ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年02月


10cm PSTでの太陽撮影時の問題点

太陽のHα撮影はPSTを使っています。PSTは太陽望遠鏡の中でも入門用ということもあり、口径4cm程度です。分解能の観点からいくと口径で制限されていることはわかっているので、PSTに10cmアクロマートを無理やり取り付けた魔改造機で観測を続けてきました。

PSTの中に入っている波長選別器の働きをする2枚合わせ鏡のエタロンは、入射光に平行光を要求するために、直前においたレンズ系で平行光を作り出しています。このレンズ系はF10の光学系を要求するために、元々の口径4cmの鏡筒は焦点距離400mmでの設計。口径10cmのアクロマートも焦点距離はF10を保つために1000mmのものを選んでいます。焦点距離が長くなると、より拡大して見えるわけですが、焦点距離1000mmは太陽の全体像を見るのにもうギリギリです。ASI294MCを使っていてもセンサーいっぱいに太陽像が広がります。

根本的な問題は、センサーに来るまでにすでにサイズがギリギリいっぱいになっていて、少し光軸がずれるだけで太陽像が欠けてしまうところです。このサイズを制限しているのが、BF(ブロッキングフィルター)になります。安価なPSTには一辺わずか5mm程度のBFが使われています。実際にはこんな感じです。

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このBFのサイズを大きくすればいろいろ解決するのですが、このBFがとにかく高いのです。単体で購入するとざっくり1cm10万円が相場で、ちょっとサイズを大きくするだけで平気で数十万円とかいったりします。太陽は本気でやるとものすごい金食い虫で、私のような低予算組にはなかなか手が出ないのが現実です。

何かいい方法はないかと考えていた時に、半年くらい前、国際光器さんからバーダープラネタリウム製のの3.5nmのHαフィルターが販売されるとの情報がありました。「3.5nm? 結構線幅狭いな!」と思い、その時にパッと浮かんだアイデアが「もしかして3.5nmのHαフィルター、安価なBFの代わりにならないかな?」というものでした。


太陽Hα望遠鏡の仕組み

ここでまず、太陽Hα望遠鏡の仕組みを理解しなくてはいけません。PSTの場合、太陽側からアイピースに行くに向かって
  1. 対物レンズ
  2. 平行光を作るレンズ
  3. ファブリペローエタロン
  4. BF(ブロッキングフィルター)
  5. ERF (Energy Rejection Filter)
などで構成されています。PSTを以前分解したことがあるので、この記事を見ると中身がよくわかるかと思います。



この中で一番重要なのはファブリペローエタロン(太陽でHαフィルターと言ったら普通これを指す、以下エタロンとか呼びます)です。光彩面の模様やプロミネンスなどHα線をできるだけ単一波長で鋭くみるために必要です。PSTに入っているエタロンは1Å (オングストローム、0.1nm) の超狭帯域幅の波長を通すためのフィルターとのことです。このエタロンがあるから、一般的に太陽望遠鏡はおそろしく高価になります。エタロンの原理に関しては過去記事をご参照ください。

でもこのフィルターには決定的な欠点があります。Hαの656.3nmだけ0.1nm幅で通してくれればいいのですが、その波長幅を周期的に他の波長に対していくつも通してしまうのです。なのでコーム(櫛形)フィルターなどと呼ばれたりもしています。実際、エタロンに光を通してみても暗いわけではなく、様々な周期的な波長の光が通ってきているために、意外に明るかったりします。

でも太陽観測のためにはHα線だけを見たいので、Hα以外の波長をブロックする必要があります。そこで登場するのがBF(ブロッキングフィルター)になります。Hα周りに、エタロンよりももう少し広い波長幅で透過するようなフィルターで、余分な波長をカットしてくれます。

さらにさらに、実はBFもHαのみを通すのではなく、もっと短い波長、もっと長い波長を素通ししてしまいます。なので、その素通しを防ぐためにもっと広い範囲でHαのみを通し、さらに短い波長と長い波長は全てカットするフルターを入れる必要があります。その役割を果たすのが最後のERFです。

このように太陽望遠鏡は3段階のフィルターで構成されているというわけです。エタロンと、BFと、ERFの3つですが、順序はそれほど重要ではありません。例えば初期のころのPSTは、対物レンズにERF用のコーティングをしていました。これはコーティングの劣化で対物レンズごとダメになるので、そのうちにアイピース側に置く小さなERFに置き換えられました。


エタロンの透過波長の間隔

さて、エタロンが周期的に波長を透過すると言いましたが、その周期はどれくらいでしょうか?これはFabry-Perto etalonの2枚の鏡間の距離のみで決まるような、FSR(Free Spectral Range)という量で表され、以前計算しています。繰り返しになりますが式で表すと、以下のようになります。

Δλ=λ22nlcosθ

  • λ: 中心波長、今回の場合6563Å=656.3nm。
  • n: キャビティー中の媒質の屈折率、今回の場合空気なので1でいいでしょう。
  • l: 2枚の間の鏡の距離、PSTの場合0.1mm以下程度とのこと。
  • θ: 光の入射角、PSTの場合ここを回転つまみで調整している。動かせる幅はPSTでは0.5度程度とのこと。今回は初期状態として0としておきます。
これらの値を入れていくと、FSRは鏡の距離だけで決まるような量になり、

Δλ=λ22×1×l×cos0=λ22l

=656.3[nm]22×0.1[mm]=2.15[nm]

のように、PSTの場合 Δλ = 2nm ( = 20Å) か、(鏡間の距離が0.1mmより狭いということなので)2nmよりもう少し長い程度になります。

要するに、Hα線の656.3nm左右に2nm空けて、654.3nmと658.3nmも、さらに外側の波長も2nmおきに通してしまうということです。


ブロッキングフィルターの波長透過幅

では、BFの透過波長幅はどれくらいでしょうか?PSTのものではないですが、ここに同じCORONADOのBF15の透過率のグラフがあります。このグラフによるとFWHM(Full width Half Maximu: 半値全幅、最大値の半分の値になるところの両側の幅という意味) は縦軸最大の66%の半分の値の33%くらいのところの横軸の幅を見て、まあだいたい0.75nm程度ですね。エタロンの線幅の7倍くらいでHα線をとおし、左右2nm離れた波長は十分にカットできる性能を持っていると言うことが分かります。

ちなみに2nm離れたところでどれくらい光を通すかと言うと、左右ともにグラフの範囲外なのではっきりとした値はわかりませんが、上の658.3nmは無視できるくらい小さく、一方下の654.3nmは数%は透過してしまうことが推測できます。


3.5nm HαフィルターはBFとして使えるか? 

さて、これで求めたい条件が揃いました。これでやっと本題の3.5nmのHαフィルターはBFとして使えるかどうか?に答えが出せます。

単純に言えば2nmかそれより長い長さおきに、0.1nmのピークがあるわけです。今回のHαフィルターの中心周波数が656.3nmで、そこを中心に3.5nmだけの広がりを持っていたら、左右の2nm離れたところの0.1nmの広がりを持つ波長はカットされるはずです。

おお、やった!これなら安価にBFの代わりに使うことができる!と思ったわけです。


補足:
ただし、現実的には3.5nmの幅の定義があまりはっきりしてなくて、Baaderのページを見るとどうもFWHMらしいことがわかります。仮に3.5nmの幅がFWHMで定義されていて、かつその透過曲線をガウス分布と仮定すると、左右2nmのところではまだ40.5%程度の光を透過してしまいます。左右3nmのところまで広がっていれば13%透過まで絞れます。

やはりまだ隣の波長の光が多少漏れそうなので、もう少し透過幅の小さいフィルターがあるといいのかもしれません。現在では3.5nmが一般的に手に入れられる最狭(さいきょう、最強?)のものなので、まずはこれを考えることにします。

ちなみに、透過幅がこれまで販売されていた7nmのものだと、2nmのところでは計算上80%もの光を通してしまいます。これだとほとんど効果がないので、やはり3.5nmがでたことで可能性が出てきたと言ってもいいかと思います。



なんと国際光器さんの協力が!

と、こんな話を確か胎内の星まつりの時に、3.5nmのHαフィルターの輸入元の国際光器さんと話していました。その場で在庫があれば購入することも考えていたのですが、その時はまだ輸入するかしないかの頃で、天リフさんでやっとレポートが出たくらい。その場には当然在庫は無し。でも国際光器さんが、これは面白そうだということで、テスト用に無償で提供してくれることになり、なんと小海の星まつりで本当に持ってきてもらえたのです。これでとうとうテストすることができます。国際光器さん、本当にありがとうございました。

というわけで、小海から帰ってしばらくしての11月の晴れた日の昼間、早速テストです。まずは3.5nmのHαフィルターをASI290MMに取り付けます。

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うーん、なんかスペシャル感が漂います。でも写真の赤い色と実際の金色のような色が違うのが気になりますが、写真はまあイメージなのでしょう。

さて今回の記事、理論編はここまで。
実際撮影してみてのテスト結果は、また次の実践編で。


週末に試した50mm、F1.4レンズと31.7mmの新型QBPを使った電視観望の続報です。



平日なので、時間も限られていることもあり、限られた事しかできていませんので、速報のようなものと思っていただけると助かります。


UV/IRフィルターの影響

まず試したのが、UV/IRフィルターを入れた場合です。とりあえずは前回の猫目ハロの再現。

センサーには前回同様T2-1.25''変換フィルター



がついていて、そこに31.7mmのQBPがついています。QBPの先に、2017年の胎内星まつりで買ったZWO社製の31.7mm径のUV/IRカットフィルターをつけています。その状態で撮った写真が

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になります。前回と違い、月がすぐ近くにあるためにさらなる炙り出しが必要で、周辺減光が目立っていますが、取りえず無視してください。前回UV/IRがない時にQBPだけでとったもの

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と比べても、若干カラフルさは無くなったような気はしますが、猫目はほとんど改善されていないことがわかります。また、今回の方が若干星の周りの青ハロが改善されているようにも見えますが、ピント位置にもよりまだ時間をかけて検証できていません。とりあえず誤差の範囲だと思ってください。



猫目ハロとピントの関係

いろいろ試している間に一つ気づいたことがありました。ピントによって猫目の大きさが大きく変わるのです。例えば、ピントを少しずらすと猫目が消えます。その代わりに他の星がぼやけます。

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ちなみに猫目とピントを共に妥協したくらいだと以下の写真くらいでしょうか?

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ここら辺で、ハハァー、と何となくかわかってきました。

猫目ハロはQBPのせいではなく
レンズから来ている可能性が高い

と。


絞りを変えてみる

ここで、絞りを一つだけ絞ってみました。F1.4からF2になります。

撮れた写真がちょっと雲が出てきた時のものしか残っていなくて(実は別ショットをSharpCapでsnapshotをPNGで取っておいたですが、設定不足でなぜか白黒)写真では完全に直接比較とはいきませんが、見ている限りジャスピンでも劇的に改善しています。

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もちろん一段階暗くなるので、その分ゲインを上げるとか、ヒストグラムでより攻めるなどの対策が必要となります。それでも同じ露光時間でリアルタイム製を損なうことなくバラ星雲は見えるので、まあノイズ的には許容範囲かもしれません。

一応白黒も出しておきます。F1.4の時のシリウスと

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F2の時のシリウスです。明らかにこちらの方が改善されています。

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NIKKOR 50mm F1.4レンズについて

改めて「NIKKOR オールドレンズ 50mm」で調べてみると「F1.4ではボケを楽しめる」だとか、「F1.4だとイマイチだがF2にすると結構いい」というような評価が散見していました。今回はそれを裏付けるような結果になっているかと思います。F1.8レンズの方が安くて性能が良いという評価も見られました。

やはり安いだけのレンズでは問題もあるということがわかってきました。もちろんどこまで妥協するかという問題で、明るい星を見なければF1.4のままでもいいのかもしれません。でも50mmレンズとASI294の組み合わせの場合だと比較的広い範囲を見るので、明るい星が入る可能性が高く、やはりF2が実用的なラインかと言えると思います。

結論とまとめ

今回の結果から、前回出した猫目ハロはQBPのせいではないことがわかりました。31.7mmの新型QBPでひどいハロが出るような印象を与えてしまい、申し訳ありませんでした。少なくとも猫目ハロに関してはレンズのせいであったことは明白で、QBPのせいでは全くありません

ただ、シベットさんが報告しているような赤ハロの方は、今回検証する時間もなく雲が出てきてしまいました。こちらは次回以降にまた試してみます。(追記: 今回のアメリカンサイズQBPで、後日バラ星雲を撮影画像処理までしてみました。QBPでハロが問題になるようなことはありませんでした。)

せっかく作って頂いたQBPなので、実際に確かめてみて、使えるという確証を早く得たいと思っています。新型QBPがきちんとした撮影レベルで使えるかどうかも、次回以降、晴れて天気が安定している時にきちんと検証するつもりです。今しばらくお待ちください。


シベットさんが最近フィルターを使った電視観望を盛んに試されています。私のところにも31.7mmのアメリカンサイズのQBPフィルターが届いたので、ずっと試したかったテストをしてみます。


アメリカンサイズのQBPができた!

そもそもは昨年9月にQBPを使って電視観望をするとどれくらい見えるようになるかというテストをしたことに始まります。



この時の結論はHαで見えている赤い星雲はQBPによって相当見やすくなる一方、プレアデス星団などの青い星雲や白色光に近い系外銀河はむしろQBPによって電視観望では見えにくくなってしまうというものでした。なので、見る対象によってQBPをつけたり外したりするといいのですが、48mm版のQBPはFS-60CBの鏡筒とフラットナーの間に入れてあって、なかなか取り外しにくいのです。

そんな折、ちょうどBLACK PANDAさんからTwitter上でQBPの新バージョンができるというアナウンスがありました。なんでも基材を合成石英にアップグレードするということです。これまでの基材が何かはわからない(2020/2/3追記: B270だそうです。)のですが、合成石英は研究レベルでもよく使われ、熱膨張が少なく、紫外、赤外共に透過率が高かったりします。

上のブログの更新時のTwitterでのアナウンスでBLACK PANDAさんがコメントをくれ、「QBP入れ替えができるように、CMOSカメラに直接つけることができる31.7mmサイズがあればいいなあ」とか返事をしたら、なんと本当に反応してくれました。新バージョンを作る際に、31.7mmバージョンも作ってくれるというのです!これは期待大です。

合成石英を使用した新バージョンのQBP自身は11月半ばにできたと記憶しています。その時のものは元と同じ48mmサイズでした。その後、つい先日の1月29日、とうとう新バージョンの52mm版と、まさかまさかの31.7mm版が本当に発売されたのです!約束を守っていただいて本当に嬉しいです。BLACK PANDAさんどうもありがとうございました。

しかも値段を見ると、アメリカンサイズはこれまでの約半額、税抜きだとなんと1万円切りです。これならユーザーとしては気軽に試すことができるので、大変嬉しい価格設定です。

さらにここから話は急展開します。なんと製品を送るのでテストで使って欲しいとのこと。願いまで聞いていただいて、しかもサンプルも送っていただけるとは!

というわけで、送っていただいた新型のアメリカンサイズのQBP、やっと昨晩テストを敢行することができました。


31.7mmのQBPが生きるところ

フィルターサイズが小さくなって一番良かったのは、CMOSカメラに直接取り付けたり、フィルターホイールに入れたりできるところでしょうか。センサーサイズ的にはフォーサーズまでは使うことができるはずです。電視観望でよく使うASI294MCならば大丈夫でしょう。

もともとはASIカメラについている前に出ているアダプター

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に取り付けることを考えていましたが、年末の名古屋年越し観望会の智さんのレデューサートラブルの検討のときのコメントで「ASI294MC Proについていた薄いアダプターに31.7mmフィルターを取り付けるこができる穴が開いていて、以前よりも飛び出ることなくセンサーに近いところにフィルターを取り付けることができる」ということを教えてもらいました。

実際にASI294MC ProにQBPを取り付けると下のようになります。

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これまでは鏡筒に取り付ける時のみQBPを利用することができました。これならば、一眼レフのレンズをASIカメラに取り付ける時にも、アダプターの中に十分スペースがあるので、広角レンズを使ってもQBPを試すことができます。シベットさんはすでに同様のことを各種フィルターで試しているようなので、私も今回チャレンジしてみます。

今回は上の写真のように、古いオールドNIKKORの50mm/f1.4の明るいレンズにCanonレンズのアダプターをつけて、そこにさらに、ZWOが出しているASIカメラにCanonレンズを取り付けることができるアダプターを取りつけています。そのアダプタの空間にフィルターがうまく収まっています。

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明るいレンズとQBPを組み合わせての電視観望

さて、土曜の晩晴れた際にTSA-120のファーストライトの合間を縫って、このセットアップで電視観望を試しました。ポイントは焦点距離が50mmと広角なので、赤道儀やAZ-GTiさえ使う必要がなく、ただの三脚と自由雲台に載せただけで、手で動かすだけで見たいところを見ることができます。

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このセットアップ、本当に超手軽です。ぱっと持ち出してPCとケーブル一本繋ぐだけです。

もう一つのポイントは、f1.4の相当明るいレンズを使っていることです。以前ASI294MCを最初に手に入れたときその後何度か明るい広角のレンズを使って電視観望をしています。それでも十分に見えたのですが、明るすぎるレンズは画面が飛ばないように露光時間やゲインを抑える必要があるので、星雲なども当然見えにくくなってしまいます。今回はQBPを使って光害をカットしているので、星雲のコントラストが上がり見えやすくなっています。しかも明るいレンズのために露光時間をそこまで伸ばさなくても、十分情報を得ることができ、リアルタイム性に一役買っています。


実際の見え方

実際の見え味ですが、結構衝撃的です。まずは1.6秒露光のライブスタックなしのオリオン座です。

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真ん中に三つ星が映っているのがわかると思います。すぐ下のオレンジの明るいところがM42オリオン大星雲になります。繰り返しますが、これわずかトータル時間で1.6秒だけ露光したものです。三つ星の一番左のところに馬頭星雲らしきものがうっすら出ています。それどころか、よく見るとバーナードループ まですでに出ています。

これを24枚スタックしたのが次の写真です。あ、写真は全てPCの画面をiPhoneで写しているだけなので、ほとんど実際の見え味と同じです。

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馬頭星雲も燃える木もバーナードループも普通にはっきりしています。これでもトータル40秒以下です。

さてここで、ちょっと嫌なことに気づきました。明るい星の周りにハロが出ている(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)のです。炙り出しなどせずに普通に見ているだけではこのハロは気付きません。電視観望でヒストグラムをいじって炙り出すと目立ってきます。この時点ではQBPのせいなのか、レンズが悪いのかはっきりしなかったので、ここでQBPを外してみました。

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同じ1.6秒露光、30枚スタックです。QBPがないと明るくなりすぎるのでゲインを50(5dB、半分近く)落としています。バーナードループも辛うじて見えているようですが、明らかにコントラストは悪くなっています。これはQBPの効果が大だったといえるでしょう。でもその一方、ハロは抑えられています。

シベットさんがブログの中でQBPは赤外を通すためにハロがでるのではという報告をしています。その中でアポクロマートなど赤外でも収差補正をきちんとしている鏡筒はこの問題は出ないのではという考察がされています。これまで私もFS-60CBやFS-60Q、FC-76で旧版の48mmのQBPを使ったのですが、星がサチらない限りはハロは出ることはありませんでした。

今回星がサチっている可能性が一つと、単なる相当昔のカメラレンズなので、赤外で収差があるのは十分可能性があるでしょう。ただ、ハロの様子が赤だけでなく、なんかカラフルになっているのも気になります。シベットさんによるとUV/IRカットフィルターを併用すると、星像はフィルター間の反射で少し悪くなるが、ハロは消えたという報告がなされているので、次回私も試してみようと思います。

ハロは確かにあるのですが(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)、暗い星ではそこまで気にならないのと、星雲の出かたが思いの他すごいので、とりあえず今回はQBPをつけてこのまま進めます。


ばら星雲です。1.6秒露光で31スタック。トータル50秒くらいです。

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ばら星雲の上にも少し赤い領域があります。クリスマスツリー星雲ですね。

というか、今回何かを導入するというのではなく、画面を見ながら赤いのがあるとこれはなんだ?と、「星雲を見ながら探す」という夢のような体験をしています。例えば上のバラはリアルタイムの1.6秒一枚露光ではこのように見えます。

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もう、全然見える範囲の明るさです。

一番衝撃的だったのは次の例でした。

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真ん中らへんに何か赤いのが見えます。スタックするとさすがにわかります。

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そう、電柱の上をカモメが飛んでいるわけです。もう夜中に一人で大爆笑。普通の住宅街でこんなのがほぼリアルタイムで見えるわけです。面白くないわけがありません。

その様子を動画にまとめました。


左手でiPhonedで撮影しながら、右手で三脚の自由雲台の上のCMOSカメラを操作しているので、揺れたりして見にくい点はご容赦ください。オリオン座から電柱上のカモメ星雲、次にバラ星雲を突き止めて、最後にまたオリオン座に帰ります。バラ星雲なんかポンッと出てきます。実際にホントにこのように見えるわけです。

他にもプレセペ星団、

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M46、47、48です。

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適当にレンズを向けて見えたものです。1.6秒だけの露光なのでM46、47、48は少し見にくいですが、カモメ星雲のところの左上にもM46とM47は写り込んでいます。

あいにく、系外銀河は一つも認識できませんでした。アンドロメダとか出ていれば別ですが、さすがに広角レンズでは銀河は小さすぎるのと、やはりQBPは白色の系外銀河が苦手なのかと思います。あと今回はハロがキツかったので、恒星と銀河の見分けがつきにくかったのもあるかと思います。

最後に、オリオンが沈みかけるところです。右のほうが赤カブリになっていますが、それでもよく見るとエンゼルフィッシュ、辛うじてですが写ってますよね!

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まとめ

まだハロの件など克服すべき課題も多い(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)ですが、QBPと明るい広角レンズを用いることで、

光害地で、導入いらず、
リアルタイムにかなり近い、超お手軽な星雲星団観察

が可能だというのは特筆すべきことだと思います。一番最初にHUQさんが見せてくれてα7Sでの電視観望に近いかもしれません。α7Sの凄いセンサー感度にSharpCapとQBPで頑張って迫っているという感じでしょうか。

ちなみにこの50mm/f1.4レンズ、古くても標準レンズだったこともあり、今でも中古カメラ店やヤフオクで格安で普通に手に入れることができます。私は名古屋のコメ兵で5-6千円くらいだったと思います。

レンズは安くてもやはりASI294MCがまだ高いですかね。そこはASI385MCとかに代えて節約するという手もあります。

キットの望遠レンズを使った電子観望
も以前試しましたが、



広角、QBPが違う点になります。今回のこの手法も同様に、導入のための機器もいらないのと、さらに広角レンズを使っているために導入スキルも必要ありません。なので、相当手軽かと思います。

自由に空を見て星雲を探すインパクトは相当なものなのですが、今回のブログでそれが伝わったかどうか?比較的楽なセットアップだと思いますので、これまで電視観望を試したことがない人も、よかったら試してみてください。




先週届いたタカハシのTSA-120。平日なかなか晴れなかったのですが、週末の土曜やっと晴れました。待ちに待ったファーストライトです。




赤道儀への取り付け

実は到着した時、箱から出すだけでもドキドキでした。思ったより前が重いのと、(少なくともしばらくの間は)傷つけないように丁寧に扱います。でもまずは赤道儀に取り付けなければ何も始まりません。

今回手に入れた中古品はラッキーなことにタカハシ純正の鏡筒バンドが最初から付いています。タカハシ のホームページによると新品ではファインダーの有り無しを選べるようなのですが、今回のものはファインダーも付いているモデルだったようです。

鏡筒バンドはタカハシの赤道儀につけるためのM8の穴が35mm間隔で2つ空いています。手持ちの赤道儀はCelestron。鏡筒の重さがファインダーと鏡筒バンドと合わせても8kgほどなのでAdvanced VXにもCGEM IIにも載せることができます。ただし両方ともアリガタ固定なので、高橋の鏡筒バンドから何らかの変換が必要になります。いずれこれまでのFS-60QやFC-76のようにK-ASTECの鏡筒バンドとハンドルに変えようと思っているのですが、とりあえずこの日は昔星まつりで100円で買ったVixex製の古いアリガタに取り付けます。ちょうどM8の穴が同間隔で開いているのでそのまま取り付けることができます。

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2017年の胎内で買ったみたいです。
一番下の100円の札がついているやつです。
FC-76の時もそうでしたが、意外に役に立ちます。

次にファインダーを取り付けます。ファインダー固定台の向きが最初わからなかったのですが、マニュアルが後日送られてきたのを思い出し、きちんとマニュアル通りに固定しました。ファイダーの真ん中にセロテープが巻かれていましたが、これは何のためなのでしょうか?ここで固定して傷をつけないため?でもあまり好きでないので剥がしてしまいました。

赤道儀は玄関にそのまま置いてあるCGEM IIにしました。でもこれ、一度C8を落下させた過去があります。VIxen規格とLosmandy規格の両方のアリガタを固定できるのですが、Vixen規格の溝がちょっと浅いんですよね。今回は初めての取り付けなので、傷つけないように運ぶのはもちろん、赤道儀にも慎重に取り付け、確実に固定されていることを何度も確認します。

ウェイトは5kgを一番端に取り付けてちょうど赤経側のバランスが取れました。鏡筒を触った時の揺れを考えると10kgのウェイトにして内側に持っていった方が揺れにくいかもしれません。フード部分を伸ばすと思ったより前側が重たいです。鏡筒バンドを一度緩めて少し鏡筒位置を後ろにずらします。

大体バランスが取れたところで赤道儀の電源を入れます。今日は眼視だけの予定なので水平だけはとって極軸は適当。しかもソーラーアラインメントで月だけでの初期導入です。ここら辺はAZ-GTiの経験から来ています。水平さえとっておけば、撮影レベルでなければ十分実用なくらいに導入、追尾できます。私にしてはめずらしくファインダーもつけているので、多少ずれてもなんとかなります。

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ファーストライトはお月様

早速月でアラインメントをとり、じっくり見てみました。あ、今日のアイピースはいつも使っているの特価アイピースではなく、なんと

バーダーのHyperionの13mmとPENTAXのWX5

Hyperionは一番最初に星を始めた時にニュートン20cmと一緒に

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PENTAXは星を始めた2016年の胎内の星まつりで5mmと3.5mmをセットで買いました。
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3.5mmなんてまだ袋に入れっぱなしです。
多分1、2回しか使っていないはずです。

こんないいアイピースも持っているのですが、胎内から帰ってすぐに電視観望に走ってしまったので、ほとんど、多分ほんの数回のレベルでしか使ったことがなく、これまでは完全に宝の持ち腐れでした。特にHyperionも5mmを持っているいので、5mmはバーダーとPENTAXで見比べをすることもできるはずです。

まず最初は13mmで月を覗いてみました。焦点距離が900mmなので900/13で倍率は70倍になります。ぱっと見るだけでも、もう当たり前のようにはっきりと、キレッキレで見えます。冬場で星も瞬いていたのでシンチレーションは大きかったのでしょう。ユラユラも当然のように見えてしまいます。この日は月面Xとかもあったのでが、せっかくの晴れ間で他にやりたいことも目白押し。早速眼視でやってみたかったことに移ります。


リゲルの伴星とディフラクションリング

性能のいい屈折機でやってみたかった事の一つは伴星を見ること。今回の目的はリゲルの伴星です。さすがにこの日は極軸が適当なせいもあり、月からリゲルへは少し遠くて自動導入ではうまく入りません。でも月の導入の時にファインダーも位置合わせしておいたので全く問題なし。手動でリゲルを導入します。70倍程度なら簡単に導入できます。でも体制がキツかったです。どれくらいの性能で伴星が見えるか全然見当がついていないので、念のため天頂プリズムとかも無しにしておいて、地面に這いつくばって覗くはめになりました。あと、ピント合わせの時に鏡筒に触ると星が結構揺れることに気づきました。ウェイトと、やはりアリガタは幅広のLosmandy規格の方がいいかもしれません。

とりあえずリゲルの伴星は全くの初めてで、しかもシンチレーションで揺れているのでどうもよくわかりません。仕方ないのでPentaxの5mmに交換しました。倍率は180倍になります。そこでまず気づいたのが、ディフラクションリングがもう普通に見えています。もちろんリング自身もシンチレーションで揺れているのですが、こんなに簡単に、しかもこれほど明瞭に見えているのにはびっくりしました。これが高級屈折の実力なのか、私がこれまで眼視を全くやってこなかったので気づいていなかっただけなのか、よくはわかりませんが、こんなにはっきり見たのは初めてで、最近の天文関連のことでは強烈なインパクトでした。

肝心なリゲル伴星ですが、5mmにしたらあっさり気付くことができました。初めてのことなのでそこまで確証はないのですが、ディフラクションリングのちょっと外側にポツンと暗いのが一つだけあったので、多分あっていると思います。


さらにシリウスの伴星に挑戦、でもあえなく撃退

リゲルの伴星が意外にすんなり見えたことに気を良くして、次は難敵と言われているシリウスの伴星に挑戦。導入も5mmのままでも全然問題なしでした。でも肝心のシリウスBは結局どうやって見てもわからず。途中ちらっと、もしや!と思うものはありましたが、シンチレーションに混じっていて最後まで確証が持てませんでした。それよりも、同時にディフラクションリングもじっくり見ていたことになるのですが、ディフラクションリングがシンチレーションでチラチラ、チラチラ揺れる様子がまるで線香花火そっくり。シリウスBは見えなくても、その幻想的な見え方にうっとりしていました。


まとめ

今日の眼視はこれくらい。惑星とかでの眼視の経験はもちろんありますが、屈折で恒星を極限近くまで頑張って見てみるという、ある意味初めての自分でやってみたまともな眼視体験と言っていいかと思います。結果は思っていたより超楽しい。エアリーディスクがどういうものか自分で計算したりしたこともあり、星を始めた頃だとわからなかった楽しみ方かもしれません。




でもこの楽しさ、このブログを読んでくれている方にうまく伝わったでしょうか?眼視の場合写真を使うわけにいかないので、文章での表現が全てになります。絵心とかあればスケッチとかで伝えるてもあるのですが、そちら方面は全くダメです。

一方、使って見て今回の購入に価値があったかどうかですが、もともと絶対的な信頼がおけるリファレンス的な鏡筒が欲しかったというのがあり、ディフラクションリングも簡単に見えてしまうなど、TSA-120は十分な性能がありそうなことがわかりました。自分的には価値は十分にあったと思えます。相当満足です。


今後の展開

手持ちの高性能アイピースは焦点距離が短いものばかり。天リフで紹介されていたような、長焦点の低倍率広視野アイピースも興味が出てきました。2インチアイピースも視野に入ってくるのでさらに可能性が広がりそうです。

シリウスBはシンチレーション のいい日に再挑戦します。惑星も楽しみです。眼視もまだまだ試したいですが、その一方撮影にもつなげていきたいです。そのためにはフラットナーやカメラの接続アダプターなどまだまだ様々なアクセサリーを用意しなくてはいけません。遠征のためにはケースも必要です。余裕があるなら鏡筒バンドも早く取り替えたいですし、レデューサーとかにも手を出して見たいです。でもしばらくは節約なので、少しづつ揃えていくつもりです。


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