ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2018年11月

ブログのコメントで赤道儀のセッティングについて議論があったので、少しまとめておきます。


目的

赤道儀の設定で何が重要かを考えてみる。
具体的には極軸を取るだけでいいのか、赤道儀の水平を取るのは必要なのかを考えます。


検討すべき状況

自分が地表のある経度、ある緯度、ある高度にいるとします。その位置において赤道儀を設置することを考えます。


考えるべき自由度の確認

極軸の向きで2自由度、赤経の初期位置の不定性で1自由度、同じく、赤緯の初期位置の不定性で1自由度の、計4自由度が考えられます。 


さて、検討を始めます。

極軸をきちんと合わせた状態ではどうなるか?

赤道儀の極軸調整だけして、水平とかは全然とれていない場合は何ができて何ができないのでしょうか?実はマニュアルで天体を導入して、あとは自動追尾するだけなら、これで十分です。赤道儀の水平が出ていようが出ていまいが、関係ありません。赤経、赤緯のクランプを緩めるなり、微動であわせるなりしして、マニュアルでターゲットの天体さえ導入さえすれば、あとは自動で追尾していきます。

自動追尾で時間とともに天体がずれていくのは別の問題で
  • 極軸あわせの精度が悪い
  • モーターの回転精度が日周変化とあっていないなど
  • ピリオディックモーションもこの範疇
などが原因です。いずれにせよ、極軸さえ合わせれば、自動追尾はできます。


自動導入は?

極軸をとるだけでは自動導入まで考えると不十分でしょう。では水平を取ればいいのか?他に気をつけることはないのか?
  1. まず初期アラインメントのことを考えてみます。簡単のために、赤道儀の極軸調整は理想的に取れていて、赤経軸は正しく極軸に一致していると仮定します。
  2. 各メーカーの初期アライメントの詳しいアルゴリズムはよくわかりませんが、普通にプログラミングのことを考えると、何かを仮定しなければいけません。ぱっと考えて、最初はまず鏡筒がきちんと極軸を向いているということを仮定するでしょう。
  3. これをもう少し分解すると、初期アラインメントアルゴリズムは(極軸は理想的にあっているとするので) A. 赤緯の初期位置(クランプを緩めて赤緯の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと北向き(極軸方向)にとるということ)はあっていると仮定する(かんたろうさんとの議論で今回の記事をここから何箇所か訂正しました)でしょうしかもしれませんし、さらにB. 赤経の初期位置(クランプを緩めて赤経の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと地面に対し垂直に向けるということ)もあっていると仮定するでしょうかもしれません。さらに、C. 赤道儀は水平に設置されていることも仮定するでしょうかもしれません。
  4. でもBとCは自由度としては同じことを言っていて、例え水平がずれていても、(極軸は理想的と仮定しているので)赤経の矢印合わせのところで少しずらして補正してやれば同じことです。なので、本質的には自由度はAとBCを合わせた2つになります。セレストロンの実際のアルゴリズムは赤緯体が天頂方向を向いていることだけを仮定しています。なので、赤緯体が天頂を向いていれさえすれば、必ずしも水平が取れている必要はありません。ただし、その場合赤経の矢印もずれることになります。
  5. でもこのことは、実際の初期アラインメント時には正しくないです。たとえ赤緯体がきちんと真上を向くように赤経を合わせてあっても、初期アラインメントプログラムは「水平が取れている状態できちんと赤経の0度が真上を向いているのか、水平がずれていて赤経の0度も真上から少しずれているのに赤緯体が真上を向いているか」を知る手段がないからです。なので普通にプログラムを組むことを考えた場合、赤経が0度が上を向いていて、かつ水平も取れている状態を仮定するでしょう。
  6. なので、一発目の導入をきちんと視野に入れたい場合には、赤緯体を天頂に向けるか、水平を取って赤経、赤緯はきちんと矢印を合わせたほうがいいというわけです。



実際の導入手順

上記のことより、実際の赤道儀のセッティングのしかたは例えば以下のような手順が考えられるでしょう。ここではコメントにあったAdvanced VXを例にとって考えます。

IMG_5808
  1. 初期アラインメントで一発目からある程度天体を導入したい場合は、赤緯体を天頂方向に向ける必要があります。インデックスマークを使う場合は水平を出す必要があります(赤緯体を天頂に向ける方法が他にあるなら、水平にこだわる必要はありません)。手持ちのAdvanced VXには水準器がついていないので、ホームセンターで小さな全方向の水準器を買ってきて、上の写真のようにエポキシ接着剤で三脚に取り付けました。
  2. 最初に水準器を取り付ける時の水平は、三脚と赤道儀の間に板を挟み、そこに水準器を乗せて足の長さを調整して水平を出し、その足の長さを保ったまま、水準器を三脚の上に移動し、水準器が水平を示すように接着剤でつけました。ここまでが事前準備です。
  3. ここからが、毎回の設置時の話です。初期アラインメントの前に、極軸合わせですが、さらにその前に、毎回必ず三脚の水準器で水平を出します。
  4. 水平を出しておけば、赤道儀を設置する場所の緯度が大きく変わらない限り、北極星の高さはほとんど狂わないので、赤道儀の下の横の2本のネジでYawだけを調整して北極星を視野中心に入れます。私の場合、鏡筒(600mmとか)につけたASI294MCをSharpCapで見た画面のだいたい真ん中くらいに北極星が入るようにします。
  5. この状態でSharpCapの極軸調整で1分角程度まで合わせこみます。
  6. その後、赤道儀の電源を入れ、赤経と赤緯の矢印マークをできるだけきちんとモーターで合わせてから初期アラインメントを始めます。
  7. 基本的に水平出しと、極軸合わせこみでほとんど一発目で、鏡筒につけたカメラのSharpCapの画面の中に入ってきます。
  8. ASI224MCの時はセンサー面積が小さく流石に600mmだと一発で入らない時もあったので、50mmのレンズにASI224をつけて電子ファイダーで一発目の導入を補助していましたが、それでも二発目は十分に600mm+ASI224で入ってきます。

実は最初に書いてませんでしたが、鏡筒を赤緯体に取り付ける時にきちんと鏡筒が赤緯軸に対して垂直な面内に存在するという仮定もしています。この仮定が破られている状況とは、例えば極軸がきちんとあっていて、赤緯が0度を向いているのに、鏡筒の頭が下がっていて全然極軸方向を向いていないなどです。アリガタやアリミゾの精度が悪かったり、アリガタに対して斜めに鏡筒を取り付けてしまったときに起こります。上記設定手順を試して、それでも初期アラインメントの一発目に目標天体が入らない時は、鏡筒の取付時のずれを見直してみるといいかもしれません。

というわけで、本当は最初に説明した極軸2自由度、赤経、赤緯の不定性2自由度、さらに赤緯体に対する鏡筒の向きの2自由度の計6自由度があって(厳密にいうと、赤緯の不定性と鏡筒の向きのYaw方向は同じ自由度なので計5つ)、極軸を合わせることで2自由度減り、残り4(厳密には3)自由度を求める必要があります。初期アラインメントの一度の導入で2自由度決まるので、2スターアラインメントで一応4自由度が求まるはずです。3スター以上だと、極軸のズレまでわかると思うのですが、そのアルゴリズムはどうやっているのかあまり想像できません。結構大変そうです。

また、1スターアラインメントだと、原理的に自由度が足りないので、どこかが合っていると仮定せざるを得ません。なので、簡易アラインメントと考えるべきでしょう。でも上記方法で赤道儀を設置すると、1スターアラインメントでも十分実用的になります。

最近のアルゴリズムは相当優秀なので、一発目に導入したいという要求を外してしまえば、2スターアラインメント以上を使えば、多少赤緯体が天頂からずれていても大丈夫ですし、水平もこだわる必要はないですし、矢印も多少ずれていても構いません。下手をすると多少極軸がずれてしまっていても補正しながら追尾することも可能かもしれません。

もっと言うと、赤道儀下部の極軸合わせのPitchとYawの押しネジのところにモーターをつけて、最近はやりのPlate Solvingなんかまで駆使したら、本当にポンと置いて全自動で極軸を取って、アランメント完了まで全自動でできそうな気がします。経緯台など、簡易的なものではすでに実現されつつありますが、元気のある中国メーカーとかが、撮影に耐えられるくらいの安定したレベルのものを赤道儀で作ってくれませんかね?


毎度長々と書いてしまってすみません。とりあえずパッと考えたことを書いただけなので間違ったことを言っているかもしれません。何かおかしなところがあったらコメントなどで指摘していただけると嬉しいです。 ->かんたろうさんのコメントとその後の議論で、初出の記事からいくつか訂正しました。



 

以前撮影して画像処理に色々悩んでいた夏の星景写真です。今でも迷っていて、ずっと放置してしまっていたのですが、このままお蔵入りするのも惜しかったのと、少し時間があるので記事にすることにしました。

木曽シュミットを中心に天の川を撮影したものです。天体ドームと天の川はこの上なく相性ぴったりで、一度はきちんと撮影してみたいと思っていました。この日は一般公開の日で、透明度の高い夜で、クッリキと2本に見える綺麗な天の川に巡り会えました。個人的にはある意味フルサイズのカメラと、安いなりにも広角のレンズでちゃんと取り組んだ初の星景写真とも言えます。

流れ星が写り込んでいるのが2枚です。ペルセウス座流星群ちょっと前なので、流星もそこそこ見えるような時期でした。

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縦長の構図と、同日の北側の天の川で星野に近い構図になります。

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実は画像処理自体はずっと前に終わっていて、2ヶ月くらい経って改めて見ているのですが、黄色から黄緑、青を経ていくものはもう少しおとなしくしても良かったと今になって思います。処理している最中は正攻法はわざとらしくなるので嫌でしたが、撮って出し画像の印象が薄れている今となってはわざとらしさが気にならなくなり、正攻法もありかなとも思えます。でもまあ以前の処理のままで何もいじらずに載せておきます。もう少し経験と時間が必要でしょう。

あと、来年の天の川はソフトフィルターを使ってみたくなりました。

最後に、タイムラプス映像です。ドームがピョコピョコ動く様子が面白いです。



仕事が忙しいのと、せっかく時間ができても全然天気が良くならないので、いままで書きかけていた大量のボツ記事を少し書き加えて公開しようと思います。

今回は電視観望をするときに適したカメラ選びという観点で、これまでの経験から比較検討してみようと思います。これから電視観望を始めてみたいという方の参考になればと思います。

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なお、今回載せたものはあくまで自分でよく触ったもの、近くで見ていたもの、もしくは評判をよく聞いていたものばかりです。これ以外にも電視観望に適したカメラは私が知らないだけで、たくさん存在するでしょうし、電視観望という用途以外ではもっといろんな選択肢があるということはいうまでもありません。この点ご注意ください。


まずは通常のスペックです。それでもカメラメーカーのところには普通はSNR1sのことはほとんど触れられていません。SONY独自の値ですが、電視観望にはこのSNR1sは、いかに暗い天体を制限された時間内に映し出すという意味で、非常に重要になります。

あと、基本事項としてですが、撮影では重要なファクターになる「冷却」は電視観望にはほとんど必要ありません。手軽さも性能の一つと考えると、電力、ケーブル取り回し、重量などから、冷却にかけるコストほどメリットが得られないと考えています。なので冷却モデルは今回は考慮に入れていません。


電視観望のためのカメラ比較

CameraセンサーTypeサイズ [mm] 画素数1素子サイズ [um] SNR1sbit価格
ASI224MCIMX2241/3"4.9x3.71304x9763.750.13lx123.0万
ASI385MCIMX3851/1.9"7.3x4.11936x10963.750.13lx124.4万
ASI294MCIMX2944/3"19.1x13.04144x28224.60.14lx149.5万
ASI290MCIMX2901/3"5.6x3.21936x10962.90.23lx123.6万
ASI290MMIMX2901/3"5.6x3.21936x10962.90.23lx124.8万
ASI178MCIMX1781/1.8"7.4x5.03096x20802.40.46lx144.4万
ASI183MCIMX1831"13.2x8.85496x36722.4?126.5万
Revolution ImagerICX8111/3"4.8x3.6976x5825.0??4.0万
SV105OV27101/2.7"5.9x3.31920x10803.0?100.7万

* 価格は2018年11月20日現在の天体ショップでの典型的な税抜き価格、ただしSV105はAmazonなど。

SNR1sの値が小さいほど電視観望に向いていると言ってしまってもいいくらいかと思います。一番SNR1sのいいASI224MCでさえ、まだ暗いと思っているので、まだまだ電視観望は発展途上の技術と言えます。表を見ると、SNR1sはセンサーの1素子のサイズにだいたい反比例することがわかると思います。なのでRevolution ImagerはSNR1sの値が公表されてないとはいえ、暗い天体に有利なはずで、電視観望用のカメラとしてはうまく選んでいるのかと思います。


用途など

Camera焦点距離用途使ったことがある自分で持っている参照記事
ASI224MC150-600mm星雲、星団参照記事
ASI385MC200-1200mm星雲、星団××
ASI294MC400-2000mm星雲、星団、天の川参照記事
ASI290MC200-800mm星雲、星団××
ASI290MM200-800mm太陽参照記事
ASI178MC300-600mm参照記事
ASI183MC400-1200mm星雲、星団×参照記事
Revolution Imager200-800mm星雲、星団参照記事
SV105200-800mm月、惑星×参照記事


用途と適した焦点距離は、私の経験から独断と偏見で書いてあります。基準はM31アンドロメダ銀河の全景が見えるのが最小、自動導入で困らないくらいの範囲でM57が程よく見えるのが最大の焦点距離です。手持ちの鏡筒がこの範囲に入っていればとりあえず使うことができると思います。

もし手持ちの鏡筒の焦点距離がこんなに短くないという場合には、Revolution Imagerに付属するような0.5倍のレデューサをつけると、倍の焦点距離で同じ視野角になるので、焦点距離の短い鏡筒の代わりになります。例えば、Revolution Imagerなら400-1600mm程度の焦点距離でも使えるようになります。ただし、星像は乱れるので注意が必要です。


メリット、デメリットなど
Cameraメリットデメリット
ASI224MC感度良、安価、電視観望入門向き、惑星撮影にも使えるセンサー面積小、導入が大変
ASI385MC感度良、面積中、コストパフォーマンスいい
ASI294MC感度良、面積大、高解像度、性能だけで見るとこれがベスト、広角レンズで天の川なども値段が高い
ASI290MC感度良、電視観望入門向き、モノクロ版とセットで持つと惑星撮影で良センサー面積小、導入が大変、値段が224MCより少し高く、SNR1sは少し劣る
ASI290MM太陽電視観望にはこれ、太陽撮影や惑星撮影にはベストかモノクロ
ASI178MC高解像度、月の電視観望にはこれ感度低い、星雲には向かない
ASI183MC面積大、高解像度、ビニングが使える感度低い
Revolution ImagerPC無しで手軽に電視観望ができる、モニターなど一式込みでトータルでは相当安価、カメラでスタックできるので星雲などもOKアナログ信号
SV105ひたすら安価露光時間が500msに制限されるため星雲は向かない、月や惑星なら可


ASI294の焦点距離は、カメラレンズアダプターとカメラレンズを使うと、広角なセンサーを利用して天の川などの星景、星野を見るのにも適しています。もちろんASI224MCなどの小さいセンサーでも、より焦点距離の短いCSマウントレンズなどを使って天の川を見ることもできますが、淡い星を見るという観点から行くと、広角センサーで「焦点距離の長いレンズを使う」方が迫力があります。コントラストは眼視の場合は倍率、カメラを使った場合には焦点距離だけで決まってしまうからです。


以下、それぞれについてコメントです。
  • ASI224MC、ASI385MC、ASI294MCに関しては感度の観点からはベストに近くて、これ以上を求めるのは現時点では難しいと思います。唯一可能性のあるのが同じSONYの一眼レフカメラのα7S系です。あれはお化けセンサーで、カメラ単体で電視観望をするならベストかと思いますが、今のところ単体でのセンサーの仕様は公表されていませんし、PCに取り入れてSharpCapでスタックとかになると、一部可能になりそうな動きはありますが、まだちょっと大変です。
  • ASI385MCは実際には触ったことはないですが、周りの評判を聞いている限りは感度も良く、入門機としても相当こなれている印象です。
  • ASI224MCは入門機としては安価でいいですが、センサー面積の小ささから天体の導入に苦労するかもしれません。そういった観点からはASI294MCは16倍の面積を見ることができるので、導入は相当楽になりますし、画素数もPCの解像度よりはるかにいいので、多少PC上で拡大しても画面が破綻することなく、広角から狭角まで幅広く対応できて使いやすいです。値段さえ気にしなければこれがベストでしょう。
  • ASI290MCは実際に使ったことがないのでわからないのですが、聞いている限り評判は悪くないですし、ASI290MMはモノクロということもあり、太陽の電視観望、撮影では遺憾無く性能を発揮したこともあり、惑星撮影まで視野に入れるなら、カラーモノクロ合わせて持っておくのもいいのかもしれません。
  • 私自身は短時間しか使っていないのですが、ASI83MCはその高解像度から特にビニングを利用するとよく見えますし、使い方によっては電視観望にも向いているカメラと言えると思います。
  • Revoluition Imagerは計算機を使わない電視観望としては数少ない有力な選択肢だと思います。PCを使わないので手軽で、観望会などでも使いやすいと思います。アナログ出力なので多少ノイズが多いですが、カメラ単体でスタック機能を持っていて、ノイズ軽減ができるのは特筆すべきでしょう。今回、改めて素子の大きさを認識することができました。根本的に感度のいいカメラなのかと思います。
  • SVBONYのSV105はブログのコメントに質問があり、星まつりで少し触らせていただいたので載せておきました。ただやはり500ミリ秒までの露光時間しか取れないところが決定的な欠点だと思います。値段が7千円程度と他と比べても格段に敷居が低いので、これでうまく使えたらと思ったのですが、星雲星団はよほどうまく使わないと厳しいかと思います。現時点では月、惑星などの明るい天体がオススメです。

こうやってみて、コストパフォーマンス、手軽さ、性能と比べると、(自分では使ったことはないですが)ASI385MCがベストバイでしょうか。次点がASI294MCとASI224MCですが、これらは高価高性能、お手軽入門用とベクトルが逆方向です。

以上参考になりましたでしょうか。自分自身のまとめも兼ねているのですが、個人で見ている機種に限りもあるのでここらへんが限界です。他にもQHYCCD社のカメラも同じセンサーを使っているものは同程度の性能があるかと思われます。面白い情報などありましたら、またコメントなどでおしらせください。



昨晩、富山県天文学会のお祝い会と忘年会を兼ねた食事会がありました。なんのお祝いだったかというと、なんと富山県天文学会が環境大臣賞という立派な賞をいただいたのです。「大気環境保全意識の高揚に関し積極的な活動をされ」ということで、第三十回「星空の街・あおぞらの街」全国大会で、K会長とSさんが香川県の高松まで行って表彰されたそうです。K会長はじめ、歴代会長、会員の方々の50年以上にわたる、たゆまぬ努力の賜物かと思います。心よりお祝い申し上げます。

富山県天の長い歴史の中で見ると、私はまだ入会したばかりの新参の者で、大した貢献はできていないので心苦しいのですが、こういったお祝い事は嬉しい限りです。お祝いムードの中、出席者は30人近くにもなり、K会長お気に入りのカフェフェローの中は人でいっぱいで、それぞれ天文談義に花が咲きました。私も最近やっと、メンバーの顔と名前が一致してきましたが、今回はお祝いということで、普段あまり顔をあわせられない方も何人か来られていました。

M元会長には昔の話をお伺いし、最近加入されたKさんとも少し話すことができました。Kさんは撮影までしたくて、VixenのSXP2とSD103Sのセットを一気に購入し、さらにASI290MCも手にいれ、かなり気合が入っているようです。会社を子供に譲り、できた時間で新しく天文を趣味にしようとしているとのことです。でもやはり撮影までしようとすると大変で、特にコンピューターが大変だと言っていました。最近導入まではできるようになったとのことなので、Revolution Imagerとかの計算機いらずの電視観望なんかもいいと思うのですがどうでしょうか?

他にも何人かの方達とお話しすることができました。そんな中、以前立山のスターウォッチングでご一緒したAさんから頼まれていた(実は完全に忘れてしまっていたのですが、言われてやっと思い出した次第です。)、Meadeの架台の修理の依頼を受けました。会が終わって一旦駐車場を出て、「あっ、受け取るの忘れた」と思い出し、また駐車場まで引き返してAさんから無事に引き取ることができました。私はEXT-60ATをもっているのですが、それを想像していたので結構複雑かと思っていたら、架台だけでコントローラーとかもそもそもついていないとのことです。故障状況を聞くと、電源も全く入らないとのことです。

自宅に帰って調べてみると、機種はETX-90RAで通称Meade ETXと呼ばれる、どうやら1996年に出た一番最初のモデルで、電源オンで赤道儀の赤経の回転が始まるだけのかなりシンプルな仕組みのようです。今ではめずらしいMADE IN USAとなっていました。

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まず電源関連を確認するために蓋を開けてみます。ところが、蓋もネジを3本ドライバーで開けなければいけないタイプで、なんでこんなにめんどくさいのかと思いましたが、どうやら一回電池を入れると交換なしで相当長い期間持つことが理由のようです。ネジをはずし、下を向けると、金属でできた重い裏蓋が下に下がって外れます。蓋を外すと下の写真のようになっていて、基本的には電池でモーターを回すだけのものすごくシンプルな構造です。なのでこの架台は斜めに取り付けて、赤道儀として働き、赤経のみがモーターで回転するということがやっとこの時点でわかりました。MEADEお得意の、経緯台での自動導入ができるようになる前のものです。

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さて、修理の前に色々調べてみます。上部には銀色のつまみがいくつかついています。上から、赤緯回転軸を締めて固定するためのつまみが一つ。そのずっと下に赤緯の微動ができるつまみが前後に2つ(一つは写真には写っていません)。このつまみがあまりに軽かったので、何か外れたりしているのではと疑って、横の蓋を開けて中を見てみました。

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ネジを回すと、赤緯回転体が少しずつ動くようになっています。真ん中の金具が端に行ってしまうと、それ以上回らなくなるので、戻すしかありません。このことは無理につまみを回したりしないようにするためにも覚えておいてもいいでしょう。約50回転で真ん中から端まで行くようです。ここはただつまみが軽いだけで、特に問題はなかったので、そのまま蓋を閉めました。

他に底の水平面に2つの部がついていますが、これは赤系の回転の微動と、固定です。

さて、問題の基板です。まず電池を入れる端子が、多分以前の液漏れで接触が悪くなっていたので綺麗にしました。電池を入れると普通に電圧は伝わっているようなのですが、スイッチを入れてもまだモーターは回りません。他にも故障箇所がありそうです。本体から外して基板の裏側をよく見ていくと、2つあるスイッチの一つがグラグラしていて、そのスイッチの根元の半田付けしてあるところがパターンごと剥がれていて、断線してしまっていることがわかりました。

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上の写真でも、6つ並んでいる端子のいくつかの線のパターンが根元のところで切れてしまっているのがわかるかと思います。実際6つのうち5つは完全に切れてしまっていました。おそらくスイッチにかなりの力がかかってしまい、パターンを剥がしてしまったものかと思われます。

まずはスイッチの枠の根元の金具を曲げて、基板にある程度固定するようにして動きにくくしました。上の写真の空いているパターンのところに黒い四角の金属部分が見えていますが、最初はこれ伸びていて、ただ挿さっていただけでぐらぐらでした。写真はすでに曲げた状態になっています。

通常、剥がれたパターンを復活させるのは難しいので、別のリード線を使い端子が露出しているところを結びました。

IMG_5791

リード線を半田付け後、テスターで導通確認とショートがないことを確認して、電池を入れてスイッチを入れるとモーターの動作音がきちんとするようになりました。おそらこれで大丈夫なはずです。

ここで疑問なのは、どうやって恒星時に合わせているのか?モーターの回転速はスビードは電圧で変わるはずなので、電池の残量によってはズレていく気もするのですが、どうなのでしょうか?しかも付属の鏡筒が焦点距離1250mmとそこそこ長焦点なので、極軸合わせも、天体の導入も結構大変なはずで、追尾も誤差が効いてくるはずです。回転を安定化させるようなそれらしい回路は見当たりません。

いずれにせよ修理は完了したので、とりあえずこれで一旦お返しして使ってもらおうと思います。
 

久しぶりに月を撮影しました。富山県天のKさんにたきつけられて「ほしぞloveログ」ならぬ、最近話題の「月面love」を狙ったのですが、残念ながらLがどうしても見えず、「月面 ove」になってしまいました。でも月面Xも普通に写っているので、それはそれでいいのですが。

cut

富山県富山市 2018/11/15 21:18
FS-60CB + ZWO ASI178MC + AZ-GTi経緯台
Shutter 20ms, 17fps, gain 0, 800/1000 frames
AS3でスタック, ImPPGで画像処理 


E
Eの下くらいにLがみえるはずなのですが...。
Oはたくさんあります。ついでにミッ◯ーも。 

V
Vは見えます。

X
Xは少し形が崩れてしまっています。

いつもはAutostakkert3でスタックした後に、Registaxでwavelet処理をするのですが、なぜかクレータの縁に緑色の輝点がたくさん出る現象に見舞われました。 これまでこんなことなかったのですが、なぜなんでしょうか。原因不明です。色々やったけど解決しそうにないので、太陽でよく使っていたImPPGで細部を出しました。これ月でも結構いけます。キレッキレです。一つだけ欠点を挙げるとすると、ImPPGはモノクロしか扱えないところでしょうか。


ところで以前、今年の5月に「月面Y」というのを記事にしたのですが、今回のEは実は同じ場所でした。光の当たり具合でYにもEにも見えるようです。

2018-05-22-1126_6_lapl6_ap1127_Resample20_RS_cut
以前撮ったやつです。EよりもYに見えると思うのですがどうでしょうか?
あ、こちらには綺麗にLが写っていますね。

しかもLも写っているので、半年かけてLOVEが完成したとしておきましょう。





 

前回撮影した、AZ-GTiの赤道儀モードで、焦点距離600mm、ノータッチガイドで撮影した、カリフォルニア星雲の全画像を比較明合成および動画にしてみました。その結果、大きな揺れはほぼピリオディックモーションであるとわかりました。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、細かい揺れを何度か繰り返し、右上に上がっていってしまいます。細かい左右の揺れの部分がピリオディックモーションです。右上に上がっていっている動きが極軸のずれからくるものか、もしくは構造的に弱くゆっくりとたわんでいるものかもしれません。

合計83分で細かい揺れが8回半くらい揺れているので、10分位の周期でしょうか。

NGC1499_output_comp
比較明合成です。



比較明合成のついでに作った動画です。
1分露光の画像を83枚使っています。
ぴょんぴょん飛ぶようなイメージで、
3箇所に止まっているのがわかります。
早く移動しているところの画像は星像が伸びてしまっています。 

方角とかもあまり感がない、画像からのざっくりした計測ですが、ピリオディックモーションは+/-75秒角くらい。Advanced VXが+/-15秒くらいだったので、その5倍くらいの大きさです。ちょっと大きいですね。これくらいだと焦点距離によってはガイドは必須になってくると思います。

しかも動画をよく見ると、ピリオディックモーションもきちんとしたサイン波はではないようです。ピョンピョン飛ぶような動きで、両端ではある程度動きは止まりますが、それに加えて片道ですが真ん中近くでも一度止まります。一周期の間に2箇所でなく3箇所泊まるところがあります。そのためにピリオディックモーションであるにも関わらず、前回の救い上げ率が40%と少し大きかったのかと思います。通常ならその3分の2くらいの25%くらいにとどまっていたはずです。

ちなみに、右上方向に上がっていくのは1時間半で180秒角くらいなので、1分あたりざっくり2秒角くらい。極軸は1分角くらいの精度では合わせてあるので、仮に1分角を仮定したら、想定の8倍くらい大きいことになります。なので極軸の精度からくるずれというよりは、たわみの可能性が高そうです。

逆にこの結果から、ほぼ揺れはピリオディックモーションで制限されているので、ガイドさえうまくいけは、(重量で制限される鏡筒で実現できるようなくらいまでの)そこそこの長焦点でも、もっと長時間の露光で十分なんとかなりそうです。たわみの方も、ガイドすれば多少軽減できますが、ガイドカメラと鏡筒の相対的なたわみの場合はどうしようもないです。

 

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