンスは元々プロミネンスやフィラメントが存在しているのに対して、スプレイはフレア前にはプロミネンスもフィラメントもなかった(見えなかった)ということなので、明確な違いがあることになります。

さて、今回見た2本の線は、この分類からいくと「サージ」になりそうです。ジェット型プロミネンスとも呼ばれているようです。速度は数十から数百km/秒とのことなので、前ページで見積もった速度とも大方一致します。面白いのはこのサージも、噴出前にプロミネンスもフィラメントも存在しないことです。このことも、今回数分後に撮影したHαには少なくともフィラメントのようなものは見えなかったので、これも一致しているといっていいのかと思います。

さらに、プロミネンスとドップラーシフトで検索してみると、さまざまなページが見つかります。特に、天文台などの大型望遠鏡で撮影したデータから、ドップラーシフトで解析したというような高校の天文部などの記事も見つかります。この場合、Hαからの波長のズレがどれくらいかはっきりと分かっているので、逆に画像からプロミネンスの速度を求めようというような方向が多いです。

今回わかったことをまとめます。
  • 今回見た黒点からの2本の線は、サージもしくはジェット型と呼ばれる活動型プロミネンスの一種。
  • プロミネンスとは高温プラズマであるコロナに浮かぶ低温プラズマで、採光面からの水素に照らされてHαで輝く輝線であること。
  • サージは速度が数10km/sから数100km/sと速く、ドップラーシフトが起こり、地球から見た方向によって波長がHαから短い青側もしくは長い赤側にズレる。
  • PSTなどの太陽望遠鏡ではHαからわざとズラしてやることで観測できる。
これでかなりスッキリしました。

うーん、これまでプロミネンスとか黒点とか写っているだけで喜んでましたが、やはりその背景を知るとさらに楽しくなってきますね。もっと勉強すべきですが、こういった自分で撮影したものがきっかけでさらに調べていくというのは、とてもいい機会になるのかと思います。

今回撮影した不思議な現象の謎もほとんど解けたので、今回でサージ関連の記事は一応終わりです。次回もし書くとしたら、再びHαからズラしてみることを気にかけておいて、何か見えたときに再び記事にしようと思います。その際は、時間変動や波長依存性などを撮影することがきたらと思いますが、一度に両方は無理でしょう。今回のように、ここまであからさまなドップラーシフトしたサージをはっきり見た画像あまり数がないようで、そこそこ珍しい現象のようです。チャンスがあったらその機会を大切に撮影したいと思います。







非常に有益な情報が!

昨日の太陽撮影の記事に、hasyamaさんという方から早速有用なコメントをいただきました。どうやら黒点から伸びるあの謎の線は、ガスの噴出現象とのことです。

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上昇方向で地球方向に向かってくるガスだとすると、ドップラーシフトで波長が青側に移るために、エタロンを波長が短くなる方向に回転すると、このようガスが見えることがあるということです。逆に、下降方向などで地球から遠ざかる向きの場合は赤側にシフトするとのことです。

コメントにはFacebookへのリンクも書かれていて、以前にも同様のものが波長がずれたLUNTで撮影されたとのことです。その投稿によると、やはりこのガスの噴出はそこそこ珍しいもので、あまり頻繁に撮影されているものではないようです。

今回は実際に何をみているのか、矛盾点はないかなど、自分なりに評価してみました。新たに疑問点が出たりしていますが、ある程度納得できたので記事にしておきます。


そもそもHαで何を見ているのか?

でもそもそも、なぜガスがHαで見えるのか、理由がまだよくわかっていません。光球面は納得できます。Hαに吸収線があり、Hαの653.6nmに合わせたエタロンでそこだけ透過させると、他の波長の明るい部分を除外することができ(吸収されながらも残った)Hα固有の光で作られる模様を見ることができます。要するに、吸収された光なのでHα部分は周りの波長より暗いということです。その一方、例えば彩層面からはるかに高いところまで写る派手なコロナまで含む30.4nmや19.3nmの光は、吸収線ではなく輝線です。すなわち周りの波長より明るいということです。

Hα領域の光は太陽表面に出てくるまでに吸収されるので、プロミネンスや噴出するガスも同様にHαに吸収線を持っていることは容易に想像がつきます。でも上で書いたように、Hα領域は周りの波長より暗いので、他の波長では明るく光っていることになります。光球面上は明るすぎるので、その明るさをエタロン除いてやるとHαがよく見えるようになるのはわかります。でもプロミネンスを見ている太陽の縁のところの背景は、光球面よりはるかに暗く、それに比べてHα以外の波長で明るいはずのプロミネンスが、エタロンの調整角をHαからずらしたら見えなくなるのかが、まだ理解できていません。

私の太陽の知識はせいぜいこれくらいです。まずはこの疑問を解決したいです。


波長のずれを見積もってみよう

とりあえず上の疑問は疑問として置いておくとして、その上で今回見えたガスも、プロミネンスと同様に元々はHαのみで見えるものなのでしょう。仮にそうだとして、エタロンで光球麺を見た時、狭い透過波長のみで見ることになるので、その周りの波長は暗く見えて、その結果ガスも見えることになるのかと思います。

この仮定の元、今回Hαからずらしたエタロンで見えたガスがドップラーシフトによるものだとして、ガスの速度から計算できる波長のズレと、エタロンの調整角から推定できる波長のズレが、一致するのか、それとも全然おかしいのか、簡単に評価してみたいと思います。

まずガスの速度からの見積もりです。
  1. ガスの長さは太陽直径の100分の1よりは大きくて、10分の1には届いていないくらいですが、ざっくり1/10とします。
  2. 太陽の直径はざっくり地球が100個並ぶくらいで、地球の直径はざっくり1万kmとすると、100万kmのオーダーです。
  3. なのでガスの長さはざっくり10万kmとします。
  4. ガスが伸びる時間は1分よりは長くて1時間よりは短いと思うので、とりあえず1000秒としましょう。
  5. そうするとガスの速度は10万km / 1000秒 = 100km/秒程度となります。
  6. 光の速度は30万km/秒で、それが100km/秒程度ぶん圧縮されるとすると、ドップラー効果で波長も同様の比率100/300000 = 1/3000くらいで短くなるので、653.6nmは0.2nm程度短くなります。

次にエタロンの回転で変わる波長です。
  1. PSTのエタロンの透過波長性能は、1Å = 0.1nm程度です。
  2. エタロンは半回転くらいしかしませんが、半回転の4分の1くらい回すと見えているHα領域がほとんど見えないくらいになります。ということは8分の1回転で変化する波長が1Å程度と考えてオーダー的にはおかしくないでしょう。
  3. 今回エタロンは波長の長い側か短い側かはわかりませんが、完全に端に回し切ったところにに行っていました。ということは、真ん中がHαに合っているとして、半回転のうちのさらに半分回っていたことになるので、4分の1回転回っていたことになります。
  4. 1/8回転で1Å = 0.1nmなので、4分の1回転回っていたとすると、エタロンでは2Åぶん、すなわち0.2nm程度Hαから波長がズレていたことになります。

おおっ!!

ものすごいラフなオーダー計算ですが、ものの見事に0.2nmで、両者ドップラー効果の波長のズレとエタロンの波長のズレが一致しました。多少のファクターのズレはありますが、少なくともオーダー的にはドップラー効果でHαからズレたガスを見ていたと結論づけておかしくなさそうです。


以前の撮影でもジェットが!

そういえば、以前もジェットのようなものを見たと報告したことがあるのを思い出しました。


この時はHαで見ていたはずですが、真横に出ているので地球方向に向かう速度成分はほとんどなかったのかもしれません。また、ジェットが数分で伸びていると書いてあるので、もしかしたらジェットの速度は今回見積もったものよりもかなり速いのかもしれません。ただし、それに地球方向の速度成分をかける必要があるので、それでもオーダー的にはそこまで間違っていないかと思います。


プロミネンスでも波長のずれは起こる?

ところで、プロミネンスもタイムラブスで見ると非常に高速に動いていることがわかります。下の動画は以前撮影したものですが、わずか19分間でこれだけ動いています。
Blink

プロミネンスの移動速度もそこそこ出ているはずで、地球に向かう速度成分も多少はあるとすると、エタロンを回転して調整する時に、いつも光球面とプロミネンス部でエタロンの最適位置が合わないように思えるのは、もしかしたらこちらもドップラーシフトが起こっているからなのでしょうか?


まとめ

簡単なオーダー見積もりでしたが、少なくともドップラー効果で波長がズレたものが見えていたようだということは納得しました。

でもまだなぜプロミネンスやガスがHαだけでよく見えるのかは納得できていません。どこかにいい説明はないのでしょうか?

でもこうやって、自分で撮影した謎の現象が理解できているというのは、とても面白いです。天文趣味の醍醐味の一つなのかと思います。






やっと退院して初の週末の土曜日。この日は一日快晴のようです。

病院では検査で毎朝早く起きていたので、その名残で朝早くに目が覚めてしまうのと、まだ外食も控えていていつものコメダも行けないので、朝から太陽を見ることにしました。そもそもGW中に大きな黒点が話題でしたが、寝ているだけで全く何もできなかったので、今回出てきた黒点でその不満がやっと解消されそうです。

最初に見えた謎の2本の線

セットアップはいつものC8+PST+ASI290MMで、それをCGEM IIに載せています。PCとカメラを繋いで太陽を導入し、まず最初に見えたのが「えっ???」と思った、黒点から飛び出ている変な2本の曲線です。リアルタイムの動画状態でもそのまま確認できます。

ピントを合わせて、次にエタロンの回転を調整しようとして気づいたのですが、見ている画像はHαから全然ずれていて、エタロンの回転の端まで行っているような状態で、ある意味白色光に近いような画像です。とりあえずAutoStakkert!4で1000フレームをスタックして、ImPPGで少しだけ細部を出す画像処理した物です。
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2本の線がはっきりと確認できるかと思います。その後しばらくしてから気づいたのですが、手前側にも何か黒い模様が出ています。

最初はフレアかなと思いました。でも2分後に撮影したHα画像には何も写っていません。
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フレアなら白いスパークのような模様があってもおかしくないと思います。同時刻で調べたのですが、特に何かフレアのようなイベントが起こっているようなこともなさそうでした。

X上でダークフィラメントが伸びているのでは?とのコメントがありましたが、こちらももしダークフィラメントならHα画像に暗い線が写っていてもおかしくないと思いますが、やはりそれらしいものは見当たりません。

先ほど白色に近いと書きましたが、エタロンでHαから外しているだけなので、結構Hαに近いことでしょうか。もしかしたらそれがヒントになるのかもしれませんが、今のところ謎のままです。


大きな黒点群と、大きなプロミネンス

その後はしばらくHα画像を幾つか撮影しました。見栄えのする黒点と、すぐその下に出ていた大きなプロミネンスです。

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モザイク合成に挑戦

かなり大きな範囲で黒点、プロミネンス、ダークフィラメントが出ていたので、東側をモザイク合成してみました。

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結構頑張ったのですが、まだ境目がわかります。PSTは画面内でHα付近のいいところが限られるので、モザイクは相当難しいです。さらに一枚一枚を見て分かったのですが、どうも上部はピントが出ずに、下部のみピントが出ているようです。しかもこれ、撮影中はほとんど分からず、スタックしてImPPGなどで細部出しまでしてやっとわかるのです。

今回ニュートンリングが残っているのが分かったので、最初の方でカメラをチルトアダプターでさらに傾けました。そのことが原因でピントずれの部分が出ているのかもしれません。一度チルトアダプターの向きをかえて、もう少し小さいチルトでニュートンリングが消えるところがないかなど、一度探る必要がありそうです。


フィラメントとプロミネンス

これまでも何度かチャンスがあったのですが、縁の近辺にあるダークフィラメントから、連続して縁に出ているプロミネンスに続く画像をうまく撮りたいとずっと思っていました。でも画像処理が未熟で、その接続部、特に光球面側のフィラメントをうまく出して、明るさをプロミネンスに合わせる方法が確立できずにいました。

プロミネンスをぐるっと一回り見ている最中に、ちょうどうまく繋がっていそうな場所がありました。今回、光球面とプロミネンス部を別々に処理することで、うまく繋がるのが表現できたのかと思います。
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白色光

その後、今度はNDフィルターを使って、本当に白色光で撮影してみました。PowerMATEの4倍を使っています。
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最初の変な線が出た撮影から約30分が経っていますが、時間が過ぎたせいなのか、本当に白色光にしたからなのかわかりませんが、あの目立っていた線は見えませんでした。今一度、エタロンをHαからはずして同様のものが見えることがあるのかどうか、試してみたいと思います。

白色光は粒状斑らしきものが少し見えてきています。動画時でもごく僅かそれらしいものが見えていました。以前、粒状斑がきちんと出るくらいの、シンチレーションのいい時の動画を見せてもらったことがあるのですが、今回はその動画には遠く及びません。そもそも、この30分ですでにシンチレーションが悪くなったようで、朝イチの時の方が(バローとかつけてないので)カメラの解像度としては悪いはずなのに、明らかに分解能が良かったように見えます。

実はブログに書いてこなかったのですが、休日で晴れている時はたいてい太陽撮影を敢行していました。ただし、休日の午前はほとんとコメダかガストに行っていたので、朝早くに太陽を撮影することは実は一度もありませんでした。なかなかいい結果が出ず、ほとんどお蔵入りになっています。今回入院でまだ外食は控えているのでたまため朝早くに撮影をしたのですが、朝の早い時間というのはやはりシンチレーションがいいのかもしれません。しばらくは日が長いので早い時間でも太陽は高い位置にくるはずです。できるだけ朝早くに撮影することを今後しばらくしてみようと思いました。


まとめ

久しぶりにブログを書く気になる太陽撮影でした。モザイクに時間がかかってしまい、記事にするのが遅くなりましたが、肝心なモザイクはまだ課題がありそうです。

やはり太陽はシンチレーションがかなり重要です。これまで動画の段階で粒状斑が出るようなのが撮れていなかったのですが、機材のせいかともずっと疑っていました(まだ疑っています)。でも朝早いとシンチレーションが全然マシかもしれないと今回思えたのは収穫でした。

今後は休日の晴れの日は、早起きして、撮影を済ませ、その後にコメダに行くことにしたいと思います。休日の天国のコメダは外せません。





2024/5/17(金)、富山駅にてゲリラ観望会と銘打った天体観測会を敢行しました。計画したのは所属する富山県天文学会のメンバー。通勤通学帰りの人が集まるので、かなりの人数になります。立ち寄ってもらった人は数百人に及ぶと思いますが、地方の富山での観望会でここまで多くの人に見てもらうのは珍しいです。

この日の月は上限を少し過ぎた月齢9日。少し明るいですが、そもそも駅前なのでかなり明るくて、むしろ月を見るのがメインになります。夕方の18時頃から準備が始まります。

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私はいつもの電視観望で、FMA135とトラバースをカバンに入れて運びます。駅前は車が停めにくいので、少し離れた駐車場に車を止めそこから荷物を運ぶため、できるだけコンパクトにします。その代わりお客さんから見えやすいように、24インチのモニターとポータブルバッテリーを持っていきました。

PCはSURFACE 8ですが、Type-CのHDMIアダプターを介してなぜかモニターに表示することができず、ケーブルやアダプター、接続設定などを疑い時間を食ってしまいました。結局予備で持っていたSURFACE 9を繋ぐとすぐにモニターに表示されたので、8の方は何かおかしいのかもしれません。やはりこういった観望会には必ず予備機を持っていった方いいです。ちなみに使ったのはトラバースですが、一応車の中にはAZ-GTiを待機させていました。

セットしたのはこんな感じです。
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明るいうちから月を導入しモニターに表示させると、さっそくお客さんが集まってきます。FMA135なので解像度は大したことはないですが、それでもPC上で拡大すると月の模様がはっきりと見え、多くのお客さんが「こんなに見えるんだ」と驚いてくれます。

今時のお客さんはスマホで撮影するのが普通です。
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隣にOさんの機材も写っていますが、ASIAirを使った電視観望で、私と合わせてここは電視観望エリアになっていました。

春なので電視観望だと銀河中心になるはずなのですが、今回銀河はかなり厳しかったです。そもそも目的にしていた三つ子銀河が、月が近過ぎて明るくてほぼ見えず。むしろ北の空に向けてなんとか見えたのがM81と82です。
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M51も試しましたが、2つの点くらいにしか見えなくて形までわかりませんでした。M13もまだ低空で、球状星団のツブツブ感もほぼなくて、春の電視観望の難しさを思い知らされました。

一方OさんはEVOSTAR72だったと思いますが、私のより口径が大きくて焦点距離も長いのでだいぶん有利で、M101をある程度長時間スタックして腕の形まで見せていました。そういえば前回の駅前ゲリラ観望会に参加した時は、まだ2019年でFS-60CBをメインに電視観望をしていて、季節的にも秋でM57やM27を見せていました。輝度がある星雲は街中でもよく見えますが、やはり駅前のような超光害地ではある程度の口径と焦点距離はあった方がいいと思いました。結局途中からは月を見せていました。なんだかんだ言っても月が一番ウケがいいです。


あともう一つの失敗は、モニター用に100V電源をとっていたA社のポータブルバッテリーがかなり早い段階(1時間も持たずに)で切れてしまったことです。もちろんフル充電してあったはずなのですが、表示が100%でもすごい勢いで無くなっていくみたいです。充電用のアダプターは持っていなかったのですが、Mac用のType-Cの充電器で試したら充電できたので、設備として用意されていた100V電源から充電しました。これもかなり短時間(30分くらい)で100%充電されたと表示されたのですが、あまり信用できません。実際、繋いだらすぐに70%くらいになり、その後30分程度で再びバッテリー切れになってしまいました。冬場の寒い時に誤動作することは認識していましたが、暖かくなってもあまりまともとはいえなさそうです。他のノーブランドバッテリーでこんなおかしなことは起きたことがないのですが、ブランドものだからといって必ずしもいいとは限らないということでしょうか。

望遠鏡は反射屈折合わせて10台くらいは出ていたでしょうか。
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Nさんともう1人のC8が2台、Yさんの15cmの双眼鏡、NさんのFSR85、20cmニュートン、屈折が何台か、WさんのSeeStarなどです。あと面白かった機材は、コルキットの双眼でしょうか。2本の鏡筒が光軸方向少しずれて配置されていて、接眼部も斜めに配置されているタイプです。目幅も合わせることができて、意外なほどよく見えました。しかもフードがカーボン仕様で鏡筒にアルミ白を巻いていて、最初BORGなのかと思いました。

眼視も基本的には対象は月がほとんどだったのかと思います。倍率がそれぞれ違うので、お客さんはいろんな望遠鏡を覗いて楽しまれているようでした。

あと、アイピースにスマホを近づけて撮影する人が多かったのも印象深かったです。でも最近のスマホはすごいですね。望遠鏡とかなしで、スマホ単体でも月が撮影できるようです。しかも望遠鏡のアイピースに近づけて撮ったものよりも露光などもきちんと合っていて、かなり綺麗に写っています。私の手持ちのスマホはかなり昔のiPhoneでそんな芸当は全然無理なので、スマホの進化に改めてびっくりしました。

もう一つ特筆すべきは、日本人以外の方の多さでしょうか。印象的には半分とは言わないですが、かなりの数でした。先ほどのスマホだけで撮った月を見せてくれた方は中東系のような顔立ちの人でした。ほとんどが観光かと思いますが、中国や台湾などのアジア系の方が多く、ヨーロッパの方や、おそらく富山に住んでいると思われるロシアの方もいました。アメリカからという人は直積聞きませんでしたが、多分いたと思います。南米やアフリカ系の方は見なかったと思いますが、富山がそういった遠方からの観光客も呼べるようになればいいのかと思います。「今日は何か特別なことがあるのか?」と日本人にも海外の方にも何度か聞かれましたが、「いえ、普通の日ですが、金曜で次の日が休みなので皆さんに楽しんでもらおうと、富山のアマチュア天文家が集まったのです」と答えていました。こうイベントが観光で富山に来てくれた人のアクセントになってくれればと思います。

時刻も21時を過ぎるとお客さんの数も減ってきます。21時15分くらいに終了のアナウンスがされ、皆さん撤収作業に入ります。私も21時半頃には帰路につきました。
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こういった企画は楽しくていいですね。特に富山のような地方の観望会ではなかなか人が集まらないので、今回のような駅前でやるというのは集客の面からも意味があると思います。元々のアイデアを出してくれて、今回も中心になって企画を進めてくれたSさん、どうもありがとうございました。

このゲリラ観望会、秋にもやろうと計画しています。次回の富山駅でのゲリラ観望会は9月13日の予定ですが、天候などにより日にちは変更されるかもしれません。なんたって「ゲリラ」ですから、神出鬼没なわけです(笑)。


M104の画像処理の最中に、BXTの恒星のにんしきでで気付いたことがありました。これも補足がてら書いておきます。



BXTの適用限界の一例

BXTについてはある程度一定の評価が定着したのかと思います。私もお世話になっていますし、今回のM104本体の内部構造を出すのにも大きな効果がありました。焦点距離1300mmのSCA260に対してM104は少し小さくて、拡大して細部を見ながら処理をすることも多いです。その拡大しながらの処理の最中で改めて気になったのは、BXTでどこまで微恒星を補正できるのか?ということです。

下の画像を見てください。左から順に1. BXT無し、2. BXTのCollect only、3. BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
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星像を改善しているのはすぐにわかると思いますが、その中で目で見て明らかに微恒星とわかるものをいくつか取りこぼしてしまっているものがあります。次の画像は、仕上げ前にStarNet V2で恒星を分離し取り除いた画像になります。

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BXTで救いきれなかったものは(BXTとは別ソフトのStarNetでも)背景として認識されるようです。でもそれらは、人の目には微恒星側に認識できるものも明らかにあるのかと思います。

シンチレーションなどでブレてしまい星の鋭さが出ていないのが原因かと思われますが、問題はBXTで星と「認識される」か「認識されてない」かで、その切り替わりを境に本来の明るさや大きさが大きく変わり、差が出てしまうことです。以前、BXT2にバージョンアップする前にも同じようなことを書いていま。


その後BXT2にアップデートした時に、微恒星をより拾うようになっていると解説されています。

そのためかなりマシになっているはずなのですが、今のところは今回程度の認識が限界になるようです。

この程度のことは強拡大しない限りほとんど気になることはないでしょう。さらに今回の最終結果としては背景をそこまで明るくすることはないので、微恒星と思われるシミのようなものは実際には見えなくなってしまい、実用上はなんら問題はないと思います。ただ、強拡大したり、淡い背景を強炙り出しする場合は、この問題が露呈する可能性があることは、頭の隅に置いておいた方がいいのかもしれません。

もう少し突っ込みます。微恒星をできる限り拾うって、色々価値があると思うんですよ。上の背景だけの画像を見てたら、微恒星と思われるところは輝度としては明らかに盛り上がっているので、その部分だけうまく集光できないかなと思ってしまうわけです。FWHMが星の明るさによらずに一定なように、恒星の広がり具合は本来明るい星でも暗い星でも同じはずです。でも暗い星は背景のノイズに埋もれてしまうために鋭さが出ないのかと思います。この鋭さを仮想的に補助してやればいいのかと思います。手動だと銀河本体はマスクをかけて、背景の中の輝度差で微恒星部を分離して、その盛り上がり部を背景に対して増強してやることでしょうか。もしくはここからBXTのcorrect onlyでまともな星像にしてもらうとかできればいいのかもしれません。あ、でもこれだと本来の輝度から変わってしまうかもしれません。まあ何か方法はありそうなので、じっくり考えてみると面白いかもしれません。


bin1にdrizzle x2に、さらにBXT

今出せる解像度の限界は、bin1にdrizzleを2倍以上かけて、さらにBXTでしょうか?PowerMATEなどのバローでも分解能は増す可能性はありますが、ここでは考えないことにします。

どこまで細かいのが出せるのか、果たしたそれに意味があるのかを試してみました。使ったのは2023年5月に撮影した5分露光のL画像を36枚、WBPPでインテグレートしたものです。その際、drizzle無しと、drizzle x2で出力しました。bin1なのでdrizzle x2の方は解像度は16576x11288で、ファイルサイズは1枚だけで1.5GBになります。全ての処理が重く、簡単な操作さえ非常にもっさりしています。画像処理もものすごいディスク食いで、はっきり言ってこの時点でもう実用的でもなんでもありません。

このdrizzle無しとx2それぞれにBXTをかけてみました。

まずはdrizzle無し。左から順にBXT無し、BXTのCollect only、BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
comp1

次にdrizzle x2の場合。BXTに関しては上と同じです。
comp2

この結果は面白いです。drizzle x2のほうがBXTが適用されない微恒星が多いのです。理由は今のところよくわかりませんが、niwaさんのブログのこの記事がヒントになるでしょうか。どうもBXTには適用範囲というものがあり、FWHMで言うと最大8ピクセルまでだとのことです。

でも今回、そもそもdrizzle無しでもFWHMが12とか13で、すでにこの時点で大きすぎます。drizzle x2だとするとさらに2倍で、はるかに範囲外です。でも不思議なのは、FWHMが12とか13でも、たとえそのれの2倍でも、一部の恒星にはBXTが適用できているんですよね。なので少なくとも私はまだこの適用範囲の意味はよくわかっていません。

あと、niwaさんのブログの同じ記事内にあった、明るい星に寄生する星が出てくることが私も今回M104でありました。
fakestars
真ん中の明るい星の下と左上に偽の星ができてしまっています。

niwaさんはdrizzle x2だと出て、drizzle x1だと緩和されると書いてありましたが、私の場合はdrizzle x1でした。恒星を小さくすることと、ハロを小さくすることが関係しているようで、両パラメータの効きを弱くしたら目立たないくらいになりました。そのため今回の画像では恒星を小さくしきれていないため、さらに星雲本体を拡大してあるため、恒星が多少大きい印象となってしまっているかもしれません。

いずれにせよ、ここでわかった重要なことは、むやみやたらに元画像の解像度を上げてもよくならないどころか、不利になることさえあるということです。BXTの効かせすぎも寄生星を生む可能性があります。ファイルサイズのこともあるのでbin1とdrizzle x2はそもそも実用的ではないし、さらにこれにBXTを使うなんてことは今後もうないでしょう。今のところbin2でdrizzle x2にBXT、bin1にdrizzle無しでBXTくらいが実用的なのかと思います。小さい銀河みたいに拡大すること前提で分解能を求めるとかでなければ、bin2にdrizzle無しでBXTでも十分なのかと思います。

前回の記事のM104撮影に際し、少し検討したことがあるので、メモがてら書いておきます。大したことではなく、ホントに補足程度です。



恒星の飽和

今回のM104の撮影では、2023年5月と2024年4月で、機材や設定はほぼ同じで、露光時間だけ5分から1分に縮めました。5分露光では多くの星が飽和していて、1分間にしてもそこそこの数の恒星が飽和していることを前回示しました。

いい機会なので恒星の飽和について少し考えてみました。これは恒星周りを3次元でプロットしてみるとよくわかります。1分露光のL画像のストレッチ前のリニアの時のものを一部を拡大しています。

Image28_Preview05_3dplot
全角画像の左下の端にかかっている3つの明るい星。

3つ並んだ星はどれも豪快にてっぺんが平らになっていて飽和していますが、階調がどれくらい足りていないのかはこれだけだと良くわかりません。そこで、画面の中でちょうどギリギリ飽和するくらいのある星をStellariumで調べてみると12.5等級とのことでした。次に、画面の中で最も明るい星の等級を同じくStellariumで調べてみると「HD109875」で7.65等級とのことでした。12.5 - 7.65 = 4.75等級 = 87.1倍となりました。ということは、今回の画像ではまだ明るさを100分の1近くにしなければ、全ての星の飽和を無くすことができないのがわかります。ここではASI294MM Proのbin1設定で見積もっているのでダイナミックレンジは12bitと狭いですが、たとえ16bitのカメラを持ってきても4bit = 16倍稼げるだけで、100分の1という差は賄いきれません。

露光時間で考えてみます。今回は1分露光なので、同じカメラで同じgainだとすると60s / 90 = 0.67秒程度の短い露光時間にする必要があります。今回の撮影時のカメラのgainが120なので、たとえgainを0にしたとしても-12dB = 0.25倍程度です。この場合は露光時間を2.7秒程度まで伸ばせますが、それでも全く現実的でないほど短い露光時間です。これだと淡いところは読み出しノイズに埋もれてしまう可能性が高いです。

画像に写る星の明るさは、星がどれだけ鋭く写るかにも依るので、鏡筒の口径、スポットダイアグラム、シンチレーション、風や地面振動による鏡筒の揺れ具合、それらを積分する露光時間にも依ります。もちろん性能が良くなればより星像は鋭くなるので条件は厳しくなり、要求されるダイナミックレンジは大きく、露光時間はより短くなります。

より一般的には、飽和しないための露光時間は画角に写った星のうち「一番明るい星」に依ります。Stellariumで調べてみましたが、今回撮影したものと同じ画角だと10等星は撮影位置を選べば避けることができそうですが、11等星を画角の中に一つも含まないというのはかなり難しそうです。さらに対象天体は中心に持ってくることが多いので、任意の場所を選べるわけでもありません。10等星は画角内に入ってくる確率がそこそこあるとすると、計算すると6.9秒程度まで露光時間を短くしなければならなくなり、やはり現実的でなくなってきます。

ものすごいラフな見積もりですが、恒星の飽和を完全に避け、かつ淡い天体を写すというのはかなり難しいということがわかるかと思います。こうなってくると、どうしても飽和を避けたい場合は、明るい恒星のみを写す超短時間露光を別撮りして、画像処理時にHDR合成することでしょうか。

というわけで、今後も恒星の飽和はあまり気にすることをせずに、撮影を続けたいと思います。


シンチレーションについて

今回L画像は2024年の4月1日と4月10日の夜に撮影しています。1枚撮りのRAW画像を切り取って、オートストレッチしたものを両日比べてみます。高度が同じ(31度)になるように時間を選んでいます。

1: 202/4/2 00:05:
01_good_1min_2024-04-02_00-05-46_M 104_L_-10.00C_60.00s_0059

2: 202/4/11 01:25 00:05:
02_bad_1min_2024-04-11_01-25-11_M 104_L_-10.50C_60.00s_0000

パッと見で、明らかに4/2の方がシンチレーションがいいことがわかります。

3: もう一つ、2023年5月11日に5分露光で撮影したものです。露光時間が長いので微恒星まで写り込んでいて、一見こちらの方が良さそうに見えますが、星像の大きさだけをよく見比べると今年の4/2の方が小さくてよく見えます。
03_middle_5min__2023_05_11_23_35_26_LIGHT_L_10_00C_300s_G120

実際にPIのFWHMEccentrisityツール(gausiaan, 0.5)で径を測定すると
  1. 12.51px
  2. 23.22px
  3. 13.64px
となり、画像を見た印象とほぼ一致しているのかと思います。

でも、いくらbin1での撮影といえ、そもそも12.5pxでもかなり大きい気がします。SCA260のスポットダイアグラムを見てみます。

sca260_2

いくつか数字があるのでわかりにくいのですが、図はどれも一辺200μmです。右下の一番大きなスポットの長辺が30umくらいでしょうか?これに相当する数値はField 4のGEO radius 15.53umのようです。radiusで半径なので2倍して31.06umでほぼ一致しています。

ではRMS radiusとは何かというと、光の強度分布をガウシアンだと仮定すると、標準偏差σがRMS radiusと一致します。σとFWHMの関係は、計算するとFWHM = 2.36σとなるので、例えばField 1のFWHMは1.916 x 2.36 = 4.50umとなります。

今回はASI294MM Proでセンサーの長辺が19.2mm、短辺が13.1mmなので、四隅までの距離は中心からsqrt(19.2^2+13.1^2) / 2 = 11.6mmとなり、Field 1と2の真ん中くらいでしょうか。2.51umと1.92umの真ん中を取り、RMS radiusを2.25umとしましょう。FWHMは2.25 x 2.36= 5.23umです。

今回のセンサーはASI294MM Proをbin1で使っているので、1pxあたり2.31umです。

ここまでの見積もりが正しいとすると、FWHMをピクセルで表すと、SCA260の中心付近では5.23[um] / 2.31[um/px] = 2.26[px]となりかなり小さい値が見込まれます。これとシンチレーションが良かった4月2日の12.51pxと比べると、実測は5倍以上大きいことになります。スポットダイアグラムなんて全然意味がないくらいに大きな星像になっているというわけです。

では今回撮影したM104の星像が、他のよく撮れている方の画像と比べて大きすぎるかというと、そんなことはなくて、ある意味一般的な恒星の大きさと言えるかと思います。そもそも他と比べてそこまで星像が肥大するようなら、M104本体の分解能もそこまで出ないはずです。

では、何がおかしいのでしょうか?

これまでこんなことはあまり定量的に見積もってこなかったので、冷静に考えてみました。まず気づいたのは、焦点距離に関わらず高性能な鏡筒のスポットダイアグラムも中心像ってそこまで大きく変わらないことです。例えば焦点距離300mmのFRA300 Proのスポットダイアグラムの数値を見ると、RMS radiusで中心では1.961umとSCAとほとんど同じ大きさです。これだけを信じると写る恒星の大きさは同じになるはずです。じゃあ焦点距離が長い鏡筒で写した恒星がそこまで小さくなるかというと、小さい系外銀河の画像などを見てもすぐにわかりますが、現実にはそんなことはなく、一つ一つの恒星の大きさは大きくなってしまい、星の密度も全然小さくなります。スポットダイアグラムでは同じ径なのに、焦点距離が違うと、なぜ撮影した画像ではこんなに違うのかという疑問に置き換えられたということです。

ここまで考えると答えはすぐに出てきて、焦点距離が長いので、同じ大きさの素子のカメラだとするとより拡大して見ていることになり、揺れなどの影響がより効いてくるということです。

揺れを見積もってみます。PHD2の出力を見てみると、角度揺れはRMSで概ね2秒角以内には収まっているようです。焦点距離1300mmとセンサーサイズ19.2mm x 13.1mmから、このサイトで計算すると画角は0.85x0.578度とわかるので、ピクセル数(1binであることに注意して)8288x5644でそれぞれの辺で割ると、1ピクセルあたり0.36秒角とわかります。そのため、PHD2から見積もった角度揺れで5ピクセルくらいは揺れていることになるので、スポットダイアグラムから見積もった2.26ピクセルの倍くらいにはなっています。実際にはこの2倍の揺れの周りに、元のスポットダイアグラムで表されるガウス分布が散らばるとすると、周りに片側0.5倍、両側で1倍程度の広がりを持ってもおかしくはないでしょう。これで3.3倍程度で、実像の5倍までまだ少し足りませんが、ある程度の説明はできそうで、少なくとも角度揺れだけでスポットダイアグラムで期待される径は、全然出るわけがないことがわかります。

ここで、オートフォーカス時の短時間のHFRを見てみます。2023年5月11日のL画像の撮影途中で合わせた時の画像が残っていました。
キャプチャ

この時のフォーカス位置でのHFRは7を少し切るくらいです。HFRはHalf Flux Radiusの略で半径、HFD(Half Flux Diameter)と呼ばれるものもあって、こちらは直径です。FWHMはFull Widthで直径なので、HFDと比較すべきなので、HFRの2倍と比較するとしましょう。でもFWHMとHFDは定義が違っていて、FWHMは最大値の「ある一点」を元に半分の値を径とするもの、FHDは定義によると「統計的に」中心を求めていることが大きな違いです。HFDの方が実測のような崩れた星像にも強いことがわかります。でも理想的なガウシアン分布に対してはいずれも2.36σになることがわかっているので、ここでは簡単のため同じものとして扱います。

2023年5月11日のL画像の撮影ではほぼFWHM =~ 2倍の HFR = 14を切るくらいになるので、測定自身はFWHMもHFRも、共にうまくできているようです。でもここでAF時のグラフを見てみると、フォーカスポイントの真ん中あたりにおいては、フィッティング曲線が実測値よりもかなり下に来ていることがわかります。そうです、なんらかの理由で径が一定値以下に下がることはないということを示しているのです。

この「なんらかの理由」が何なのかは、今のところ不明です。鏡筒の光学性能そのものの可能性もありますし、シーイングの可能性もありますし、シーイングや筒内対流を含むシンチレーションの可能性もありますし、地面の揺れ、風の影響などもあるかと思います。でも確実に2つのことが言えます。まず一つは、日によってFWHMが違っているので、シンチレーションに制限されている可能性が高いということ。もう一つは、短時間測定のHFRでもほぼ同様の結果なので、長時間積分の影響やガイドの影響はほとんど効いていないことです。

いずれにせよ、AF測定でここまではっきり制限が見えているので、逆に言い換えると、ここを見ながら底がフィッティング曲線に近づくような改善を目指していけばいいことになります。

ちなみに、ε130DのAF時の結果が以下になります。実測とフィッティング曲線がほとんど一致しています。でもこれは必ずしもε130Dの性能がいいというわけではなくて、単純に焦点距離が短いから、シンチレーションなどの揺れが効きにくいというだけだと思われます。
AF_good

SCA260でもこれくらい一致が見られるようなら、もっと星像は改善するはずです。日によって変わるシンチレーションや風の影響が小さい日を選んで撮影すること、赤道儀に弱いところがないか見直す、赤道儀をさらに強固なものにするなどでしょうか。性能のいいレデューサやバローを使って焦点距離を変えることで、鏡筒の性能か周りの環境かを切り分けることができるかもしれません。


まとめ

M104の撮影で気づいたことをまとめました。細かいことでしたが、自分的にはこれまであまり考えてこなかったことなので、面白かったです。

実は入院中で結構時間はあって、多少細かいことまで考える余裕がありました。このようにじっくり考えるのは結構楽しいのですが、実際にはなかなか時間が取れてこれませんでした。今後も焦って進めるのではなく、少し余裕を持って考える時間を確保するのが大事かなと今回改めて思いました。

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