ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年03月

今回はEVOSTAR 72EDでのいくつかの失敗などの裏話です。

前回までで、EVOSTAR 72EDのフルサイズの星像とレデューサーをつけた時の星像、追加でタカハシのマルチフラットナーを試した場合の星像を実際に撮影して示しました。





ところがこの試み最初全然うまくいかなかったのです。今回のお話は、何がうまくいかなかったのか、なんでうまくいかなかった、そんな反省の記事です。


フルサイズの撮影にいたるまで

EVOSTAR 72EDを受け取ったのが1月30日、最初のテストでASI178MCで簡易星雲撮影をしたのが2月1日、





2つめの記事の公開が、2月10日になります。主にこの2つめの使用記でのコメントをもとに、フルサイズの星像に挑戦しようと思うとともに、同じくリクエストのあった72ED用の専用レデューサーを借りることができないか、シュミットさんの方に問い合わせてみました。すると、ちょうど一つサンプルでレデューサーがあるというので、送ってもらえることになりました。

やはりアクロマートと言っても2枚玉なので、そのままフルサイズで写すだけだと星像の流れが大きいことが予想されます。でもレデューサーがあれば俄然やる気が出てきます。とりあえずレデューサーが到着するまで、撮影を進めることにしました。


ASI294MC画像の片ズレ

短時間だけ晴れた2月14日(金)の夜中近く、EVOSTAR 72DとASI294MC Proを使って、いきなりフルサイズには行かずに、まずはフォーサーズ相当での画像チェックをしてみました。なぜフルサイズにいかなかったかいうと、3つくらい理由があって、
  1. アメリカンサイズのQBPをCMOSカメラに取り付けての撮影テストを同時に試したかった。
  2. いきなりフルサイズだと、大きすぎる星像の流れが予想された。
  3. 手持ちのEOS 6Dへの接続準備がまだできていなくて、前回と同じCMOSカメラをアイピース口に差し込むだけの方が簡単だった。
ということくらいです。あまりたいした理由でないですね。単にフルサイズの接続が、その時面倒だっただけとも言えます(笑)。

ASI294MCをAZ-GTiをEVOSTAR 72Dとに取り付け、AZ-ZTiに載せ経緯第モードで薔薇星雲を自動導入します。SharpCapで10秒露光をLiveStackで18枚重ねて保存し、それを1枚の画像とします。合計5枚撮影したので15分ぶんの画像があります。他にも4枚の12分ぶんの馬頭星雲と燃える木も撮影しました。

ところがどの画像を見てもなぜか片側がずれるのです。その中の1枚です。撮影したFITS画像をPixInsightでオートストレッチして、JPEGに変換してあります。四隅の切り出し画像も載せておきます。

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レデューサーなどの補正レンズをまだ使っていないので、四隅で流れるのは仕方ないのですが、明らかに左右のズレ方が違います。左側の方がズレが大きく、右側の方がズレが小さいです。他の4枚の画像も、馬頭星雲4枚も比べましたが、全て同様の傾向でした。私は当時この片ズレを鏡筒のせいだと思い込んでいました。


レデューサーでも片ズレ、しかも星像改善みられず

その後、シュミットさんからレデューサーが届いたのが2月15日、次に晴れた2月19日の平日、曇るまでの少しの間レデューサーをつけて、再度ASI294MC Proで同様の撮影をします。この時もAZ-GTiに載せて10秒露光の18枚LiveStackで180秒露光が一枚画像なのは変わりません。この日は10枚のバラ星雲を撮影しました。その中の1枚ですが、他の9枚も同様の映り具合です。

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やはりこの場合も左側の星像の伸びが大きくて、右側が小さいです。右側は前回より少しだけマシかもしれませんが、それでも全然です。問題はこの時きちんとレデューサーつけてるんですよね。レデューサーは星像をかなりマシにするはずです。もしこの結果が本当だとしたらレデューサーでの星像改善が全然なされない!?ことになります。

ここでそうとう悩みました。もしこの片ズレが鏡筒から来ているのなら、カメラ側のスケアリング調整で直る可能性もあります。一旦シュミットさんと電話で相談して、「もしスケアリング調整でも片ボケが直らないのなら一度送り返してもらって調整してみましょうか?」という提案も頂きました。この個体だけなのか、もし他のユーザーにも同様の傾向があるなら販売店として心配だという思いがありありと伝わってきました。「いずれにせよ次の晴れ間に再度確認して、それでもダメなら送り返します。」という約束をして、次の晴れ間を待つことに。結構気合の必要なテストなので、ある程度の時間安定した晴れ間が必要です。


TSA-120での片ズレ!?

その間、短い晴れ間を利用してTSA-120のテストなどをしていたのですが、ここで重要なことに気づきました。

3月3日のトラペジウム撮影の際のことです。M42をTSA-120をCGEM IIに載せてASI294MC Proで1秒露光で60回LiveStackして、それを14枚重ねました。

integration1

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20時41分から21時17分となっているので、実際にはスタック失敗のコマ落ちがたくさんあり、36分間かけて14分ぶんの画像を撮影しています。その14枚をスタックしたものをですが、ガイド撮影とか何もしていないため36分で一方向に結構な距離流れてしまい、縞ノイズが見えています。

四隅を気をつけて見てみると、右下の星像の伸びが一番ひどく、左上もまあひどい。一方、右上と左下はそれほどでもありません。このズレは当然、ガイドなしのために30分の撮影の間に赤道儀が左上から右下にかけて流れて知ってしまったために起こったものなのですが、少なくとも右下左上と右上左下でここまで違いが出るのです。

ここで「あ、EVOSTAR、片ズレとか言っていたけど、もしかしたら追尾のせいかも」と思うに至りました。EVOSTARでの撮影、鏡筒が軽いのをいいことに手を抜いてAZ-GTiで撮影していたのです。しかも1枚の画像が180秒露光に相当します。そもそもAZ-GTiの経緯台モードで撮影しているので、画面は1日で360度回転します。

例えAZ-GTiが誤差なしで完全に天体を追尾しても、3分間だと360度 x 3分 / (24時間 x 60分) = 18/24度 = 45分角と結構ズレます。これは0.013radに相当するので、画像の横幅が4144ドットとすると、4144 x 0.013 = 54ドットもずれていることになります。回転ズレはあぷらなーとさんが以前コメントしてくれたように、南天で最大、東と西で最小になりますが、この時はまだ西に沈む前。そこそこの回転速度のはずです。さらに加えてAZ-GTiの追尾誤差が入ってきます。

今回のズレの主な原因が回転だとしたら、効きは当然左右で逆方向になります。片ズレにもなるわけです。また、これだけずれていたらレデューサーの星像補正もへったくれもありません。


赤道儀を使った短時間露光撮影でやっと解決

というわけで、改めて鏡筒の片ボケ(まだこの時は片ボケも仮定はしていました)と視野の回転から来るズレを分離するために、まずは赤道儀に載せます。今回はCGEM IIを使い、極軸もSharpCapの極軸ツールを使い1分角以下のズレまで抑えました。また、露光時間も30秒に抑え、時間によるずれの効果を少なくしました。カメラも当然一気にフルサイズです。

その結果が、前回の



になるわけです。実際に撮影してみると、鏡筒の片ボケなんかは存在せず。純粋にAZ-GTiでの経緯台モードでの撮影から来る回転と、追尾の精度(光学系による星像の悪化を評価するには、露光時間が長すぎたということ)が問題だったということがわかりました。

その上でレデューサーの星像補正の効果も十分に見ることができたというわけです。これでやっと一安心できました。


反省点

今回のことは色々教訓を含んでいます。まず技術的な面。
  • 経緯台での自動追尾は長時間露光だと星像が大きく流れてしまう。
  • 誤差は一番大きなものが出てしまうので、レデューサーの微妙な補正効果などは吹っ飛んでしまう。
  • 赤道儀でも長時間の追尾ズレ(ノータッチガイド、ガイド鏡のたわみなどによるガイドのドリフト)でも星像を壊す可能性が十分にある
  • いくら性能のいい鏡筒を使っても、運用上のずれでその性能は容易に台無しになってしまう可能性がある
といったところでしょうか。普段気を付けているつもりだったのですが、今回軽い鏡筒ということもあり「AZ-GTiでいいや」と完全に油断しました。撮影時は精度が必要と、今後肝に銘じておく必要があります。

もう一つ、こちらは別の意味でもっと重要なのですが、機器をお借りしての評価なので、間違った方法で判断してしまうと、メーカーの信頼を損なう恐れがあることです。もともと勝手に始めた評価だったのですが、自分の発した言葉には必ず責任が伴ってきます。自分のことだけならまだしも、他人を巻き込んでのことなので、安易な結論を出す前に、きちんと考える必要があります。以下が、今回得た教訓と言ってもいいのかもしれませんが、
  • おかしなことがあっても、必ず別の日、別の条件などで再現性があるか試す。
  • 納得がいかなかったら、原因を色々考える。
  • 安い機材だからダメだとか、高級機だからいいとか、先入観を持たない。
以上のことは、お借りした機材だけでなく、自分だけのテストでも心がけるようにしたいと、切に思うようになりました。

実際、今回は鏡筒がおかしいと判断して送り返してしまう一歩手前まで行きました。当然送り返した先の検査では問題ないと出たでしょうし、そうなると泥沼です。このブログを読んでくれている方に間違った情報を伝えてしまいますし、このブログの内容も信頼をなくすことになるでしょう。もしかしたら機材の売り上げにも影響するかもしれません。

もちろん、所詮個人が試しているレベルのことなので、ミスもあるでしょうし、これからも勘違いもあることでしょう。完璧は難しいですが、今回のことを反省材料に、できる限り客観的に、精確に評価できるよう心がけてきたいと思います。


まとめ

正直、実際に撮影しながらレデューサーの性能が出た時、やっとほっとしました。評価終了までずいぶんと時間がかかってしまったので、サイトロンさんには申し訳なく思っています。

今回の反省記事も含めて4回(最初の簡易星雲撮影も入れたら5回 (2020/3/30 追記: ついでにおまけ記事撮影まで試したので計7回の記事になりました。) )にわたりEVOSTAR 72EDについて書いてきました。色々紆余曲折もありましたが、実際に触りながらのレポートで、EVOSTAR 72EDの魅力も十分に伝わってくれていればと思います。

EVOSTAR 72EDですが、電視観望鏡筒として、入門機の次のステップとして、初めての撮影になど、すでに持っている方も、今後実際に購入して試す方もたくさんいらっしゃるかと思います。レデューサーはじめ、いろいろ工夫することで撮影にも十分耐えうる鏡筒だと思います。値段も付属品の充実具合とともに、アポクロマートとしては十分魅力的だと思います。

今回の私のような失敗をしないように、いや例え失敗したとしてもきちんと検証して次に進み、鏡筒が持っている性能をうまく引き出すことができるようになると、さらに楽しさが増すのかと思います。今回のEVOSTAR 72EDは、そんなテストにも十分耐えうるだけの性能を持ち、かつ値段的にもいろんなテストが気軽にできる、ある意味とても使いがいのある鏡筒なのかと思います。鏡筒の性能を十二分に引き出して、もしそこで不満が出たら次のステップに進むのも、さらにまた道が広がっていくのかと思います。

EVOSTAR 72EDシリーズの記事もこれでひと段落になります。また何か面白いことがあったら記事にします。

追記: その後撮影の一例として、レデューサーにASI294MC Proをつけ、バラ星雲を撮影し画像処理まで進めてみました。


おまけ、カメラ落下事件

あ、撮影中にカメラ(EOS 6D)を落下させたこと書くのを忘れてました。これも失敗の一つです。

私の持っているM42から2インチスリーブへの変換のカメラアダプター、長さが1cm位と短いのです。しかもそのアダプターを固定する2インチスリーブの3つあるネジの一つを閉め忘れて赤道儀に鏡筒を取り付けたら、6D君が見事に外れてそのままアスファルトの地面に落下。落下はC8以来、久しぶりにやらかしました。

実はこのカメラL字アルカスイスプレートをつけてあって、後で傷を見たら、ラッキなーことにそのL字プレートのところで地面に激突したみたいです。

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動作も問題ありませんでした。L字アダプターさまさまです。アダプターの選択と、ネジの閉め忘れには十分なご注意を。

前回のEVOSTAR 72EDの記事で、フルサイズ領域での星像を、鏡筒そのものと、SkyWatcher純正の専用レデューサー、実際の星像を撮影して評価してみました。



さて今回の記事はフラットナーを試しています。

「え?フラットナー?EVOSTAR用のフラットナー
なんてありましたっけ?」

と言う方、正しいです。ありません。

今回の記事はEVOSTAR 72EDにタカハシのマルチフラットナーが使えるかどうか試してみたというテスト記事です。SkyWatcherとタカハシの両方から怒られてしまいそうな(笑)記事です。


タカハシマルチフラットナー1.04x

タカハシの「マルチフラットナー1.04x



は別売りの「マルチCAリング」と呼ばれる長さの異なるアダプターリングを取り付けることによって、タカハシ製のFC50からFS152まで対応できるかなり汎用性のあるフラットナーです。私もFS-60CB用とFC-76用のリングを持っていて、フラットナー本体は使い回しが効くので非常にコストパフォーマンスのいいフラットナーになります。

性能も申し分なく、例えば以前比較した記事の中の新旧のフラットナーのところを比較していただければわかりますが、以前の専用品よりもはるかに綺麗な点像を実現します。




今回これを汎用的なフラットナーとして、専用フラットナーのないEVOSTAR 72EDに適用してみたらどうなるかと考えてみました。前回レデューサーでは星像が改善することが分かったのですが、レデューサーなので当然焦点距離が短くなります。鏡筒そのままの焦点距離で撮影したいこともあるはずです。


EVOSTAR 72EDへの接続方法 (その1)

さて、タカハシ製マルチフラットナーのEVOSTAR 72EDへの実際の取り付けですが、少し面倒です。

マルチフラットナーの取り付けネジ径がM56x0.75というものらしいのですが、そのままだとEVOSTAR 72EDに取り付けることができません。今回はレデューサーに付属されていた、アダプターリング(下の写真)を使用することで問題を簡易的(ある意味無理矢理)に回避しました。

まずは鏡筒本体に付属の2インチスリーブを回転して取り外します。そこにレデューサー付属のアダプターリングを取り付けます。この状態でフラットナー本体を取り付けことができるのですが、実は微妙にネジ径は同じなのですが、ピッチが違うようで、途中で止まってしまい最後までねじ込むことができません。この時点ですでに怪しい取り組みになるので、気になる方は真似しないでください。でもこんなことを気にしてると何もできません。今回の記事を最後まで読むとわかりますが、もっと怪しくなります。とにかく、当然ですがメーカーのサポート外のテストになりますので、試してみたい方は決して販売店の方に問い合わせるようなことはしないでください。あくまで自己責任でお願いします。

さてこのレデューサーに付属のリングですが、結局SkyWatcherの独自規格のようで、いろんなところの情報とノギスでの実測でM54オスとM56オス(普通は雄ネジ側の径で測定するのでこちらのネジ径が正しい値となります。ただし誤差は含みます。)という微妙なネジ径の違いを変換するリングということになります。ただし、M56のピッチを測ってみると1mmのようで、タカハシ標準の0.75mmとは違うので、同じ径のようですが直接の互換性は無いようです。便利なので別売りしてくれれば良いのですが、さすがに難しいでしょう(おそらく後述のSkyWatcher製のカメラ回転リングで代用できそうです)。

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ED72レデューサーに付属の、アダプターリング

さらに写野の回転を考える場合は、回転装置などを取り付けた方が良いかと思います。レデューサー付属のアダプターリングを使うことで、タカハシの「カメラ回転装置(SKY90用) [KA21200]」を(フラットナー接続時と同様に)無理矢理にですが取り付けることはできます。取り付け場所はアダプターリングとマルチフラットナーの間になります。実際やってみるとネジ径が違うはずなのにカメラ回転装置の場合は結構すんなり最後の方までネジ込めます。その後はマルチフラットーをそのまま取り付けることができるので、この方が素直かもしれません。

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左から順に、鏡筒本体、レデューサー付属のアダプターリング、
タカハシ製カメラ回転装置、マルチフラットナー、タカハシ純正カメラアダプター


EVOSTAR 72EDへの接続方法 (その2)

もう一つのマルチフラットナーのEVOSTAR 72EDへの接続方法です。こちらは実際には試していなくて、推測になりますのでご了承ください。レデューサーを持っていなくて、変換アダプターリングがない場合の話です。EVOSTAR 72ED専用のカメラ回転リングというのがあります。



このページを見るとレデューサー付属のアダプターリングの代わりに使っているので、これがそのまま使えるかもしれません。二千円と安価ですし、カメラ回転装置も兼ねるので便利かと思います。上の(その1)で紹介したタカハシ製のカメラ回転装置を使わなくてよくなるので、かなり節約できます。

それでもタカハシのマルチフラットナーを取り付ける際のネジ径は(その1)で示した通り、ピッチが1mm
と0.75mmで微妙に違うのできちんとははまらないはずです。あくまで、自己責任で納得しながら試すことになります。繰り返しになりますが、私は自身は今回この回転リングを試していないので、アイデアのみのお話です。試す場合は人柱になることを覚悟して、自己責任でお願いいたします。

さて、ここでふと気づいたのですが、私がお借りしているのはEVOSTAR 72ED(だと思います)で、現在シュミットさんのページに載っているのがEVOSTAR 72ED IIになります。ホームページには「※初期型との外観の違いは鏡筒長がわずかに短くなっています。レンズ性能等は従来のモデルと同等です。またロゴ等も変更はありません。」と書いてあるので、外観以外にもしかしたら違いがあるのかもしれませんし、そもそも外観も新旧見比べないと分からないです。ので、イマイチ変更点が不明で、もしかしたら自分のところにあるのもすでに新型のIIなのかもしれません。(追記:  シュミットさんに電話で聞いてみました。現在手持ちのものはIIで確定。初期型のものとIIとの違いは本当に鏡筒長以外、ロゴなどからはほとんど分からないそうです。)

問題はカメラ回転リングがホームページの説明によると「※初期型EVOSTAR72EDにはお使いいただけません。」となっていることです。もし手持ちで初期型のEVOSTAR 72EDをお持ちの方は(どこがダメなのかはわかりませんが)おそらくうまくいかないと思いますので、注意してください。


マルチフラットナー以降の接続

さて、やっとマルチフラットナーまで接続できましたので、さらにその後ろの接続に行きます。

フラットナーの後ろにはタカハシが販売している、それぞれの鏡筒に適合したマルチCAリングと呼ばれるアダプターリングをつけるのですが、これが今回色々試してみるところです。今回は手持ちのマルチCAリング 60CとマルチCAリング 70を試します。

アダプターリングの後ろには、タカハシ純正の「カメラマウントDX-60W(EOS) [KA20245]」を使っています。EOS用とNikon用があるのに注意してください。私はCanonなのでEOS用、Nikonの場合は同ページで購入できますが、型番が違います。ポイントは、この部分をタカハシ純正以外の代替品に変えてしまうとバックフォーカス長が変わってしまい、きちんとした比較ができなくなるので注意が必要です。自分で何種類もマルチCAリングを試す場合は、この限りではなく、サードパーティ製でも構わないと思います。

ここまでできたらあとは、手持ちの一眼レフカメラを取り付けるだけですね。

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やっと準備が整いました。それでは実際の撮像を見てみましょう。


マルチCAリング 60C

まずはFS-60CBに使っているマルチCAリング 60Cを試します。FS-60CBが焦点距離355mmなので、今回のEVOSTAR 72EDの焦点距離420mmに一番近いからです。

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お、結構うまく補正されています。フルサイズではまだ少し流れていますが、APS-Cでは十分許容範囲でしょう。いやいや、素の鏡筒の星像から見たらすでに相当な改善で、マルチフラットナーとりあえず十分使えそうです。


マルチCAリング 76

次に、FC-76に使っているマルチCAリング 76を試します。FC-76が焦点距離600mmなので、今回のEVOSTAR 72EDの焦点距離420mmより多少長いです。

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CAリング60Cの時に比べると、同程度か若干CAリング76の方が星像の流れが大きいくらいでしょうか?

むしろ、CAリングの長さが1cm以上短くなっているのに、星像がそこまで変わらないのはなぜなのでしょう?答えは次でわかります。


マルチCAリング無し

リング長で星像が多少なりとも変わることが分かったので、今度はマルチCAリングを外してしまいました。その時の星像です。

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これはAPS-Cでさえも全然ダメですね。

マルチCAリングのラインナップを見てみると、焦点距離の長い鏡筒用のものほど、マルチCAリングの長さが短いです。ということは、リング無しだと全然補正できなくて、CA76でもまだ補正が足りない、EVOSTAR 72EDがFC-76とFS60CBの間の焦点距離なので、CA60Cだと過補正になっているのではという推測ができます。


最後の無理矢理、マルチCAリングゆるゆる撮影

CA76だと短すぎ、CA60Cだと長すぎということのようです。それではここでCA76を緩めて少しだけですが長さを伸ばしてみましょう。ネジの箇所はマルチフラットナーとCAリングの間、CAリングとカメラアダプターの間の2箇所あります。それぞれネジ山に2回転くらい引っ掛けただけなので、ガタガタしていますが、1箇所で2.5mmくらい伸ばすことができました。合計5mm程度伸びていることになります。この状態で撮影してみました。

下がその時の星像です。ただし、ガタガタしているために少しカメラ側が下がって、光軸がずれている可能性があります。

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いや、これは今までで一番良いんではないですか!!

ガタつきのために上下で少しだけ差が出ていますが、ほとんど誤差の範囲くらいです。これだけうまく補正できるのなら、マルチフラットナーでの補正を真剣に考えても良さそうです。

ここから考えると、マルチCAリング 76よりも少し長い、マルチCAリング 60 (60Cとは違うことに注意、60Cは相当長いです。) が一番適していそうだということが分かります。実際にはCA60だと1-2mm足りないかもしれないので、ガタつかないようにプラスチックシートなどでリング状のスペーサーを作って、微調整しながら少し伸ばして使うといいかもしれません。


少し考察

この記事を書いている途中で気づいたのですが、実は同様のことは天リフさんでもすでにFOT104で試されていました。



というか、天リフさんの記事のことすっかり忘れていて、最初は自分で考えたいいアイデアだと思って喜んでいました。改めて天リフさんの記事を読み直してみると、今回のテストやらなくても良かったのではというくらいのかなり詳細なレポートでした。ちょっと悔しいです。でも、よく内容を見比べてみると今回の結果に驚くほど一致しています。今回の記事もマルチフラットナーの汎用性の実証の一つくらいにはなったと思いますので、まあ、やってよかったかなと。

ところで、今回の結果を考えてみると、バックフォーカス長が相当重要だということが分かります。これはタカハシというメーカーが一眼レフカメラの接続まで純正オプションを揃えることで初めて成り立つ状況です。

では、CCDやCMOSカメラでの撮影はどうなのでしょうか?この場合は純正オプションはないので、結局自らテストしながら最適バックフォーカス長を調整していかなければいけません。これまでバックフォーカス長を気にしたことがあまりなかったので、少なくともレデューサーやフラットナーをつけるときは、これから気をつけなければということに気づかされました。

といったこともあり、前回のレデューサーの記事はカメラまでの部品をSkyWatcher推奨の純正品で揃えてバックフォーカス長をあわせた方が良いのでは、というような書き方にしています。でも実際にそこまで色々試したわけではないので、多少の許容範囲はあるでしょうし、それぞれの場合でテストしながらやっていくのが正しい道なのかと思います。


まとめ

今回は、メーカーを跨いだフォーカサーの試用テストをしてみました。タカハシ製のマルチフラットナーは汎用フラットナーとしての可能性を大きく秘めています。これは天リフさんと同じ結論かと思います。バックフォーカス長が調整できるような可変のリングが存在すれば、さらに応用範囲が広がると思います。

新しい可能性がある一方、メーカーの指定条件からは外れてしまうので、規格の違いなどもあり試行錯誤が必要となります。タカハシさんのほうがこのような使い方を喜ばない可能性も十分にあり得ます。

ユーザーとしては、こういったことを面白いと楽しめるなら、色々試してみるといいでしょう。もしくは、こういったやり方は不安だという方もいらっしゃると思いますので、やはりその場合はメーカー推奨のやり方で進めながら撮影に臨まれる方がいいかと思います。

個人的には、光学という誰でも自由に試すことのできる物理現象の範囲の話なので、手に入る設計のレンズなどを好き勝手に使いながらやるというので正しいのかと思います。うまくいかない時も当然あるので、それは自己責任でということを納得しながらやれば、いろんな応用範囲が広がっていくのかと思います。メーカー指定の範囲外でうまくいかないことを、メーカーに文句を言ったり問い合わせたりするのは、この場合筋違いです。

いや、何より楽しいのが一番で、こういった自由なテストをできること自体が天文趣味の醍醐味だと思っています。とりあえず楽しくて仕方ありません。


最後、おまけの裏話に続きます。

 

娘のNatsuも早いもので今中3。先日高校入試も終わり、来週の結果発表を待っています。コロナウィルスで休みだったこともあり、入試前からもうすっかり春休みモードで毎日だらだら過ごしているのですが、今日はめずらしく友達のMちゃんがライブに出るので聞きに行くとのこと。早めの夕食を自宅で取り、夕方くらいから出かけて行きました。

Natsuももう結構長いことギターをやっていて、最近の腕は目を見張るものがあり、自分で配信とかしているくらいです。でも友達のMちゃんは、Natsuなんかよりはるかにうまいとのこと。音楽一家らしくて、スタジオとかで練習しているくらいなので、確かに比較になりません。最近仲のいい音楽友達とのことです。

夜9時半くらいでしょうか、Mちゃんと一緒に帰ってきて、今日は我が家でお泊まりだそうです。最近すっかり星を見ることもなくなってしまったNatsuですが、ちょっと前に「友達が泊まりに来るけど、星が見たいって言ってる」とか言っていました。でも天気予報を調べたら冬場は相変わらずあまりよくなく、今日の当日になってもやはり朝から雨。予報も夜は曇りで、実際夕方になっても厚い雲で「今日見えないよ」と伝えてありました。

でも夜に帰ってくるなり「すごい晴れとる」だそうです。「えっ!?」と外に出てみると、本当に一面晴れ。いや、実際には雲が下の方には多少あるので、多分短時間だけ晴れているパターンです。「すぐ用意する、何見たい?」と聞きました。「天の川が見たい、牛岳に行きたい」とか言っていたのですが、天の川が上がってくるのが明け方近く。しかも月も上がってくるので多分見えません。何より、天気がもたないかもしれません。

「じゃあ、オリオンだけでもみよう」と言って、電視観望の準備。まだ22時前なのでオリオン大星雲は間に合います。Mちゃんはライブの格好のままで見るからに寒そう。「寒いから」といって、Mちゃん用に防寒着などを用意します。21時半頃から準備を始めて、21時45分に「準備できそうだよ」と呼びに行って、21時50分にはすでに画面にオリオン座が電視観望のPCの画面に現れていました。その間に、Natsuに椅子を出してもらって、星座ビノでMちゃんと一緒に見てもらっていました。

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実際に星座ビノでオリオン座を見ながら「三つ星はわかる?その下の縦に並んだ小さい3つの小三つ星があって、そこらへんにオリオン大星雲があるんだよ。」とか解説しながら、画面上のオリオン大星雲を見てもらいました。でも見えていたのはほんの5分ほどでしょうか、早速雲が迫ってきてしまいます。程なくしてM42は全く見えなくなってしまいました。

その後、天頂付近はまだ晴れていたので、星座ビノで見ながらしし座の形を確認。「じゃあ、しし座の三つ子銀河を見よう」と言って、導入。でも天頂付近は精度が出ず、しかもレグルスも高すぎて初期アラインメントの候補に上がってきません。仕方ないのでマニュアルで導入です。運良くなんとか銀河らしきものが引っ掛かったのですが、なぜか色が薄い。あれ?と思い、そういえばQBPが入っているのを思い出しました。今回はCMOSカメラに取り付けたアメリカンサイズのQBPなので、すぐに外すことができます。というか、これがやりたくてアメリカンサイズのQBPが欲しかったのです。実際、QBPを外すと三つ子銀河もよりはっきりと見えるようになりました。

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今回撮った電視観望の写真はこの一枚のみです。Mちゃんは星に詳しいわけではないのですが、わからないなりにも楽しそうでした。なんでも同じバンドメンバーにタイムラプスとかで星を撮っている結構ガチな子がいるそうです。その子とも星友になりたいです。

しし座まわりもほんの4ー5分で雲に覆われてきました。もう寒いのでNatsuとMちゃんは家に戻ります。私も片付け始めますが、片付け終わることにはもう一面雲に覆われてしまっていました。本当に一瞬だけのラッキーな時間でした。

「12時くらいに月が出るよ、晴れていたら呼ぼうか?」と聞いたら「いや、もういい」とのこと。多分疲れてるのですぐに寝てしまうことでしょう。中学時代の最後の楽しい思い出になると良いです。




先日テストした、シュミットさんからお借りしているEVOSTAR 72EDですが、簡易星雲撮影ということで、カメラに1/1.8インチというセンサー面積の小さいASI178MCを使い、星像が綺麗な中心像を主に使った例を示しました。




コメントの中で、APS-Cやフルサイズ面積の星像もみたいというリクエストがありました。天気もあまりチャンスがなく、トラブルなどもありなかなか進展していませんでしたが、やっとまともに検証できたので結果を示したいと思います。


一眼レフカメラの取り付け

72EDには2インチアイピース口が標準となります。基本的には他のアダプターなどは付属していないので、一眼レフカメラを取り付けために、いくつかのアダプターをあらかじめ準備しておく必要があります。

まずは、EVOSTAR 72EDの販売ページに行ってみます。



そこに色々なオプションパーツへのリンクが張ってあります。この中で必要なものを挙げていきます。

とりあえずはカメラ接続だけなら2インチの延長等を兼ねたM42への変換アダプター



が必要になります。これがあればあとはカメラメーカーごとに対応したT2マウントアダプターがあれば、手持ちの一眼レフカメラに直接接続できます。




撮影だけの場合は上記のものでいいのですが、普通は31.7mmサイズのアイピースも使うと思いますので、上記の代わりに別のM42ネジになっていないタイプの2インチ延長筒と、2インチから1.25インチの変換アダプターにしておいた方がいいかもしれません。





この場合、カメラを取り付けるにはさらに2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターが必要になります。



実はカメラを鏡筒に取り付けるだけなら、2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターだけでもいいのですが、フォーカサーの伸びに限界があるためピントが出ません。そのため実際には延長筒は必須になります。

私は今回は後者のタイプでカメラを接続しています。後者の場合もT2マウントアダプターが必要なのは、前者と同様です。

実際に接続した場合、下の写真のようになります。

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惜しむらくは、鏡筒バンドを取り付けることのできる位置が限られているので、一眼レフカメラを取り付けるとどうしても後ろが重くなりがちになってしまうことです。赤道儀などに取り付ける際はバランスに注意が必要です。


72ED用、専用レデューサー

前回の評価記事のコメントの一つに「レデューサーの性能も見たい」と言うようなコメントがありました。でも今回お借りしたのは鏡筒だけで、レデューサーは無いんですよね。

と・こ・ろ・が、前回の記事を見てシュミットさんが、な、なんと、レデューサーも評価用のサンプルがたまたまあるとのことで、貸してくれることになりました。これで俄然撮影の方もやる気になってきます。

ジャンジャカジャーン!とうとう専用レデューサー到着でーす。

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「焦点距離を0.85倍に縮小し(焦点距離357mm 口径比4.9)、視野周辺の星像を改善する」とのことなので期待大です。定価は40,975円(税込)ですが、今ホームページを見ると20%オフになっていて税込 32,780円になっていました。鏡筒の値段が税込 47,300円なので、決して安いものではありませんが、価値があるかどうかは後の実際の画像を見て判断してみてください。


専用レデューサーの実際の取り付け

レデューサーの取り付けは、中にマニュアルが入っているので迷うことはないかと思います。ただ、日本語になっていないので少しわかりにくいかもしれません。簡単にですがここで解説しておきます。

まず、付属の2インチスリーブを回して取り外し、代わりにレデューサーに付属のアダプターリングを取り付けます。レデューサー本体の前後のキャップを回して外し、そのアダプターリングに直接取り付けるだけです。

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(お詫び: 初出記事にレデューサーのネジ径に間違いがありました。レデューサーのカメラ側の接続ネジはM48径が正しいです。ご迷惑をおかけしました。)

次にカメラ用アダプターの接続ですが、ここで問題が発生しました。レデューサーのカメラ側のネジがM48ではないようで、普通のT2アダプターだとM42が標準のようでねじ込むことができません。

ホームページ
にはきちんとM48と書いてあります。しかもよく見ると「同社」専用アダプターを使って下さいと書いています。

EOS用、NIKON用があるようです。





さらに専用の回転装置もあるようです。



回転装置は鏡筒とレデューサーの間に挟むものなので、レデューサーとカメラ間の距離はカメラアダプターのみで決まるようです。

さて、レデューサーについているカメラ側のネジを実測するとM53のやはりM48のようです。私の場合はたまたま持っていたタカハシのカメラマウントDX-S EOS:KA01250がM53の一段下がった内側についているネジがM48だったので、接続だけはできました。

下の写真の左がレデューサー、右側のアダプターが一般的なT2アダプターでM42(自宅にあるのは3つともM42でした)、真ん中がタカハシのM53ので外側がM53、内側にM48が切ってあります。径の違いが写真でもわかるかと思います。カメラ接続アダプターを購入するときはT2(M42)でなく、間違えずにM48のものを選んでください。バックフォーカスも考えると、上記の専用品を買うのが良いのかもしれません(すみません、今回は検証できていません)。


IMG_9738


今回このタカハシのM53のアダプターの内側のM48を使って固定することで撮影しましたが、専用品と違ってカメラセンサーまでの距離が変わりますし、ねじ込みも数回転しかねじ山が引っかからずに少し不安だったので、あり合わせのものを使わずに、専用品を購入した方がいいでしょう。

さて、とりあえず撮影の準備ができました!実際に撮影して星像を見てみましょう。


撮影環境

今回はセットアップしたEVOSTAR 72EDを手持ちの赤道儀CGEM IIに鏡筒を載せて撮影しています。
  • 露光時間30秒でM42付近を撮影しています。
  • テスト撮影で星像を見るだけなので、1ショットの30秒短時間撮影の撮って出しとしています。
  • スタックなどの画像処理は一切していません。
  • QBPなどのフィルター類も入れていません。
  • カメラはEOS 6D。天体用に赤外線フィルターを外したものです。

赤道儀への取り付けですが、先に書いた通り、前後バランスはやはりカメラがついているせいもあり、後ろ側が重いです。赤道儀に取り付ける際、できるだけ前の方に取り付けるようにします。


フルサイズ星像

撮影結果です。まずは鏡筒単体です。露光時間30秒は全部共通、ここでのISOは3200です。JPEGの撮って出し画像になります。

IMG_5427

やはり、アポクロマート鏡筒と言っても2枚玉の限界、さすがに四隅の星像は大きく歪んでしまっています。さらに気になるのが周辺減光です。撮って出しなのでなんの加工もしていません。思った周りが暗くなるようです。

四隅を拡大して見てみます。300ピクセル四方を切り出しています。最周辺の8マスがフルサイズ換算、中の周囲8マスがAPS-C相当になります。

IMG_5427_cut

中心像はいいのですが、やはり素のままの鏡筒ではフルサイズでもAPS-Cでも星像の流れは大きいです。


専用レデューサーでの星像

次に、専用レデューサーでの星像です。0.72倍で明るくなるので、ISOを1600に落としてあります。あとは露光時間30秒も含めて全て同じ条件です。あ、回転角は取り付け時にサボって合わせなかったために(合わせるためにはイモネジを緩めて調整する必要があります)適当です。こんなことを回避するためにも専用回転装置はあったほうがいいのかと思います。

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レデューサーのおかげで鏡筒単体に比べて、圧倒的に星像が改善されています。あと、特筆すべきが周辺減光の改善です。普通は周辺減光厳しくなるのかと思いましたが、JPEG撮って出しで特に何もしていないので、実際に改善されているものと思われます。

四隅も拡大して見てみます。

IMG_5429_cut

相当いいです。フルサイズだと、よく見るとまだ少し歪んでいるところもありますが、APS-Cだとほぼ点像になっています。しかも今回使ったカメラ接続アダプターが専用のものではないので、レデューサーとカメラセンサー間の距離がメーカー推奨値と違うため、最適化されたものとはまだ違う可能性があることも考慮に入れておく必要があります。それでも十分な星像です。

手持ちのものに例えるなら、フルサイズだとFS-60CBにレデューサーをつけたものとそう変わりはないくらいでしょうか。この値段でこれだけの星像を得られるのは、ある意味驚きです。撮影にも余裕で耐えることのできる十分な性能だと思います。


まとめ

今回の記事で、フルサイズまでの星像を見てみました。素のままでは2枚玉の限界もあり、四隅の星像は乱されてしまいますが、レデューサーをつけることで相当改善することがわかりました。APS-Cサイズならほぼ点像、フルサイズでも十分許容範囲の星像です。

初めてのアポクロマートとしては相当魅力的な値段がつけられているEVOSTAR 72ED。前回の記事で電視観望用として最適ではと書きましたが、レデューサーを取り付ければ撮影用鏡筒としても十分な性能を発揮しそうです。


EVOSTAR 72ED関連の記事、まだ続きます。あと2つくらいネタがあります。乞うご期待。

2020/3/15 追記: 次の記事でレデューサーに引き続き、フラットナー?を試しています。




トラペジウムでさらに楽しんでいます。

何回か前の記事でトラペジウムのE星、F星が見えたことを書きました。 



その後、気を良くしてシリウスBに挑戦したのですが、



シンチレーションが良かったせいか、シリウスBもあっさり見えたので、同じ日にトラペジウムを今一度撮影してみました。

もう少し見えるのでは?

シリウス撮影終了後、バローを試すかどうか一旦悩んだのですが、どうせバローを試すならトラペジウムで同じ条件にしてから試そうと考えたのが、トラペジウムに移ったそもそもの動機です。

そもそもこの日はシンチレーションが良かったので、前回トラペジウムを見た時よりももう少し見えるはず。前回のE星、F星はある意味ラッキーイメージングに近いもので、動画で撮影し、揺れている映像の中からいい画像を一枚抜き出したものになります。シンチレーションがいい場合は、いいところだけを選ぶ必要もなくスタックとかもできるはずで、ノイズを劇的に減らすことができるはずです。

鏡筒は同じくTSA-120、カメラはASI294MC Proを常温(冬場なので8℃程度になっていた)です。いつものようにSharpCapで撮影し、露光時間は前回一番よく見えた1秒、ゲインは高めの285です。ゲインを高くした理由ですが、この日は月が近くにあり、背景の星雲の様子もあわよくば一緒写ればと思い、アメリカンサイズのQBPをカメラ手前に入れたからです。全体的には少し暗くなるのでその分ゲインをあげてあります。ただ、QBPは恒星からの明かりも暗くするはずなので、トラペジウムをより細かく見ると言う目的で得策だったかどうかは不明です。

画面で見たものをとりあえず一枚見てみます。これはLiveStack上で炙り出した画面をそのままPNGで保存して、Photoshopで少し炙り出し、拡大してトラペジウム周りを切り取った画像です。

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前回と同じくE星とF星は見えているのですが、さらに矢印の先に恒星らしきものが見えている気がします。位置的にはG星のようです。これが見えたのが今回の記事の始まりです。


シンチレーションが悪くなっていく

なんか見えそうなことは分かったので、パラメーターを詰めていきます。いろいろ探った結果、撮影はLiveStackを使い、1秒露光を60枚重ねて、それを1枚の画像とすることにしました。ダークフレームはSharpCapのダーク撮影機能で64枚撮影したものを使っていて、撮影中にリアルタイムで補正してあります。ガイドは無しなので、星像の流れは極軸合わせの精度のみで決まってしまいますが、1秒の短時間露光の重ね合わせなので、それほど問題ないはずです。結局14枚の合計14分の画像を撮影しました。

ところがこの方針、あまり良くなかったようです。14枚をPixInsight (PI)でスタックしたのですが、いくつかの落とし穴にハマってしまいました。

1. まずはトラペジウム周りにミミズのはったような跡が残ってしまったこと。

integration1_HT_cut

これはPI上でCosmeticCorrection (CC)をしたことによる弊害でした。画面全体を見ると目立たないのでわからないですが、一部を強拡大してみると明らかに偽の跡が残るのがわかりました。探っていくと、CCを欠けた直後から、一枚一枚にミミズが走っていました。これまでCosmeticCorrectionを気にせず使っていましたが、闇雲に補正するのではなく、今後注意して使用したいと思います。

2. 次の問題が、スタックです。スタック後の画像のトラペジウム回りを見ても、どう炙り出しても解像度が上がってこないのです。

integration1_cut

これは少し悩みました。少なくともこれまでの経験ではスタックすることではるかに暗い星まで見えてくるはずです。

でも「あ、そういえばこの後シリウスに戻ったときにシンチレーションがボロボロだった」と思い出し、改めて画像を一枚一枚見てみると、時間が経つにつれ分解能が悪くなっていることがわかりました。かなり暗い状態で撮っているので、LiveStackでもドロップしている画像が結構あって、60秒分の露光を一枚撮るのに実際3分くらいかかっていることが原因でした。結局まともそうに見える最初の4枚だけを使い、スタックすることにしました。

それでもLiveStackを使わずに、枚数は多くなってしまいますが、個別に画像を残しておいた方がさらにラッキーイメージング的に選別できるのでよかったのかもしれません。これは次の課題です。

あと、今回結局お借りしたPowerMATEは使いませんでしたが、やはりCMOSカメラのピクセル解像度で制限されつつあるので、使っておいた方が良かったのかもしれません。でももし使っていたら、設置やピント出しなどで時間を食ってしまい、いいシンチレーションを逃していた可能性が高いので、まあとりあえずは結果オーライとして、こちらも次回以降の課題です。


今回の記事のテーマとは違うので蛇足になりますが、14枚全部スタックした画像を一応出しておきます。

integration1
縞ノイズ、四隅の星像など課題も。

ガイド無しということもありものの見事に1方向に流れてしまっていて、縞ノイズがひどいです。さらに、フラットナーとかつけずに撮影しているので、さすがにTSA-120といえども四隅は星像が崩れてしまっています。フラットナーの評価も次回の課題にします。

それでも向きを揃えて、DeNoiseとかかけるとそこそこ見えてしまいます。

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フラット補正を何もしていないので、炙り出しは控えています。それでもHDRとかマスクとか全く無してここまでトラペジウム(E、F星は拡大するときちんとわかります)が出るので、今後もう少し煮詰めて完成度を高めていきたいと思います。


トラペジウムのG、H、I星

ちょっと寄り道に逸れてしまいましたが元に戻って、先に4枚だけスタックした画像をPixInsightのMutiscaleLineaTransformでシャープ化しPhotoshopでもう少し見やすくしたのが下の画像です。

integration_cut

E星、F星に加え、さらに星が炙り出されています。わかりやすいように矢印を入れてみました。

integration_cut_arrows

G、H、I星までなんとか見えていると言っていいでしょうか。H星は実際にはさらにH1とH2に分離しているはずで、画面を見ると確かに横に伸びているような気もしますが、さすがに分離している様子までははっきりとはわかりませんでした。

また、H星のすぐ左にも恒星がありますが、最初フェイクかとも思ったのですがハッブルやMUSEの画像を見ると、確かに存在するようです。





G、H、I星の他に写っている恒星もまだあり、ハッブルの画像と比べてどこまで写っているかとか比べていると、時間が経つのを忘れてしまいます。たかだか12cmの口径でここまで迫ることができれば、もう十分満足です。


まとめ

そもそもG星、H星まで述べているページや、実際にG星、H星が写っている画像があまりなく、I星に至ってはMUSEなどの研究用を除いてはアマチュアでは画像としては1例しか見つけることができませんでした。なので今回のものがどこまで正しいのかは良くわかりません。また、星像がくっきりではないので、これで写っていると言っていいのかどうかも不明です。ですが、自分のTSA-120で撮れた解像度としては明らかに前回の撮影を上回っています。

今回のがシンチレーションが良かった故の奇跡なのか、またこのレベルのものを再び撮影することができるのか。PowerMATEを試したいこともあるので、今しばらくトラペジウムを楽しめそうです。

これまでTSA-120を4回使ったことになりますが、なんとか性能を引き出せつつあるようです。妻に「この間の高かった望遠鏡、やっぱり無理してでも買ってよかった」と報告したら「よかったねぇ」と言ってもらえました。やっと納得してくれたようです。


前々回の記事でトラペジウムのE星、F星が見えたことを書きました。



その後のコメントと、Twitter上で、シリウスBの話で盛り上がりました。


TSA-120でシリウスBを見ることは可能か?


その中で、多分すばる関連の方だと思いますが、沖田さんという方が口径とシーイングとシリウスBの関係をグラフ化してくれました。



この計算によると12cmでもシーイングによっては十分に見えるようです。Lambdaさんによると、反射だと20cmギリギリで、計算結果も感覚とあっているとのこと。コントラストの良い屈折ならばもう少しいけるはずではないかとのことです。

そんなこともあり、できればTSA-120でシリウスBを見てみたいと思い挑戦してみることにしました。


3月2日、シリウスB初挑戦

さて、一昨晩のことです。21時過ぎでしょうか、雲もありましたが、一部で星が見えているので早速TSA-120のセットアップ。前回の経験から、極軸は出来る限り正確に合わせておいた方が導入も正確だし、ずれていかないので落ち着いてみることができるため、SharpCapで極軸を1分角程度の範囲には合わせておきます。

まずはオリオン座のトラペジウムを導入し、前々回の記事の再現です。カメラは分解能的にまだ余裕はありそうなので、ASI178MCからASI294MC Proに変更しました。294の方が感度がいいので暗い星が見えるだろうことと、センサー面積が広く広角で撮ることができるので、M42の全体像と一緒に撮影とかできるかと思ったからです。

とりあえずカメラの映像を見てみると、まあ、揺れていますがE星はPCの画面上でも確認できます。F星は見えるような見えないような。ラッキーイメージ的にたまに見える時があるので、以前の状態をある程度再現することができていると判断。そのままシリウスに向けます。

ところが画面上でいくら露光時間やゲインを変えようが、ヒストグラムで炙り出そうが、伴星があるようにはかけらも見えません。埒があかないので、その後アイピースに変えてみました。アイピースは3.5mmまで試したので、約250倍と倍率程にはそれほど悪くないはずです。そもそもディフラクションリングがほとんど見えません。シリウス自身もピンピンチカチカ弾け飛んでいるように見えます。

前回のトラペジウムの時に、セレストロンの3倍バローを使ったら収差のせいで逆に見えにくくなったと書いたのですが、Twitter上で宮路泉さんが「それなら」と貸してくれたTeleVueのPowerMATEの4倍をダメ元で使ってみることに。TeleVeu製は初めてで、これまでこんな高級機使ったことありません。このPowerMATEは位置出しが大変で、結局2インチの延長筒を3つ鏡筒側に取り付けて、その先にPowerMATEを取り付けることでやっと焦点を出すことができました。

延長筒3つとPowerMATEで結構な長さと重さですが、さすが2インチ。各固定もしっかりしているのでほとんどブレることはありません。目で見ている限り収差は分かりませんが、倍率を上げているので多少暗くなることもあり、結局シリウスBが見えることはありませんでした。

本当はカメラも試したかったのですが、23時頃には雲がかなり広がってきてしまい、結局この日は諦めることに。シリウスB結構難敵です。


見えなかった原因は?

その後、少し計算してみました。TSA-120にASI294MCを取り付けたときのCMOSセンサーの1素子のピッチが0.96秒角と判明。画面上でざっくり1ドットが1秒ということになります。シリウスの伴星の離角が2020年頃は11秒くらいとのこと。ということは、画面で見えているシリウスの中心から11ドット離れたくらいのところにシリウスBがあることになります。撮影した画像を見てみると贔屓目に見ても中心から10ドットくらいまではシリウスの明るさで完全に支配されているような状態。ちなみにシリウスAは-1.09等級、シリウスBは8.44等級。さすがに10等近く差がある伴星を見るのは、今の状態では厳しでしょう。

やはり、シンチレーションがひどいようです。目で見てもチカチカゆらゆらしているので、この状態では程遠いです。やはり口径の大きいのが必要なのでしょうか?


3月3日、ついに!

次の日の19時過ぎ、子供を迎えにいかなければならなかったのですが、外を見たら快晴。星の瞬きもパッと見、ほとんどありません。これはチャンスと思い、子供の迎えを「ごめん!」と言って妻に頼んで、早速TSA-120をセットアップです。極軸も同じようにきちんと取ります。連夜同じことをすると、前のセットアップが残っているので楽なもんです。極軸合わせも、ものの5分とかからず。

今日のポイントは、下の写真のように、むかーし、最初に行った原村の星まつりで買った2インチのフリッパーミラーを入れたこと。

IMG_9634

そもそも延長筒を一つつけて、フォーカサーを相当伸ばしたところでピントが出ているので、多少の物をつないでも全然焦点内に入りそうです。鏡筒からの長さが必要なPowerMATEもこれで多少使いやすくなるはずです。これまでほとんどこのフリッパーミラー使っていなかったのですが、やはりアイピースとカメラの切り替えが楽ですごく便利です。惑星撮影にでも使えば良かったですが、そもそも多分アイピースをほとんど使ってこなかったので、フリッパーミラーの必要性も感じてこなかったのだと思います。

リゲルで初期アラインメントを終え、とりあえずはリゲルBを確認。一番倍率の高い3.5mmで見ますが、こちらはファーストライトで見た通り、余裕で見ることができました。次にシリウスを導入して、まずはやはり基本のアイピースでの観察。愛機CGEM IIの導入精度もまあまあで、西の空のリゲルから東の空のシリウスに赤道儀が反転しましたが、それでも3.5mmで視野内に入るくらいの一発導入です。

その途中ですでに分かったのが「あれ?今日はディフラクションリングがはっきり見えるぞ!」ということ。そもそもピントを合わせていく最中に、何重ものリングが小さくなっていく様子がはっきり見えます。これまでこんなことはありませんでした。ピントを合わせ切ると、随分とシリウスが小さい印象です。

しばらく見ていると、多分2、30秒でしょうか、

明らかに小さな星があります!シリウスBです。
しかも一発で確証が持てるくらいはっきり見えます。

「え?こんなにあっさり見えていいの?」というような状態です。何度見直しても同じ位置にいます。これはさすがに見間違いのレベルではありません。


シリウスBを撮影してみる

次にCMOSカメラで撮影を試みます。カメラは昨日と同じASI294MC Proですが、冷却はしていないです。温度を見たら8℃くらいだったので、冬場のこともありそれほど熱くはなっていないようです。

SharpCap上の設定は、最初は露光時間もゲインも適当でしたが、それでもすぐにシリウスBらしきものが見え始めました。結局一番良かった設定が、露光時間100ミリ秒、ゲイン140とかでした。その時の画像です。ROIで640x480ピクセルに制限して、ヒストグラムで炙り出して、画面に見えたものをそのまま画像に落としています。一枚画像で、スタックとかもしていません。

Capture_00005 19_57_55_WithDisplayStretch

ちょっと分かりにくいので、シリウス周りをトリミングして、画像を拡大してみます。

Capture_00005 19_57_55_cut

下の方にはっきりと写っています。


シリウスBの離角

でも上の画像、拡大してサイズ変更した時に補完されてしまって滑らかになっているので、ピクセルのドットが消えてしまっています。なので、拡大前の画像も載せておきます。

Capture_00005 19_57_55_cut


ちっちゃいですが、この画像を今見ているPC上で拡大してみてください。写っているピクセルの数を数えることができます。(と思ったけどダメでした。ブログにアップする時点でドット間が補完されてしまうようです。)オリジナルの画像で実際に数えてみるとシリウスAの中心からちょうど11ドット目にシリウスBが写っています。最初の方に書いた通り、1ドットが1秒角なので、やはりちょうど11秒角くらい離れたところにいることがわかります。これはシリウスBであることの確実な証拠の一つですね。

追記: PC画面で拡大した画像の画面をiPhoneで撮影してみました。PC画面の直接撮影なので少し色が変になってしまっていてシリウスBが緑色に見えてしまっています。そででもこれでドットの数を数えることができると思います。

IMG_9640



その後

拡大してみてみると、シリウスBが写っているのが1ピクセル少々なので、本当はここでPowerMATEを試して解像度を稼ぐべきだったのですが結局できませんでした。

実は見ている間に、時間と共にシンチレーションが悪くなってきたのか、多分10分くらいの単位でしょうか、明らかに見え味が落ち始めました。そのせいもあって、その後確認のために、もう一度トラペジウムに戻って色々試したのですが、これは次回の記事で書くことにします。なのでお借りしたPowerMATE、結局まだ試すことができていません。宮路泉さん、今しばらくお待ちください。手持ちのバローと合わせて比較してみたいと思っています。

ちなみに、トラペジウムから帰ってきて今一度シリウスBを見てみたのですが、もう揺れ揺れで全くみることができなくなっていました。どうやら冬場の一瞬の奇跡の時間だったのかもしれません。


まとめ

とにかく、シリウスBをやっと初めてこの目で見ることができました!いやあ、うれしかったです。

普通は数十cmの口径の鏡筒で見るのがほとんどで、本当に12cmという小口径で見えるのかと疑問で、Twitterで教えてもらったVixenの10cmで見ることができたという情報が頼りでした。その画像を見るとディフラクションリングが余裕で見えているので、やはりシンチレーションに依存するのかと予測はしていましたが、実際に試してみると本当にその通りでした。しかも時間とともにシンチレーションが悪化していく様子も体感することができ、こんなに状況は早く変わるんだという感想です。冬で環境が悪いはずでしたが、本当にわずかの貴重な揺れの少ない時間だったようです。

TSA-120の性能も改めて信頼できると言うことがよくわかりました。コントラスト良く見えるのも屈折ならではなのかと思います。トラペジウムの時にも同じことを言いましたが、本当にこの鏡筒手に入れて良かったです。

さて、ここから少しずつTSA-120と使った撮影に入っていこうと思います。乞うご期待。

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