ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2017年03月

かなり大きな本屋に行く機会があったので、何か面白い本がないか探していたら「反射望遠鏡の作り方」という復刻された本を見つけました。星野次郎著で、昭和49年7月18日初版発行で、平成21年8月10日復刻版1刷発行だそうです。値段は税込6480円と専門書にふさわしい値段だったので、少し迷ったのですが、いい本は縁なので、手に取って見て面白そうだったため購入してしまいました。


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5章構成になっていて、1章目は望遠鏡についての基本的な話をし気を使いながらわかりやすく書いていて、2章に反射鏡の作り方、3章に架台、4章が反射型の各種方式を式を交えて説明していて、5章は研磨機についてです。

前半は鏡の作り方にかなりのページを割いています。さすがに自分で鏡を磨いて作ることは今はないと思っていますが、以前読んだ「宙のまにまに」というコミックの中で、天文部で反射型の主鏡を磨く話が出ていたので興味はありました。ただ、マンガの中の話なのであくまで簡単な作り方が描いてあるだけで、詳細な作り方をもう少し知りたいと思っていました。 もちろん古い本なので情報が古いところもたくさんありますが、鏡のテストの仕方などは今だに通用しそうです。特にロンキーテストは以前やり方を調べたのですが結局わからなかったので、今回の説明を読んでやっと概要が理解できました。

後半は主に架台への固定方法で、「マウンチング」というちょっと古い表現になっていまが、赤道儀にまでかなり突っ込んで言及していて、赤道儀の機械系を基礎から理解するためには非常に有効です。モーターに関しての記述が薄いことと、当然コンピュータと組み合わせた現代の自動導入などの記述は無いのが少し物足りないですが、赤道儀のギヤなどの理屈や、実際に作る際の細かい技術など、読むだけで参考になるところがたくさんあります。

4章が意外に面白く、例えばシュミットカメラの補正板の式なども書いてくれています。最近手に入れた天文ガイドの過去の記事にも同じ式が書いてあることに気づき、読み比べてやっと理解できました。手持ちのC8をバラしたときに、補正板の意味がいまいちわからなくて、回転方向の位置が決まらなかったのですが、これを見ると回転位置はあまり関係ないということがわかります。補正板のずれは星像の歪みとなって出てくるので、惑星とかの撮影にはあまり関係なく、ディープスカイに走った時にもし星像がズレるならば回転方向を変えてみてもいいかもしれません。


 

色々苦労してきましたが、やっとSWAT-200で一軸ガイドで星像がほぼ真円に近くなりました。焦点距離600mmで、5分露光、一軸制御だけでのSWAT-200なので、まあまあの成果だと思います。現在のセットアップは写真のようになっています。

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鏡筒はFS-60Qで焦点距離は600mm、SWAT-200をPHD2で一軸ガイド。ガイド鏡はASI224MCに焦点距離50mmのノーブランドのCマウントレンズ。三脚はGitzoのGT3840Cです。SWATとFS-60Qはモノタロウで買った簡易なクランプ台で接続しています。これはより構造的にシンプルなものでまずは試したいと思っているからです。

2月4日の記事で、3秒露光時の原因が赤径へのガイド信号のフィードバックが原因と突き止め、ガイド信号を綺麗にすべく200mmのガイド鏡レンズを導入し、3月12日の記事でその200mmのレンズのたわみが赤緯方向に星像の流れを作っていたことまで突き止めていました。これらの過程で、PHD2の機能がだいぶ理解でき、Advanced VXの上で元の50mmのガイド鏡レンズで精度を上げつつ、流れを止めるというところまで持っていくことができました。

昨晩、満を辞してSWAT-200で試しました。ところが、最初はどうしても星像が赤緯方向に流れてしまいうまくいきません。極軸はいつものようにSharpCapで合わせてあるので、1分角程度の精度は出ているはずです。それでもPHD2で見ていても、赤緯方向の一方向に流れていきます。結局、この原因はターゲットの天体を変えるとかで機材に触ると、機材全体を動かしてしまい、結構簡単に極軸からずれしてまうことにありました。現在使っているGitzoの三脚は、揺れなどはあまりなくていいのですが、やはり全体的に軽いということがあり、機器に触ると数分角くらいのずれが出てしまうようです。

仕方ないので、PHD2の流れが出ないように南天で星が上(北)に動いていくときは極軸が西にずれているので、少し東に三脚の脚をずらしてやる、南天で星が下(南)に動いていくときは東に三脚の脚をずらしてやるという方法で、数回繰り返してやると、PHD2上の赤緯のずれをかなり減らすことができました。PHD2でトレンドから計算した極軸の向きのエラーもリアルタイムで表示されるのですが、ほぼ1分程度になりました。

結果を示しておきます。最初の写真が赤緯がずれていく場合、次がずれをなくした場合です。両方とも5分露光です。

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実はこれ、うまくいったときの写真を最初にとって、その後機器に触ったときにずれてしまったものを撮った写真です。すぐにこんなにうまく取れたわけではないですが、少なくともやっとこれくらいのコントロールはできるようになったということです。

ちなみに、未だにSWAT下に微動回転装置をつけていないので、三脚の脚をずらすというローテクでやっていますが、なんとかなりそうな雰囲気です。軽量化や、構造的に弱いところをつくらいないという観点からはこちらの方がいいくらいです。

まあ、それでも微動回転装置を使った場合よりは精度は出ないということは以前計算していまして、とりあえず今回は5分間の露光では真円に近くなるくらいまでには精度を出すことができました。今回は自宅で試したので、それほど暗い環境ではなくこれくらいの露光時間で十分でしたが、より暗いところに行ったり、より低いISOでとる場合にはもう少し長い露光時間が欲しくなるため、さらに極軸の精度が必要になってきます。

あと、先日購入した回転装置のテストも同時に行いました。こちらはすこぶる快調で、まあ当たり前と言えば当たり前なのですが、これまでのようにカメラを回転させると毎回ピントがずれるというようなことはなくなり、時間の節約につながります。もっと早く買っておけばよかったです。ワイドリングの効果はAPS-Cなのでどこまであるかわかりませんが、フラット補正の時に詳しく検証して見たいと思います。

ちなみに、昨晩は新月期で機材のテストだけではもったいなかったので、星像流れのテストがてら3分露光で蠍座のIC4592付近を撮影しました。うまく画像処理ができたらまたアップします。


  • 赤道儀で極軸の精度を1分角で合わせることができたら、4分間の露光で1秒角程度の星像の流れになる。

使い方としては、例えば
  • 3分角で極軸を合わせたら4分間で、3秒の流れ
  • 10分角の精度なら4分間で10秒角の流れ
  • 1度の精度なら4分間で1分の流れ
  • 4分角の精度なら1分間で1秒の流れ
とかになります。



簡単に考える方法として、極軸からどれくらいずれていたら、星像が、ある時間内でどれくらい流れるかをざっくり見積もります。
  1. まず極軸が1度ずれているとします。
  2. その場合、赤道儀で追いかける方向と、実際に星が進む方向に(ターゲットの星の位置によりますが、例えば東西に極軸がずれていたら南天において)最大で1度のずれができます。
  3. 度をラジアンにするには180で割ってπをかければいいので、ざっくり60で割ればいいことになります。なので1度のずれということは、イコール1/60ラジアンの角度を持って星が互いに別方向に行くということになります。
  4. 1時間で星は15度動くので、15度に1/60をかけたものが星像の流れになります。円弧の関係の、円の半径の部分が15度で、中心角が1/60ラジアン、弧の部分が星像のずれにあたり、この場合15度 x 1/60 = 15分角となります。角度とラジアンの変換がたまたま約60分の1なのでこの変換がなりたち、頭で考えることができるくらい簡単になりすごく便利です。
  5. 1時間で15度進むので、4分間で星は1度進み、1度のずれは上の計算から最大1分角の星像の流れを生みます。1分角の精度で極軸を合わせたら、4分間で1秒角のずれとなるわけです。

極軸は電子ファインダーなどを使うとがんばれば実測で1分角くらいでは合わせることが可能になります。これなら20分露光しても5秒くらいの流れなので、私の場合カメラの1ピクセルくらいにあたり、ここら辺が許容範囲といったところでしょうか。あ、もちろんこれはノータッチガイドの場合の許容範囲です。SWAT200のノータッチガイドでの星の流れを見積もるときに考えた簡単な見積もり方です。SWATは小型軽量ですが、その分機材に調整で触れたりすると極軸合わせの精度も変化するので、1分角を維持するというのが難しいということもわかってきました。

普通の赤道儀で2軸ともガイドさえしてしまえば、こんなに精度はいらないですね。


 

  • 望遠鏡側の揺れの1マイクロメートルが星のずれ1秒角程度に相当する。

頭の中ででもできるくらいの、簡単な計算の仕方を書いておきます。
  1. 鏡筒の長さが1mくらいのオーダー(10cmでも10mでもないという意味)だとします。
  2. もし鏡筒の先端が1μ[m] (= 10^-6 [m] = 1e-6 [m])動いたとします。
  3. 角度にすると1e-6[m]/1[m]=1e-6[rad]になります。
  4. ラジアンと°(度)の変換はπ(=3.14)で割って180をかければいいので、大まかにいうと60をかければいいです。なので1e-6[rad] x 60[°/rad] = 60e-6[°] = 6e-5[°]となります。
  5. 分角にするのは60をかけ、秒角にするのにさらに60をかけるので、3600をかけてやります。なので6e-5[°] x 3600 = 6e-5[°] x 3.6e3 ~ 20e-2 [秒角] =0.2[秒角]程度となります。
  6. 例えば、鏡筒が50cmくらいの長さなら2倍くらい星像のずれは大きくなり、0.4秒角くらいになります。まあ、1秒角くらいのオーダーということです。
1mのオーダーの機器が、1マイクロメートル動くと、すごくざっくりで星のずれ1秒角くらいという値を覚えておくと楽です。

実はこの値は相当厳しいということがわかります。今の私のシステム(鏡筒の長さが50cmくらいのFS-60Qで焦点距離600mm、EOS 60Dの1ピクセル3.75μm)だと、1ピクセルあたり1.4秒角程度になります。上の見積もりが正しいとすると、10μm(たかだか髪の毛の太さの10分の1くらい)の望遠鏡側のゆれで4秒角くらいの星像のずれなので、数ピクセルくらいになり、撮影した画像では容易に星像の流れとして認識されます。ネジが緩かったり、機器の自重でのたわみで簡単に星像の流れになり得ることがわかります。


 

2017/3/25、石川県小松市の「サイエンスヒルズこまつ」で宇宙飛行士の油井亀美也氏の講演会と、油井氏と銀河鉄道999の原作者の松本零士氏の対談があるということで、朝から家族4人で富山から高速に乗り移動しました。前回の渡辺潤一氏の講演以来2度目になります。


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そもそもの話は、昨年末に所属する富山県天文学会のKさんから小松市で惑星撮影で活躍されているOさんのドームを見に行かないかとお誘いを受けたことから始まるのですが、年末は実家に帰らなければならなかったこともあり泣く泣く参加できませんでした。今回改めてサイエンスヒルズのイベントに合わせてOさんのドーム見学にお誘いいただきました。なので私としてはドーム見学がメインで、ついでにサイエンスヒルズのイベントにも言ったというのが正しいです。

それでも家族にはサイエンスヒルズこまつは好評でした。講演会に申し込むときには、家族には油井さんの話しかしていませんでした。なので子供二人はすぐに行くと言ったのですが、妻はいまいち乗り気ではなく、3人で申し込んだのですが、松本零士が来るとわかると妻も途端に行きたいと言いだし、急遽4人目を申し込んだという経緯があります。さらにイオンモール小松が金曜日からオープンで、まだオープンフェアの真っ最中だったので、開店の9時前から並んで行って来ました。こちらも家族には好評で、イベントと合わせて小松市で一家揃って一日中楽しむことができました。

油井さんの話は宇宙飛行士になるにはというテーマで、とても話し方がうまくて、子供にも大人にもどちらにも興味を引くようにしてあり、参考にするところが多かったです。特に質問コーナーでは子供たちの無茶な質問にも、すごく丁寧に答えていて好感が持てました。

松本零士氏は言わずと知れた銀河鉄道999や宇宙戦艦ヤマトでおなじみの大御所の漫画家で、昔よくアニメを見ていたのを覚えています。今回の対談で先生が直接語っていたメーテルのモデルの女性がいたことなどは初めて聞く話で、とても面白かったです。中学の頃から書いていた女性の顔が、写真で見た楠本高子という、シーボルトの孫娘の顔にそっくりだったとのことで、この女性がメーテルのモデルになったとのことでした。

二人とも共通して言っていたことは、大きな夢や目標を持って、決して諦めるなということでした。今はその夢を実現する力や機会を持っていなくても、長い間その夢を持ち続けることができれば、きっと叶うというような内容でした。宇宙が好きな子供たちは随分と励まされたのではないでしょうか。


イベントが終わってから、さっそくメインのOさんのドームを見に行きました。妻と息子のSukeはそのままサイエンスヒルズに残りましたが、娘のNatsuはドームを見たいというので、ご一緒させていただきました。到着してからすぐに話が盛り上がり、小松の天文仲間の話から、機材の話、惑星撮影の話など、機材を見る前にもずっと話し込み、機材を見ながらもずっと天文談義に花が咲きました。中でも驚いたのは天文ガイドの創刊号から所蔵していることです。以前図書館で1980年のは見たのですが、創刊号を持っている方がいて、しかも中も見せていただけるとは、とても貴重な体験でした。感想は「薄い!」です。最初の頃はこんなに(内容ではないですよ、本の厚さがです)薄かったんだとびっくりしました。でもここから始まって、現在でも続いている数少ない雑誌なので、本当に貴重です。

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ドームの中で機材を見ている最中に、一緒に来ていた県天の女性のHさんと娘が、私とOさんの会話が早口すぎてよくわからないとツッコミを入れまくっていました。それくらい色々話していたのです。Oさんの惑星撮影のメインの機材はタカハシのμ250のCRS版の方で、赤道儀はミカゲ光器の相当屈強なものでこちらは頂き物だそうです。CCDは私の持っているASI224MCを含めて、ZWO社のものを4つ(今は3つ?)も持っているとこのとで、今メインに使っているのはASI290MCだそうです。ドームは会社の社屋の2階の南側テラス部分に設置してあり、岐阜の西村製作所に作ってもらったものだそうです。その中に上に書いたμ250と、KASAIのBLANCAという屈折がEM-200にのっていました。やはりドームだと晴れていれば毎晩すぐに撮影ができるということで、とても羨ましい環境でした。いつかはドームとも少し思いましたが、さすがにまだ星暦1年未満の初心者には贅沢すぎます。

とにかくとても楽しくて、すぐに時間が経ってしまいました。Oさん、今日はどうもありがとうございました。帰りがけにドームを下から見ていたら、幻日環が出ていてました

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帰りは妻と息子とイオンモールで合流して、夕食を食べて富山へと帰宅しました。今晩は晴れているので、これからまだ色々試したいと思います。




 

相変わらず富山の天気が全くさえないので、Stick PCネタです。

前回までの記事で、天体撮影時のStick PC DG-STK4Dのリモート操作を確立するために、AUKEYというメーカーのWF-R3というUSBに直接挿して使うWi-Fiルータのセットアップを試すなどしていたのですが、万が一遠征などの外で使えなくなるのも不安なので、予備のネットワークとしてBuffalo製のホテル用Wi-FiルータWMR-433-BKを試してみました。ホテル用の小さいサイズのWi-Fiルータとしては数少ない11ac対応で、5GHzで使えるものです。意外なことにアマゾンだとBuffaloの方が安いです。

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上の写真の手前に写っているものがBuffaloで、Stick PCのUSBのところに挿さっている小さなのがAUKEYなのですが、Buffaloの方も思ったより小さくて、USB「バッテリー」からケーブルを介して給電します。なのでAUKEYと違ってPCが無くてもネットワークが確立できます。これは大きな違いで、AUKEYはWindowsが立ち上がって、アプリケーションがきちんと動いていないと、そもそも何も動かないので、緊急時の安定性はBuffaloの方が完全に上です。

セットアップはとても簡単で、マニュアルの通りにやっていけばStick PCと別のPCをそのままDHCPで接続でき、ホストネームでRemote desktop経由でStick PCを操作することができます。

もともと家庭用無線LANルータくらいのことができると期待していたのですが、思ったよりというか、相当低機能でした。期待していたのにできなかったことが
  • SSID名を変えることができない。
  • パスワードも変えることができない。
  • LAN側のIPアドレスの範囲を変更することができなくて、192.168.13.XXXで固定。
と言った具合に、ある意味ほとんど設定できるところがありません。できることは
  1. ルーターモードでWAN側が有線か
  2. ルーターモードでWAN側が無線か
  3. 中継機モードか
  4. インターネットなしのローカルネットワークモードか
のほぼ4つだけです。この数少ないできることの中で、いいなと思ったことは、WAN側を有線でも無線でも選択できることです。なので自宅などでは、無線のみの全く有線なしの状態でStick PCと他のPC間のリモート操作と、インターネットが同時に使えます。これは、これまでのAUKEYでも無理すればできそうな感じでしたが、AUKEYに付属のユーティリティソフトがあまりにいまいちで、無理な挑戦はやめたという経緯があるので、ここは利点です。それでもSSIDはおろか、パスワードさえも変えることができないというのはAUKEYに比べてもあまりにも低機能であることは否めません。

AUKEYに比べて、利点はというと
  • PC側に面倒なセットアップが何もいらない。
  • マニュアルがまともな日本語。
といったところでしょうか。特にPC側にソフトを何も入れなくていいというのはかなり大きな利点です。PC側を下手に不安定にする恐れもありません。温度上昇に弱いという報告が随所で上がっていますが、今のところは冬でしかも夜の使用なので問題ではありません。それでも結構温かくなります。夏になった時にトラブルが出るかもしれません。

まあ、バックアップとして持っておくぶんには及第点としておきます。 (2017/10/26 追記: 結局接続が結構な頻度で切断されることがわかり、ELECOM製のポータブルルーターを購入しました。)
 

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