ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年11月

モニターのキャリブレーションでTStudioさんからいろいろ助言を得ました。その中の一つカラーチャートを作ってみました。

参考にしたのはこのページです。



なかなかいいフリーのチャートがないというので自分で作ったとのことです。ファイルの公開まではしていないようですが、Excelを利用したらしいので、私も同じように作ってみることにしました。VBAマクロを使えば簡単にできそうです。

上の図にはHSV空間で書いたチャートが載せてあって参考になったのですが、おそらく数値と色があってないと思います。数値から計算した正しいと思われる色をHSV空間に焼き直しました。Vが大きいところの色の違いがわかるかと思います。さらにHを360を基準に置き換え階調を切りの良い60おきになるように置き換え、彩度の段階を一つ増やしました。HSVからRGBへの変換は少し苦労しました。このページが参考になりましたが、やっとHSVの数値の定義を理解できました。

また、RGBのバーも階調を増やし、HSVと一貫性を持つために、順序を入れ替えておきました。

出来上がったカラーチャートです。PNG形式です。

colorchart_03

元のエクセルファイルもアップロードしたので、必要な方は、ここからダウンロードして下さい。ダウンロードするともしかしたら拡張子に.txtとついてしまうかもしれません。「.txt」を外すとエクセルのマクロファイルとして認識されるはずです。パパッと書いてしまったため、ソースはあまり綺麗でないので読みにくいと思いますが、ご容赦ください。

とりあえず次回フジプリで画像を印刷する時に、一緒にこのカラーチャートも印刷してみようと思います。まあ、どこまで役に立つかわかりませんが、何かしら得るものはあるのかと思います。

ところで天体写真に特化したカラーチャートってできないものなのでしょうか?例えばHα、SII、OIIIの波長をRGBに落として、さらに混合色とかも合わせてチャートを作っておけば基準になる気がするのですが。でも、波長をRGBに落とすってどうやってやるのでしょうか?

今回は小ネタです。以前コメントでTKさんが教えてくれたcr2ファイルの温度引き出し情報を、実際のやり方も踏まえて書いておきます。


一眼レフカメラの温度情報どうしてますか?

私は天体撮影にCanon製カメラをつかっていますが、みなさん撮影する時に、カメラのセンサーの温度はどうやって記録しておきますか?

ダーク補正をするためにはライトフレームの撮影時の温度と、ダークフレーム撮影時の温度を合わせる必要があります。一つの方法は、撮影終了後、気温が変わらないうちにダークフレームを撮影してしまえばいいのかもしれません。でもダークフレームの撮影はライトフレームの撮影と(枚数を合わせようと思うと)同じくらいの時間がかかります。せっかくの限られた撮影時間がもったいないですし、明るくなってきてからだと急激に温度が変わる可能性があります。

私は、Canonの一眼レフカメラでEOS 6Dを使っていますが、普通にカメラ単体で撮影して、例えばMacでファイル情報(Option+i)で見ても、いったい何度で撮影されたかの情報を得ることはできません。Canonの純正ソフトDPPでもわかりません。なので私は温度情報を得ることをほぼ主目的として、長い間BackYard EOSを使ってきました。


BackYard EOS

BackYard EOSは優秀で、どこからか温度情報を読み出して撮影した画像のファイル名に温度を書き込んでおいてくれます。有料ソフトで結構しっかりしているので、Ditherの対応など他にたくさんメリットもあるのですが、いまだに温度のためだけにこのソフトを手放すことができません。確かAPTも温度情報が得られると聞いたことがますが、私はまだ一眼レフカメラでは試したことがありません。

BackYard EOSですが、百歩譲って撮影中は温度も取れるし使っていても苦になりません。でもダークフレームを撮ろうとして、撮影時の外の温度と合わせるために6Dを冷蔵庫や冷凍庫に入れるとすると、PCと接続しながら撮影しなくてはなりません。細いケーブルを使って冷蔵庫の近くにPCを置いてもいいのですが、家族からは邪魔者扱いされるので大抵はStickPCをつなげて、リモートデスクトップで状況を確認してたりします。でもはっきり言ってStickPCもさらに電源が入ったりするので面倒なんですよね。カメラ、StickPC、電源が冷蔵庫の中に入っていると、扉を開けた時にインパクト特大で、たいてい家族に怒られます。


IrfanViewを使った温度情報の引き出し

ここまでが前置きです。今回は普通のファイルから温度情報を抜き出す便利な方法を紹介します。用意するのはIrfanViewというソフトです。もしかしたら古いWindowsユーザーは「懐かしい」と声を上げるかもしれません。その当時Susieと並んでよく使われた画像閲覧ソフトです。

まずは下記リンクから自分のWindows環境に合わせて32bit版、もしくは64bit版をダウンロードしてきて下さい。



cr2ファイルを読み込むことができるように、同ページからプラグインも入れておいて下さい。マニュアルを見るとCanonのDLLが必要と書いてあるので、EOS utilityも必要かもしれません(私の環境だと既にもう入っているのでどこで入ったかわかりません)。日本語化などもできるようです。


実際の手順

インストールが終わったらIrfanViewを立ち上げます。そこで、メニューから「ファイル」「一括変換/名前の変更」を選びます。

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次に、温度を読み取りたいcr2ファイルが入っているフォルダを選択し、cr2ファイルを選択し、真ん中少し下の「追加」を推します。左上の「一括ファイル名変更」を選択しておきます。

左の真ん中少し上の「ファイル名パターン」のところに例えば、

dark_date$E36867_tv$E33434_iso$E34855_tc$E47.cr2

と入力します(ブログのシステムの都合上$が大文字で表示されています。コピペする際は$を小文字に変換して下さい。)。tcの後の$47が温度になります。

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これは各自好みの設定にしてください。番号が何を表すかはヘルプの「Text/Pattern Option」を見るといろいろ書いてます。このページはヘルプの「検索」メニューのところで「temperature」などと打ってやると出てきます。ただしこのText/Pattern Optionのページ、日本語版のヘルプファイルには入っていないようです。もし日本化してしまった場合に情報を詳しく知りたければ、言語を一旦英語に戻してください。

最後に、左下の「一括処理開始」を押すと、名前がルール通りに付け替えられたファイルが、元のファイルからコピーされて保存されます。

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ファイル名を見ると、きちんと温度情報が(この場合24℃と)入っていますね。


注意

でも一つ注意です。この温度ですが、(これもTKさん情報ですが、)
  • この温度値が何なのかを公式には謳っていない。(現時点明確な文書は無くSDKに含まれてない)
  • この温度は画像センサー温度ではなくDIGICチップ内での温度の可能性があり、その動作由来を反映してしまっている可能性がある。
  • この温度センサーは、露出時間に伴う画像センサーの発熱変化を拾えていないように見える。
  • ゆえにDSLRでダークライブラリを使用することは、そもそも最適ではない可能性が高い。
  • 信頼性の低い情報を使用し近似を試みるより、その場でダークを生成することで最高の精度が達成される。
という情報が議論されているようです。なので、必ずしも正しいとは思わない方がいいかもしれません。


まとめ

とにかくこれで冷蔵庫もしくは冷凍庫でのダークフレーム撮影がカメラ単体でできるようになり、かなり楽になりました。温度は後からまとめてみることができます。

多少実際のセンサー温度とは違いがあるかもしれませんが、ダークフレーム撮影時はそれほど急激に温度が変わるわけでもないですし、どうせ温度制御はできないので何枚かの温度の違うフレームをスタックすることになります。なので(少なくとも私は)実用上は十分かと思って使うことにします。


少し前にカラーマネージメントができるBenQのモニターSW270Cを手に入れたことを書きましたが、ただ既存のMacBook Proのモニターとの見た目の比較をしただけで、キャリブレーションまではしていませんでした。

一方、前回の記事でフジプリに頼んで天体画像の印刷を試してみました。せっかく手元にきちんとしたプリンタで印刷されて画像があるので、今回モニターをキャリブレーションしてみて、印刷画像と比べてみました。さてさて、実際どれくらい色が一致するのでしょうか?


使用機器

今回使ったキャリブレーターはX-Rite社のi1DISPLAY PROです。ソフトは付属(実際にはダウンロード)のi1Profilerを使いました。BenQのモニターにはPalette Master Elementというキャリブレーションソフトがあるのですが、MacBook Proのモニターもキャリブレーションして見たかったので、ソフトはより一般的なi1Profileを選びました。

USBでキャリブレーターを繋いであれば、自動でi1Profileのライセンスが認証されるようです。これは毎回立ち上げるたびにライセンス認証しているみたいで、うまくライセンスが認証されないように思っても、Macにキャリブレーターを繋いでありさえすれば、しばらく待てば認証されます。


実際にBenQ SW270をキャリブレーションしてみる

キャリブレーターとi1Profilerの細かい使い方はマニュアルや他のページに譲るとして、気づいたことを書いておきます。

1. 何はともあれ「ディスプレイのプロファイル作成」を選んでキャリブレーションを始めます。「簡易モード」と「詳細モード」がありますが、今回モードは「詳細モード」しか試していません。

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2. 光源タイプはBenQ、Macともに「白色LED」が自動で選択されたのでそのまま進めます。

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3. 最初は一般のモニターで見る場合の標準と言われている6500Kに合わせてみます。選んだところは3カ所だけ。
  • 白色点は「D65」というのが6500Kを意味し
  • 輝度は「120cd/m^2」
  • ガンマを「2.2」
とします。その他は全部デフォルト設定です。

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4. モニターが対応している場合は調整を全部もしくは一部を自動でやってくれます。今回使ったBenQ SW207Sは自動調整に対応しているようなので「自動ディスプレイコントロール(ADC)」を選びました。

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手動は「ブライトネス、コントラスト、RGBゲイン」が調整できるようで、こちらも試しましたが、ブライトネスは調整でき、コントラストは調整そのものが出てこなくて、RGBゲインは調整してもなにも反応がなかったといった状況だったので、SW207Sの場合はこれ以降全て自動で調整するようにしています。(後で気付くのですが、ここが「トラブル2」のポイントでした。最後の方に解説してあります。)

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5. 結果は、元々見ていた設定に比べて多少赤側により、結構暗くなりました。最初は違和感がありましたが、でも不思議な物でものの数分も見ていると慣れてしまって、これが普通だと思えます。

6. 同じi1Profileの「品質検証」でキャリブレーション の結果を検証してみても(もちろんエラーバーによりますが、何度か試しても変な失敗をしない限り普通に平均ΔEが1以下、最大ΔEが2以下もしくは3以下になります)合格と出ますし、何度か繰り返してもかなり再現性がありそうです。ここまででとりあえず、目的のパラメーターにすることは可能だということは分かりました。

その後、大きなトラブルにあたり何日も悩むのですが、これについてはこの記事の最後のほうに「トラブル1」として書いておきます。興味がある方(特にMacな方)は読んでみてください。


MacBook Proのモニターをキャリブレーション

次に同じことをMacBookProのモニターでやってみます。同様にD65、120cd/m^2、ガンマ2.2です。

特筆すべきはMacBook Proの応答の線形性です。ほぼ一直線です。

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BenQ SW207Sは少なくとも真っ直ぐにはなりませんでした。

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キャリブレーションした2つの画面を比べて見ても、非常によく似た色合いになっています。一応写真に撮ったので載せておきます。iPhoneでの撮影なので、かなり色調補正され強調されてしまって元の色の再現性はできていないですが、相対的な違いはわかるかと思います。

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ちなみに、MacBook Proで以前好みだったプロファイルだと、以下の右の画面のようになります。写真だと分かりにくいですが目で見ると相当違っていて、かなり青みがかった画面で普段作業していたことがわかります。

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印刷用のプロファイル

次に、印刷用のプロファイルとしてD50、90cd/m^2、ガンマ2.2というのでSW270Cをキャリブレーションしてみました。輝度は議論があるところですが、「星の牧場2」のよっちゃんさんによると、90cd/m^2くらいがよく印刷結果と合うとのことなので、とりあえずこの値で試します。

と、ここでまた深刻なトラブルが。複数のプロファイルがうまく切り替えられません。こちらも最後の方に「トラブル2」として、解決策とともにまとめておきます。

同様に、MacBook Proのモニターにも同じD50、90cd/m^2、ガンマ2.2を適用します。この時点でBenQ SW207SもMacBook Proも、6500Kでも5000Kでも、目的の色になることは確認できました。i1Profileの「品質検証」で検査してもかなり再現性があります。両方のモニターを目で見比べても、どちらの色温度でもよく似た色になっています。



実際に印刷したものと比べてみる

これらの結果を、前回フジプリで印刷した結果と比べて見ます。印刷物を見るときは、本当は印字をした設定のはずのD50用のライトというのが売っていて、この光の元で比較すべきです。でもこのライトが高い!なので今回は天井の電球色と、机の位置や傾きを調節できるスタンドライトの昼光色(FHC22ED)を適当に混ぜて3つの色が同じように見えるようにして見ました。

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3つを比べた結果が下になります。繰り返しますが、iPhoneで撮っているので、多少画像処理が入るため、絶対的な色は派手目に出てしまっています。相対的な違いを見てください。

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見ている限りはそこそこ色は合っている気がします。むしろ3枚モニターがあるみたいで、印刷とモニターがここまで合うものなのかと、ちょっとびっくりなレベルです。あえて言うなら、Macが少しずれているでしょうか。でもズレ具合は6500Kの時に示した写真程度で、まあ私的には許容範囲内かと。モニター同士の色の違いは写真で撮った方が顕著になるようです。逆に印刷は目で見ると光の当たり具合の影響(見ている位置も含めて)なかなか違いが判断できなくて、むしろ写真に写した方がどれくらい合っているかわかりやすいです。

印刷した色がどれに一番近いか、モニターの元の色と6500Kと5000Kをじっくり目で見て比べると、やはり5000Kでした。もちろん環境光の影響をものすごく受けるのですが、例えば背景の色が比較的わかりやすく、明らかに5000Kが一番近いです。それでも本当に一緒の色かと言うとやはり違って見えて、印刷されたものの方が一番赤く、また色温度にあまり左右されない緑が印刷されたもののほうが一番濃かったのです。

比較のために、MacのモニターだけD65 (6500K)、120cd/m^2、ガンマ2.2に戻したのが下の写真になります。

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写真でもMacのモニターだけ明らかに青みがかっているのがわかります。こちらは目で見た方がもっとよくわかります。

見慣れると6500Kが一番自然な色に見えてきます。以前好きだった色はかなり青によって見えてしまいます。5000Kはやはり黄色っぽく見えてしまいますし、暗いです。なので普段使いでは6500Kにして、輝度をもう少し明るくして使うことにします。


Macの「補正」で色合わせとか...

あと、Macについている「補正」機能も試しましたが、温度とガンマを合わせてもどうも全然違う色になるようです。なのでこの機能はこれ以上使うことはないと思います。

というより、キャリブレーターを一つ持っていれば、Macでもカラープロファイルで調整できる範囲内(ADC(自動調整)を使わないソフト的なと言う意味)で十分に色合わせができます。他のハードウェアキャリブレーションがない、一般のモニターではどうなのでしょうか?結局今回はSW270Cのハードウェアの調整はしていないことになる(下の方の「トラブル2」を参照)と思うので、もしかしたら色域とかの問題はあるものの、安いモニターでもそこそこの(私くらいの素人が、印刷したものと比較するくらいのレベルでの)色合わせくらいはできるのかもしれません。


トラブル1: HDRの罠

やっている途中に大きな問題が起きました。

一旦キャリブレーションが終わって、比較しようとして以前のプロファイルにしても全然元の色には戻らず、明るすぎになってしまいます。

ところが一旦Macと接続を外したり、BenQの電源を切ったりして、再びMacBook ProとAW270Cを接続すると、明るすぎだった元の設定が、以前のようにまともに見えるようになります。そうすると今度は、キャリブレーションした設定が暗く見え過ぎてしまいます。こうなるとせっかくキャリブレーションしたプロファイルも意味がなくなってしまうので、一からやり直しです。

ここはかなり悩みました。その後、何日かいじってやっと原因がわかりました。
  • MacBook  ProをUSB-Cで繋ぐと、SW270のHDR(ハイパーダイナミックレンジ)モードが自動でオンになっていたのです。この場合、SW270Cの「カラー調整」が「輝度」「コントラスト」「シャープネス」「彩度」「色のリセット」以外は全て無効になります。SW270C上では他のカラーモードを選ぶことさえできません。
  • ところが、キャリブレーションを進める過程で、「測定を開始」を押した後にすぐ、強制的にカラーモードはHDRオフになり、その状態でキャリブレーション が進み、カラープロファイルが作成されます。キャリブレーション 後確認してみると「ユーザー1」が選ばるようです。その選ばれたモードは何かモニターを操作するまでは持続します。
  • i1Profileを立ち上げたままBenQの電源を一度切ると、i1Profileが(誤動作で)落ちる。その後、自動でHDRモードに戻ってしまい、キャリブレートしたプロファイルで見ると画面が暗く見えるなどの問題がある。
  • 一旦Macと接続を外して再度接続すると、モニターが認識されないとう問題がある。BenQの電源を一度切ったりするとモニターが認識されるが、自動でHDRモードに戻ってしまい、キャリブレートしたプロファイルで見ると画面が暗く見える。
とまあ、バグ検証のように色々やってみたのですが、結局のところHDRオンの状態でキャリブレーションをすると上記のカラーモードの強制変更の問題をどうやっても回避できませんでした。

結局どうしたかというと、HDRモードをオフにしました。でもこのHDRモードをオフにするやり方がBenQのマニュアルとかサポートなど検索しても全く出てこなくて「条件を満たせば自動でHDRモードが選択されます」とあるだけです。逆に言えば条件を満たさないようにすればHDRをオフにできるはずなので、色々探してやっと見つかりました。Macの方のの設定にそれがあります。

「システム環境設定」の「ディスプレイ」を選んで、「BenQ SW270C」の「ディスプレイ」を選ぶと「ハイダイナミックレンジ」オプションが見つかりました。これをオフにすると色々うまくいくようです。

HDRをオフにした後、カラーモードを「Adobe RGB」にして、キャリブレーションを一からやり直しました。キャリブレーションが終了するとカラーモードは「ユーザー1」になりますが、今度はUSB-Cケーブルを抜き差ししても色はキャリブレーション されたままの色で、変なことにはなりません。

でもこれ、まだ問題を抱えていることに後で気付くのですが、詳しくは次の「トラブル2」を見てください。


トラブル2: ADC(自動調整)と複数のカラープロファイル

ここでまたトラブルです。SW270Cで2種以上のカラープロファイルはほとんど意味をなさないことがわかりました。とにかくキャリブレーションするとSW270Cの中のカラーモードの「ユーザー1」にその設定が保存されます。次に別のキャリブレーションでカラープロファイルを作っても「ユーザー1」が上書きされてしまい、元のプロファイルに戻すことができなくなるのです。なのでキャリブレーション 前後の比較がうまくできません。

そこで「カラー調整」から「色設定を保存」にして、設定を「ユーザー2」にコピーします。その上で新たにキャリブレーションします。新しいキャリブレーション の設定は「ユーザー1」に入るので、元に戻したい場合には「ユーザー2」を選べばいいというわけです。でもこれ、Macの環境設定の「ディスプレイ」から行ける「カラー」のところにそれぞれのキャリブレーションで保存されたプロファイルが、全く意味をなさなくなります。どうも設定内容を全てSW270Cの設定に押し付けてしまうようです。ここら辺はもう少しやり方がありそうなので、引き続き試してみました。

解決策としては「自動ディスプレイコントロール(ADC)」も手動調整「ブライトネス、コントラスト、RGBゲイン」も両方とも選択しないことです。そうすると、調整結果が.iccのカラープロファイルの中に反映されるようです。検証しても最大許容エラーで2以下でも合格しますので、再現性もあるようです。

さらにこのことから、もう強制的に「ユーザー1」に設定が保存されることもなくなるので、最初からAdobe RGBにしておけば、色範囲が広いカラーモードでキャリブレーションができて、その設定がファイルという意味でのカラープロファイルに反映させるのかと思い試しました。狙いはバッチリで、Adobe RGBのまま、D65、120cd/m^2、ガンマ2.2もD50、90cd/m^2、ガンマ2.2も、再現性込みでカラープロファイルを選ぶだけで切り替えができるようになりました。

これでやっとまともなやり方にたどり着いたことになります(多分)。でもHDRとADCの適用範囲、ものすごくわかりにくいです。もう少し改善して欲しい気がします。


その他、細かいトラブル

もう一つ気づいたトラブルですが、キャリブレーション 最後にカラープロファイルを保存するときののファイル名を変えられない時がありました。わかりにくかったのですが、日本語入力モードになっているときでした。入力はできるのですが、保存されたファイル名は入力を無視してデフォルトのものとなってしまいます。一番の問題は日本語モードになっていても半角でファイル名がきちんと表示だけされているので、気付きにくいことです。英字入力モードにすれば普通にファイル名を任意のものにできます。

ボタンや選択が全くできなくなる時があります。多分これはバグかと思います。i1Profile、もう少しきちんと検証して欲しいと思います。

ところで、色温度を簡単に測定する方法はないのでしょうか?キャリブレーションの時に、マニュアル調整を選ぶと、調整時にその時の色温度を測定してくれて表示してくれます。それを設定値に合わせろと言うのですが、調整時でなくてただ単に測定だけしてくれるモードがあればいいのですが。今のところ測定だけという方法は見つかってません。


まとめ

長かったのですが、まとめると
  • 今回、設定を変える前の元の色、6500K、5000Kと比較しました。SW270Cでも、MacBook Proのモニターでも、設定を変えるとはっきり違いがわかります。
  • BenQ SW207SもMacBook Proもそれぞれ同じ設定でキャリブレーション すると、目で見ても見分けがつかないくらいのレベルでかなり近い色になります。
  • 自分が好きな色(元々使っていた色)はかなり青より(高い温度)だと言うことがわかりました。また、かなり明るい画面でも全く気になってなかったこともわかりました。

比較的新しいMacと、一部のBenQモニターの組み合わせの場合、気をつけることとして、
  • HDRモードにはしない、もしHDRモードになっていたらMacの環境設定のディスプレイからオフにする。
  • カラーモードはAdobe RGBを選んでおく。
  • ADC(自動調整)はオフ、マニュアル調整もオフ。
  • 一度キャリブレートしたらSW270Cの設定は弄らず、カラープロファイルのみで設定を切り替える。
というのが重要です。でもよく考えたらHDRモードが使えないというのは、ある意味惜しいことなのでしょうか?ここら辺はまだ私には謎です。

今回、トラブル記事など冗長で長くなっているだけの気もしますが、私自身後から見てもわかるようにと、他にも悩んでいる人もいるかもと思い、そのまま残しておきます。誰かの役に立ったら嬉しいな。


昨晩は飛騨コスモス天文台の観望会でした。12月は雪が降るため今月の観望会が今年最後になります。


天気も良さそう

先月自宅に来てくれたMちゃんにも「飛騨で観望会があるよ」と知らせていたのですが、SCWの天気予報があまりにも快晴なので、改めて「冬の天の川が見えるかも」とお誘いのメールを出しておきました。するとお母様から「課題が終わったら行けそう」と返事があったので、「『課題がんばれ』と伝えて下さい」と書いたら「俄然やる気になってくれて助かる」とのこと。この分なら来てくれそうです。

今回は新月で、快晴で、休日前と、条件がすごく揃うので、そのまま観望会後に撮影も敢行しようという計画です。撮影の方はまた別の記事で書くとして、観望用の機材は惑星用にCelestronのC8 + Advanced VX、電視観望用にタカハシのFS-60CB + ZWOのASI294MC Pro(常温使用) + SkyWatcherのAZ-GTi、子供に触ってもらうようにSCOPTECHの60mmです。準備が大体終わって、午後少し仮眠を取り16時前に起きてシャワーを浴び荷物を詰め込んで、16時半過ぎに自宅を出発しました。


飛騨コスモス天文台に到着、天の川がすごい

途中工事とかで車が混んでて、現場に到着したのは結局18時過ぎくらい。まだもうすっかり暗くなっています。外に出ると空にはすでに天の川が全天にかかっています。秋から冬にかけての天の川が、これだけはっきり見えるのは珍しいです。白鳥座のあたりで2本の川に分かれているのがはっきりとわかります。

観望会の開始は19時半からなので、ゆっくり準備します。今回は鏡筒3本に、のちの撮影用にCGEM IIもあらかじめ出しておいたので結構な数です。鏡筒を3本全てマウントするくらいで最初のお客さんがきてくれました。若いカップルのようです。聞いたら高山からとのこと。初めての参加のようです。まだ準備が残っているのでSCOPETECHの望遠鏡をいじってもらおうと思っていたら、さらに子供連れのお客さんが。小学3年生と言うので望遠鏡をいじるのをその子にやってもらおうとしましたが、遠慮してかやりたがらないのと、その後続々お客さんがきてしまっているので、パッと私が木星だけ導入して見てもらいました。


すごいお客さんの数

スタッフも随時到着して天文台も開けてもらいましたが、その間にも続々とお客さんがきています。SCOPETECHのところにも列ができてしまっています。「望遠鏡もいいですが、今日は空が綺麗なので、是非とも天の川をじっくり楽しんでください」といって、夏の大三角とかの説明をします。

もともと観望会の場所はラグビー場の駐車場なので、車も入ってきてもらっていましたが、もう車を入れるスペースがなくなってきて、何人かの方には橋の向こうの離れた駐車場に車を止めてもらいました。普段の観望会は、少ない時はスタッフと知り合いの1-2家族です。一年一回のペルセウス座流星群のお祭りイベント以外でこんなに人が来たのは初めてです。先月は台風で中止、しかも今月で終わりというのが重なったのでしょうか?あと、各新聞社が扱ってくれた(お金はないので広告ではないと思います)ようです。とにかく対処し切れないほど人が来たので、スタッフみんなちょっとびっくりしていました。

でも、こんな時こそ焦るとたいてい失敗します。子供たちはすでに「これ見えるの?」とかいってC8のところに列を作ってますが、私は頑なにC8の極軸と取ります。でも子供たちの会話を聞いてるともう面白くって。

多分幼稚園か小学校低学年くらいだと思いますが、男の子が女の子に向かって自慢げに「俺、炭治郎に似てるって言われるんだ。」流行の鬼滅ネタです。すると隣に並んでた女の子が「えー、すごい!」でも暗くて顔は全く見えてないと思います。男の子はちょっと得意げに「顔に傷があるんだ。だから似てるって言われる。」「えー、どこどこ?」周りの子たちも騒ぎ出しますが、やっぱり暗くて全然見えてないと思います。

そんなこんなで極軸調整も終わる頃に、SCOPETECHの方からヘルプが。スタッフの一人が頑張って木星を追ってくれてたみたいですが、いなくなってしまったようです。あらかた木星は見てくれてたみたいので、土星を入れておきます。20mmのアイピースなので小さいですが、それでも輪がはっきりと見えるのにみんな喜んでくれます。まもなくC8も準備ができ、木星を導入します。「こちらでも木星見えますよー」と言うと、続々と人が集まってきます。衛星も縞も見えるので、皆さん驚きの声を上げています。

子供と大人で背の高さが全然違うので、アイピースの向きを変えて対処したりと結構忙しいです。でも極軸をSharpCapでかなりの精度で合わせてあるので逃げていく心配は全く無し。子供が大体見終わると、大人は放っておいてもよくなります。こうなると私の方も少し手が開くので、次はSCOPETECHの面倒をみたりとそれでもやっぱり大忙し。C8も木星の次は土星です。その頃にはドームの方も木星や土星を入れていたみたいなのですが、お客さんに聞くと外のC8のほうがはっきり見えるとのこと。ドームの方は温度順応がまだできていなかったのかもしれません。でも手が離せなくてそちらに行くことができないほどの人で、ドーム組のスタッフには申し訳なかったです。

そんな中、誰かが「火星を見たい」といい出しました。でも木星がもう沈みそうなので「木星最後になりまーす」といって再度木星を導入。新しく来た人でまだまだ木星を見逃してた人もいるみたいです。子供たちは相変わらず何度も並んで「もう俺3回見た」とか言っています。興味を持ってくれるのは嬉しいことです。低空なので収差がひどく、大人には赤と青に分かれているところも説明したのですが、「七色に分かれて見えて綺麗だ」との評価です。マニアとは視点が全く違うので、我々が気にするところは一般的には結構どうでもいいのかもしれません。

そうそう、並んでいる子供たちがあまりに騒ぐので、お母さんでしょうか「もう少し静かにしてねっていってるでしょう!」と周りのことを考えてか少し申し訳なさそうに怒っていました。そんな時は「騒いでくれるとクマさんが来なくなるのでいいですよ。どんどん騒いでください。」と言います。でもさすがに駆けずり回り出した時は「頼むから鬼ごっこはやめて!」と親が叫んでました。望遠鏡は手の届く範囲に固めたるので、ぶつかって倒れるようなことはないのですが、それより暗いので転んで怪我をしたら大変です。この時ばかりはお母様にまかせることにしました。

さて、木星がもう沈むのでいよいよ火星を導入です。だいぶ小さくなってますが、まだまだ見応え十分です。C8だと模様も多少見えるので「じっくり見ると黒いところがわかります」と言うと、子供は一瞬見ただけで「模様も見えた!」といいます。多分暗示だと思うのですが、もしかしたら目の感度がいいのか、ダイナミックレンジが広くて、本当にすぐに見えるのかもしれません。


Mちゃんも到着

このころでしょうか、課題を終えたと思われるMちゃんが到着しました。でもあまりに人が多くてなかなか相手になってあげられません。そのうちにC8の補正版が曇ってきてしまい、ヒータをつけても焼け石に水。仕方ないので少し休憩としました。Mちゃんを探すと、なんと自分の赤道儀を持ってきていました。

VixenのGPくらいでしょうか。きちんとは確認できなかったのですが、聞いたら前回自宅に一緒にいらしたUさんから頂いた(使わなかったら返してねと言うことらしいです)とのことです。でもこの駐車場、多少傾斜があり、うまく水平が出せないようで悩んでいたみたいです。というより、マスクで眼鏡が曇っていろんなものがうまく見えないみたいでした。多分時間がかかりそうだったので、「せっかくなので天の川を楽しんだほうが得だよ」といって、この間手に入れた「ナイトウォッチ」を車から持ってきて貸すことに。お母さん曰く「この間のメシエ天体の本も夢中になりすぎるのでしばらく禁止」らしいのですが、今回の本は読み出したらそれこそずっと読んでいることになると思います。

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本を見ながらMちゃんはすごく嬉しそうで、赤道儀がうまく行かなかったことも忘れたみたいで、それからお母さんとMちゃんと3人で天の川を見てました。とにかく車から降りた時に、あまりの空の凄さにびっくりしたそうです。「こんな空を見たのは初めて」だそうで、富山の街中では絶対見ることができないので、ものすごく喜んでいました。誘った甲斐があったというものです。Mちゃんは「プラネタリウムみたい」と言いますが、「いやいや、それは逆でしょう。プラネタリウムが真似をしたんだよ。」とすかさず私が突っ込みます。お母さんは「天の川がカシオペアを超えて、オリオンまでつながってる!こんなの凄過ぎ!」と大興奮です。お母さんと、Mちゃんの会話を聞いていると、お母さんの星座の知識も相当だとわかります。「すごい詳しいですね。」と言うと、「毎週科学博物館で聞いているので流石に覚えてしまいました。」とのことです。そもそも今回も富山の街中から1時間半くらいかけてここに来てるはずです。このお母さんあってのMちゃんなのでしょう。


今日は電視観望もよく見える

オリオン座が登り始めで、Mちゃん念願のオリオン大星雲を見たいと言うので、じゃあということで電視観望を始めました。でもまだM42には少し時間が早く、とりあえずM42すばるを。流石に今日は透明度もいいのでしょうか、電視観望でさえも分子雲が余裕で見えています。この写真の時点で3.2秒、87枚スタックでトータル4分30秒とのことですが、電視観望でここまで見えたのは初めてのことです。空も十分に暗いのでフィルターなども無しです。

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ちなみにすばるがモニターに映る頃にはモ結構な人が集まってきていて、Mちゃんは全然見えてなかったそうです。「こんなに分子雲が見えるのはラッキーなんですよ」と説明すると、子供たちが幸運のアイテムを発見でもしたかのように騒ぎ出します。子供に価値が伝わるか心配でしたが、この綺麗さは十分に伝わったようで、子供ながらに楽み方を工夫してくれているようです。

次に北アメリカ星雲です。本当はQBPをつけるともっとはっきりするのですが、フィルターをつける時間ロスが惜しかったのでノーフィルターです。

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もうだいぶ西の方に傾いていましたが、QBP無しでここまで見えるのはやはり空がいいのでしょう。

どなたか女性の方が「馬の星雲をどうしても見たい」とかいうので、「あ、馬頭星雲ですね。」というと、子供の一人が「バトウって何?」というので、「馬の頭と書いて馬頭(ばとう)星雲、星雲が馬の形に見えるんだよ。近くに燃える木といって、木が燃えているような形に見える星雲もあるんだよ。」というと、興味津々。というわけで次は馬頭星雲を導入し、みんなで見てみました。燃える木はすぐに形まで分かったのですが、馬頭の方は最初なかなか馬の形が見えてこなく、露光時間を12.8秒まで伸ばしてやっとはっきりしました。下の写真で20スタック、4分16秒です。

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電視観望はリアルタイム性を求めるために時間の制限もあり、一般的にゲインが高いので、リードノイズが効きやすいです。そのためノイズを減らすのに露光時間を伸ばすことが効果的なことがよくあります。

写真を撮り忘れてしまいましたが、途中M31アンドロメダ銀河とM33三角座の回転銀河も電視観望で見ました。特にアンドロメダ銀河の方は腕の構造もきちんと見えて「わー綺麗!」とか「本で見たのとおんなじ!」など、かなり迫力があったようです。そうそう、「アンドロメダですが、アンドロメダ〇〇って、なんて言いますか?」と聞いたら、ほぼ全ての人が「アンドロメダ星雲」でした。「アンドロメダ星雲は昔の呼び方で、最近はほとんどアンドロメダ銀河です。昔はボヤーっと見えていたので星雲と勘違いしたみたいですよ。」と言うと皆さん「へーっ!」と。アンドロメダ青雲とアンドロメダ銀河の名前の違いはここの解説が詳しいです。でも、真面目なページなので某アニメについての記述がないのが残念です。

他に、沈む寸前の網状星雲を見ましたが、少し見えたくらいであまりはっきりとは見えず、この時点で夏の星雲はあきらめました。 

最後はやっと上ってきたM42オリオン大星雲です。実は最初少し早い時間に、金網越しでM42をみたのですが、網の縁の太い枠で暗くなっているところがあったり、まだ低空なこともあり、解像度がイマイチでした。ランニングマンもいまいち形を認識できていません。22時前くらいになる、とある程度きちんと見えてきたんで、Mちゃんもやっと満足したみたいです。

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片付け

電視観望もひと段落した頃にはもう22時近くになっていて、だんだんお客さんも少なくなってきます。私もやっと周りを見る余裕ができてきて、残っていた他の方達とも少し話すこともできました。

22時半頃から少しずつ片付けを始めました。23時頃にはドームの方も閉めたようです。今回全然ドームのほうに顔を出すことができなかたので残念でした。ドームはかなり混んでいて、人数制限をしていたみたいで、Mちゃんもドームのほうに行けなかったので、片付け寸前に飛び込みで中を見せてもらったみたいです。

この日のスタッフは4人か、5人。忙しくてあまり顔も合わせられないような状況でした。昨年Yさんが亡くなってから、残りのスタッフだけでまずは1年、コロナで大変でしたがなんとか観望会を続けることができました。Sさんは年間の日程や、宣伝などいろいろ細かいことをやって頂いています。今回こんなに人が集まったのも、地道な宣伝の成果かと思います。まだ11月ですが、今年は今回で終わりということで少し早いですがスタッフ同士で「よいお年を」と挨拶をしました。せっかくお客さんも楽しみに来てくれているので「来年も無理しない範囲で、頑張って続けましょう」と誓いを新たにしました。Yさんの撒いた種は確実に地域に根差しています。

スタッフの方が帰ったのが23時半くらいでしょうか、最後にMちゃんとお母さんだけまだ残っていて、私と話したりしながら天の川を楽しんでいました。今日来る前にやった課題のことをMちゃんに聞いてみたらどうも学校の宿題みたいで、「同じことばっかりでつまんない」とのこと。お母さん曰く「ためてやるからダメなんだ」とのこと。難しくはないとのことなので、多分反復が辛いのでしょう。私も昔ドリルとか大嫌いでした。まあ、仕方ないですね。理科はすごい好きとのことです。あれ、そういえばこの日は富山で思考大会があったはずで「あれ?思考大会でなかったの?」と聞くと、「あー、あの算数の難しそうなやつ?」とのこと。多分挑戦するとかなり楽しいはずなので「来年は出るといいよ」と勧めておきました。

ちょっと脱線しますと、思考大会というのは数学オリンピックのミニ富山版みたいなやつで、小学生と中学生の部に分かれています。問題を見ても、知識というよりは論理性を問う良問ばかりなので、学年はほとんど関係ありません。ちょうどうちの下の子が今年も中2で受けてましたが、最近は部活にのめり込んでいて、Scratchとかもほとんど触ってなく論理的な考え方をする機会が減っているせいでしょうか「できんかった」と、半分泣きそうにブスッとしていました。うちでは毎年恒例で、思考大会の後は近所の「是空」というつけ麺を食べに行くことになっていて、ここで答え合わせをします。でも今年はコロナ禍で密を避けるため、解答の張り出しもなかったので、解けなかったところの答えを一緒に考えていました。こういった試みは、数学や科学に興味を持つ子にはたまらないイベントです。昭和32年から富山独自で続けているそうです、毎年1000人位参加するそうです。富山のこのような素晴らしい取り組みには頭が下がります。


まだまだこれから撮影

さて、観望会は一通り終わりましたが、私はまだまだこれから撮影です。こんな条件のいい日は年に何日もあるわけではありません。23時半以降、Mちゃんが全然帰りたがらないので、お母さんがヤキモキしていました。お父さんからも電話がかかってきてましたが、それでもなかなか帰ろうとしません。ところが、0時近くになって、私とお母さんのほうがまだ話を続けようとしているところに、今度はMちゃんが「撮影の邪魔になるから!」とやっと帰る気になったようです。「またいつでも遊びに来て下さい。」とお別れしましたが、Mちゃんも少し眠そうでした。車の中でいい夢を見るんだと思います。

とにかく今回の観望会は、初めてというくらい数多くの人に来てもらい、皆さんにかなり満足してもらえたようです。どこかしこから「すごくたくさんいろんなのが見えた!」とか「来てよかったー!」とか、しみじみ行っている声が聞こえてきました。やはりいい空と言うのは何ものにも替え難いです。また来年を楽しみに、そして今後も長く続けられたらと思います。


私の所属する富山県天文学会の写真展があるとのこと。条件はA3ノビで各自で印刷して提出です。問題は私はプリンタを持っていないので、どこかで印刷を頼まなければいけません。ずっと前、まだ星をはじめて1年も経たない2017年初めに富山市天文台で天体写真展があったときに、キタムラの店舗で印刷したことがあります。 あの時のサイズはA4でした。多分「こだわりプリント」ってやつかと思いますが、値段は1枚あたり600円だったとの記録が残っています。便利なところは、店頭なのですぐに印刷結果を手に入れることができることです。問題はサイズで、基本的にA4くらいまでなんです。今回は少なくともA3くらいまで印刷できるサービスが必要になります。

今回ネットをあさって見つけたのがFUJICOLORデジカメプリント、略して「フジプリ」だそうです。 

 

ここの「価格表」のところを見るのが一番わかりやすいのですが、「プロ仕上げ」の中の「大伸ばしサイズ」というのがほぼA3サイズ相当とのことです。しかも値段が277円(2020年11月7日)とかなり気楽に頼める金額です。提出締め切りまで5日しかなかったので、とりあえずこれで頼んでみました。

頼み方は至って簡単。「注文する」から進んでいき、A3になるのでほぼ一択の「プロ仕上げ」の中の、紙種類が「最高級レーザーペーパー プロ仕上」になります。大きなサイズでも紙種類で「ラスターペーパー(微粒面)」や「クリスタルペーパー(超光沢)」も選べるようですが、サイズが6切、4切、4切ワイドと日本規格の大きなサイズだけに制限されてしまうようです。値段はそれでも最も高いものでも1枚当たらあたり1000円以下なので、コスト的にはリーゾナブルかと思います。今回はテストの意味もあり、A3ということで安価な「最高級レーザーペーパー プロ仕上」にしてみます。

画像ファイルを適当に選びます。複数ファイルももちろん選べます。ポイントはファイルフォーマットはJPEGしか受け付けていないところでしょうか。本当は16bitフォーマットを受け付けてくれると嬉しいのですが、これは仕方ないです。

写真を登録した際の設定は至って簡単。選択肢は4種類で、
  1. 日付情報の有り無し
  2. 色調自動補正の有り無しサイズ
  3. サイズの選択
  4. 枚数
だけです。この中で特に注意を必要とるすのが「色調自動補正」です。天体写真の場合はこれは「無し(チェックしない)」にすべきです。デフォルトでは「有り(チェック済み)」になっているので注意です。複数の画像を印刷する場合には、一番下の「全画像一括指定」が楽です。

サムネイルのここの画像のところに赤い点線の枠が見えていて、これが実際の印刷範囲になります。画像をクリックすると、少し大きな画面が出て来て、この枠を変更することができます。縦横比を変えることはできませんが、位置や縮小することができます。

あとは特に迷うところはないでしょう。送料は枚数に関わらずかかりますのでご注意ください。ゆうパケットだと200円と安いのですが、サイズや枚数によってはこれだと入らずに宅急便の700円のほうになる時があります。今回はA3だったこともあり宅急便の方しか選択することができませんでした。

10月31日に頼んで11月4日には自宅に送られて来たので、実質4日で届いたことになります。締め切りの11月5日になんとか提出して間に合いました。提出したのは、色々迷ったのですが、網状星雲と、富山であまり撮影できなかったネオワイズ彗星、科学博物館の方のリクエストで天の川リフレクションズの3枚です。

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今回は11枚の印刷を頼んで、送料込み、税込みで3500円程度。出来上がりを見ると、少なくとも私程度のこだわりでは十分すぎるものでした。光沢も期待以上に十分あります。色も普段のMacbook Proで画像処理している時と全然遜色なく、ほぼ想像通りでした。

自分で天体写真をプリントしたことがないですし、天文雑誌に投稿したこともないので、実際どの程度のレベルのプリントなのかはよくわかりません。でも自分で額縁に入れて見ている分には全然満足です。この値段ならが相当気軽に印刷に出すことができます。

送付は、左に見えるような紙ケースで送られてきて、実際の写真は2枚のボール紙で挟まれてプラスチック袋に入っています。紙ケースには

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のようなシールが貼られているので、へんな風に曲がって送られることもあまりないと思います。

ところで、これで天文雑誌に投稿したらどうなのでしょうか?これで採用されている人がいるのなら、少し挑戦してみてもいいかもしれません。

火星最接近前に一回と、最接近後結構経ってから撮影しましたが、全然記事を書いてなかったので一応まとめました。いまいち自分の中で盛り上がらない惑星ですが、このままいくとお蔵入りの記事になりそうなので公開しておきます。


25cmのMEADE

今まで散々悩んできたMEADEの25cmシュミカセLX-200-25。少し惑星撮影でその性能の一端を引き出すことができたかもしれません。しかも火星星接近の前日の2020年10月5日、条件はバッチリです。

前回の10月2日の撮影で口径20cmのC8を使ってそこそこ出たので、今回はそれと比較して口径25cmの手持ちのMEADEが果たしていいのか悪いのか見るために、気合を入れて準備。ADCとScientific Explorerの5倍のバローを入れ、ASI224MCで見ます。

セッティングが終わり見始めたのが20時前頃でしょうか。でもPCの画面で見てもボロボロで、木星も土星も全然見えません。完全タコ踊り状態です。

それでも気を取り直し光軸調整を出来る限りやります。少なくとも内外像がいびつな形になるのを直しました。動画を撮ってなかったのでここで再現できませんが、光軸調整ができてない時の見分けはできそうです。

ただし、内外像もそうですし、ジャスピンでも一点に収束せず、ピンピン跳ねているような感じです。

相変わらずゆらゆら瞬いてますが、シンチレーション(大気の方)は悪くなさそうです。というのも、一時期10分ほど明らかに悪くなった時があって、それがなくなって元に戻ると、実は大気はあまり揺れてないのかな?と思うようになりました。

この時点では何が悪いのかの判断がつかず、少なくともC8で状態のいいときに見るレベルには遥かに追いつかないことは確かでした。一応木星、土星、火星とどれも高度はそこまで高くないですが、撮影だけしておきます。一旦家に入り少しだけ処理してみますが、淡い期待も見事に崩れ、とてもじゃないけど25cmにふさわしいとは思えない分解能の惑星が出てきました。


しばらく放っておいた後に

いろいろ悩んだ後の22時半頃、せっかくの最接近間際の火星撮影のチャンスだからせめてC8で撮っておこうと準備して外に持ち出しました。後の比較のために、MEADEで直近で1ショットだけ撮影しようと鏡筒カバーを外しPCの画面を見たら、何とこれまでに見たことがないような超高解像度。これは!と思い、C8そっちのけで撮影を始めました。

ここでやっと気づいたのです。惑星に詳しい方ならもうお気づきだと思います。要するにこれまで温度順応が全然うまくいってなかったのです。最初の撮影が鏡筒を外に出してから多分30分後くらい。その後迷人会の微動雲台を評価するための振動データの追試をして、家の中で先に撮った惑星の画像処理をして、次にMEADEで撮影に入ったのが3時間後くらいになります。温度順応するためにはこれくらい待たなくてはならないということを、やっと実感できえるレベルで理解できたということです。最初の頃にピンピン跳ねているのが、温度順応できてないのだと判別できそうです。

今まで温度順応をなめてたんだと思います。これからは少なくともこのレベルを基準にきちんと待つことにしようと、心に誓いました。もしくは、ファンをつけることも真剣に考えた方がいいかもしれません。


撮影結果

ここで5ショットくらい撮影しました。

1ショット目: 最初は5msで10000枚です。まだ十分明るく、もっと露光時間を縮められそうなので半分にします。

2ショット目: 次に2.5msで10000枚。まだピントが合っていなくて動画で見直しても上下にピコピコ跳ねるようにブレています。


それをRegistaxまで持ってきても、上下に二重に出てしまっています。

Mars_224215_lapl4_ap191_RS


3ショット目: 2.5msで10000枚。やっとここらでピントが合い、これが一番出ました。


でも動画を見返してみると、まだ光軸調整に余地があるかも。この時の60%をRegistaxした直後の画像です。

Mars_225441_lapl4_ap191_RS_raw

1ショット目と比べると明らかに違いがわかるかと思います。これをPhotoshopで炙り出したものが以下になります。これは結構満足です。あ、今回もUV/IRフィルター入れ忘れてました。極が赤くなるのはIRのせいだとどこかで読みましたが、その通りなんですね。

Mars_225441_lapl3_ap629_RS_cut

4ショット目、5ショット目は、条件こそ同じですが、動画を見直して見ても大きく揺れている成分が多い気がします。いずれにせよ3ショット目に及ばず。下はまだマシだった5ショット目です。

スタックしても3ショット目に全然及びません。かといって、1ショット目みたいなジャンプにはなっていません。

Mars_230856_lapl4_ap191_RS


6ショット目: なんか暗くなったと思ったら、補正版が曇ってました。

とまあ、2ショット目がダメなのはわかりますが、3ショット目とそれ以降でかなり差が出たのが印象的です。3ショット目と4ショット目の時間差はほぼ10分。改めて動画を見直してみると、明らかに3ショット目のシーイングだけいいです。

結論としては、少なくともシーイングが良くなればMEADEでの解像度はまだまだ出そうということです。これは大きな収穫でした。


最接近から20日くらい

次は最接近からかなり立って10月27日。かなり晴れていたので電視観望で遊んだ後に、火星の撮影をしてみました。あまり気合は入らず、Celestronの3倍バローに、ADCは(天頂に近かったので)サボって入れずです。あぶり出し後の結果だけ。まあ最接近近くの時には遠く及びません。動画を見ても、5日の3ショット目の最も揺れてなかった時よりは揺れています。UV/IRカットフィルター入れたので、初めて極が白くなっています。

Mars_000609_lapl3_ap213_Drizzle30_RS_cut


参考に、10月2日に撮ったC8のRegistax直後の画像です。

2020-10-02-1454_2-U-RGB-Mars_lapl5_ap133_RS_PS

明らかにコントラストがいいのと、なんかMEADEより解像度が出ている気がします。でも動画を見ると結構大きく揺れてるんですよね。細かい揺れがなかったから像が出たのか、まだ不思議です。

今回こそはMEADEできる子かと思ったのですが、やっとC8と同等くらいか、まだ劣るくらいかもしれません。


まとめ

今回、温度順応がいかに大切かをよく理解できました。
  • ピンピン跳ねているのは温度順応できてない証拠で、まだ待つ必要がある。
  • ピントがずれているとある方向にチョコチョコ飛び出るような像が見える。
  • 温度順応が十分な時に、それでも揺れるのはシーイングに難があるから。
ということが少しわかってきました。でもC8の時はどれもあまり気にすることがなかったので、やはり口径5cmの違いで一気に条件が厳しくなってくるのかなと思いました。

でも火星のシーズンももうおしまいですね。また2年後でしょうか。でも今年も十分自己ベストを出せたので、とりあえず満足です。来年は今回の経験を生かして木星と土星を更新できたらと思います。


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