ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2018年12月

赤道儀のセッティングの記事のコメント欄で延々と続いていた、Advanced VXの時刻の保持の謎がやっと解けました。

わかってしまえば簡単なのですが、謎が解けるまでにいろんなことをやりました。このブログは自分の天文関連の日記のような役割もあるので、読んでくださる方にはまためんどくさいことをと思われるかもしれませんが、一応失敗したことも含めて書いておきます。

IMG_5986
ハンドコントローラーの内部。
基板上に内蔵電池らしきものは見当たりません。(後述)


Celestron Advanced VXのアップデート手順

時刻の保持とは関係ないかもしれませんが、まずはファームウェアのアップデートです。はっきり言ってこの手順も分かりにくいですね。自己責任らしいのですが、他の方にも役立つかもしれないので、とりあえず試した順に書いておきます。
  1. 機器の接続ですが、ハンドコントローラー (NexStar+、以下コントローラー) と赤道儀本体は繋いでおいて、電源もいれておきます。コントローラーとPCの接続はRS232Cです。最近のPCでRS232Cがついているものは稀なので、USB-RS232C変換ケーブルなどを購入してつなぎます。RS232C端子とコントローラーは、赤道儀を買った時についてくる付属のRS232C-4pinモジュラー変換ケーブルで接続します。私はこのケーブルの存在を完全に忘れていて、過去に改めて買おうと思ったことがあるので注意が必要です。持っていないという方は箱の中を探してみてください。最初から付属しています。
  2. 一方ソフトの方ですが、CelestronのサイトからSUPPORT -> Manuals & Softwareに進み、Drivers & Softwareのページに行きます。その後たくさんあるソフトの中から適したものを選ばなければいけまえん。Hand Control Firmware Updatesとか、Motor Control Firmware Updatesとかそれらしい名前があるのですが、これらは古い機種用のアップデートツールみたいです。Advanced VXの場合は、Celestron Firmware Manager (CFM)を選びます。私がダウンロードしたのは2.3.7111というバージョンでした。
  3. ダウンロードしたzipファイルを解凍して、その中のCFM.jarファイルをダブルクリックします。あ、Windowsでしか動かないのと(追記: あれ?JAVAだから機種依存しない?未確認です。)、あと、JAVAがインストールされていないと実行できませんので、必ずJAVA(JRE)をインストールしておきます。
  4. ここまでできたら、あとは勝手にCFMが機器を認識してくれるはずです。最初ちょっとわかりにくかったのですが、コントローラーと赤道儀本体の「2つ」の機器が認識されたと出るはずです。一度のアップデートで、コントローラーと赤道儀本体の二つともアップデートしてくれます。
  5. うまく認識されたら、Updateボタンが押せるようになるはずなので、押します。12個のファイルをアップデートして終了です。
IMG_5993
アップデート時の様子。
この写真を撮っているときにケーブルを触ってしまい、
この後、失敗します。

ところがここでポカをやらかしました。12個目のファイルをアップデートしている最中にケーブルが外れてしまったのです。アップデートは当然停止、しかも赤道儀を立ち上げると「Bootloader invalid pkg: 0002」とかいうエラーが出て何もできなくなります。ここから迷走し出したのですが、Celestron Firmware Managerで機器が認識できない時に出る解説の通り、一旦赤道儀の電源を切り、コントローラーの左下のボタンと、すぐ上のMENUボタンを同時に押して、立ち上げなおします。「BOOT LOADER Serial User Keyoad Entry」とでて、本来これでファームウェアが壊れていても接続できる状態になっているはずなのですがなにをどうやっても接続できません。ファームが壊れて接続自身ができなくなったと思い込んでしまいました。

この段階で小一時間格闘して、別のPCを持ってきてやっと原因が判明しました。COMポートの自動選択がうまくいかなかったようです。最初のPCにはCOMポートが複数あり、うまくいった時は自動で赤道が繋がったものを見つけ出したようですが、うまくいかなくなった時はコントローラーが繋がっていないCOMポートを見ていて、その結果繋がらないというメッセージを繰り返していたというわけです。別のPCはCOMポートが一つしかなくて間違えようがなかったということです。Celestron Firmware Manager はCOMポートの選択を任意にできないようなので注意が必要です。

とにかく、ケーブルの接続に注意して再びアップデート。今度はうまく行きました。バージョンを見てみると
  • HC:GEM 5.28.5184
  • MC:7.11.4244
から
  • HC:GEM 5.29.7137
  • MC:7.15.8270
にアップデートされていました。 HCはハンドコントローラーのこと、MCがモーターコントローラーで赤道儀のことを表しているとやっと理解できました。

ファームウェアは日本語が含まれるものと含まれないもの2種類あるのは、以前CGEMIIをアップデートした時のブログのコメントでの情報で知っていましたが、今回は自動的に日本語が含まれるファームが適用されました。
 
IMG_5995
 


時刻の保持

やっと今回のメイン記事に当たるのですが、ここでも結構手こずりました。無駄なことも含まれてますが、やったことを書いておきます。

  1. アップデート後、一旦アラインメントで時刻を設定し、再度立ち上げなおして時刻が保持されるか確認しましたが、時刻は最初に設定した時のままで進まず。
  2. アップデート時に工場出荷時にされますが、りっくんさんがされたようにあえて再度工場出荷時にリセット。それでも同じで、立ち上げた時に設定した時刻が残るのみです。
  3. いろいろ触っていて一つ気づきました。「MENU」ボタンを押して上下ボタンを適当に押すと出てくる「時刻・場所の表示」です。これを押すと「位置を記憶」というのが出てきます。ここでEnterを押してやると、その時の時刻が保存されるようです。でも時刻が進むことはありません。でも保存時刻をコントロールできることはこの時点でわかりました。
  4. 半分諦めかけて、昼食を食べ買い物に行って帰ってきてから、後片付けの前に最後にと思って「advanced vx time keep」で検索してCloudy nightsでやっと答えが見つかりました。「MENU」ボタン -> ユーティリティー -> RTCのON/OFFです。RTCとはReal Time Clockとのことで、これをオンにすると内部時計が電源を切っても進み出します。
  5. でもこれもなかなか曲者で、時刻を合わせても、なぜかRTCをオンにすると「現地時刻」が30分くらいずれてしまいます。諦めずに、再度工場出荷時にリセットし、最初の時刻を合わせ、RTCをオンにし、30分くらいのズレが出ても「MENU」ボタン -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定で時刻を合わせなおして、やっと現地時刻が正確な時間になりました。
  6. 確認方法は、赤道儀のスイッチを入れた時に、これまで時刻を合わせていたところで突然場所の設定が表示されてしまいます。ここでビビらずに、下ボタンを押すと現地時刻が表示され、しかも時間がリアルタイムで進んでいるのが分かります。

幾つか不具合や謎らしきものも見受けられました。
  • ユーティリティー -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定でtoyamaを選択してもなぜかakitaになってしまう。何度かやったらやっとtoyamaになりました。
  • Cloudy Nightsによると、しかも電池(CR2032)もあると。前回ネジを外してカバーを取って基板を見ても見つからなかったので、今一度、裏表も含めてきちんと見てもやはり見当たりません。2032なら大きいのですぐに見えるはずなのですが、不思議です。
  • 内部電池が見えないので、まさかと思って一旦ハンドコントローラーも赤道儀も電源ケーブルも全て外してしばらくしてから再接続し、再起動しましたが、時間は保持しているようです。何かどこかに時間を保持する電力があるはずなのですが、今のところ不明です。(追記: Twitterで情報がありました。電池は赤道儀本体側にあるとのことです。)

とはいえ、やっとAdvanced VXの時刻保持の謎が解けました。結構長かったです。知っている人にとってはあたりまえのことかもしれませんが、りっくんさんもkiharaさんも私もそうだったのですが、このことに気づいていない人は意外にたくさんいるのかと思います。

外は大雪。こういったことに時間をかけられるのは、なかなか星の出ない北陸の冬だからこそですね。
 

クリスマスイブ。連休の最終日です。昼間は雲が多かったのに、なぜか夜は全面晴れ。次の日仕事でしたが、今週から雪らしいのでもうチャンスもなかなかなくなると思い、家族とのクリスマスパーティー後、下の子の「トランプやって!」の声を振り切って、21時頃から庭に機材を出しはじめました。この日の目的は、前回からの引き続きでQBPのテストです。満月後わずか2日目、まだまだ空は明るいです。一昨日のQBPのテストは輝度の高いM42オリオン座大星雲でしたが、もう少し淡い星雲はQBPでどのくらいまで撮ることができるのか見極めるのが今回の目的です。 


ターゲット天体

あまり夜遅くなると次の日の仕事に響くので、ターゲットは一つとしました。画角に当てはまることと、そこそこ淡く、月にそこまで近くないという条件から、
  • IC405 勾玉星雲とIC410
としました。それでも月から40度角ないくらいなので、比較的明るい領域と言えます。


機材セットアップ

 前回と同じセットアップです。ほとんど組み直すことなく使えるのですぐにセットアップできて楽です。
  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO3200、露光時間3分x10枚、2分x11枚の計52分
  • ガイド: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ、PHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 日時: 2018年12月24日、22時頃から
  • 月齢: 17.2

撮影

前回のM42はISO1600、露光時間1分くらいが限界でしたが、今回はISO3200、露光時間3分での撮影が可能でした。ISOで2倍、時間で3倍で、前回と比べて計6倍明るく撮れている計算になります。
  • 月が満月よりは少し暗くなったこと、
  • 以前より月からもう少し(10数度角くらい)離れていること、
  • 色温度を6000度にして、青を落としてRGBのバランスをとったため、サチルまでに余裕が出たこと
などが理由かと思います。

露光時間を取れたのはいいのですが、その代わりに星が流れてしまうのでガイドありでの撮影になりました。前回は600mm、1分でガイドなしで大丈夫でしたが、3分になると流石にCGEMIIでもガイドなしでは少し流れてしまいます。それと、以前縞ノイズで懲りたので、PHD2とBackyardEOSの連携でディザーもしています。

そういえば最近またAstroTotillaを使ったPlatSolvingで画角を決めています。これ、ものすごく楽なので、またそのうちに一度記事にまとめたいと思います。

実際の撮影は、ぬくぬく自宅の中からリモートでと、至って快適でしたが、カメラの電池が切れてしまった夜中の1時頃、風も少し出てきたのでその時点で撤収としました。


画像処理


前回のM42の時の画像処理と大きく違うのが、フラット補正をしたことです。鏡筒の先にスーパーの袋を2重にしたものをつけて、PCの画面を明くして白で埋め、そこを1/100秒の露光時間で撮影しました。ISOはライトフレーム撮影時と同じ3200としました。

今回は赤い領域が全体に広がっていたので、PixInsightのDBEでは周辺減光を取ることが困難だったからです。今回のフラット補正は結構効果が大きくて、変なムラみたいなのも一切出なくなりました。基本的なことをサボっていたのがそもそもの問題なのですが、QBPを使うときにはフラット補正は必須かと思いました。これは一度きちんと検証したいと思います。

その後の画像処理はこれまでとそう変わりません。PixInsightで処理して、DBEで最後のカブリを取り、PCCで色を合わせて、ArcsinhStretchでストレッチします。その後、Photoshop CCで仕上げます。


撮影結果

撮影結果を示します。

light_BINNING_1_integration1_AS_DBE_cut


撮影時間が52分と長くはないため、ノイズがまだ結構残っていますが、満月2日後の、自宅庭からのお気楽撮影でこれだけ出ればまあ満足です。恒星の青もそこそこ出ています。

もちろん、新月期に遠征をして光害の少ない場所で撮影するよりは、撮影した素材画像のクオリティーは絶対悪いです。そのため、色バランスやフラット補正など、多少画像処理で苦労はします。それでも、自宅で気楽に撮影ができ、数がこなせることは何物にも代え難く、私的にはこのQBPは買ってよかったものの一つと言えます。


週末土曜日、満月の日。一晩中明るい月が出ていますが、北陸の貴重な晴れの日と、週末が重なったので、こんな日は絶好の機材のテスト日和です。

せっかくなので、先日シュミットで購入した月明かりでも撮影が可能だというQuad BP フィルターを試してみたいと思います。そこそこ写るなら遠征に行けない「平日」でも、「月」が出ていても、「自宅で気楽に」撮影を楽しむことができます。


セットアップ

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)
  • 日時: 2018年12月22日、22時頃から
  • 月齢: 15.2、満月
  • テスト対象: サイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
少し困ったのが、QBPをFS-60Qにどうやって取り付けるかです。フィルター径は48mm。ところが、FS-60シリーズは回転装置の出口部分内側に52mmのフィルターネジが切ってあるため、48mm径のフィルターはそのままでは取り付けられません。いろいろ試してみると、回転装置と延長鏡筒の間に挟み込むと、ねじ込みや固定はできないのですが、うまい具合にピッタリはまって取り付けられそうです。

IMG_5912


コツは、フィルターのネジが切ってある側を鏡筒の対物レンズ側に入れ込むことです。こうしないと延長鏡筒を1-2回転くらいしかねじ込めなくて、不安定になります。まあとりあえず大丈夫そうなので、今回はこの状態で撮影してみます。


対象天体

M42 オリオン大星雲:
  • これまでなんども撮っているので比較しやすい。
  • 満月との距離が25度角程度とあまり遠くなく、この日は非常に明るい領域。
  • 肉眼で見ている限り、リゲルとベテルギウスはなんとか月の光に負けずに見える。3つ星はほとんど見えないくらい。

画像比較1: 同じ露光時間でQBPありなしでの比較


まずは、露光時間を同じにしてQBP有り、無しで比較してみます。JPEG撮って出し画像での比較です。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

10秒以上の露光だと明るすぎなので、これくらいまでしか露光できません。

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms


同じ時間でもQBPフィルターがあると、当然の結果ですが随分暗くなることがわかります。


なお、上の2枚とも色温度設定が3200Kと低いので青が強く出てしまっています。


画像比較2: 露光時間を変えて背景明るさを合わせる

これもJPEG撮って出しです。
  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光(画像比較1と同じもの)
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_60s_1600_+8cc_20181222-22h37m16s270ms



実際の背景の明るさを比べると、最初のQBPなしの1枚と、後のQBPありの2枚を比べるとわかりますが、露光時間が3倍だとまだ少し暗く、6倍だとかなり明るいくらいなので、4倍程度の違いでしょうか。


QBPによる背景明るさの変化の簡単な推定


月の明かりが太陽の反射なので白色光に近いとして、太陽光のスペクトル

SunLightSpectrum-280-2500nm-J
(Wikipediaより引用)

にセンサーの感度曲線をかけたものと、さらに今回のQBPの透過率

qbpf_g
(シュミットの販売ページより引用)

をかけたものとの面積比を比較すると、この明るさの比になります。太陽のスペクトルは調べるとすぐにでくるのですが、EOS 6Dセンサーの感度曲線が調べても出てきません。しかも天体改造してあるので、さらに良くわかりません。

それでもものすごくざっくりとした見積もりをしてみます。太陽のスペクトルが350nmくらいから900nmくらいまではそこそこ一定とし、一般的なCOMSセンサーの感度も350nmくらいから700nmくらいまでは一定と考えます。そうすると、QBPの透過率がある部分が465-510nmと640-685nmくらいまでと読み取ります。それぞれ透過幅はともに45nmとなり、合計90nmです。透過率は95%と程度としますが、ざっくり1としてしまってもいいでしょう。すなわち、350nmのうち90nmくらい通すと考えてしまうと、90/350 x 0.95 = 0.24となり、QBPと通すと月の光で制限されるような背景の場合の光量は24%程度になるということです。言い換えると、1/0.24 ~ 4なので、露光時間が4倍くらいで同じ明るさになるということで、実際の撮影結果にもかなり合っています。

これとは別に、月明かりがない場合の人工光による光害が支配的な場合、露光時間をどれくらい伸ばせるかはまた興味深いところです。これは場所や光源の種類に大きく依存するはずですが、LED灯でも上記くらいの改善比、水銀燈やナトリウム灯ならかなり高い改善比が期待できるはずです。


画像処理をした場合のQBPの効果


さて、一番興味のあるフィルターの効果の確認ですが、画像処理をかけた場合を想定して比較したいと思います。できるだけシンプルでわかりやすくするために、PixInsightで1枚どりの上記RAW画像に
  1. ScreenTransferFunctionでLink RGB Channelsをオフにして各色のロックを外してからオートストレッチをかけて
  2. HistgramTransformationで実際に画像に適用し
  3. JPGで保存
というような工程をとりました。

上記工程で、上の3枚の画像処理したものを比較してみます。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms


検討してみます。
  • まず、10秒という同じ露光時間のものでも、QBPありの方が構造がはっきり出ていることがわかります。
  • 次に、QBPありの場合はさらに露光時間を延ばすことができ、より構造が鮮明になります。
  • QBPなしとQBPありで思ったより色の変化がないです。これは意外でした。
最近シュミットから出たM42のデモ画像は、思ったより赤が出ていたので、青が相当出にくいのかと思っていましたが、そうでもないようです。他の方の例を見ても青は思ったより普通に出ていたので、青の出方に関してもそれほど心配ないというのが今回自分で試した上での感想になります。


簡易画像処理

QBPを通して撮った画像をスタックして、画像処理をしてみました。と言っても、結局雲間での撮影で、きちんと撮影できたのは60秒の露光でわずか18枚の、総露光時間18分の画像です。

画像処理はPixInsightでプリプロセッシング、(フラット撮影はサボってしまったので)DynamicBackgroundExtraction (DBE)で背景ムラを整えて、PhotometricColorCalibration (PCC)で恒星の色を合わせました。恒星の色がうまく出るか心配だったのですが、確かに少し近似直線上から分布がずれるきらいはありましたが、それほどおかしくないレベルで色は出ているのかと思います。

結果だけ示します。

light_BINNING_1_integration_DBE_CP_Stretched_cut

本当はもっとあぶり出したかったのですが、かなり大きなレンジ(空間周波数が低いという意味)での色むらが残ってしまっていて、背景を出すと目立ってくるので、ここら辺までに押さえておきました。この色むらはフィルターのせいなのか、総露光時間が足りないからなのか、はたまた雲が常時流れていてその合間を縫っての撮影なのでその影響が出てしまったのかなどの判断はまだできていません。

本当はM42の後、もう少し淡いカモメ星雲を撮りたかったのですが、雲が多くなってきて撮影できるレベルではなくなってしまったので、ここで撤収しました。


Quad Band Pass フィルターを使ってみて 

うーん、今回のQBPかなり良いのではないでしょうか。満月下でこれだけ遊べれば十分満足です。色が思ったより変わらなかったのも、私的には気軽に楽しめるので、いい点です。今回は雲のために実際の撮影時間が短かったのでちょっとしたテストくらいでしたが、長い時間かけてじっくり撮影してみたいです。

元々の目的が、平日で遠征などできないときに、自宅の庭で月明かりや光害下でも気軽に撮影が楽しめたらというものです。このくらいの目的ならば十分に達成できそうです。あとは、月がない環境で自宅の光害下でどれくらい効果があるかを試してみたいです。以前の結果からも、透明度がいいときはそこそこ撮影も楽しめるくらいの環境です。ただし、暗い天体は今の所、フィルター無しでは自宅庭からでは全滅です。このQBPでもう少し暗い天体も狙えるようになれば、購入しただけの価値は十二分にあります。また試してみます。


とうとう彗星に手を出してしまいました。

タイトルにもある通り、実はこれが生まれて初めて見た彗星になります。いつかはやってみたいと思っていましたが、これまで彗星はほとんど興味がなかったので、今回の46Pの盛り上がりはいい機会になりました。

冬型の天気でここ最近ずっと天気が良くなくて、週末も全く期待していなかったのに、なぜか土曜日12月15日は昼間も夜の天気予報もずっと晴れ。どうせ次の日はダメという予報(実際朝から曇りでした)だったので、この日しかないなら何か撮ろうと思って、せっかくだから地球最接近が次のに日になるウィルタネン彗星と、極大日が前日だったふたご座流星群を狙おうと決めました。


とりあえず今回はウィルタネン彗星2枚です。一つはNIKKOR-S 50mm f/1.4をf/4.0にして、アダプターでASI294MCに取り付けたものです。広角にしてヒアデスとプレアデスを入れてみました。赤、青、緑の対比が綺麗です。

integration_DBE1_PCC_AS
富山県富山市, 2018年12月15日21時11分
ASI294MC + NIKKOR 50mm f1.4を4.0で使用 + CGEM赤道儀
露出30秒x30枚 総露出15分 
PixInsight、Photoshop CCで画像処理

60枚以上撮影したのですが、実際に使ったのは30枚です。30枚に制限したのはこれ以上重ねると核の移動が目立ってしまうからです。流石に使ったのがオールドレンズだけあって無理も多く、4隅はコマがひどいです。50mmくらいのいいレンズも欲しくなってしまいます。



もう一枚はFS-60QにEOSの6Dをつけて、30秒x20枚で10分くらいの露光になります。こちらはPixInsightで彗星の核を基準に重ねました。

integration_SA_CA_DBE_stretched_cut
富山県富山市, 2018年12月16日0時54分
FS-60Q + CGEM赤道儀
EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW), 露出30秒x20枚 総露出10分 
PixInsight、Photoshop CCで画像処理

この時はまだテールが見える可能性があるなんてこれっぽっちも思ってなくて、10分間でも十分かと思っていたので、撮影したのは本当にこれだけでした。核を基準にスタックできると知っていたら、もっと長い時間撮影していたかもしれません。周りの恒星を流れなくする方法もあるようなのですが、かなりややこしそうなので、今回は見送りました。

処理のついでに、PixInsightのBlinkを使って、10分間分の20枚を動画にしてみました。10分でも結構移動していくのがあらためてよくわかります。



今回、彗星を見るのも撮影するのも初めてということで、とりあえず撮ってみた感が強いのと、あまりに寒くて自宅からの撮影にしたのでそれほど暗い空ではないため、テールはどう処理しても見ることができませんでした。テールを出すためにはどうやら分子雲が映るくらいでないとダメみたいです。光害もひどいでしょうし、露光時間も全く足りないということを後で知って、彗星を撮るのも星雲を取るのも必要なものは同じだと思い知らされました。他のFacebookや天リフでアップされている素晴らしいテールを見ていると羨ましくなってきます。いやー、彗星なめてました。さっそくリベンジしたくなってきました。また晴れてくれないかなあ。


あと、ふたご座流星群ですが、月が沈んでカメラを仕掛けて寝てしまいました。EOS 6Dに広角のSMAYANG 14mm F2.8をつけて30秒露光で撮り続けたのですが、流星が写ったのは139枚中わずか2枚。ここでアップする価値があるかわからないくらい小さなもので、雲がかかっているせいもあって、写真の中のどこに写っているか探すのも大変なので、トリミングしてみました。

20181216-IMG_2223 cut

20181216-IMG_2276_cut

しかも途中から薄雲が広がってきたりで、流星群の方は大した結果は得られませんでした。途中起きて見に行ったら寒くて電池切れになっていたのと、薄雲が目で見ても広がっていたので、これで撤収としました。 


テールは見えなかったなど、いろいろ不満な点もありましたが、それでも初めての彗星です。あんな綺麗な緑色が出るとか、結構移動するとか、画像処理もこれまでと違い、かなり楽しむことができました。

IMG_5898


 

赤道儀のセッティングの続きを少しだけ。初期アランメントで一発目に度くらいの精度で入ってくるかという話です。比較するのは、前回の記事で評価した

  • 水平インデックス法
  • 鏡筒水平法

の2通りの方法で実際どれくらいの誤差になりそうかというのを評価してみます。今回も極軸は十分な精度であっているとの仮定が入っています。あ、便宜上名前は勝手につけてしまいました。全然正式な名前ではありませんのでご了承ください。


水平インデックス法

1. 三脚の脚の長さででる水平度の誤差:
水準器を見ながら、最下部の脚の開きがざっくり1mくらいの幅で、手で3mmくらいの精度の脚の長さを合わせるのはできそうなので、
0.003[m] / 1[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.2 [deg] 

2. AVXの赤経体の直径が10cm(半径5cm)くらい、インデックスマークの幅が2mmくらいで半分の半分くらい幅の幅では少なくとも合わせられるとして、
(0.002[m] / 4) / 0.05[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.57[deg] 

3. 同じくAVXの赤緯体の直径が10cm(半径5cm)くらい、インデックスマークの幅が2mmくらいで半分の半分くらい幅の幅では少なくとも合わせられるとして、
(0.002[m] / 4) / 0.05[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.57[deg] 

4. 時刻の精度ですが、実際に時刻を打ち込んでからいつが赤道儀が動き出す最初かあまり確定していないのですが、30秒くらいの精度では合うとして、
0.5[min] / 60[min] / 24[h] x 360[deg] ~ 0.125[deg]


誤差は1から4までの2乗和のルートくらいになり、

sqrt(0.2^2 + 0.57^2 + 0.57^2 + 0.125^2) ~ 0.84[deg]

となります。この精度がどれくらいの意味を持つかというと、基本的にそのまま赤道儀の初期アラインメントの一発目がどれくらい中心からずれるかを示します。
  • 典型的な光学ファインダーの視野が、例えばVixenで7倍、50mmで実視界7度とのことなので、十分ファインダーには入るはずです。
  • 電子ファインダーで例えば、焦点距離50mm、1.8インチのASI178MCだと8度x6度と十分すぎる画角です。
  • 例えばFS-60Qで焦点距離600mmの鏡筒でフォーサーズサイズのASI294MCだと1.6x1.2度なので、まあなんとか入ってくるくらいです。
  • 例えばFS-60CBで焦点距離355mmの鏡筒で1/3インチのASI224MCだと0.8x0.6度くらいなので、ちょっと厳しいですね。


鏡筒水平法

一方鏡筒水平法では、誤差は結構変わってくるはずです。基本的に、三脚の脚の長さ調整の誤差と赤経のインデックスマークの誤差が、鏡筒においた水準器の精度に置き換わります。水準器の誤差はホームセンターで普通に売っている簡易なものでも簡単に0.1度くらいは出るようです。赤緯のインデックスマークの誤差は同じとします。全部の誤差を考えると

sqrt(0.1^2 + 0.57^2 + 0.125^2) ~ 0.59[deg]

くらいで、 
  • 光学ファインダーで電子ファインダーでも当然一発目で入ってきて、
  • 焦点距離600mmの鏡筒でフォーサーズサイズセンサーだとかなり真ん中に来て、
  • 焦点距離355mmの鏡筒で1/3インチセンサーでもなんとかギリギリ入ってくるくらいです。

確かにこのあいだの実際のテストでも、何度かやってみても鏡筒水平法の方が真ん中近くに来ていたので、あながち間違った見積もりでもないでしょう。

IMG_5887
水平インデックス法: 視野のギリギリで入るくらいです。入らない時もあります。

IMG_5895
鏡筒水平法: だいぶ真ん中に寄ります。視野に入らないことはまずありあません。

あと、鏡筒の光軸自身が赤道儀に取り付けたアリガタの向きからずれれている誤差は今回入れていません。これがずれていると、上の誤差以上のずれが出るかもしれませんが、見た目でそこそこ合わせているならそれほど大きくずれることはないでしょう。私は極軸を合わせた時に、カメラの視野の真ん中が極軸になるようにある程度光軸を合わせてあるので、実際に上の誤差よりも十分小さい範囲で合わせこまれていることになります。これはSharpCapで極軸調整した際に一回合わせてしまえば、それ以降アリミゾと鏡筒を外したりしなければあまりずれないので、一度はきちんと合わせておいてもいいかと思います。


いずれにせよ、水平インデックス法に変えて、鏡筒水平法にせよ、ファインダーレベルで一発目に入らないのはさすがに論外な誤差と言えるので、何か根本的におかしいと思っていいはずです。例えばりっくんさんは、AVXの設定を工場出荷時に戻したら、少なくとも一発目でファインダーに入るようになったというので、あまりに状況がおかしかったら他の原因を考えるのも解決につながるかもしれません。

先々週の赤道儀のセッティングの記事で、水平出しのことが議論になりました。コメントがいくつかあったのですが、かんたろうさんとその後もメールのやり取りをして、白熱した議論となりました。以後の議論では赤道儀の極軸は十分な精度であっていて、また、鏡筒も極軸と平行に設置されるものと仮定しています。

突き詰めていくと、今回の論点は、

  • Celestronの赤道儀Advanced VXで、ワンスターアラインメントでの初期アラインメントの時に、水平出しをしていることで、きちんと視野に入るかな入らないかに影響があるか?

というものになります。私は水平出しをしていなければ入らないという主張で、かんたろうさんは必ずしも水平出しをしていなくても、赤緯体が天頂方向を向いていれば、きちんと視野に入るというものです。

もう少し噛み砕いていうと、私はいつも赤道儀の水平出しをしてからインデックスマークを合わせるので、赤緯体は基本的に誤差の範囲内で天頂方向を向きます。かんたろうさんのは赤道儀の水平を出していなくても、赤緯体を天頂方向に向ければそれでよくて、その場合は赤経のインデックスマークが(水平からずれた分だけ)ずれた状態となるということです。赤緯体を天頂方向に向ける方法は、赤緯方向を90度傾けて鏡筒を東西に向ける。鏡筒の上に水準器を乗せて、赤経を調整して水平を出せば、赤緯体は天頂方向を向くというものです。

議論は平行線で、やはり実際に確かめなければ納得できなかったので、久しぶりに晴れた今日、試してみみました。

まずは、自分の方法できちんとワンスターアラインメントで入ることで、機器に異常がないかどうか確かめます。三脚についた水準器で赤道儀の水平を出し、

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SharpCapで極軸を1分角以下の精度であわせて、

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ワンスターアラインメントで手近なカペラを導入します。まあいつもやっているのでわかっているのですが、結果はきちんと視野の中に入ってきて、

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左がASI178に50mmのレンズをつけた電子ファインダー、右がASI294MCを600mmのFS-60Qに取り付けた鏡筒の視野です。両方とも明るいのがカペラです。電子ファインダー、鏡筒の視野ともに、赤いクロスの交点は一致しています。すなわち、右の鏡筒でクロス点にきているなら、左の電子ファインダーでもクロス点にきます。実際の導入はファインダーでざっくり0.8度くらい中心からずれた位置で導入されています。水平出しやインデックスマークの誤差もこれくらいのオーダーなので、特におかしくない精度です。機器に特に異常もないと思われます。


次に、三脚の脚の一本を数cm伸ばします。

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三脚につけた水準器はこの時点で全く水平を示していません。

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この状態で極軸をSharpCapを使って再び1分角以内の精度で合わせ直します。

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ここから、赤緯を90度程度傾けて、鏡筒に水準器を乗せて、赤経を調整してその水準器が水平になるようにします。

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この時点で赤緯体は天頂方向を向き、赤経のインデックスマークは当然ずれます。

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90度傾けた赤緯を戻して、赤緯のインデックスマークを合わせて準備完了です。この状態でワンスターアラインメントを実行します。

私の説が正しければ天体は導入できない、かんたろうさんが正しければ天体は導入できることとなります。果たして結果は...



なんと、見事カペラが導入されました。

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確かめるべく、ベテルギウス、リゲルなどもそのまま導入してみましたが、きちんと導入されます。これは完全に私の負けです。

さてここでやっと、なんできちんと導入されたのか考えました。答えはすぐにわかりました。私はワンスターアランメント(2スターアラインメントの最初でも同じです)のアルゴリズムは「赤道儀の水平」を仮定していると思い込んでいたのですが、実際にはアルゴリズムは「赤緯体が天頂を向いている」ということを仮定していたわけです。落ち着いてよく考えてみると確かに、水平を仮定するよりも赤緯体が天頂を向いていると仮定する方が、より条件が緩く、かつこれで十分だということがわかります。

すぐにかんたろうさんに電話して、私が間違っていたことを素直に伝えました。最後まで意見を変えなかった頑固な私に、ずっと付き合って頂いたかんたろうさん、どうもありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。


というわけで、赤道儀の初期アラインメントで一発目に天体を視野に入れるためには、必ずしも水平は必要ないと訂正しておきます。ただし赤緯体を天頂に向ける必要があることは変わりありません。かんたろうさんの方法を使ってインデックスはずれた状態で赤緯体を天頂に向けるもよし、赤道儀のの水平を出してインデックスを合わせて赤緯体を天頂に向けるもよしです。

ちなみに、言うまでもないかもしれませんが、「初期アラインメントで一発目」にさえこだわらなければ、水平も出す必要はないですし、赤緯体を天頂に向ける必要はありません。2スターアラインメント以上でマニュアルで一つづつ丁寧に導入していけば、自動導入可能な状態までもっていけます。


とにかくやっと納得しました。やはり自分で実際に試すのが一番わかりやすいです。かんたろうさんはじめ、コメントをくれたせろおさん、りっくんさん、いろいろお騒がせして申し訳ありませんでした。

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