ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年10月


低ISOの方がいい!?

HIROPONさんが、画像処理まで含めたら低ISOの方がいいという記事を書かれました。



HIROPONさんは東京都心に住んでいるため、明るいところでの撮影を得意としています。確かに、都心のような超光害地ではHIROPONさんの言っていることは正しいと思いますし、HIROPONさん自身も光害地での撮影を前提に記事を書いているのかと思います。ただし、その「光害地での撮影」が前提であることを考慮せずに、低ISOが常に正しいと思い込んでしまう低ISO信者になってしまう人が出てくるのを少し心配しています。何事も鵜呑みにするのではなく、状況に応じて自ら考えることが大切なのかと思います。

HIROPONさんは、暗い場所でもさらに低ISOで露光時間を伸ばす方向に進めたいような発言もされてますが、光害地でISOが低いと不利になることの一つは、時間の制限があるからかと思います。無限に時間があるなら、低いISOで露光し続け、淡い天体まで出した方が得です。でも現実にはガイドずれや、人工衛星などの邪魔な光が入る可能性などがあるので、ある程度の時間で区切らざるを得ない。そんな時はISOを上げ、露光時間を制限した方が得になります。HIROPONさんもこのことをきちんと理解している旨の発言をしていますので、必ずしも全て低ISOがいいと言っているわけではないのかと思います。




高ISOの方がいいのか?

光害地での低ISOが有利な理由はHIROPONさんがすでに述べられているので、ここでは暗いところで高ISOが有利な理由を中心に述べていきたいと思います。

ISOを上げる一つの理由が、読み出しノイズよりも淡い天体を見たい場合です。読み出しノイズが加わる時点以前にゲインを上げることができるなら、より小さな信号を見ることができます。でもよく考えるとこれも先に挙げた露光時間を伸ばす代わりに時間制限があるのでISOを上げることと根は一緒ですね。

言うなれば、明るさ、時間という物理量に対して、露光時間、ISOというカメラ側の機能を駆使して、いかにカメラの持っている生のダイナミックレンジ(ファイルフォーマットでは16bit、一眼レフカメラは14ビット程度が多い)に入れ込むかという話に行き着きます。「明るさ」という物理量には、ターゲット天体の明るさ、背景光(+背景光ノイズ)、リードノイズ、その他ダークノイズ、ショットノイズなどがありますが、今回話題としているのはターゲット天体の明るさ、背景光なので、基本的にこれに絞り、必要ならノイズ(特にリードノイズ)を考えることにします。

2020/11/1 追記: Zoom会議で、やはり都心の超光害地で撮影されている方から、とにかく何も写らないのである程度滑らかにしておかないとダメ、だから天体からの光子数を少しでも稼げる低ISOがいいのではないかとの発言がありました。皆さん納得してましたし、私もその通りかと思います。


Twitte上での疑問

黒・天リフさんが今回のHIROPONさんの記事に対して、Twitter上で色々疑問を呈してくれています。勝手に引用してしまっているので申し訳なくて、まずかったらすぐに消しますが、折角の疑問なので、私(Sam)のわかる範囲で答えてみようと思います。私自身はノイズに関しては多少勉強はしてますが、センサーに関してはプロでもなんでもないので間違ったことを言っているかもません。なのでここで書いたことは正しいとは限らないですし、簡単に答えの出ないものもあるのかと思います。自分で考える発端になればいいかなと思っているくらいです。


黒・天リフさん
一番重要なのは、コンポジット前の1枚画像のヒストグラムが偏らない(いわゆる中央より右)ことではないか?根拠は一つ、それが一番限られたビット幅を有効に使えるであろうから。
反論)天体写真においてはヒストグラムの山から左は基本的にゴミデータ。ゆえに「意味のある階調のビット幅」は山から右端までの間になる。それなら山は左に寄せた方がより階調が広くなるのではないか?
反論の反論)・・・・・・「ヒストグラム山右寄せ」は多くの方が実践し好結果を得ているように思えます。私はチキンなのでいまだにヒストグラムを2/3より右にできませんが、人によってはびっくりするほど右寄せにされている模様。なぜ「右寄せの方がよりよい」のかが自分にとっては未解明。 

Sam
量子化ノイズの問題だと思います。左寄せはADCのLBS (量子化単位)に近くなっていくので損なはずです。階調不足と言った方がいいでしょうか。なので右寄せの方が好結果を得ているというのは正しいと思います。でも右寄せはダイナミックレンジを犠牲にしているので、当然恒星とかはサチりやすくなります。nagahiroさんがもっとわかりやすく説明してくれていて「見た目の明るさが2倍違う天体AとBを撮影したとして、ヒストグラムの左側を使っているとそれぞれ画像上の輝度値が5,10だったのが、右側を使うと50,100になって、後者のほうが諧調が豊か」ということです。

デジタルゲインでは階段上のまま増幅されるが、アナログでゲインを上げると階調豊かになる。


黒・天リフさん
天体の光は実際にはどのくらいの光子をセンサーに届けているのか?たとえばごく淡い分子雲を総露出120分で撮影したとき、1画素に分子雲の光子は「何個」届いているかです。これがもし「1」なら直感的には鑑賞写真では判別不能に思えますが、では何個なのかと。

Sam
天体を仮定して計算するのは大変なのですが、Unity gainがわかっているなら画像から逆に計算することができます。Unity gainは1つの光子が1ADCの単位(=1LBS、最小量子化単位)という意味なので、Unity gainで長時間露光して撮影した画像で天体が写っていたなら、そのカウント数を数えればそれがそのままま光子数となります。


黒・天リフさん
バイアスノイズ≠リードノイズ?バイアスはセンサーの輝度値の「ゲタ」と認識しているのですが、これは「リードノイズ」とは別物と考えていいのでしょうか。ゲインをかけて増幅した値を読み出す際のノイズがリードノイズ?

Sam
同じと考えていいのではないでしょうか?バイアス補正はするけれどもリードノイズ補正はしないし、メーカーのデータにはリードノイズは出てくるけれどもバイアスノイズは出てきません。リードノイズとはどれだけ光を無くしても、露光時間を短くしてダークノイズを減らしても、どうしても読み取り時に出てくるノイズです。最短露光時間にしてバイアスノイズを測れば時間に比例するダークノイズの効果は無視できるようになるので、それは定義から言ったらリードノイズになると思います。リードノイズもバイアスノイズもISO(ゲイン)に依存します。

2020/11/1 追記: Zoom会議中で出てきた結論は、バイアスとリードノイズは別物という意見が大半でした。素子レベルでのオフセットがバイアス。バイアスはオフセットであって、ノイズではないというもの。でも私はまだ少し納得ができてなくて、結局あるゲインでのバイアスフレームをとるとそれはそのままあるゲインでのリードノイズに一致するのではないかと思うからです。でないと他にリードノイズを測る方法がないです。概念としてバイアスがオフセットなので別物というのは理解ができます。
さらに新たに出た疑問として、バイアスの時間変化はあるのだろうか?とうのがありました。例えばSony α7S3では一定の期間でバイアスを取得して書き換えてると言うことです。あぷらなーとさんがバイアスに関してはかなり解析されてました。


黒・天リフさん

「ゲインをかけて増幅した値を読み出す際のノイズがリードノイズ」だとすると、「ISO100 15秒」と「 ISO1600 15秒」ではリードノイズの影響はISO1600の方が少ないことになると推測。現実にはCMOSセンサーのリードノイズは今やとても低いので大きな差にはならないのかも。 

Sam
リードノイズはゲインに依存します。メーカー値を見てもそうですが、例えばSharpCapを使ってZWOのASIカメラとかで実測すると、その依存性が出て、高いゲインの方がリードノイズが小さくなると出ます。ただし、この「小さくなる」というのは入力換算での話で、ゲインで割った後のノイズの値が小さいという意味です。ゲインで割らないと当然ノイズもゲイン倍されて測定されるので、ゲインが高い方がノイズの値は大きくなるのはいうまでもありません。
そのため、露光時間が同じ場合、淡い天体を撮る場合にはISOが大きい方が得だと思います。でも当然ダイナミックレンジは犠牲になります。
でも少し疑問もあって、そもそもISOで上げるゲインはどこにあるのでしょうか?回路的にゲインを上げるならリードノイズ前で増幅するので高ISOが得をします。一方、読み取った後に計算機上でゲインを上げるなら、リードノイズは変わらず、むしろダイナミックレンジで損をします。一応データでリードノイズがゲインとともに下がるとでているので、前者が正しいのかと思っています。

2020/11/1 追記: 実際の天体からくる光子数をあぷらなーとさんが過去に計算してくれてます。
https://apranat.exblog.jp/27577057/

これによると、M27で1秒間に1ピクセルに0.7個だそうです。


黒・天リフさん
理想的なセンサーと完璧な背景光キャリブレーションがあれば、背景光の輝度に関係なく、同じ画像を得ることが可能。これって実現可能性はゼロに近いですが、論理としては間違ってませんよね?
常々、光害地と遠征地でのディープスカイの写りの差はもっと少なくできてもいいはずなのにと思うのですが、その根拠?となる仮説です。でも実感値としては全く間違ってるような気がしますね・・背景光の「揺らぎ」のレベルが違うのでしょうか。 

Sam
そもそも光の揺らぎも0ということはあり得ません。光子数のルートに比例する統計的な揺らぎが必ず存在します。なのでたとえ理想的なセンサーがあってもダメです。
信号が全て中央値だけのような統計的にばらつきのないものなら、背景光なども完全に引くことができるのですが、実際には(光子数、センサー読み取り値ともに)ノイズは必ずばらつきがあるので、完全に取り去ることはできません。背景光が明るければその分そこからくる(統計的に明るさのルートに比例した)ノイズも大きいです。なので、ゲインをあげて、背景光のノイズが効かない分解能が高いところでノイズを差っ引いた方が有利です。
HIROPONさんが画像処理が前提の場合はISOが高くても低くても差はほとんどないと発言されてるのですが、これも天リフさんと同じような仮定をしているからだと思います。画像処理が前提でも、ADCのレンジのどこに落とし込むかを考えないと、特に低ISOの場合は量子化ノイズに制限されることがあります。また画像処理にはノイズを差っ引くような処理が多いのですが、ノイズの平均値を差っ引くことはできますが、ノイズ(揺らぎ)そのものを差っ引くことはできないので、ゲインをあげてRead Noiseなどのゲインステージよりも前に入ってくる信号をあらかじめ増幅した方が得です。量子化ノイズ、リードノイズよりも天体の情報の方が十分大きく、量子化ノイズ、リードノイズが無視できる範囲で、かつADCのレンジ内に十分入るならば、画像処理を前提にすればHIROPONさんの言う通り、ISOに関係なく同じ結果になると思います。この場合は背景光の効きは同じになるので、ISOによって有利不利はありません。

2020/11/1 追記: Zoom会議中に黒・点リフさんはライトフレームをスタックした場合を想定していて、私はライトフレーム一枚を補正することを前提として考えていることが判明しました。ライトフレームを無限にスタックしていけば、信号である天体に比べて、無相関なランダムノイズは統計的に枚数のルートに比例して揺れが小さくなっていくので、原理的に消すことができます。でも現実的にはライトフレームの枚数を増やしていってもあるところで改善が見られれなくなると思います。どこかに時間的に相関があるノイズが支配的になったりしてしまうなどが理由と思います。


黒・天リフさん
短秒多数枚はリードノイズが枚数分だけ乗ってしまうのが弱点(のはず)。リードノイズの大きな冷却CCDではあり得なかった戦略。でもISOを上げればリードノイズの影響を減らせる?という気になっているのだが、そこが根拠レスなので知りたいところ。

Sam
ISOの効果がリードノイズが加算される以前で効いているなら正しいです。ただしデジタルゲインと呼ばれているような、ゲインがリードノイズ加算の後に適用されている場合は正しくないです。むしろダイナミックレンジを削るので不利になります。でもダイナミックレンジで不利というのも程度問題で、計算機上で無限の(例えば32ビットとか、64ビットの)レンジがあれば無視できる問題です。


2020/11/1 追記: Zoom会議中の質問など
  • 高いISOだと温度が上がったりしないか? -> 経験上あまりそういうことはない。
  • リードノイズが枚数を増やすことで消せない理由が知りたい。 -> たくさん重ねると確かに得するが、他のノイズに比べるとその効きが悪いのであまり得しない。詳しくはここの「読み出しノイズ」を参照。
  • PIはファイルを読み込んだ時にビット数拡張分を上に加えるだけなので、最初ものすごく暗く見える。その状態でスタックして加算「平均」して平均するところで割ってしまうと、狭いビットレンジのところに戻ってきてしまうので、階調が改善されないのではないか? -> 内部の計算が整数ならダメだが、不動小数点で計算しているなら大丈夫だろう。もしくはファイルに落とす時にビット数を選択できるくらいなので、計算機内部ではもっと情報量を保っているのではないか?ただし、ファイルに落とす時に、暗いままで、整数で、低ビットで保存すると情報が失われるので注意。
  • ヒストグラムは対数かリニアでみてるか?Steller Imageで縦軸を対数で見ると、何も信号がないと思っているところでも小さな信号が残っていることがわかる。また、横軸をリニアで見るとかなり暗く見えてしまっている場合があるがそれでも大丈夫なのか?-> 上と同じ理由で計算機内部で情報を保っていれば大丈夫なのでは?でも同様に、ファイルに落とすときは注意。
  • ISO側でなにか画像処理をしているのではないか? -> 少なくとも拡張感度というのはデジタルゲインで、さらに何か処理をしている可能性が高い。それだけでなく、常用感度でもなにか画像処理している可能性は否定できない。さらにRAWと言われているものでも、色々処理している可能性がある。例えば、オフセット、カットオフなどは触っている模様。でもカメラメーカーの裁量で決めていることで、情報としては出てこない。
  • さらに、CMOSカメラも色々複雑。例えばASI294なんかは、ゲイン120のところからリードノイズがガクンと良くなる。これはノイズの違うアンプを2つ使っているから。それぞれのアンプはアナログの可変ゲインアンプで、外部入力で単体でゲインが変わるアンプが各画素に入っている。なので、大きなゲインでリードノイズが改善される。でもASI294はゲイン391以上でデータが1ビット間引かれ、以後ゲイン60(2倍)ごとに1ビットずつ抜かれていく。センサーメーカーのデータがそもそもゲイン390以上ないので、ゲイン390より上はカメラメーカーの後付けでデジタルゲインではないだろうか?
  • 本来のハードウェアビニングは、リードノイズが効いてくる読み出し前に加算してしまうもの。昨今のCMOSセンサーのように、隣接ピクセルのリードノイズが加わった読み出した後の演算ではありません(それだとソフトウェアビニングになります。なんちゃってハードウェアビニングなどともよばれてます)。CCDとは異なり、CMOSの場合は原理的に読み出し前の加算が不可能らしい。それでリードノイズに違いが生じて、真のハードウェアビニングはリードノイズが4分の1になるのに、なんちゃっての方はそのルートで2分の1にしかならない。
  • ASI294MCとASI294MMはセンサーの型番がIMX294とIMX492と違いがあれ、ほぼ同様のものと推測。そもそも294の方もクワッドベイヤー配列で、ユーザーが見る1つの素子が実は4つの素子からなっている。そのために本来12bitのダイナミックレンジが、14ビットに拡張されているのでは?
  • サッポロポテト現象がASI294MCだと全く出ない。普通はほぼ全てのセンサーで出るので、これは驚異的。クワッドベイヤー配列の恩恵か。不思議なのはMMでも出ない。カラーベイヤーでフィルタリングしているのがサッポロポテト現象が出ない理由の一つのはずなので、MMで出ないのは不思議。理由は不明。

回路との比較

これらのことは回路のことを少し知っていると理解しやすいかもしれません。

光害地で背景光が大きい状態は、回路でDCオフセットが大きすぎて信号が見えにくい状況に似ています。例えばオシロで10Vレンジで1mVの振幅の揺れは見えないようなものです。

高いISOで淡い星雲を見やすくすることは、回路でサチらない範囲で適度にゲインを上げてSN比を上げることに相当します。

実際の回路でノイズのことを学ぶのは、役に立つと思います。例えば「計測のためのアナログ回路設計―OPアンプの実践回路から微小信号の扱いまで」の最初の方はものすごくわかりやすくノイズについて書いてくれています。実際にこれをみながら低雑音オペアンプを作ってみると、ノイズについてよくわかるかもしれません。

これらの電気信号を計算機に取り込む必要があり、こちらはまた別の話になります。量子化ノイズについては、ADCについてもよく理解しておく必要があります。

センサーの個々のピクセルに関しては回路の話になるのですが、多数のピクセルが集まったセンサー全体の話になると、また特有の事情が出てきます。conversiion factorなんかはたくさんのピクセルの統計的な振る舞いから求める典型で、初めて学んだ時は眼から鱗でした。

画像処理まで考えるとさらに複雑ですね。天体画像処理には、ターゲット天体の情報を持つヒストグラムの極範囲の狭い領域を、可視全域まで広げるという特殊な事情があります。逆に言えば、この領域を生かすような撮影方法を考えるべきで、あとはむしろ外に追いやってしまうような手法がセンサーに近い側で確立されると、もっと得すると思います。でも今の市場規模だと大変なのと、やはりRAW出力を求めるので、なかなかとっぴなことは難しいと思います。


まとめ

すみません、黒・天リフさんの疑問が散らばっていたので勝手にまとめてしまいました。まずかったら消しますので言ってください。

とりあえずバババッと短時間で答えてみましたが、どこまで合っていることか。色々疑問もあると思いますので、コメントとかTwitter上でもまた議論してもらえればと思います。

ノイズに関しては昔色々書いています。





でもよく考えたらADCの量子化ノイズについて言及したのは今回が初めてかもしれません。

こういった話も天体写真の別の面白い一面だと思います。これからも続けて議論していければと思います。


ノイズネタを肴にしたZoom飲み会開催のお知らせ

追記です。10月31日午後21時から、ノイズをネタにZoom飲み会を開催しようと思います。

Zoomに始めて参加される方はアプリが自動でインストールされるはずです。Windows、Mac、Linux、アンドロイド、タブレット、iPhone、iPadなど各種対応しています。発現する場合はマイクが必要です。顔出しOKの方はビデオカメラもあるといいかと。

たくさんの質問をTwitterに投稿していただいた黒・天リフさんも参加されるとのことです。他にも大物ゲストが来るかもしれません。

めんどくさい込み入った話になるかもしれないので、聞いているだけでも構いません。たくさんの方のご参加お待ちしています。



新月期、天気が良かったので平日ですが、自宅で撮影しました。ターゲットは季節柄、M31アンドロメダ銀河としました。アンドロメダ銀河の撮影は、なんと4年ぶりとなります。4年でやっと最初に戻った感じでしょうか。


そろそろ2巡目

4年前当初は、まだ星を始めたばかりで、初めてオートガイドが成功したと喜んでいた頃でした。当時はすごくうまく出てきたと思っていたアンドロメダも、流石に色褪せて見えてきました。そろそろこれまで撮影したメジャー天体の再撮影をしてもいい時期なのかもしれません。

今回の撮影の目的は2つあります。
  • 一つは、4年経ってどれくらい進歩したのかをみること。
  • もう一つは、4年前の撮影が数河高原と環境が格段良かったのに対し、今回は自宅で数段劣る空でも銀河撮影に耐えうる環境なのかを見極めること。
機材も画像処理の技術も進歩したはずです。少なくともカメラはAPS-CのEOS 60DからフルサイズのEOS 6D、鏡筒はFS-60CBから、FC-76と少し口径アップです。ですがこのFC-76、レンズが白濁してるやつです。果たして上手く写るのか?まあ、これまでHαはうまく出てるので、なんとかなるでしょう。

自宅なので空の環境が4年前より悪い代わりに、平日にもかかわらず撮影時間は朝まで気にしないで長時間できることはメリットになります。これがどこまで有利に働くか?うまく撮影できるなら、休日前に遠征に行くか、平日でも自宅で撮るかで、おそらく後者の方が圧倒的に撮れるチャンスは増えるはずです。


撮影開始

セットアップは順調で、19時半頃には撮影を開始できました。ちなみにフィルターは無し。最初CBPを入れてテスト撮影しましたが、流石に銀河部分もかなり暗くなるので、CBPは外しました。カメラが6Dなので、フィルターは鏡筒のフォーカサー付近につけるしかなく、この大きさで他に使えるフィルターもないため、今回はフィルター無しでの撮影としました。後の結果を見ると、フィルターなしでも十分戦えそうです。

でも後で見てみると、低空で北向に近い19時台と20時台は背景が明るすぎたので、ばっさり捨てました。富山の北は街明かりでかなり厳しいです。天頂付近と比べて明るさが倍以上違います。最初3分露光のISO1600でヒストグラムのピーク位置が半分くらいまできてたのでISO下げるか迷ったのですが、下げなくて良かったです。一番暗い時はピーク位置で25%以下にまでなってました。

19時の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+22c_20201020-19h36m14s797ms
最初これを見た時、あー自宅はやっぱりダメだなと思いました。流石に淡すぎる気がします。

PHD2でのガイドは極めて安定でした。RMSで1秒程度、ピークでも数秒です。
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今回は6Dでの撮影なのでBackYardEOS(BYE)を使いましたが、途中3回くらい停止しました。PHD2からのDitherが始まるか終わるかするところで泊まるみたいです。どうもPCの負荷と関係あるようで、プロセスを見るとなぜか「System」が異常に高いCPUパワーを食っていました。後日、なにもUSBに繋げずに立ち上げ直した時はそんな負荷はなかったので、何か撮影時につないでいるものが悪さをしているようです。6DでもNINAに乗り換えた方がいいのかもしれません。

結局画像処理使ったのはBYEが止まってたのを復帰させたあとの21時半頃から、翌日の午前3時半頃までの、91枚。3分露光なので273分で、4時間半ちょっと分です。

0時頃、天頂付近の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+17c_20201020-23h59m04s734ms
時間が経つにつれかなりマシになっていきました。まあこれならなんとかなるかもと思い始めました。あとは長時間で枚数を稼ぐのがどれだけ効いてくるか?ちょっと楽しみになってきました。


画像処理と結果

画像処理はいつも通りPIで、途中からPSに渡します。
  • ライトフレームが3分で91枚。
  • 後日同様の時刻に外で鏡筒に蓋をして撮影したダーク66枚。
  • フラットを障子越しに同じISOの1600で1/400秒で100枚。
  • 今回はWBPを使ったのでフラットダークも撮影しました。こちらもフラット撮影の時間が短いので簡単で、フラット撮影後そのまま蓋を閉じ、暗いところにもっていって同様の設定で撮影するだけです。
  • バイアスは以前撮ったものを流用。
全部をPIのWBPに放り込み、しばらく待ちます。1時間もかからなかったでしょうか、できた画像をとりあえずオートストレッチだけしてみます。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180.5

うん、悪く無いですね。

画像処理の手順は
  1. フラットで補正し切れてない所をDBEで滑らかに
  2. PCCで色合わせ
  3. 恒星の色を出したいので今回はArcsinhStretchでストレッチ
  4. StarNetで恒星部と分けて
  5. あとはPSで炙り出し
  6. DeNoiseでノイズ除去
くらいです。出来上がりは下のようになりました。色はタカsiさんのM31があまりに綺麗だったので、参考にさせてもらいました。

「M31アンドロメダ銀河」
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4
  • 撮影日: 2020年10月19日21時37分-20日3時40分
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 鏡筒: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + FC/FSマルチフラットナー(x1.04)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS, ISO1600,  露光時間: 300秒 x 91枚 = 4時間35分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC, DeNoise

ついでにAnnotationです。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4_Annotated

どうでしょうか、タカsiさんのと比べるとまだまだ全然ですが、自宅でFC-76(しかも白濁で格安)でここまで撮れたのなら、私的にはまあ満足です。恒星の色もきちんと出ています。4年前の撮影より空は格段に劣るにもかかわらず、ありとあらゆるところで更新できたと思います。画像処理の技術もそうですが、5時間近くを平気で撮影できるようになったというのも自分の技術の進歩かと思います。やはり4年は大きいですね。

反省点としては、赤ポチがやはり出ないところでしょうか。これはHαだけ別撮りして足すとかしないとダメなのかもしれません。

ちなみに4年前のはこんな感じ。アラもたくさんあるのは当たり前ですが、画像処理も含めて随分頑張っていたことを思い出します。

b6f6ef8a

あと、今回の画像処理はすごく楽でした。5時間近くの露光になるとやはりスタックされた画像はかなりのクォリティーになるのでしょうか、あまりいじったり強調したりすることなく、無理なく細部も出てきます。これなら個人で撮影して喜んでいる分には十分です。一晩を目処に自宅で、というのをしばらく続けてみたいと思います。

実はもう少し、初期の頃に撮ったM42とかをTSA-120と6Dで真面目に撮り直してみたいです。でもまたしばらく天気が悪く、回復するのは上弦の月くらいのようです。


Stick PCの小ネタです。

先日AmazonでPCのHDMI出力をUSBに変換するアダプターを注文しました。



私が買った時は700円以下。安いですが9月20日頃に発注し、つい何日かまえに届いたので一ヶ月位かかりました。 開けてみるとコネクタのことろがカタカタします。ネジを外すと、基板とコネクタが一体で、ケースにはコネクタ用に開けた穴のみで固定されてました。基板の長さがケース内部より少しだけ短いためにカタカタしてたので、基板にパーマせるテープを重ね貼りして少しだけ長さを増したらいい具合にカタカタが収まりました。

もともと電視観望用に一眼レフカメラのHDMI出力をPCに取り込み、SharpCapでスタックできないかと思って試験用に買いました。でもそちらの用途はSharpCap自身が対応してくれたので既にあまり動機はなく、それよりも長年探していたPCをモニターがわりにする機材そのものであることに気づきました。というのは、Stick PCを使うときに遠征先でトラブルがあることを考えるとどうしても小さいながらもモニターを余分に持って行かざるを得ないのです。でもこれがあるとPCの大きなが画面をモニターとして使えるはずで、余分なモニターを持っていかなくて良くなります。

さて実際のテストですが、ごく普通に使えます。PCからはWebカメラとして認識されます。Windowsだと標準のカメラアプリから、MacだとQuick Timeで新規ムービー収録を選べば共に標準ソフトで画面が見えてしまいます。下は、Stick PCの画面をHDMI出力から今回のアダプターでMacのQuick Timeで出しているところです。

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マウスの反応は少し遅れますが、遠征先で緊急事態に使う分には実用の範囲でしょう。普通はマウスの遅れとか無いリモートデスクトップで使えばいいのです。

今回は一番安い小さいタイプを買いましたが、もう少し高いものでUSB端子がケーブルでつながっているフレキシブルなタイプがありますが、こちらの方がいいかもしれません。理由は特にTypeCなどに変換するアダプタを使っていると、万が一StickPCを引っ張り上げたりしてしまうとコネクタ部分が曲がってしまうからです。ここにケーブルの柔らかい部分があるとコネクタの破損を防ぐことができます。

これで余分なモニターをいつも持っておく必要がなくなりますし、モニターの破損とかに気を使わなくて済むようになります。
 

プロローグ

前の日の土曜日、富山市科学博物館で8ヶ月ぶりに再会した小学5年生の女の子。ものすごく熱心な子で、その日は雲が多くて目的のアンドロメダ銀河もなかなか見えなかったので、よかったらうちで見ますかと親子でお誘いしたら、早速次の日、日曜日の夜に来てくれることに。




準備を張り切りすぎて

到着は19時頃になるとのこと。なので夕方17時くらいからゆっくり準備を始めます。でもちょっと張り切りすぎて、惑星用にMEADE25cm、広角電視観望で50mmレンズ、FS-60CBでもう1組電視観望。あと、すばる用に双眼鏡を2つ、星座ビノを5個くらいと、なんかフルコースになってしまいました

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19時過ぎに電話が。しかも、お互いに知り合いのU一家も一緒に誘ってきてくれました。なのでIさん一家がMちゃん(今日ようやく名前を聞きました)とお母さん、あとUさん一家が小4女の子、中1男の子と両親の、2家族。計6人のお客さんでした。


皆さん自宅に到着

ちょうど木星を導入しているときに到着。早速見てもらいましたが、やはり温度順応がまだまだでいまいちシャープさに欠けます。実は夜中に火星を撮影しようと思っていたのでMEADEにしたのですが、観望会のことだけを考えてC8のほうが良かったかもしれません。

Uさんのところはお父さんが天文好きで、この日もBORGの70mmくらいのを持ってきてました。Uさんのところの子供二人も多分星は好きなのでしょう。でも今回はMちゃんに圧倒されてしまいます。


もう興味津々

まず一番最初から、Mちゃんだけは赤道儀のCGEM IIに興味津々。「自分で導入してみる?」と言って、コントローラーを渡したら「わーっ!いいんですか?」とすごく嬉しそう。土星の導入をしてもらったのですが、やり方は一度言うだけで完璧に覚えてしまいます。「じゃあ次は火星導入してみたら」とかいうと、もう勝手にどんどん進めていきます。

すごいのは、火星の自動導入時は鏡筒が大きく動くのですが、きちんとケーブルが噛まないかとかさりげなく気を使ってることです。もちろん私は何も言ってませんよ。こんな子なら安心して機材も触ってもらえます。

でも初期アラインメントを木星一つしか合わせてないため、離れているる火星の導入はずれてしまいました。そうしたら「これファインダーってどこにあるんですか?」と聞いてきます。普段私はあまりファインダーを使っていないことを反省して、急遽ファインダーを付けます。もう一度木星に入れてもらって(もう完全にMちゃんに任せてます)、ファインダーの調整もMちゃんにやってもらいます。ファインダーも最初Vixenのものと違うので少し戸惑ってましたが、すぐに慣れて自分できちんと合わせてました。その後、火星も勝手に導入してしばらくすると「入った」と。そのときに基準星の置き換え方法を教えたら、これも次のベガとかで自分で置き換えもやろうとしてました。



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MEADEはミラーシフトが大きいので、KASAIのフォーカサーでピントを合わせてもらいましたが、これも戸惑っていたのは最初だけ。子午線越えの場合アイピースの上下が逆になったりしてしまいますが、アイピースを上に向けるためにフォーカサーを回転するときに必ず落とさないように手を添えるとか、基本がきちんとできています。おそらく自分で経験してどこが大事か知っているためか、ホントにほんの一言言うだけで、あとは物凄く丁寧に気をつけて、考えながら操作してます。多分かなり自分で星を見てポルタを使い込んでいるからだと思いますが、危ない操作を避けることも、自分で何度か機材を落として学んだのではないかと思います。なんかもう、お手本のような子です。

MEADEでM57を導入しようとしていたので「まずベガで基準星を置き換えるといいよ」と言うと、もう手慣れたものできちんとやっていました。面白いのは、ハンドコントローラーのボタンの英語が読めないのです。ここら辺はさすがに小学生で、なんか可愛かったです(笑)。結局、どのボタンがどの機能か覚えてしまったみたいで、今度は「DEEP SKY」ボタンを使ってM57も導入してました。見えた時の喜び具合もすごい反応で、他の子や大人の星雲を見たときの反応は結構一般の人に近い「ふーん」というのに対し、もう大興奮で一人キャーキャー叫んでました。


Mちゃんのポルタ

さて、だんだん木星と土星が低くなってきたので、MちゃんのポルタIIを出してもらって、自分の望遠鏡でも見てもらいました。聞いてみると、持っているアイピースは6.3mmと20mm。もう手慣れたもので、惑星の導入は一瞬。しかも最初っから6.3mmで導入までしてしまうみたいです。せっかくなので、私の部屋で少し機材を見てもらい、ついでにポルタに付いてこない10mmと40mmのアイピースをあげることに。昔星まつりで安く買ったものですが、私が使うよりMちゃんに使ってもらった方が遥かに役に立ちそうです。

外に戻ると早速40mmのアイピースを使って、M31を導入しはじめてました。実は、昨日科学館の観望会で一緒だった県天のメンバーのKさんが自宅のすぐ前に住んでいて、今日のことも聞いていたので顔を出してくれて、いろいろMちゃんに教えてくれていたようです。M31は恒星とか惑星は違って、導入するのはなかなか大変です。Mちゃんも最初相当苦労してましたが、Kさんの教え方がうまいのか、じきに自分で導入できるようになり、あっという間に慣れてしまったようです。初めてM31が導入できた時の喜びようはもうすごくて、こんなに喜んでくれるならアイピースの何本でも惜しくないと本気で思いました。


電視観望と眼視での比較

眼視もある程度見たので、次は電視観望です。最初広角電視観望から始め、北アメリカ星雲とかサドル付近を見てもらいました。

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ついでにM31を50mmの広角電視観望で見てもらいました。前日の科学館で雲であまり見えなかったので、少なくとも晴れていて光害も少ない場所でのM31は形もわかって好評でした。

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そんなこんなで、あっという間にUさん一家が帰宅する時間になりました。せっかくなので、M57だけでも見てもらおうと、FS-60CBでの電視観望にASI294MCを付け替え、画面に映し出します。先ほどのMEADEでの眼視と比べて明らかにカラフルなので、今度は皆さん「きれーい!」。

再びMEADEでも導入し直し、改めてみんなで眼視で比べて見てみます。見比べはやはり面白くて、特に眼視のモノクロと比べると電視観望での色が映えます。でも「眼視のいいところもあるんです」とキチンと両方のいいところを説明しました。

さらに帰ろうとしているUさん一家を引き留め、M27亜鈴状星雲を電視観望でもMEADEでも導入し、再び比較。眼視の方はM57よりさらに淡くなるので、見るのが難しい人もいたみたいです。

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ちょうど21時頃でしょうか、ここで明日の月曜に学校があるUさん一家が帰宅。Mちゃんの勢いがすごすぎて、Uさんのところの子供2人が乗り切れてなかった気がしたので、少し心配でしたが、家族みんなでお礼を言ってくれました。

あ、そうそう、うちの妻を含めてお母さん同士は3人でずーっと何か話してました。あとで妻から聞いたら、最近Uさんのところの上の子も中1でなかなか家族のお出かけに着いて来なくなったとのこと。そういえば確かに、しきりに上の子の方が「もう帰ろう」と言っていました。うちの子もそうですが、だんだんと自分の世界を作っていくので、しかたないのかなあと思います。


Mちゃん格言

その後もMちゃん、独走体制で一人でハンドコントローラーに入っている天体を片っ端から導入していきます。私とKさんは横で微笑ましく見ていました。詳しい人はもうわかると思いますが、ハンドコントローラーに登録されているほとんどの天体、特にDSOはこんな街中では見えません。途中でMちゃんもそのことに気づいたみたいで、少し話しているとしみじみとした口調で「最近、自分の望遠鏡だと見えないものが多いことがわかった」とのこと。もうポルタと経緯台だと限界なのかもしれません。

あと、本も紹介しました。聞いてみると持っているのは星の図鑑くらいだそうです。興味を持ち始めたのがわずか1年前、仕方ありません。それでこの進化はすごいです。でも私も逆に、小学生で読めそうなものがなかなかありません。とりあえず誠文堂新光社の「メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド」を見せると爛々と目を輝かせています。「貸してあげるからいつか返してくれればいいよ」というと、「お母さんにスマホで表紙の写真撮っておいてもらう。自分で買う。」とのこと。その時ボソッとつぶやいたのが「メシエ全部覚えられそう...」。うーん、楽しみな子です。

最後にFS-60CBの電視観望でM31を見てみました。すでに少し薄雲がかかってきていましたが、それでも構造まで見えるM31に親子共々びっくりしてたようで「図鑑と一緒だ」と叫んで、スマホで画面を映して待ち受け画面にしていました。ここら辺は普通の子供っぽくてかわいいものです。

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21時過ぎくらいでしょうか、一瞬で空が曇ってきて、電視観望もM31ももう中心だけがボヤーっと見えているだけ。「これがさっきのアンドロメダ銀河...?」となんだかガッカリして寂しそうでした。

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なんでもこの日の午前が授業参観か何かで、明日は月曜でも学校はお休み。このまま晴れていたらオリオン座が上がってくる0時頃まで居座ってそうでした。うちは全然いいのですが、流石に天気はどうしようもなくここで解散。この時でしょうか、「オリオン大星雲は緑に見えるくらい」とさりげなく言うのですが、私はいまだにM42に色がついて見えたことがありません。「赤とかピンクとかは?」と聞くと「それは見えたことがない」とのこと。一緒に見てたお母さんも色はついて見えないと言っています。子供の方がやはり目の感度がいいのでしょうか?なんともうらやましいです。

後片付けをしながら「キャップがなくなったー」とか騒いでずっと探していました。結局見つからなかったのですが、多分ポケットの何処かから出てくる気がします。道具を大切にするのはとてもいいことだと思います。とにかく、とても楽しかったらしく、「科学館より凄かった」とのこと。科学館の方には少し申し訳ないですが、それよりも私の方が楽しませてもらった気がします。Mちゃんの反応や星に対する純粋さを見ていると、ほんとに嬉しくなってきます。「またいつでも来ていいからね」と言って見送りましたが、ほんとにいつ来てもらってもいいくらいです。これからどんどん成長していくのか、そのうち飽きてしまうのか、もちろん本人次第ですが、やる気がある限り応援してあげたいと思います。


お菓子美味しかったです

あ、そういえばIさんのところからも、Uさんのところからもお土産いただきました。でも私の家族、気を使ってもらうのが苦手で、実は手土産とか無しの方がいいんです。なので「今度からは手ぶらで気楽に来てください」と伝えました。でも困ったことに、富山の「手ぶらで来てください」は「何か持ってきてね」と同義らしいのです。うちはアメリカ暮らしが長かったので、手土産を持っていく文化に慣れてないので、もしうちに来ることがある場合は、本当に手ぶらで来てください。星仲間として来て欲しくて招待してるので、気兼ねすることなく何度も来て欲しいのです。

でもなんでこんな話を珍しく書いたかというと、Iさんのところが実はケーキ屋さんらしいのです。最初「自前のお菓子を持ってきた」と言うので、見てみたら絶対どこかで買ってきたもの。それでよくよく聞いてみるとケーキ屋で「あ、確かに自前だ」というオチだったのです。うちからも近いので、今度お店の方にも行ってみようと思います。こうやって関係ができていくのは、逆に狭い富山のいいところですかね。

どれも美味しかったです。でもUさんの持ってきてくれた「カイコのふん入りコーヒー」、インパクト強すぎて、まだ誰も飲んでいません。私もちょっと様子見です。いや、もちろん美味しいとは思いますが...。


昼間に少し富山市科学博物館に用事があったのですが、ついでに最近の観望会の様子を聞いてみたら、コロナ禍の中でも再開して頑張って毎週土曜日に続けているとか。せっかくなので、是非ともお手伝いにということで、久しぶりに参加してきました。前回参加した観望会が2月だったので、約8ヶ月ぶり、本当に久しぶりです。

現在、科博の観望会は完全予約制になっていて、毎週土曜日なのは変わりませんが、定員20人を2回、各1時間で、18時半から20時半まで、2ローテーションまわすのみとのことです。今回のテーマは「アンドロメダ銀河」。SCWでは19時くらいから晴れそうなのですが、18時過ぎではほとんど雲に覆われています。18時半になっても、ごく一部所々に隙間があるくらいで、街中のこともあり、目で見ててもほとんど星は見えません。ときおり明るい木星や火星、最初の頃にアークトゥルスが、たまに天頂付近のベガやデネブが見えたくらいでしょうか。こんな日は観測は難しく、ほとんどお話だけになってしまいます。実際の観望はMEADEの25cmがあり、そこに木星や火星を入れるのですが、なかなか見えなくて順番待ちになってしまいます。

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私の方は、一応50mmのレンズとASI294MC Proで広角電視観望をセットして、もし何か見えたらくらいに思ってました。でもアンドロメダ方向はかなり雲がかかっています。

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ごくごく稀にアンドロメダが薄雲越しに見えて、一部のお客さんにはみてもらいましたが、薄雲の中なのでなかなか形まで分かりません。ボーッとしてるのが銀河ではっきりした恒星とは違って見えますが、一般のお客さんには恒星と銀河の違いはなかなかわからないかと思います。それでもお話の中で他の星の配置とアンドロメダ銀河の位置を聞いていたのか、認識はしてくれてほとんどの方が喜んでくれていたのが幸いでした。

今回一番嬉しかったのは、2月に観望会で会った星ガールと今回再び会えたことです。「次回の観望会で」と再会を約束したのですが、その後すぐにコロナで観望会がずっと中止。もしかして今回来てるかもと思って、約束していたポルタ用の微動ハンドルを一応持っていきました。科博のスタッフの方に聞いてみたら、2グループ目にちょうど来てるとのこと。前回会った時は2月で4年生でしたが、もう5年生になっていました。「余っていた微動ハンドルなのでどうぞ使ってください」と言って渡すと、相変わらずのテンションマックスで大喜びです。分解しようとしてお母さんに怒られてました。全く星に飽きていないみたいで、しょっちゅう望遠鏡を出しているそうす。以前は科博の観望会に持ってこれてた自分のポルタⅡも、コロナ禍では持ってくることも叶わず、その代わり自宅で見ることが多くなったそうです。でも駐車場で見てると、コロナだからあまり大っぴらに見ることができないとか。少人数で見ている分には構わないと思うのですが。

結局、この子とお母さんとずっと話していたら空が結構晴れてきてました。デネブ方向にレンズを向けると、街中にもかかわらず北アメリカ星雲がバッチリ見え、ものすごく喜んでいました。それでも天頂付近もまた雲に隠れてしまったので、次にM27を探したのですが、固定三脚でアンタレスとベガの間のそれらしい方向に向けるのですが残念ながら見つからず。その後、アンドロメダ銀河に戻ってると、こちらはバッチリ見えます。もう、キャーキャー言いながら喜んでいます。機材にも興味津々で、カメラと小さなレンズだけでこれだけ見えるのをすごく不思議がっていました。レンズは古いものなのでまだしも、カメラはやはり小学生には高価すぎますし、PCも必要なので大変です。それよりも「きちんとアイピースを使って、星の色とか自分の目で見ることが大事だよ」と伝えました。でもこれだけ喜んでくれるとこちらも嬉しくなって色々見せてあげたくなってきます。

明日の日曜晴れそうなので、もしよかったら自宅に来て、夜に望遠鏡見ますかと誘ったら、19時頃に自分のポルタIIを持って来てくれることになりました。しかも色々聞いていると、ちょっと前にペルセウス座流星群の時の夜に偶然会ったUさん一家と仲がいいとか。Uさん一家はうちの妻とも仲がいいので、もうウェルカムです。結構こういう星とかに興味がある子達は、みなさん近い関係にあるのかと思いました。もしかしたらUさん一家も誘ってくるとかで、明日の晩は賑やかになるかもしれません。

明日は木星、土星、火星と惑星フルコース、しかも新月期なので電視観望で星雲も期待できます。うまく見せてあげられるといいなあ。


少し前に書いた電視観望の入門記事ですが、



記事公開当時はまだ未発売だったCMOSカメラ、つい先日サイトロンからSV305-SJという型番で正式発表されました。今回は正式販売開始記念として、もう少し突っ込んでみようと思います。

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背景

そもそもは、シュミットさんからCMOSカメラをレビューして欲しいという依頼が全ての始まりです。特に、初心者に向けてこのカメラで電視観望入門という形にしてもらえればという要望でした。

このブログでは、宇宙の深淵を覗くことの魅力を知ってもらいたくて、電視観望がその一役を担えないかというので、電視観望技術の普及をこれまでずっと目指してきています。天文人口が増えてくれればという思いで、初めて挑戦する方にもできるだけその敷居が下がるように、私のできる範囲で試したことをできる限りわかりやすくというのを目標に前回の記事を書いてみました。しかしながら、前回の記事ではこのカメラでどこまでできるかという可能性を示す目的で書いた意味もあったので、ほとんどトラブルのようなことは書いていません。

でも実はこのカメラ使ってみると分かりますが、かなりのクセがあります。初心者が前回の記事を見て始めると、いくつか迷う点が出てくると思います。今回の記事は前回の記事の続編という形で、実際に電視観望を始めたときに助けとなるように、より突っ込んだ内容にしようと思います。

シュミットさんからは、トラブルや問題点もきちんと書いて下さいという許可も取ってあるので、遠慮なくいきます


最近のサイトロンの対応はすごい

加えてもう一つ、どうしても書いておきたいことがあります。以前ブラックパンダさんとのTwitter上でのやりとりで、できるだけ初めての人が電視観望を試しやすくする商品を開発してくれると発言してくれました。この時とても嬉しくて心強く思い、そして有言実行で、例えばAZ-GTeシリーズで多くのラインアップを展開してくれているのも、その一環なのかと信じています。

初心者が電視観望を始めるときに、価格で一番引っかかる部分がカメラだと思います。今回のカメラの販売もブラックパンダさんが自分が発言したことを責任を持って守ってくれたのかと思っています。その考えに賛同して、シュミットさん経由で今回のカメラを評価して欲しいという依頼があったとき、喜んで引き受けました。

もちろん、今回の依頼も突然というわけではなく、過去にはQBPのアメリカンサイズを私のTwitteでの何気ないつぶやきから作っていただいたり、愛用しているAZ-GTiのレビュー(間もなくSkyWatcherのカタログが配布されると聞いています)を頼まれたりもしてきたので、今回も二つ返事で引き受けました。

また最近も、QBPの赤外領域をカットしたフィルターを作ってれると、これもユーザーのTwitter上での発言を元に約束してくれています。このように、ユーザーの意見に真摯に耳を傾けてくれる姿勢は、非常に好感が持てます。

今回も含めていろいろ頼まれたりはしてますが、私はやはりユーザー目線で記事を書いているつもりです。ユーザー目線で見た場合、最近のサイトロンさんの対応はすごいと思います。こんなことを書くとプレッシャーになってしまうかもしれませんが、無理をしない範囲で、これからもユーザーの意見に真摯に対応してもらえるととても嬉しく思います。


SV305-SJ

肝心のCMOSカメラはSONYのIMX290センサーを使用したカラーカメラで、つい先日サイトロンジャパンから正式発表されたものです。販売ページも既にできていて、



私が受け取った時はまだ型番もついて無かったですが、SV305-SJとなったようです。SJはSIGHTRON JAPANの頭文字とのこと。

これを聞いてピンと来た方も多いと思いますが、前回出したカメラ本体の写真を見てもわかるように、SVBONYのSV305と同等品です。SV305は初心者でも購入しやすい価格設定のため、電視観望でのCMOSカメラの裾野を広げるかと思われていましたが、保護ガラスが赤外線カットフィルターを兼ねていて、Hαの赤色がなかなか出てくれないようです。ここから考えると、どうやらこのカメラのターゲットは星雲というよりは惑星のようです。そのため、保護ガラスを外してHαを感度良く出しているユーザーが何人もいます。この場合はもちろん保証外になってしまいますし、ガラスが接着されているので上記リンク先にもあるように割れてしまうこともあるようです。

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SV305-SJで見た月。
明るい月や惑星は本質的に得意なようです。
特別な設定をするでもなく、十分きれいに見えます。 

今回発表のSV305-SJは、保護ガラスが赤外カットをしていないクリアなものとのことで、電視観望のことも考えてくれているとのこと。Hαで輝いている星雲に期待できそうです。また、UV/IRカットフィルターは付属で、惑星などの撮影にはこちらを使うと余分な赤外領域などをカットしてくれるようになります。


センサー面積と鏡筒の焦点距離

前の記事のコメント欄でも書いたのですが、ガイド鏡の使用を初心者に勧めていいものかすごく迷いました。しかしながら、センサー面積が小さいSV305-SJでは、焦点距離の長い鏡筒では狭い範囲しか見ることができなくなるため、特に導入時に苦労することが予測され、初心者にとっては大きな負担になってしまいます。ところが、適した短焦点距離の鏡筒を探そうとすると意外なほど選択肢がなくて、しかもどれも結構な値段で、なかなか初心者に勧めることができるものがなく、結局最後ガイド鏡に行きつくことになりました。

実は短焦点距離というので、最初一眼レフカメラのレンズも考えました。しかしながら手持ちのアダプターではどうしても解がなかったのです。一応カメラレンズにアメリカンサイズのアイピース口を取り付けるなどして、カメラを固定することはできます。それでもバックフォーカスが長すぎるために、焦点をとることができません。でも仮になんとかできたとしても、これでは初心者には敷居が高すぎます。

次に考えたことは、ガイド鏡を使うことでした。昨年の胎内星まつりで、ブラックパンダさんのお店で購入したガイド鏡(いまでもシュミットで扱っているようですが、2020/10/12現在欠品中のようです。)で試してみようと思うとシュミット店長さんに相談したところ、EVO GUIDE50EDのアイデアを出してくレました。



なので、今回のセットアップができたのはシュミットの店長さんのおかげです。

結果として、これはかなり面白い試みとなりました。特に初心者にとっては、税込でも2万5千円を切っていて、値段的にもかなりこなれています。しかもガイド鏡と言って、もさすがEVOと謳っているだけあって、SV305-SJの小さなセンサー面積で中央を見ている限りは、四隅の星像も相当シャープです。

しかも最近SkyWatcherから専用のフラットナーも発売されたようです。



あまり知られていないようですが、実はEVO GUIDE50ED用の専用フラットナーがSTARIZONA社からも販売されていて、



たかがガイド鏡に各社訳のわからない力の入れようですが、なんか期待できてしまいます。もうこれで超コンパクト鏡筒として、電視観望だけでなく真面目な長時間撮影までするのも楽しいのかもしれません。

その際ですが「ぜひとも足の部分をそのままAZ-GTiなどに取り付けられるように、鏡筒バンドとアリガタを改良してくれるとさらに良かったりします」という話をシュミットさんにしたら、現在足の部分を変更する部品を実際に考えているそうです。こちらも期待したいと思います。


SharpCapでの操作

次に、SV305-SJをSharpCapで使う時に幾つか気づいたことです。

SharpCapのバージョン:
まず現在のバージョンでは必ず32bit版を使ってください。64bit版は対応していません。バージョン3.3βになると64bit版でも対応していますが、いずれにせよ注意が必要です。


ゲイン:
このカメラは思ったよりゲインが取れません。まずSharpCapで表されてるGainの数値はそのまま数値倍になります。最小値の1に対して、例えば2なら2倍、4なら4倍。最高は30なので30倍までとなります。同じIMX290センサーを使ったASI290MM(手持ちはモノクロしか持ってないのでこちらで比較します)はSharpCapの値で570まで出ます。これは57dBということなので(60-3)dBということで、1000/1.4 = 715倍程度になり、SV305-SJの30倍に比べるとASI290MMはさらに24倍くらいゲインを上げることができるということになります。なので電視観望などをしようとした場合に、ゲインがあげられない代わりに露光時間を伸ばすなどの必要性が出てきます。


Black Level:
次に、実際の電視観望をする際のコツです。カメラに入る光を遮断したときのヒストグラムに注目します。本来ノイズを表すある広がりを持ったピークが見えるはずなのですが、ピークの左側が画面の左端から出たような状態になってしまうことがよくありあます。あるレベル以下の信号を0としてしまっているのですが、これだと暗いところの諧調をきちんと表現することができません。まずは画面右の「Camera Controls」タブの「Black Level」を100とか150くらいまで持ち上げて、きちんとヒストグラム左端の暗い信号情報を取りこぼさないようにします。淡い星雲などを扱う場合の第一歩です。


露光時間:
そもそも、電視観望ではリアルタイム性を求めるために露光時間をできるだけ短くします。そのため、ヒストグラムのピークがもともとずいぶん左に寄っている状態で操作することが多いです。有料版のSharpCapだと、この状態で雷ボタンのオートストレッチを押すと、淡い天体を適度に見やすい状態にあぶり出してくれるので非常に便利です。この機能を使うためだけでも有料版にする価値があるかと思います。無料版の場合は、ヒストグラムのピークを左と真ん中にある黄色い点線で挟むようにして、淡い部分をあぶり出すようにしてみて下さい。

でも有料版の値段は年間高々10ポンド、日本円にして千数百円。高価なことが多い天体機材と比べたら誤差のような値段で、使い勝手は何万円もする機材を買うより、はるかによくなるかもしれません。もし使い続けるなら迷わず有料版にすることをお勧めします。有料版の場合、ヒストグラムのピークが左端に行かない範囲では、何か設定を変えるたびに雷ボタンのオートストレッチを毎回押せばいいので、かなり楽です。


GammaとContrast:
問題は、この状態でのSharpCapの「Gamma」と「Contrast」の振る舞いです。実際に試してみるとわかるのですが、両方共少し値を変えただけで真っ暗になってしまったり、飛んでしまったりでほとんど役に立ちません。なのでこれらの機能は少なくとも電視観望では使わないと思っておいてください。もちろん月や惑星などの明るい天体など、オートストレッチなどであぶり出したりせずに使う分にはこれらの機能はきちんと目的通りに働きます。十分な光を得ることができる、月や惑星の撮影を中心にテストしたのではと推測できます。淡い星雲を見るためにはこのようにユーザーの方で一工夫(さわらないということ)する必要があると思って下さい。


LiveStack:
さらに、ノイズを下げたい場合のLiveStackですが、1秒以下とかの短時間露光だとノイズが多いせいかAlign機能がうまく働かず、スタックできないことがよくあります。数秒以上の露光時間にするか、もしくはDigital gainを上げるとうまくいくと思います。これもゲインを大きく上げることができないので、全体的に暗くなって、暗い恒星が認識できなくしまうことが原因です。特にDigital gainはこのような暗い画面の時に絶大な改善効果があることが多いので覚えておくといいでしょう。


その他、細かいバグ:
さらに、まだSV305用のドライバーがこなれていないせいか、SharpCapで操作する場合はバグも多いです。
  • 例えば、Colour Spaceを変えると真っ暗になることがあります。これはExposureを適当に変えると戻ることが多いです。
  • また、ゲインに100とか150とか50の倍数以外を手入力すると何故か1減った数になってしまったりしますが、こちらはまあ気にしなければ実害はないです。。 


ノイズについて

さらにノイズに関することです。どんどんいきましょう。

ノイズのピークが細い:
ヒストグラムを見るとノイズが細く見えます。これはノイズが少ないことを意味しますが、実際の画面を見るとノイズ、特に結構大きな縞構造のノイズが多いです。そのため、このピークに合わせてSharpCapであぶり出しを攻め過ぎると、画面上にノイズが非常に多いという印象を持ってしまいます。どうもこのカメラは、炙り出しを攻めすぎない方がノイズが少なく見え、かつターゲット天体もそこそこ見えるということに気づきました。

例えば、M57を2つの場合で見比べます。これは一番最初にSV305-SJを触ったときに気づいたことで、鏡筒はまだFS-60CBを使っていて、QBPも使っています。

まずは、無理にあぶり出さない場合:
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次にかなり炙り出した場合:
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見えているノイズが全然多いことがわかります。

比較して欲しいのは、LiveStackでのヒストグラムの攻め具合です。上のノイズが少ないものは、2本の黄色い線をそこまでピークに近くしていません。逆に下のノイズが多いものは、2本の黄色い線をかなりピークに近づけています。実際に無理に炙り出さなくても、天体は十分に見えることが多いので、やはりこのカメラはあまり攻めすぎて炙り出すのは控えたほうがいいのかと思います。

ついでに、前回見せることができなかったM27亜鈴状星雲も載せておきます。こちらもSV305-SJを使った初日に試したもので、FS-60CBにQBPをつけています。

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ダーク補正もしていなくて、まだ暑い夏の時期なので、ホットピクセルも目立っていますが、M27がうまく出ています。


QBPと相性が悪い

これまでの経験からこのSV305-SJですが、どうも同じサイトロンから発売されている光害防止フィルターのQBPと相性が悪い気がしています。最初QBPを使っていたのですが、前回の入門記事は全てあえてQBPを外しました。きちんと定量的に検証できているわけではないので、あくまで印象からくる推測ですが、理由はおそらく感度もしくは最大ゲインが足りなくて、QBPをつけると暗くなり過ぎるのではないかと思っています。

EOS X5をSharpCapで電視観望で試した時
も同じような感触でした。シベットさんの以前のフィルター比較記事で、短時間露光だとQBPが不利で、長時間露光になってくるとQBPが有利になってくるという結果がありましたが、そこら辺につながるのかと思っています。



暗くなりすぎると、一回の露光時間が短いと効いてくるリードノイズが相対的に大きくなっているのではないかと思っています。もしSV305-SJでQBPを使いたい場合は、露光時間を長めにとるといいのかと思います。


まとめと今後の期待

今回はSV305-SJを実際に使う際に、注意すべき点などを思うままに書いてみました。でも読み返してみると、本当にサイトロンさんから怒られないかちょっと心配になってきました(笑)。

確かにこのカメラはまだ成熟し切れていないところがあるのは事実です。ですが元のモデルのSV305を出したSVbonyにとって、このCMOSカメラはまだわずか3機種目のものです。一番最初のSV105を少しだけ触ったことがありますが、最長露光時間が500ミリ秒と、月や惑星以外にはほとんど使えませんでした。そこから見ると大した進歩です。ほぼ最安でCMOSカメラを提供してくれるというのはそれだけで大きな貢献です。これから育っていくメーカーだと思いますので、温かい目で見ながら、ユーザー側からの提案をどんどんしていくのが大事な時期なのかと思います。


福島県田村市で行われた星の村スターライトフェスティバルにいってきました。


3年ぶりの開催

前回福島のスターライトフェスティバルに行ったのは前回福島のスターライトフェスティバルに行ったのはもう3年前のことになります。

 

一昨年、昨年と台風でいずれも中止で、とても残念でした。今年はコロナ禍でほぼ全ての星まつりが中止、胎内がオンラインで開催したくらいだったので、今回のスターライトフェスティバルが今年初の星まつりとなるそうで、言ってみれば運営側の大英断だと思います。

開催日は10月9日夕方から10月11日までの3日間。前週までの長期天気予報では晴れの予定でした。でも直前になって台風14号がちょうどこの日に来るという予報が出てしまい、また中止か?と心配しました。確か一昨年は、台風の予報だったのが当日開けてみたらは快晴、でもステージとかが壊れてしまっていたとかでやはり開催不可。昨年は当日近くの中止のアナウンスだったので何人かの人は現地に集まってきて、土砂崩れで孤立するるとかのアクシデントもあったとか。今回は台風がどうも直撃にはならなさそうなことと、直前の変更は多分大変なのでしょう「中止にしない」というアナウンスがあり、これを見て私も行くことを決めました。


福島へ向けて出発

今回は今年唯一の星まつりとなるので、気合をいれて金曜から休みをとって初日からの参加です。出発は朝10時頃。

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途中、新潟手前の黒崎で休憩、スターバックスでキャラメルフラペチーノを買います。旅だとちょっと贅沢をできていい気分です。

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新潟から福島までの区間で、ものすごい風が強いところがあり、ハンドルを取られそうになりました。台風の影響か?と思ったのですが、むしろ風は新潟に近いほうが強く、福島県に入る頃にはたいしたことなかったです。台風もだんだん皆にに逸れていく予報。天気はなんとかなるかもしれません。

高速はこれまでは会場を少し通り越した小野ICを利用してましたが、今回ETC専用の少し手前の田村ICから出たので、高速の距離も下道での移動も計10kmくら短くなり、ちょっと楽でした。こんなインター、前はなかった気がします。しかも最後の山を登る直前にセブンイレブンがあったので、ここで少し食料を買い出し。このセブンイレブンも3年前にあったかどうか、全く記憶にありません。とにかく会場から3kmくらいのところなので、気楽に来れます。


会場到着

会場に着いたのは16時くらいだったでしょうか。駐車場はまだ十分空いています。タープを持ってきていて出すか迷ったのですが、風が心配でとりあえず様子を見ることにしました。

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今回はブースの配置がこれまでと異なり、全てのブースが建物側に寄っていました。聞いたらやはり台風対策とのこと。直前の開催決定だったのでブースの数もこれまでの半分程度だったことも全部寄せられたことに関係するのかもしれません。

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でもこれが意外に快適で、スタッフの方達がテントとテントの間もうまくシートなどで覆ってくれて、まるで一つの巨大なブースのような形になっていて、一旦この中に入ると傘も要らずにかなり快適でした。というのも、台風で個人のタープを出すことを控えたのと、期間中雨の降る時間帯も多かったので、なかなか居場所がないのです。せいぜい車の中くらい。なので、この巨大ブース化は結構よかったです。


スターライトフェスティバル2020開始!

午後4時の時点で既に何軒かのブースは販売をはじめています。 午後5時からはテントの外で開会式です。初日はほとんど曇りで、雨は遅い時間に霧雨程度でたいしたことなかったです。

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初日の様子

開会式が終わると、もうほとんどのブースがオープンしてました。ブースの入り口を挟んで、左右に一本の通路が走っていて、その通路にも屋根がついている様な状態で、なんかどこかの国のお祭りの露天商の様な雰囲気でした。星まつりでこんなのははじめてです。

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この時間にメインの買い物は済ませてしまいました。特価でASI120MM miniとEAFが買えたのが良かったです。現在ガイド用のカメラにASI290MMを使っているのですが、撮影するときにはいちいち取り外したりしています。ガイド用にはオーバースペックでちょっともったいないので、今回のASI120MMをガイド専用にしようと思っています。EAFはどこに使うのか迷っているのですが、TSA-120かFS-60Qか、はたまた惑星様のシュミカセでしょうか。おいおい考えていきます。

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今回買った大物はこれくらい。最近物欲は結構抑えられていて、今回もなんとかコントロールできました。

今回も1日目と2日目通して、色々な方と会うことができました。コロナ禍でなかなか人に会うこともできなかったので、懐かしさもあり話が盛り上がります。Twitterで当日の状況を随時つぶやいてたのですが、コメントに「会場で会いましょう」と書き込んでくれた方にも何人か会うことができました。星仲間の仙台のKさんと、先月遠征に行くはずだったIさんとも会うことが出来ました。その先月の遠征に行けなかった代わりに行った、名古屋のスコーピオでたまたまお会いしたお二方とも再会しました。

こちらもTwitterで連絡をくれたたつさわさん経由で、飛び込みで顔を出したにもかかわらず大歓迎して頂いた栃木のグループの方々、本当にありがとうございました。宇都宮餃子美味しかったです。秋田のきりたんぽ鍋とかもありました。実は2017年もこのグループになんと子供と一緒にアヒージョをご馳走になっていたのを思いだしました。その時も美味しくいただいて、このグループの食のレベルは相変わらずすごいかったです。富山から遠いので、こういった星まつりでしか会えませんが、何度か来ているとどんどんつながりができてくるのも星まつりの魅力の一つでしょう。

今回はおそらくコロナ禍のことも考えてでしょうか、食べもの系のブースがあまりなかったのですが、唯一あった店の名物の椎茸の串刺が、かなりボリュームがあり、お腹を満たしてくれました。それでも椎茸だけだとさすがに食事にはならないので、コンビニであらかじめ軽食を買っておいたので、それを夕食としました。

そのうち初日の夜も更けてきて、店もほとんど閉まり、ブース入り口近くの炭火で暖を取っていました。もう23時頃だったでしょうか、その時にお話しさせて頂いた福島の方たちには驚かされました。皆さんマニアの極みみたいな方ばかりで、例えばその中の一人は昔、三鷹光器に1年ほどアルバイトをしていたとのことで、自分の持ってる赤道儀はそこで自ら組み立てたものらしいです。私が生まれる前から長いことやられている方たちばかりで、話していても新参者の私なんかは本当に足元にも及びません。福島は、この星の村もそうなのですが、全国レベルの熱心な方がたくさんいて、層の厚さがすごいです。私の地元の富山にも、熱心な方もいるかもしれませんが、少なくともつながりを持ってここまで活動できてはいないので、純粋に尊敬できました。

この炭火のまわりは暖かくて、入れ替わり立ち替わりで人が集まってきます。途中、スタッフの方から豚汁の差し入れがあり、ぜひおかわりをというので3杯も食べてしまいました。寒い中体が温まって、とても美味しかったです。この場所で、最後某ショップの店長さんと二人になり、午前2時半頃まで話し込んでいました。さすがに眠くなってきたので車に戻り、この日は車中泊で、そのまますぐに寝てしまいました。


2日目

朝起きるともう午前9時を過ぎてました。車の中から外を見ると雨がそこそこ降っています。でも台風は相当南にずれていったので、風はそこまでなさそうです。

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一応車のところに看板を見えるようにしておきましたが、雨なのでほとんど気付いてくれなかったと思います。実際私も車のところには食事と荷物置きで戻るくらいでした。やはり雨だと辛いですね。

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2日目の朝の9時過ぎのようすです。そこそこ店は開いてます。

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迷人会微動雲台を見てもらう

午前中は、ブース入り口のところに大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会の自由雲台をおいて、その場の人たちに見てもらいました。ブログを見てきてくれた人もいますし、その場の何人かの方が興味を持って触ってくれました。そのなかには昨晩炭火のところで話した方もいて、いろいろ材料や工作のことを教えて下さいました。やはり自分で機械工作まで本格的にやる方の意見はありがたいです。

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ブースなど

このまま置いておくだけだと私もこの場所から離れられないので、午後からは外山電子さんのところに微動雲台を置かせていただきました。と言っても私自身は他の場所をふらついていたので、ほぼ自由に見てもらっただけのような状態なので、もしいない時に来て頂いた方がいたら解説できなくて申し訳なかったです。

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今回一番お世話になったのが、外山電子さんと陣場写真工業さんのブースです。微動雲台を置かせてもらったのもありますが、実は陣場写真工業さんは古くからの知り合いで、今回いろいろ見せていただきました。中でも、ピリオディックモーションを測定できる装置をかなり詳しく解説してくれて、そのアイデアには驚かされました。赤道儀にのせた一眼レフカメラの動画で黒い丸を映し、赤経体を回転させその黒丸のうごきからピリオディックモーションを読み取るのですが、レンズの歪みや黒丸が動く時に変化しながら出てくる収差なども全てうまくキャンセルして、ピリオディックモーションのみを取り出します。かなり面白いアイデアをふんだんに盛り込んであり、地味なソフトですが、ソフト的にかなり高度なことをしています。赤道儀をたくさん扱うメーカーはもちろん、ユーザーも中古で手に入れた赤道儀などを気軽に、晴れの日の夜を待たずに評価できるので、かなり便利な測定システムなのかと思います。

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更にここでは、微動雲台についてもかなりのアイデアをもらいました。その中で面白かったものの一つが、GITZOのシステマティックマウントに直接取り付けができないかと言うこと。実際取り付けようとしてみたら、わずかに雲台の方の径が大きかったです。頑丈な微動雲台を考える時、頑丈な三脚にしないといみがなくなってしまうので、こう言った方向もありなのではないかというのは賛成できます。

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例えばモノタロウにオイルレスのブッシュというのがあり、グリスとか無しで滑らかに回転するそうです。あとはコストと、汎用性との天秤かと思います。

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この写真に写っている雲台も秀逸です。ピッチだけですが、引き引きネジでロック無しでも頑丈な構造になっています。

あと出店ブース関連では、アストロアーツに顔を出し、星ナビの「ネットよ今夜もありがとう」でこのブログを取り上げてもらった際に担当して頂いた方にやっと直接お会いしてお礼を言うことができました。この方、福島の時にしか星まつり会場には来ないようで、原村、胎内など毎回アストロアーツのブースに顔を出しては「今回は来てません」と言われて、結局お会いするのに2年半位かかってしまいました。

星見屋さんが面白い機材を展示ました。以前このブログでも評価したZEROの自動導入装置です。

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なんでも、傾けて赤道儀にして自動導入することできるはずとのことです。他に星見屋で面白かったのが、折りたたみタイプのピラー付きの三脚です。ガチガチでほとんど揺れなさそうでした。ピラーだと鏡筒が当たらなくていいのと、さらに足の部分を折り返してたためるのこと、足の根本に引きネジが付いていてかなり強固に足が固定できそうです。頑張って揺らしたり捻ったりしましたが、ピクリともしませんでした。

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Vixenブースはセレストロンのスターセンスエクスプローラがやはり注目を浴びていました。

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細かい買い物

この日は細かい買い物もしました。一眼レフカメラ用の水準器を2軸と3軸の2種、

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同じ店で、紫外線ライトを2本と買いました。紫外線ライトは普通は395nmなのですが、レジン用は365nmが良いとのことで、2種買っておきました。蓄光リングは機材につけておくと暗いところで見やすいとのことで、緑と青の2種類がありましたが、明る過ぎずに良いとのことで青色をにしました。

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2日目のイベント

午後は15時から抽選会がありました。番号が呼ばれると好きなものを持っていって良いという形式です。160人くらいなので、なにかしらよばれるはずです。当たったのは下なり後の方で、残念ながら大物はほとんどなく、雨でちょうど良いかと思いヤッケをいただきました。抽選が終わっても最後まだ余っていたので、欲しい人が持っていくということになり、太陽グラスをいただきました。

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下に引いてある写真は外山電子さんから帰り際にいただいたもので、アタカマでとった天の川中心、中判のGFX100で30秒1枚のjpeg撮って出し無加工だそうです。恐ろしく細かくて、これだけ引き延ばしても破綻してません。撮って出しでここまで出るとそうとう楽しいのかと思います。


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あらかた抽選が終わった後に、星見屋さんがとびこみで写真に写っている大きな箱の望遠鏡をていきょうしてくれました。じゃんけん大会になって最後の4人まで残ったのですが、残念ながらやぶれてしまいました。

午後5時からは福島出身の国立天文台の渡部潤一先生のお話がありました。福島ならではの裏話もあり、とてもおもしろかったです。子供が一番前に3人熱心に聞いていましたが、先生自身子供に聞かせられない話だとか言ってました(笑)。飛び入りで重力波の話や、NHKで昔福島で撮影し方の話もあり、かなり盛り上がった1時間だったと思います。

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講演後、この日の夜はさすがに天気は期待できなかったために、夜中に帰ることを考えて、この時点で一度山を降りて、ガソリンを入れ、食事をしてきました。ガソリンスタンドが19時までらしいですが、山を降りたすぐのセブンイレブンの向かいにあったのでたすかりました。

そして再び戻ると、何故かオークションが始まります。結局落としたのは実体顕微鏡のヘッドの千円のみでした。

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目玉でC11がかなり格安で出ていて散々迷ったのですが、MEADEの25cmとかぶるので泣く泣く諦めました。

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楽しかったー!

 これで2日目のプログラムも全て終了です。最後ぐるっと回って、挨拶できる人に「また次回の星まつりで」と挨拶をして、22時頃でしょうか、帰路につきました。今回のスターライトフェスティバルは久しぶりの星まつりということもあり、とても楽しかったです。開催を英断してくれたスタッフの皆様、お疲れ様でした。本当にありがとうございました。

帰り道、福島を抜けるあたりから星が見えてきて、新潟県に入ったくらいで全面晴れていました。あと少し東に来てくれたらもっと楽しかったはずなのですが、天気に文句を言っても仕方ありませんね。途中柏崎のあたりで眠くなったので仮眠をとり、自宅に到着したのが午前4時半頃でした。

来年はコロナも落ち着いて、普通にこういったイベントができるようになって欲しいものです。



前記事の惑星撮影の傍ら、大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会工房様の微動雲台を、微動機能の検証に引き続き、もう少し試しました。今回は揺れについてです。


どれくらい揺れるかを見てみる

前回は本来の極軸微動の機能を中心に評価しましたが、今回はどれくらい揺れるかです。前回も少し書きましたが、ポタ赤(ポータブル赤道義)はそもそも極軸合わせの微動機能が付いていないことがほとんどで、微動で合わせようとすると別途用意する必要があります。その際、なかなか強度的に満足できるものがなく、私はポタ赤での撮影では三脚の足を横に僅かにずらしたり、三脚アジャスター を用いて微動がわりとしていました。でも、もし強度的に十分で、微動がついているなら、それを使わない手はありません。

前回の検証で、迷人会工房の微動雲台は多少の引っ掛かりはあるものの精度的には十分であることがわかりました。でも、微動雲台が元で揺れを導入してしまうようでは元も子もありません。前回の検証ですでにかなり頑丈そうというのは、触っているだけでわかりました。果たしてこれを客観的に評価できるのでしょうか?以前使わなくなった手持ちの微動雲台と比較して検証してみたいと思います。


振動測定のためのセットアップ

まずはセットアップです。迷人会製の極軸用微動雲台にSWAT200を載せて、そこにFS-60Qを取り付けます。鏡筒は出来るだけ頑丈に取り付けるために、モノタロウで購入した大型の1軸クランプにアルカスイスクランプをとりつけて、そこに鏡筒の上下についているアルカスイスプレートで固定しました。

ポタ赤なので、鏡筒としてはせいぜい600mmくらいの焦点距離が最長クラスだろうということから、FS-60Qでの評価に決めました。

振動を見るための動画撮影用にASI294MC Proを取り付けていますが、ここを例えば6Dクラスの一眼レフカメラをつけたときには慣性モーメントが結構変わってくるので少し注意が必要です。

三脚はゴム脚ではなく、石突きでアスファルトに接しているため、地面にはある程度きちんと固定されているはずです。

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この状態で写真にあるようにガイド鏡を用いてSharpCapのPolar Align機能で極軸を1分角以下の精度に合わせ込みます。その後、振動測定の際にはこのガイド鏡は外しています。


ターゲットマーカー天体

この状態で、南東方向、高度50度くらいにある火星を導入し、SharpCapでカメラの映像を見ます。速い動きを見たいため、露出時間を相当短くする必要があり、かなり明るい星を見ることになります。そのため、ターゲットは最接近に近い-2等級よりも明るくなっている火星としました。

露光時間は5msとし、さらに転送レートを上げるために4倍のビニングをして、ROIで画面を1024x768にしました。ビニングがあるので実際撮影した画像の解像度は256x192となります。フレームレートは65fpsとなったため、ナイキスト周波数の30Hzちょいまでは測定できるはずです。


振動モード

実際に揺らしてみると分かるのですが、本当は真南方向にある星を入れると、鏡筒との向きと雲台部の揺れのモードの向きが一致すると思ったのですが、この方向には明るい星がなく無理で、モードの励起に少し苦労しました。とにかく、頑丈すぎて鏡筒を揺らしても全然揺れが励起しないのです。

いろいろ触って分かったことが、揺れの中で一番低いモード(一番弱いところ = 一番共振周波数が低いところ )は
  1. pitch(仰角、縦方向)の自由度
  2. それに垂直に上に乗っている機材(具体的にはSWAT本体)を真横に押して倒すようなモード
のようです。今回はこの2つのモードが一番揺れるようで、ここを測定することにしました。

これ以外のモードはこれより大きく揺れることはないと思われます。例えば、水平回転モードなどはもっと周波数が高く(もっと頑丈と言う意味)、指で押すくらいでは単独に綺麗に励起できませんでした。

それ以外では、今回使ったものではSWATに載っている機材を含む赤経体の回転軸方向、三脚のねじれやたわみモード、上下のバウンスモードなども、周波数が十分高く頑丈なため、撮影時の揺れとしてはほぼ無視できると思われます。

逆に言うと、雲台以外に弱い部分があると、そこが一番大きく揺れてしまいます。例えばSWATでなく構造的に弱いポタ赤を使う場合や、特に三脚が弱い場合です。こういった場合、今回テストしている迷人会製の自由雲台を使ったとしても、せっかく使っている意味が薄れてしまい、性能を引き出し切ることができないので注意してください。

見たいモードを揺らすのは、SWAT部分を直接指で叩くことにしました。
  1. SWATの背中の上部を叩くのが1のモード
  2. SWATを横から上の方を叩くのが2のモード
となります。これらは以下全て共通の揺らし方です。


迷人会微動雲台の実際の揺れ

実際の揺れがどのようになるかを、動画で撮影しました


1.
まずは1のSWATの背中を押したモードです。カメラの角度が鏡筒に合わせてあるので、斜めに動いているように見えますが、実際には雲台のpitch方向と同じ向きの揺れが励起されたモードになります。

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gifアニメで表示してあり、ほぼリアルタイムですが、実際の時間はオリジナルのserファイルから読み取ります。
  • UTCの13時26分35.546秒から36.322秒で10周期揺れているので、1周期0.0776秒、共振周波数は1/0.0776=12.9Hzとなります。
  • また、半減期は振幅が半分になった時刻で、35.926秒程度で0.32秒くらい。ただし、そもそも励起できている振幅があまり大きくないので、誤差も多いことに注意です。このQ値は4.53x12.9x0.32=19程度
とZEROの時と比べても、励起される振幅が小さく(これは揺れてる点から見ている点までの距離にも依存する)、減衰するのが多少速いということがわかります。


2.
続いてSWATを横から押し、pitch軸が横に倒れるような方向のモードです。

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  • UTCの13時31分03.865秒から04.503秒で10周期揺れているので、1周期0.0638秒、共振周波数は1/0.0638=15.7Hzとなり、少し共振周波数が高くなるので、後ろから押したモードよりも揺れにくいと言うことがわかります。
  • また、半減期は振幅が半分になった時刻が04.169秒程度なので、0.30秒くらい。Q値は4.53x15.7x0.30=21程度となります。


比較のための手持ちの微動雲台の揺れを見てみる

比較のために、以前SWATで撮影用に使おうとしたのですが、揺れが大きくて使わなくなってしまった微動雲台と比較をしてみます。高さを合わせるのと、鏡筒が三脚に当たらないように、こちらはハーフピラーを取り付けていますが、一番弱いところは微動雲台部なので、結果に影響はないはずです。

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構造を見てもわかりますが、片持ちで強度的には不利そうなことがわかります。

gifアニメのファイルの大きさ制限に引っかかってしまいアップロードすることができなかったので、少しトリミングしていますが、動いている部分はおなじようにみえるはずなので問題ないと思います。


1.
SWATの背中を押したときに励起されるモードです。こちらもpitch方向に調整できる方向と同じ向きのモードです。パッと見ただけでも、迷人会製の物よりもゆっくり揺れていて、揺れが持続するのが分かると思います。
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  • UTCの13時57分20.133秒から21.273秒で10周期揺れているので、1周期0.114秒、共振周波数は1/0.114=8.8Hzとなります。
  • 半減期が1.0秒程度なので、Q = 4.53x8.8x1.0=38程度。


2.
続いて、SWATの横を押すときのモードです。片持ち部分が揺れる方向になります。
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  • UTCの13時56分22.255秒から23.287秒で10周期揺れているので、1周期0.103秒、共振周波数は1/0.103=9.7Hzとなります。
  • 半減期が0.86秒程度なので、Q = 4.53x9.7x0.86=38と後ろを叩いた時と同程度。

最後、参考にですが、適当に風が吹いたようなことを仮定して、ランダムに揺らしてみます。他の弱いモードも励起され、しかもかなり持続します。撮影レベルではちょっと厳しいのがわかるかと思います。

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風などがない場合の揺れを制限するもの

テストで出てきた数値を表にまとめます。

迷人会微動雲台

共振周波数Q値
SWATの背中を叩いたとき12.9Hz19
SWATの横を叩いたとき15.7Hz21


手持ちの微動雲台

共振周波数Q値
SWATの背中を叩いたとき8.8Hz38
SWATの横を叩いたとき9.7Hz38


まず、揺れの原因が地面のみで、風などの外力がないと仮定した場合、地面振動と共振周波数とQ値から、どれくらいの揺れになるのか評価してみます。詳しいことはZEROの評価時の説明を見て下さい。

迷人会微動雲台: 
  • SWATの背中を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  = 19 \times \frac{10^{-7}}{12.9^2} = 1.1 \times 10^{-8} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
  • SWATの横を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  = 21 \times \frac{10^{-7}}{15.7^2} = 8.5 \times 10^{-9} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]


手持ちの微動雲台: 
  • SWATの背中を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  =  38 \times \frac{10^{-7}}{8.8^2} = 4.9 \times 10^{-8} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
  • SWATの横を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  =  38 \times \frac{10^{-7}}{9.7^2} = 4.0 \times 10^{-9} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
となります。

風などがないと、ここのモードの揺れがこの値くらいの揺れに落ち着くという意味です。以前評価したように、ものすごくざっくりで1マイクロメートルが星のずれ1秒角程度に相当すると考えると、風さえなければどの場合も問題になるような揺れの大きさではありません。実際には、これら励起された揺れよりも、低い周波数の地面振動自身そのものの揺れがそのまま伝わる振幅の方が大きい(低い周波数の地面振動のほうが振幅が大きいため)はずなので、(風などがない場合の)今回のモードの揺れは撮影時などの揺れを制限しているものではないと思われます。

結果としては各動画の揺れる前、もしくは励起れが収まったあとの揺れ程度の大きさになると考えられます。手持ちの微動雲台の励起がQが大きいため長く続いていますが、この励起が収まった際の動画(励起される前を見るとわかりやすいかも)を見る限り、この評価がそれほど外れているようには思えません。


風などの外力で揺らされた場合

次に風などの外力が機材を揺らす場合を評価します。ただし、地面振動から評価した時のように絶対値で評価することはかなり難しいです。風の大きさ、どのように機材に力がかかるか、鏡筒の大きさや強度などによるからです。なので、評価は相対的なもののみになります。

まず、揺れの振幅は共振周波数の2乗分の1で効いてきます。ZEROの時の評価と違って今回はQ値にも有意な違いがあります。振幅はQに1次で効くので、今回の2つの雲台の風などの外力に対する振幅の比は、手持ち微動雲台の大きい揺れに対して、迷人会微動雲台の揺れがどれくらいかで見ると
  1. SWATの背中を押したときの揺れ: (8.8Hz / 12.9Hz)^2 x (19/38) = 0.23倍
  2. SWATの横を押したときの揺れ: (9.7H / 15.7Hz)^2 x (21/38) = 0.21倍
となります。迷人会微動雲台の方が同じ外力に対し揺れの振幅が4分の1から5分の1程度となるということです。さらに、Q値は持続時間にも効いてくるので、体感としては
  1. SWATの背中を押したときの揺れ: 0.23 x (19/38) = 0.12倍
  2. SWATの横を押したときの揺れ: 0.21 x (21/38) = 0.12倍
とざっくり10分の1くらいに感じることでしょう。

さすがに振幅で5倍、持続時間も考えると10倍程度の違いというのは大きいです。以前星像の揺れで困って今回テストした手持ちの微動雲台を使わなくなったと言うのは間違った判断ではなかったと、改めて思いました。


ここでちょっと疑問が

雲台を変えることによって振る舞いが全然変わり、少なくとも後者の手持ち雲台の測定はより揺れているので、実際に手持ち微動雲台のところで揺れているものだと思われます。ここでふと疑問が沸きました。果たして迷人会製微動雲台を使った測定は、本当に微動雲台そのものが揺れていたのかどうか?ということです。構造を見てみると2つの可能性が考えられて、この揺れが
  1. 微動雲台のところで起きている
  2. それとも他のところ、例えばSWAT本体とSWATの足との接合部で揺れている
のどちらかではないかと考えられます。迷人会製微動雲台が頑丈すぎる際に2.のようなことが起きます。


自由雲台を使わない測定

切り分けのために、微動雲台なしで、ハーフピラーのみにして、同一の追試測定をすることにしました。

この際
  1. 迷人会雲台を使ったときと同様のモードが励起されるなら、迷人会雲台は十分頑丈で、このモードはSWAT本体とSWATの足との接合部での揺れが励起されていたと考えるのが妥当です。
  2. もし同一のモードが見られない、もしくはあからさまに周波数など振る舞いが変わる場合は、迷人会雲台自身が揺れていたと考えるのが妥当になってきます。
これはハーフピラーの方が迷人会雲台よりも頑丈だと言う仮定に基づいていますが、一般的に考えてハーフピラーの方がよりシンプルな構造なために複雑なモードは出にくいと考えられるので、妥当な仮定かと思われます。


ハーフピラーでの結果

さて、結果です。まず、前回同様にSWATの同じ部分を叩いて励起しようとしましたが、背中を叩いても、横側をたたいても、いずれも特定のモードは励起できませんでした。どちらを叩いても、非常に固く、揺れもすぐに減衰していきます。実際の揺れの様子を動画で見てみます。


1.
SWATの背中を叩いた場合: 前回のテストと同じくらいの力で、3回叩いています。迷人会微動雲台の時の揺れに比べても振幅が半分以下程度と、揺れにくいがわかると思います。しかも特定のモードだけが揺れているのではなく、いろんな揺れが混ざっているのが分かります。これは特定の弱い部分がないということを示していると考えられます。
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きちんとモードが立っていないので、かなりざっくりな計測ですが、5周期分くらいの揺れから15Hz程度と読み取りました。


2.
SWATの横を叩いた場合: 最初に励起されるモードが違うだけで、やはり特定のモードのみを励起できないのは1の後ろを叩いたのと同じ状況です。こちらはラフに14.5Hz程度。よく見ると、2つのモードが冷気されていて、それらは順序こそ逆ですが、1.で揺らしたときと同じ2つのモードに見えます。
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迷人会微動雲台とハーフピラーの2つのテストから言えることは、迷人会微動雲台部分をハーフピラーに変えた場合は明らかに振る舞いが違い、後者の方がより揺れにくいということです。さすがに迷人会製といえども、可動部を持つ雲台が固定構造のハーフピラーより揺れにくいということはありませんでした。というわけで、一番最初の迷人会微動雲台の時のテストがSWATの足の部分を揺らしているかもしれないというのは杞憂で、きちんと微動雲台の揺れのモードを励起できていたと思われます。

もう少しだけ評価すると、共振周波数だけ見ると迷人会雲台の共振周波数とそれほど変わりません。迷人会の場合は12.9Hzと15.8Hzと差があり、低い周波数のモードが一番揺れに効くと考えられるので、差があるとすればそこでしょうか。

ただし、そこそこ同じような力で叩いているにもかかわらず、明らかにハーフピラーの方が揺れが少ないです。これは、揺れている所から、見ている所(鏡筒及びカメラ)までの距離が短いものと考えられます。一つの可能性が、ハーフピラーをつけた状態では今度こそSWATの足のところで揺れているという推測です。2つのモードが順次励起されていることからも、この可能性が高いと思われますが、これ以上の検証は今のセットアップでは難しいです。FFTアナライザーとかあればもう少し分離できると思います。


まとめ

ウダウダやっていて、解析も色々紆余曲折したので、ものすごく長い記事になってしまいました。また、評価に長い時間がかかってしまい、待っていた迷人会様には申し訳ありませんでした。

それでも、一応最初のテストで迷人会の微動雲台の揺れをきちんと励起できていたようなので、ある程度の評価はできたと思います。ただし、先にも書いた通り、今回のテストはあくまで相対的な評価に留まり、これが実際にどれだけ揺れるにかというのを絶対値で評価するのはとても難しいです。風の強さ、鏡筒の種類にかなり依存してしまいます。同じ力で励起できる加振器などあれば、励起された揺れまで定量的に評価できるのですが、今回はそこまで至っていません。

風がない場合は、上で評価したように地面の揺れ起因のある程度のどれだけ星像が揺れるかの見積もりは可能ですが、これも一旦並進を回転に変換しているので、オーダーレベルではそこまで間違っていないと思いますが、ファクターレベルではまだ誤差も大きいかと思います。 

結論としては、結局最後は経験論になってしまいますが、迷人会工房の微動雲台は、ポタ赤レベルの頑丈さではもったいないくらいで、一般の赤道儀レベルの頑丈さが余裕であります。荷重制限も厳しいポタ赤では、大型鏡筒は無理で焦点距離がそこまで伸ばせないはずなので、よほど強い風が吹かなければ揺れが原因で星像が流れることはないと思います。これでもし星像がずれるならば、それは雲台のせいではなく、三脚など他の弱い部分を疑うべきでしょう。私としては揺れに関してはそれくらいの高い評価です。

ちょっと脱線してしまいますが、むしろ製作側のコストと手間の方を心配してしまいます。このレベルで作り続けるのは相当な努力が必要なはずで、限定品で数が限られてしまうのは容易に想像できます。迷人会工房さんの製作体制がどれくらいのものなのかほとんど把握していないので、勝手な想像でしかないのですが、無理のない範囲で続けていただければと思います。アマチュアグループの機材が売れるのはすごいことなので、そこはどうしても期待してしまいます。


昨日、Twitterで相互フォローしているハレルマンさんからのダイレクトメールがきました。なんでもSharpCapでLive Stackがうまくいっていないとのこと。
  • 一番うまくいく時で20フレームくらい、ほとんどは数フレームできるかできないか
  • カメラはZWOのASI294MCで鏡筒がVixenポルタのA80Mfで焦点距離910mm
とのことです。910mmはちょっと焦点距離が長いですが、ASI294MCならスタックする分には普通に考えて特に問題ないはずです。

最初月の画面でLive Stackをしているところの写真を送ってきてくれたので、月ではAlignmentがうまくいかないことと、そもそも月は明るいのでLive Stackする必要がないこと、仮にLive StackしたとしてもAutoStakkertとRegistaxみたいに分解能を出すことはSharpCapではできないことをDMで伝えました。するとオリオン大星雲でもLive Stackができないとのこと。これはさすがにおかしいと、何度かDMでやりとりをして、夜にZoomでつないで様子を見てみましょうかということになりました。

22時半頃、用意したZoomに接続しているとハレルマンさんが入ってきてくれました。少しだけな話すと、関西方面の大学4年生で天文部所属だとのことです。てっきり社会人か、下手したら年配の方かと思ってました。あんとんシュガーさんの時といい、最近の私の思い込みの印象と現実とのズレは壊滅的レベルです。

話していてやっと気づいたのですが、ハレルマンさん赤道儀を使っていなくて、経緯台を使っていたのです。本来A80Mfというところで私の方で気づくべきでした。そのため画面が短時間でずれていくことが一つの原因でした。これも原因の一部でしたが、まだ2次的な原因に過ぎずに、本質的には別の原因がありました。

画面を見せてもらうと、思ったより恒星の数が少ないのです。最初に月を画面に入れて見せてくれたので、ピントはそこそこあっているはずです。ASI294MCの感度から言って、もっと見えてもいいはずです。聞くとこの日は北斗七星が見える程度というので、明るい月も出ているので、3等星くらいまでみえているだけのようです。全般にゲインが低かったこと、月が明るかったことが原因なのですが、まずは、ヒストグラムで炙り出そうとしました。

とりあえず、あまり細かい解説ばかりしても最初は理解ができないと思い、まずは詳しくは話さずに私の目で見てぱっと見でおかしいと思われそうなところを片っ端から触ってもらいました。
  • まず、露光時間を400msくらいまで長くし、電視観望目的というので(ノイズはあまり気にしないとして)ゲインを最大から数ステップ下げた420くらいまで上げてもらいました。
  • ヒストグラムをいじろうとしたら、ホワイトバランスがずれているので、ヒストグラムを見ながらRとBで調整して、背景のピークの位置を揃えてもらいました。
  • ヒストグラムで、そろったピークをブラックレベルとミッドレベルの黄色い点線で挟み、炙り出してもらいました。
多少星の数は増えましたが、それでもまだ少ない気がします。
  • ここでLive Stackをオンにし「Hilight Detected Stars」オプションをオンにすると、認識されている恒星の数がZoom越しでみてわずか3つとかでした。
  • 炙り出しさえすれば星は画面上で見えているので、LiveStack時のAlignmentに必要な恒星がうまく認識されていないようです。
  • 星のサイズの最小/最大も、ノイズレベルも特におかしな値になっているわけではないので、「あ、これはやはり暗すぎるな」と思いDigital gainを4倍にしてもらうと、すぐに検出された星の数が増え、Live Stackの枚数が増えていきました。(このテクニックは覚えておくといざという時役に立ちます、)
  • でもやはりそこは経緯台。20秒から30秒ほどで画面がずれていってしまい、アラインできるだけの恒星の数が確保できなくなり、スタックできる枚数は数十枚に止まってしまいます。
でも、別に追尾付きのドブがあるとのことで、今度はそれで挑戦してみるとのこと。ドブの焦点距離が1200mmとのことなので、さらに長くなりまが、294ならセンサー面積はそこそこ広いのでまだなんとかなるでしょう。

いろいろやってもらった過程で思ったのは、こういった細かい操作が初心者には自分が思っているよりはるかにわかりにくいのではないかと改めて実感したのです。先日の牛岳の惑星撮影をKさんと一緒にやったときも同様のことを思いました。今後ブログの説明も、初心者に向けた記事はもう少し考えた方がいいかもしれません。

その後、
  • なんでホワイトバランスを取る必要があるのか
  • Live Stackのヒストグラムの炙り出しの結果が右の小さなヒストグラムに送られて、さらに微調整できるとか
  • 電視観望では露光時間が800msくらいから数秒のもう少し長い時間でやった方がいい
  • SharpCapの有料版は年間で千数百円でそこまで大した値段ではなく、有料版の方ができることが圧倒的に多いので、早めに有料版にした方がいい
などの理由やコツを伝えました。

zoom
画面がずれていくのがわかると思います。
そのずれのために35回でスタックが止まっています。
ちょっと見にくいですが、デジタルゲインを上げたために
星が黄色い枠で囲まれていて、きちんと検出できています。


ハレルマンさんはこのブログを見てくれて電視観望を始めようと思ってくれたようです。でもやはりブログだけでは細かいことはなかなか伝わらないということを実感しました。Zoomはその点とても優れています。あまり大人数だと難しいですが、少人数なら細かい操作をマンツーマンに近い形で伝えることができます。

こうやって説明することは私は全然厭わないので、Twitteでダイレクトメールをもらえれば時間のある時に付き合ったりできます。最初から全部教えて下さいというのは困りますが、いろいろやっていてどうしても困ったとかなら、Zoomを使えば細かいことも伝えられると思います。個人でやっていることなので限界はありますが、いざという時連絡してみて下さい。


久しぶりに集まりましょうと、先週計画されていた富山県天文学会の牛岳での惑星観望会。天気が悪かったため昨晩の2020年10月3日に延期でした。でもこの日も天気予報はずっと曇り。朝のうちに中止とのメールが流れましたが、どうもSCWで見るとそこまで天気は悪くなさそう。もしかしたらと思い、夕方少し昼寝しておいて目を覚ますと快晴です。メールにもやっぱり集まりましょうと流れていたので、早速荷物を詰め込んで18時半頃に出発。

機材はC8と25cmのMEADEのシュミカセとSCOPETECH、もしかしたら電視観望もするかもと思いFS-60Q一式です。赤道儀はCGEM IIと念のためAVX、それと汎用的にAZ-GTiです。さてさてどうなることやら。


牛岳二番乗り

19時過ぎに牛岳に着くと、すでにKさんが木星を導入してました。Kさんから画像処理をうまくやりたいけれどなかなかうまくいかないと相談を受けていたので、久日ぶりに会えたこの日はチャンスです。

私の方も早速準備を始めました。機材は迷ったのですがその前の日にC8で撮影したので、この日はMEADEで試すことにしました。


SCOPETECHはあいからわず大活躍

設置の途中に、親子連れがきていたので「望遠鏡見ますかー?」と声をかけ、いつものSCOPETECHを覗いてもらいました。もちろん覗くだけでなく、操作して導入もしてもらいました。4年生の女の子で、ちょうど理科で習うので星座早見板を持ってきて星座観察をしたかったみたいです。自宅では明るすぎで星座も見えないとのこと。でもこの日は満月の次の日で、流石に星座を見るのも大変でした。月と土星と木星、最後に火星と一通り見てもらいました。女の子もお父さんも導入に挑戦し、最初はうまくいかなかったようですが、途中だんだん導入できるようになり、ぐるっと回って最後に月に戻ったときには、自分で入れて自分で見ることができていました。下の女の子は聞いたらまだ年長さん。眠そうで「早く帰ろうよー」と言っていましたが、持っていたぬいぐるみにも望遠鏡を覗かせてあげていて可愛かったです。

少し後の時間にもう1組、小さな女の子と、もうお母さんの背中でぐっすり眠っているさらに小さな子の親子4人組がきてSCOPETECHを覗いていきました。お父さんが頑張って導入して、子供にかっこいいところを見せることができたようです。

やっぱりSCOPETECHクラスの長焦点の入門機はこう言ったときに大活躍です。私は星まつりで安価に手に入れたので、もう「壊してもいいので思う存分さわってください」と言っていつも触ってもらっています。これくらい言わないと、やはり光学機器は高価という印象か、なかなか自分では触ってくれないのです。


MEADEの見え味

MEADEのほうは、設置が終わり月と火星を眼視で見てみました。このMEADE、久しぶりに見ても中心像はかなりの分解能が出るのですが、中心から少しずれただけの周辺像も眼視で見ても収差があるのがわかります。そもそもこのMEADEはF6.3バージョンの明るいもの。シュミカセはF値の3乗に反比例してコマ収差が出るはずなので、周辺はあまり有利ではありません。結局この日は月と、火星を見たテストだけで終了してしまいましたが、一度気合を入れて昼間にでもフルテストをする必要がありそうです。


県天の人と

Nさんが初の電視観望をするとのことで、少し立ち会いました。カメラがASI178MCで、鏡筒がC8です。焦点距離2000mmで、惑星なのでこれくらいでいいのですが、導入が困難極まることを実際試してみて実感したようです。「星雲とかでは焦点距離200mmでやりますよ」とか話したら、ものすごく納得してました。多分知識としてはセンサ面積が小さいとか、焦点距離が短い方がいいというのはどこかで得ていたと思うのですが、やはり自分でやってみて初めて本当に納得するというようなのの典型だったようです。でもこの人は県天のメンバーで、電視観望は今回初めてとのことですが、普通にベテランの方です。それでも試して実感することが必要というのは、心に留めておくべきだと思いました。口だけの説明ではなかなか伝えることは難しく、よりわかりやすく、納得できるかつ簡潔な説明が必要だと改めて思いました。

今回は、久しぶりに皆さんに会えたことが一番の収穫でしょう。結局県天のメンバーだけでも9人集まりました。これだけ集まるのは本当に久しぶりです。K会長のFS-128で月を見せてもらいましたが、収差は私レベルでは全くわからず、あいからわずキレッキレです。FC-76使いのYさんはε130とLosmandyのG11赤道儀を購入したとのこと。かんたろうさんはC8のファーストライトでした。皆さん外に出れない間にいろいろ進んでいるみたいです。そういう私も、今回は持って行かなかったですがTSA-120でシリウスBトラペジウムがGHIくらいまで見えた話をしました。

そういえば、話の方に夢中で写真を撮るのをすっかり忘れてました。晴れたら火星を見て、曇ったら話すの繰り返しだった気がします。この日唯一の写真です。Sさんの鏡筒だったのでしょうか、スマホで月撮影です。アイピースの視野がなかり広いので、スマホも手持ちで合わせることができました。なぜか下の方でした月が入ってきませんでしたが、撮って出しで何の加工もなしで、そこそこ見えてしまいます。

IMG_0886


惑星撮影と画像処理のお手伝い

22時すぎくらいだったでしょうか、今日一番乗りできていたKさんがちょうど火星の撮影をしていました。一度手順を習いたいと言っていたので、少し一緒にやってみました。撮影に使っているのはSharpCapです。FireCaptureも一応紹介はしますが、使っているソフトを無理に変える必要もなく、撮影をするだけならSharpCapで十分なので そのまま続行です。撮影にもまだ慣れていないようでいくつか簡単なアドバイスだけしました。

今回問題だったのはRAW8で撮っていたこと、露光時間が10数msとまだ短くできそうなことと、それでもゲインが高くサチっていたことでした。RAW8とRAW16が実際結果にどこまで差があるかは私もきちんと検証したことがないので正確にはわかりませんが、ディスク容量に余裕があるなら念のためRAW16のほうがいいでしょう。露光時間は5msまで短くしました。ゲインも60(6dB)さらに下げてやっとサチらなくなりました。なので4倍くらい明るすぎたことになります。「あー、こんな暗くていいんだ」と言っていたので、画面で見るだけだとやはりわかりにくいのだなと改めて思いました。そもそもヒストグラムをこれまで見てなかったみたいなので、ヒストグラムの大切さも話しました。

この状態で火星を1分程度撮影をしました。できたファイルをKさんのPCにインストールしてあったAutoStakkert!2で早速スタックします。一応3もありますよと伝えておきます。画像処理ソフトもまだあまり試せていなかったようで、一から一通り試してみました。その後、RegistaxでWavelet変換をしようとしたのですが、Kさん「Registaxは入っていない」と言います。しかもPCのバッテリーがあと15分しか残ってません。と思ったら、この流れを忌みていた多分Oさんだったと思いますが、デスクトップにRegistax6のアイコンがあるのを発見。なるほど、インストールはしてあったのですが、まだ印象が薄かったようです。とりあえず、立ち上げてスタックしたファイルを読み込みます。Dyadicの方が効果が出やすいことを伝え、レイヤーの細かい方から順に上げていって、上げすぎでくどくならない程度に抑えることを伝えました。ちょうどこの頃は結構シーイングがよかったせいか、模様もかなりきれいに出ていました。

Kさんは2年くらい前でしょうか、新しく県天に参加したメンバーで、社長行を息子さんに譲って天文趣味を始めたとのことです。まだまだあまり経験がなく苦労しているようなのですが、とりわけPCが大変のようです。自分で立ち上げた技術会社の社長だったので、もちろん理系的な素養は十分にあると思うのですが、やはりPCは年配の方には大変だと言う話はよく聞きます。特に惑星はソフトもいくつか渡り歩きますし、プロセスも複雑です。

今の天文は眼視とかはいいのですが、撮影となるとデジカメ同様ほぼPCが必要となります。私は特に気にしないのですが、やはり初心者や年配の方のことを考えると、もう少しPCレスで楽しめる方法があってもいい気がします。やはり将来はスマホがキーデバイスになるのでしょうか。

一方私はと言うと、Kさんがうまく撮影できているを見て、せっかくだから撮影までしようとしたのですが、すぐに雲が出てきて結局諦めてしまいました。


機材の振動で議論に

その後、Kさんのところにかんたろうさんもきて、振動の検証となりました。まず、赤道儀の赤経ところで明らかに良く揺れます。まあ荷重がかかるところなので仕方ないですが、見ただけでも構造上なぜか結構細くなっているので、ここが揺れるのは当たり前かなあと思いました。一方赤緯軸はそれに比べると揺れはだいぶん少ないです。

と、ここら辺まで見ていてかんたろうさんが気づいたのですが、なぜか三脚あたりがグラグラです。まず、ハーフピラーを使っているのですが、そこの下段のネジをきちんと締めていなかったのが原因です。でも、それを締めてもまだ三脚部分が揺れます。どうも三脚の各足の根本の部分が弱くて、全体の水平回転のねじれに弱いようで、力を入れて赤道儀を水平要綱にねじると見た目で簡単にそのねじれが分かるほどです。足の根本のネジが緩んでいる可能性もありますが、やはり構造的に弱そうな印象は拭えませんでした。帰ったらとりあえずネジを締めてみるとのことです。

その後、隣に置いてあった私の重いMEADE25cmを載せてある赤道儀をねじったりしてみてもらったのですが、目で見るくらいではピクリともせず、その揺れのなさに納得していたようです。それでも撮影すると、これだけ重く焦点距離が長い鏡筒だと揺れは無視できないことも伝えました。

Kさん曰く「惑星撮影中にも、しょっちゅうカクッとずれてしまう」とのこと。確かに先ほどの撮影時も火星を中央に持ってくるときにカクンとなるようなことがありました。やはりグラグラだったので、少し触れただけでずれてしまっていたようです。


解散後もうだうだと

23時すぎでしょうか、雲も暑くなってきたので皆さん諦めて帰宅モードです。私も撮影を諦め片付けはじめたのですが、全部片付け終わって空を見るとまた晴れています。あー、惜しかったと思いましたが、この後もあと1-2回曇りと晴れを繰り返したりして最後はずーっと曇りになってしまいました。最後みんなで輪になって少し話して解散となりました。

でもKさんと、かんたろうさんと、私の3人で、Kさん差し入れのコーヒーとビーフジャーキーをつまみに、改めて椅子を出して輪になって、1時間弱でしょうか、話していました。Kさんとかんたろうさんが仕事のことでかなり盛り上がっていたのをずっと聴いていました。途中、以前京都の星もとで購入したJASONという言う今ではなもなきメーカーの実視界11度、7倍の50年くらい前の双眼鏡をみせたら、かんたろうさんがびっくりしてました。私自身あまり双眼鏡は詳しくないのですが、やはり実視界11度というのはかなりめずらしいようです。

0時半ころでしょうか、私もだんだん眠くなってきて、トイレに行って帰ってきたところくらいで解散となりました。


まとめ

今回は本当に久しぶりの星仲間の集まりです。やっとこういったこともできるようになってきたというところでしょうか。今週末は福島のスターライトフェスティバルです。こういったイベントもやっと少しづつ再開しています。楽しみですが、あまり油断せずやっていけたらと思います。

と、今回は写真もそこそこに、日記と思って記事を書きましたが、実は書きたい記事がまだ4つほどたまっています。迷人会の微動雲台の振動テストもその一つです。あせらず書いていくので、期待されている方もいらっしゃるかと思いますが、今しばらくお待ちください。
 

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