ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2016年11月

西はりま天文台に寄る機会がありました。四方を山の中に囲まれていて、光害も少なそうな非常にいい立地の中に建てられています。

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時間的にはわずかでしたが、60cm反射鏡型望遠鏡と2m反射鏡型望遠鏡「なゆた」を見ることができました。

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これだけのものを一般の人に普段から見せているのは驚きです。

兵庫県立大学に付属の施設で、基本的には研究が主体のようで、学生を含めて10人程度の研究者が常駐しているとのことでした。途中センター長とお話しする機会があったのですが、一般の方にも大型望遠鏡を使ってもらう機会を設けるなど、プロの天文屋とアマチュアの天文屋が交わる世界最先端というような表現をされていました。

ここには宿泊施設があり、一般の人の宿泊も可能のようで、この施設に宿泊した人には何種類かの天体望遠鏡を有料もしくは無料で使わせてもらえるようです。26cmの反射型やタカハシのε-180でしょうか、かなり上級者向けのものもあるのと、それを使って自分で撮影もできるようです。他にもBORG77は8台もあり、こちらは無料のようです。SDカードやカメラを持ち込むこともできるようです。あいにくこの日は曇り空で星は見えそうもありませんでしたが、このような施設がそばにあるというのは羨ましい限りです。

数河高原でオートガイドで撮影したM31とM45を画像処理してみました。基本は画像処理練習(その1): 一連の工程を試すに沿っていますが、フラットフレームは画像処理練習(その2): フラットフレームでの議論から、ISO100の0.5秒のもの32枚にダーク減算をしたものをコンポジットして使いました。 

一つ大きく違うところが、HUQさんのコメントの参照ページを参考に、途中まできちんとホワイトバランスに気をつけたところです。少なくともSI7でのデジタル現像まではホワイトバランスに気をつけています。ですが、 最後のPhotoshopのところで迷いました。細部を出そうとNik collectionを使ったのですが、これだとバランスを保つことができません。自分の好みの色みたいなのもあるのですが、客観的には何も正しくないことも重々承知です。淡い部分もまだまだ引き出せているとは到底思えません。色々触っていて、何が正しくて何が間違っているのか、まだまだよくわかっていないことを思い知らされました。ですから今回の画像は、やはりあくまで習作です。


M31アンドロメダ銀河

M31up

撮影データ: 2016年11月24日20時10分, タカハシFS-60Q(D60mm f600mm F10 屈折), Celestron Advanced VX赤道儀, キヤノンEOS 60D(新改造, ISO3200, RAW), 露出5分x9枚 総露出45分, f50mm Cマウントレンズ+ASI224MC +PHD2による自動ガイド, ステライメージ、Photoshop CC+Nik collectionで画像処理, 撮影地/岐阜県飛騨市・数河高原

周りを少し青く出してみました。他の方のを見るともっと派手に出しているのもあれば、すごく地味に真面目にホワイトバランスを取っているようなものも見受けられます。細部を出すのにNik collectionのColor Effect Pro 4の「ディテール強調」を使っています。天文ガイドでも話題のSilver Wdex Proはまだ使っていません。一度試してみたいと思っています。


M45プレアデス星団

M45up

撮影データ: 2016年11月24日21時19分, タカハシFS-60Q(D60mm f600mm F10 屈折), Celestron Advanced VX赤道儀, キヤノンEOS 60D(新改造, ISO3200, RAW), 露出5分x8枚 総露出40分, f50mm Cマウントレンズ+ASI224MC +PHD2による自動ガイド, ステライメージ、Photoshop CC+Nik collectionで画像処理, 撮影地/岐阜県飛騨市・数河高原

周りの淡い部分を出すかどうか迷いました。周りを強調したためノイジーになってしまったことと、中心が飛んでしまっています(追記: 後日印刷のために白飛びを補正しました。方法はここにあります。)。マスク処理をマスターする必要がありそうです。でもやっと念願の溢れるような星間ガスを捉えることができました。


上の写真の二枚とも、blogのサイズ制限でオリジナルのものよりかなり小さくなって1600x1200が最大になってしまっています。仕上げたものだけはフルサイズで置ける場所を探す必要がありそうです。

今回も色々反省すべき点は多々ありますが、それでも撮影に関しては前回の M31とM45よりはオートガイドで露光時間を長くできたのと、数河高原の素晴らしい空のせいもあり、出来上がった画像は格段に進歩したのではないかと思っています。なんとかガイドまではたどり着いて、やっと最低限の撮影ができるだけの準備が整ったところです。次の挑戦はSWAT-200での一軸制御でどこまで迫ることができるかでしょうか。

一方、画像処理の方はというと、現在色々悩んでいる時期で、そもそもどういった部分が一般的に重要視されるのか、例えばM45は一部飛んでしまっているところもあるのですが、マスクを使ってでも飛びは抑えたほうがいいのか、ホワイトバランスは死守したほうがいいのかなど、肝と言われる部分がまだ根本的にわかっていない自分がいます。もしこのページをご覧になられた方がいましたら、忌憚のない意見をコメントに残していただけるとありがたいです。


牛岳での前回の撮影の際、フラットフレームの一枚撮りを無加工でjpegで載せておきました。今回の話はこれがスタートなので、今一度このページでも載せておきますが、

FLAT_Tv1s_100iso_60D_20161118-20h48m10s699ms

真ん中に黒点があるのと、四隅が少し暗いことくらいがわかります。これを再度よく見てみます。

あらためて撮影条件の確認ですが、2016年11月18日、天体撮影後、鏡筒やピントなどもそのままでフラットフレームを撮影。PCの画面を真っ暗になる一段階前(10%)にして、そこに鏡筒を平行に寄せて、ISOは100、露光時間は1秒で撮影しました。その際の一枚撮りのフラットフレームのRAWファイルをステライメージ7(以下SI7)で「ベイヤー配列」で開き、すぐに「ベイヤー・RGB変換」。その際ホワイトバランスを自動で整えました。

まずはその時の状態をjpegに画質6(画質が高すぎるとblogのサイズ制限ではねられてしまうので画質を落としてあります。)で落としたもの。

FLAT_Tv1s_100iso_60D_20161118-20h48m10s699ms_org_6


先の前回の画像は取ってから無加工なのですが、この画像はホワイトバランスをとっているので、少し明るくなっています。よく見ると、上の右のほうにももう一つ黒い丸があります。

次に、ヒストグラムの「σ(1,1)」でかなり粗(あら)が見えるようにして、jpegの画質6で保存したものが次の画像です。

FLAT_Tv1s_100iso_60D_20161118-20h48m10s699ms_sigma_6


驚くことに、今まで見えていなかっただけで他にもホコリでしょうか、黒い丸が多数あります。色も上下左右でかなり違います。

次に、前回の画像処理に使うためにフラットをダーク補正し、16枚をコンポジットしたものを同様の条件で見てみます。

FLAT_Tv1s_100iso_60D_20161118-20h48m_x16_sigma_6


16枚のコンポジットなので、ランダムノイズはsqrt(16)=4で4分の1になっているはずなのですが、見た目にはほとんど変わっていません。フラットのダーク補正が必要なことは、他のページで検証されている方がいらっしゃるので、そこはいいとして、コンポジットの肝であるランダムノイズが改善されているようにはどうしても見えません。jpegファイルは細かい画像だとファイルサイズが大きくなり、のっぺりした画像だとファイルサイズが小さくなる傾向にありますが、コンポジットした方が6.3MB/5.6MB=1.125倍程度逆に大きくなっています。これはノイズが減った方向とは逆のセンスです。


話をもどして、その後11月24日の数河高原での撮影の際にカメラのミラー部分を掃除してから、天体撮影をしました。最後は計算機のバッテリー切れと霜でフラットが撮影できなかったので、昨日11月25日に自宅で夜中にフラットを撮りました。その際の設定が、鏡筒はFS-60Qのまま、ピントはいじっていない状態を保ちつつ、PCの画面を真っ暗になる一段階前(10%)にして、そこに鏡筒を平行に寄せて、ISOは100、露光時間は前回の1秒だとヒストクラムのピークが8割くらいのところまで行っていたので、0.5秒に落として撮影しました。その際の一枚撮りのフラットフレームのRAWファイルをステライメージ7(以下SI7)で「ベイヤー配列」で開き、すぐに「ベイヤー・RGB変換」。その際ホワイトバランスを自動で整え、ヒストグラムの「σ(1,1)」でかなり粗が見えるようにして、jpegの画質6で保存したものが次の画像です。

FLAT_Tv05s_100iso_60D_20161126-01h13m13s465ms_sigma_6


まず、濃い黒丸が2つ少なくともなくなっています。これは掃除のおかげでしょう。エアーで吹き飛ばしただけなので、大きなものは取れますが、くっついているような細かいものは取れないようです。また、鏡筒に対してカメラの取り付け角が変わっているのですが、それでもその他のホコリの位置は変わっていないことから、これらの汚れはカメラ側ということがわかります。

もう一つ気づくのは、少しわかりにくいかもしれませんが、ランダムノイズが多くなっているように見えることです。違いは露光時間が1秒から0.5秒に変わったけで、相対的に少し暗いものを写しています。ヒストグラムのσ(1,1)で見ているので、見た目の明るさは同じになるように調整されています。このことを元に、次に同条件で天体撮影時の感度に合わせたISO3200、ヒストグラムのピークを真ん中らへんに持ってくるように露光時間を1/100秒に合わせ、同じようにσ(1,1)で見てみました。

FLAT_Tv1100s_3200iso_60D_20161126-00h29m20s793ms_sigma_6

圧倒的にノイジーです。黒い丸さえも見えません。ISO x 露光時間は100 x 0.5 = 50と3200 x 1/100 = 32でほとんど同じなのに、ISOが大きいために大量のランダムノイズが乗ってしまったというわけです。これは果たして何を意味するのでしょうか?

ここからは推測です。そもそもフラット補正の目的は画面の明るさの分布の違いや、ホコリなどでできた不連続なシミを取ることです。ランダムノイズの除去は目的ではないはずです。そうするとランダムノイズが乗っているフラットフレームは、そもそも適していないということになります。本来見えていて欲しい黒丸さえも、いろいろ試したのですが、どうやっても影も形も見えなくて、情報が欠落しているような状態になっています。ISOは天体撮影時と同じ方がいいという説がありますが、もし上の考え方が正しいとすると、トータルで同じ明るさならばフラット撮影時のISOは低くしてノイズを出さないようにした方がいいということになります。また、今回コンポジットであまりランダムノイズが減ったようには見えなかったですが、たとえ理論通りに枚数のルートでノイズが減ったとしても、ISO3200で例えば16枚取るよりも、ISO100で一枚撮った方がsqrt(16):sqrt(3200/100) = 4:4sqrt(2)で、ISO100で一枚撮りの方がノイズが1.4分の1に少なくなるということになります。もしランダムノイズがアルゴリズムのせいなどで理論通りに減っていないとすると、さらにこの差は開きます。

もし、今回の推測が正しいとすると、牛岳でISO100でフラットを撮ったのは間違えだったと撮ってからずっと思っていたのですが、奇しくも偶然正しい方向で進めていたことになります。少なくとも画像処理の段階で四隅の補正に関しては問題はありませんでした。ただし、以下に示すように一つだけ困ったことがありました。

もう一つ気づいたことが、このページの上から3枚目の画像と5枚目の画像を比べると、下の部分が5枚目の方が明るいのです。最初これが謎だったのですが、よく考えると、おそらく下側に何らかの明るい部分があって、その明るさの絶対量は変わらないのですが、5枚目の方が全体が相対的に3枚目よりも暗いので、見た目の明るさを合わせると下の部分が5枚目の方が明るく出てしまっているのではないかという結論に至りました。実は牛岳の写真を処理している時に、M45の方だけどうしても下側が明るくなってしまうということがあって、泣く泣く一部トリミングしたという経緯がありました。少なくともここの部分はまだ補正がうまくいっていないのだと思います。


今回の話は、調べた限りあまり聞かないような話ですが、ごくごく素直に考えていて、奇をてらっているわけでも何でもないので、あまり間違ったことは言っていないと思いますがどうでしょうか?実際にこれから処理をする過程で、できた画像の結果を見ながらもう少し検証していきたいと思います。

それにしてもフラットは奥が深いです。


 

2016/11/24 仕事を終え空がすごく綺麗なので、急遽近くの数河高原に向かい撮影を試みました。今日の目的はとりあえずオートガイドを試すこと。ところがあいにく、またもやCCDにつける長焦点距離のレンズを忘れてしまったので、50mmのCマウントレンズで試してみました。

使ったソフトはPHD2で、以前Stellariumとの接続の時に、ついでにPHD2もCCDと赤道儀までは接続確認してあります。鏡筒はいつものFS-60Q、ガイド用CCDはこれもいつも使っているASI224MCに安物の焦点距離50mmのCマウントレンズをつけたもの、赤道儀はとりあえず使い慣れているAdvanced VXで、これはピリオディックモーションが15秒角程度で、FS-60Qでは2分程度の露光が限界、実用上は1分程度ということを確かめています。 撮影用カメラは天体改造済みのEOS 60Dです。

まず、 現地の駐車場に降り立った時の空の見事なこと。冬の天の川がはっきりと見えていました。あとはとても寒い! さすがスキー場になるようなところです。あいにくこの日は12月下旬の寒さと、この冬一番の冷え込みらしく、準備が嫌になるほど寒かったです。もちろんこの寒さでは他に誰一人いませんでした。

それでも30分くらいかけて、赤道儀の組み立てとSharpcapを使っての極軸調整、赤道儀のアラインメント、カメラのセットとBackYard EOSを使ってのピント合わせと試し撮りと、順調に進んでやっとガイドを試す段階になりました。

まず接続しようとすると、COMポートがなぜか3から4に変わっていたのでこれを変更したのですが、トラブルといえばこれだけで、あとはほとんど問題もなくすごく順調でした。というよりも、まだ使い方があまりわかっていないので、適当にやっているだけなのですが、とりあえずCCDの露光時間を0.5sにして「露出ループの開始」を押し、「ツール」メニューの「ガイド星の自動選択」を押すと、すぐにガイド星が見つかったので、そのまま「ガイドを開始」としたら、きちんと赤道儀がガイドされて動いているようでした(2016/12/4 追記: ガイドの一番最初にキャリブレーションを自動で行なっているようです。あとで写真を見直したら、一番最初の写真のみすごく大きく流れているのがありました。なんだったのかわからなかったのですが、多分これがキャリブレーションを行なっている際に撮影されてしまったものだと思います。)。あまりにあっけなかったので、もう少し突っ込んで探っても良かったのですが、寒いのと平日であまり時間もないので、このまま続行としました。あとでガイド中の画面のグラフの写真を撮ったのです。

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ちょっと調べたところ(そもそもガイドをしている最中には数値の見方もわかっていませんでした。なんとも情けない。)、出ている数値はそれぞれの自由度の誤差で、左がピクセル単位、右が秒角とのことです。RMSで赤径0.22、赤緯0.21ピクセルの誤差です。PHD2を稼働させたときの典型的な目標値は0.2から0.3ピクセルということのなので、ピクセルで見ている限りガイドの精度としては十分出ているということがわかります。一方秒角で見ると、概ね4秒角程度で制御できていることがわかりますので、まだ角度誤差としては結構大きいです。これはCCDのレンズの焦点距離が短いため、そもそもCCDの1ピクセルあたり15秒もあるのが問題です。レンズを焦点距離の長いものに換えるか、HUQさんが最近使っているというDEF-Guiderという複数の星をガイドに使うことできるソフトを使うことで解決できると思います。

それにしても、CCDの1ピクセルを十分下回って誤差を抑えることができるということに結構驚いています。おそらく基準星の中心の周りのピクセルの明るさ情報から、1ピクセル以下の精度で位置を出しているのだと思いますが、だからサチっている星は不可というのが納得できました。


とにかくこの状態で以前よりははるかに流れなくはなっているので、試しに撮影を開始してみました。下の写真は露光5分、ISO3200のM31で加工なしの撮って出しjpegファイルです。加工しなくてもすでに綺麗です。

M31_LIGHT_300s_3200iso_+4c_60D_20161124-20h10m16s390ms

それでもガイドのエラーがまだまだ大きかったので少し心配していたのですが、ピクセル等倍に拡大しても星は円状を保っているようです。12枚取ったのですが、1枚のみ何かの振動で揺れたのでしょうか?少しだけずれたのがあったので、12分の11の確率で使えます。以前のノータッチガイドでは1分露光で使える画像が半々くらいだったので、そこから比べたら十分な成果です。

あと、また前回と同じM45も、同条件で8枚撮りましたが、こちらは8枚全部使えそうです。無加工のjpegを載せておきます。こちらもすでに星間ガスがかなり見えています。空がいいとこんなに綺麗に撮れるのですね。

M45_LIGHT_300s_3200iso_+4c_60D_20161124-21h19m48s921ms


惜しむらくはダークフレームを取っている最中にPCのバッテリーが切れてしまったことです。ダークは3枚しか撮れませんでした。気づくと機材に霜がかなり分厚く凍りついて来たので、ここでギブアップです。フラットを取ることもできませんでした。

ピンボケですがセットアップの写真を載せておきます。テーブルに何か模様のようなものが見えますが、これら全部霜です。PCの画面も一部凍り始めていました。あ、ちなみに撮影中の待ち時間は車の中でエアコンをつけていたのでとても快適でした。

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23時ぴったりに帰路について、その途中たまたま道路にあった温度表示板を見ると−3℃の表示が。寒いはずです。今回は冬の天体観測の過酷さの一部を垣間見た気がします。

週末はゆっくりと画像処理です。








 

ここ最近ずっと基本的なことを色々考えていました。とりあえずはタイトルの通り、なぜ望遠鏡を使うと星がたくさん見えるのかを、だいぶん理解できてきたので、簡単にですが一度まとめておきます。


まず最初は望遠鏡で恒星が見えやすくなるわけからはじめます。見やすさということなので、恒星と背景のコントラスト比で考えます。Sをシグナル(恒星の明るさ)として、Nをノイズ(背景の明るさ)とします。

まずはSのシグナルから考えます。
  1. 恒星は点光源のため面積がありません。だからどれだけ倍率を上げても恒星の面積は広がりません。
  2. 集光力は望遠鏡の対物レンズの面積に比例するので、口径を大きくすると口径の2乗に比例して明るくなります。人間の瞳孔は通常の活動下では直径2mm程度と言われています。夜の場合は瞳孔は大きくなっているので、その場合の瞳の直径を7mmとすると、例えば200mmの口径の望遠鏡を使うと集光力は(200/7)^2=816.3、すなわち約800倍もの光を見ることができます。これが直径60mmの望遠鏡だと(60/7)^2=73.4、すなわち約70倍です。集光力は口径の二乗で効くので、高々3倍ほどの口径の違いが10倍の集光力の違いと、随分と大きな差になりますね。
  3. 夜空を見上げた時に例えば3等星まで見えたとしましょう。この状態では4等星以下が見えないとすると、4等星が夜空の背景の明るさと同じということになります。都会では条件の良い時でもせいぜいこのくらい、田舎の暗いところに行くと4等星も余裕で見えると言ったところでしょうか。これ以降仮定として4等星が背景の明るさと同じと考えます。星は1等級違うと明るさが2.5倍変わります。5等級かわると2.5^5~100倍かわります。なので、4等級と同じ明るさの空の背景から見て0等級は100倍明るいというわけです。
上記のことを式で表します。

S: 4等級の星に比べた明るさx (口径/瞳の直径)^2

となります。繰り返しますが、点光源なので倍率は関係ありません。

次にNのノイズを考えます。
  1. 背景は面積を持つので、倍率をあげると明るさは倍率の2乗でその分薄まります。
  2. 集光力に関してはSと同じ扱いです。
  3. 4等級の星の明るさを基準と仮定したので、例えば背景が4等星と同じ明るさの場合1になります。それより明るい場合、暗い場合はそれぞれ係数をかけますが、ここでは簡単のため背景の明るさは4等星と同じとします。

N:  (口径/瞳の直径)^2 / 倍率^2

S/N = (4等級の星に比べた明るさx (口径/瞳の直径)^2) / ( (口径/瞳の直径)^2 / 倍率^2)
       = 4等級の星に比べた明るさ x 倍率^2

となり、コントラスト比は倍率のみで決まるようになります。

最初からS/Nに行ってしまうと、見通しが悪くなるので、まずはそれぞれのSとNに式に具体的な数値を入れて、その後S/Nを計算してみます。4等星に比べて100倍明るいマイナス1等星を見たとしましょう。

a. 裸眼
S: 100 x (7/7)^2 = 100
N: (7/7)^2 / 1^2 =1
S/N = 100

b. マイナス1等星を口径200mm、倍率50倍で見る場合
S: 100 x (200/7)^2 ~ 100 x 800 = 80000
N: (200/7)^2 / 50^2 ~800/2500 = 0.32
S/N = 80000/0.32 = 250000

c. マイナス1等星を口径60mm、倍率50倍で見る場合
S: 100 x (60/7)^2 ~ 100 x 70 = 7000
N: (60/7)^2 / 50^2 ~ 70 / 2500 = 0.028
S/N = 7000/0.028 = 250000

と口径が変わってもコントラスト比は変わりません。


ちょっと脱線して望遠鏡を使うと昼間でも星が見えるわけを考えます。背景の青空はマイナス4.7等星の金星を見ることができるという話があるので、-5等級としましょうか。0等星より100倍明るいということです。この状態で、例えば0等星を倍率50倍の望遠鏡で見ると、口径は関係ないのですが仮に入門用の60mmの口径を使います。瞳孔の直径は昼間なので2mmです。

S: 100 x (60/2)^2 = 100 x 900 = 90000
N: (60/2)^2 / 50^2 x (100 x 100) = 900 / 2500 / 10000 = 0.000036
S/N = 900000/0.000036 = 25

それでも背景に比べて25倍も明るくなります。うちの子供が持っている口径60mm、焦点距離800mmのSCOPETECHでいつも20mmのアイピースを使っているので、倍率は40倍になります。倍率は2乗で効くのですが、それでも25 x (40/50)^2 = 16と背景より16倍も明るく見えます。16は2.5の3乗くらいなので、計算に使った0等星より3等級くらい暗い星、すなわち頑張れば2等星くらいまでは見える計算になります。

実際に手持ちの望遠鏡でも昼間の星を見ることはできるので、興味がある方は是非試してみてください。でも、くれぐれも絶対に望遠鏡で太陽を見ないように。失明の恐れがあります。安全のため、建物の日陰などで観測すればより確実です。

下の写真はFS-60CBにASI240MCで昼間の星を見たときの一例です。わかりにくいですが、真ん中あたりに白い点が見えます。アルタイルです。実際にはアイピースでの眼視の方が見やすいです。

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しかしながら、一番の難しさは、その星を昼間に何の手がかりも無く視野に導入することだと思います。倍率が高いほどコントラストは高くなりますが、倍率が高いとその分視野に入れるのは逆に難しくなります。自動導入でも、そもそも北極星が見えないために極軸合わせが難しいので、そんなに簡単ではありません。もし昼間の月が明るい星の近くにあったりすると、目印になるので導入しやすいかもしれません。


もう一つ脱線です。CCDで恒星を見る場合を考えてみましょう。露光時間と感度は一定とします。上の説明から、コントラスト比は倍率のみに依存します。直焦点撮影の場合は倍率の代わりに、鏡筒もしくはレンズ側の焦点距離に依存します。倍率と焦点距離は比例関係にあるので、コントラスト比は焦点距離の2乗に比例します。HUQさんが以前コメントで言われていたことが、これにあたります。ここで難しいのが、広角でより恒星のコントラスト比を上げることです。センサーサイズの小さいものは安価に手に入りますが、同じ画角を得ようとしたら焦点距離の短いレンズを選ばなければなりません。一方、センサーサイズが大き場合は同じ画角を出すのに、より焦点距離の長いレンズにしなければならないので、その分コントラスト比が上がります。私が持っているASI224MCは1/3インチサイズ、対するHUQさんが持っているα7Sはフルサイズで、一辺で7倍くらいのサイズの差があります。同じ画角を出すのに、7倍くらいの焦点距離の差が出るので、2乗で50倍くらいのコントラスト比の違いがあります。4等級以上暗い星が見える計算なので、同じ画角だと流石にα7Sの方がはるかに星の数が多くなるはずです。


ちょっと脱線しましたが、次に望遠鏡で惑星が見えやすくならないわけを考えてみましょう。

恒星の場合との違いは、惑星は面積を持っているから、倍率をあげるとS(惑星の明るさ)の方も倍率の2乗で薄められ暗くなるのです。例えば、マイナス1等級の惑星を見たとしましょう。

a. 裸眼
S: 100 x (2/2)^2 = 100
N: (2/2)^2 / 1^2 =1
S/N = 100

b. マイナス1等星を口径200mm、倍率50倍で見る場合
S: 100 x (200/2)^2 / 50^2= 100 x 10000 / 2500 = 400
N: (200/2)^2 / 50^2 =10000/2500 = 4
S/N = 400 / 4 = 100

c. マイナス1等星を口径60mm、倍率50倍で見る場合
S: 100 x (60/2)^2 / 50^2 = 100 x 900 / 2500 = 36
N: (60/2)^2 / 50^2 = 900 / 2500 = 0.36
S/N = 36 / 0.36 = 100

と口径を変えようが、倍率を変えようが、見えやすさ(コントラスト比)という意味ではかわりありません。

これまでのことをまとめると、上の説明により

恒星: 倍率をあげるほど見えやすくなる。星の大きさは変わらない。口径を変えても見えやすくはならない。 
惑星: 倍率を上げても惑星の像は大きくはなるが 、同時に惑星自身が暗くなるので見えやすさは変わらない。

となります。では口径の効果はどこに出るのでしょうか?答えは明るさの絶対量に出ます。集光力は口径の2乗、すなわち望遠鏡の面積に比例します。なので、恒星、惑星ともにより明るくみえるようになります。口径を大きくしてもコントラスト比が変わるわけではありませんが、木星や土星、火星などはもともと夜空の背景の明るさに比べて十分明るいので、そもそもコントラスト比がいいのです。ところが惑星の場合は、さらに倍率を上げても見えやすくなるわけではありません。これは小さくしか見えない惑星をもっと大きくしようと思って、倍率をむやみにあげると暗くなって逆に見にくくなったという実体験を持つ方も多いのではないでしょうか?


ここまで書いたことはごくごく簡単に考えた場合で、夜空の明るさとの関係や、人間の感覚などを盛り込んだもっと実際に近い解析はこちらのページが詳しいです。私が書いた上の話は夜空の明るさが一定(というよりは、眼の感度の限界があまり効いてこないくらい明るい空という仮定が暗に入っています)という条件のもとで話しましたが、このページの言わんとしていることは、

  • 夜空が明るいところでは口径が大きくなっても限界等級にあまり変化はない。これは上で書いたことと一致します。
  • 夜空が暗くなればなるほど、大口径の効果が出てくる。言い換えると、目で見分けられる暗さの限界に近づいてくると、口径増加による絶対的な明るさが効いてくる。
  • 夜空が明るいところでは、倍率がそのまま限界等級をあげる。これも上で書いたことと一致します。
  • 夜空が暗くなればなるほど、倍率の効きが悪くなる。言い換えると、倍率をいくら上げても眼の感度に比べて絶対光量が足りないくらいの口径だと、見え方は改善しない。

ということです。

実は今回の文章は、一ヶ月くらい前に書いたもので、本当は「なぜ星雲が見えやすくなるのか?」というタイトルをつけていたのですが、先のページでも

"星雲星団にはこの話はそのまま当てはまらない、理屈では面積を持つのでコントラストは倍率に依存しないはずなのだが、実際には高倍率で見やすくなることがある"

などと書いてあるとおり、なかなか話は簡単ではないようで、どうやってまとめようかずっと悩んでいました。加えて、普通は露光時間を稼ぐために写真に撮るなどして相当見やすくするための画像処理のようなものが絡んでくるので、なかなか直感的に理解できないでいます。やっと最近真面目に撮影と画像処理をし始めたので、できるならきちんと理解したいと考えています。

今悩んでいることは、主に画像処理に関しては、
  • RAW画像の各ソフトでの読み込みに違いがあるのかどうか?
  • フラットフレームはどの程度まで実用として許容されるのか?
  • レベル調整の最適解はあるのか?
  • レベル調整で失われた(粗くなった)階調は、コンポジットで本当に補完されるのか?
  • ステライメージのデジタル現像は正しい処理方法なのか?もっといい方法もあるのではないか?
  • ステライメージとPhotoshopなど、ソフトをまたぐと階調はどのように保存され、どこが切られるのか?
  • 色調補正と、ホワイトバランスを取るということは相反するのではないか?

撮影に関しては、
  • 夜空の背景の明るさに比べて星雲の明るさが、少しでも勝っていれば、背景の明るさのオフセットを取り除き、階調差を増幅し、増幅した分の階調の粗さを埋めるために多数枚のコンポジットで補完すればいいはずなのだが、本当にそうなのか?
  • 光害防止フィルターは、どのタイプがどれくらい効くのか?必要なのか?暗いところに行ったほうがいいのか?
  • 冷却CCDの効果はどれくらいあるのか?すごく暗い天体は冷却CCDでしか撮れないのか? 

などです。色々参考になる先人の方の情報がホームページを探ると色々出てきますが、自分自身で納得するためには、まだまだ相当さまよいそうです。


中古で誠文堂新光社の「デジタル点写真のための天体望遠鏡ガイド」という本を購入しました。きっかけは赤道儀の極軸の精度の話で、参照ページにこの本の紹介があったからです。

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特に印象深かったのが、2.4の「実際の望遠鏡の収差」です。具体的にメジャーな望遠鏡の例を多数示してあり、やっとスポットダイヤグラムの見方が感覚的に理解できた気がしました。

正直言いますと、いままで高い望遠鏡の意義がイマイチ理解できていなかったこともあり、安い望遠鏡でも眼視では十分で、撮影でも使えるのではと勝手に思っていました。ですがこの章を読んでようやく、 実は今持っているタカハシのFS-60Qは、青ハロは少し出るようですがそれでも相当収差は少ない方で、撮影をしても収差で星像が歪むこともほとんどなく、非常に恵まれた状況にあったということがやっと理解できました。多分FS-60Qを手に入れる前、「いつかはタカハシ」と言われているくらいなので、タカハシの望遠鏡に憧れのようなものがあって、その中でも一番安価な機種ですが星の村のスターライトフェスティバルのオークションでやっと初タカハシを手に入れることができてなんとなく満足していたのですが、実はとてもとてもラッキーだったのかもしれません。HUQさんがFS-60"Q"がいいとしきりに言っていたわけがやっとわかりました。逆に、FS-60CB状態にしてフラットナーを入れた時やレデューサを入れた時は今より収差を覚悟しなければならないこともわかりました。

他にも、タカハシTSA-102+35フラットナーやTOA-130NFにフラットナーやレデューサをつけた状態なども相当収差は少なく、特にタカハシのCCA-250のレデューサ、エクステンダー無し、ε-180ED、昭和機械の30PAG(IF)、VixenのAX103S、VC200L(ともにレデューサなしの場合)は周辺に至るまで特筆すべき収差の少なさです。逆に、補正のない反射型は当然四隅が相当流れることも、十分に理解できました。また、上に挙げた収差の少ないものも、レデューサの有無で収差は相当変わるようです。

この本を参考に、自分の中で次回鏡筒を選定するときに、スポットダイヤグラムを見て、これらのものと比較することで、ある程度目的に沿った性能といいコストパフォーマンスのものを選ぶことができるのかと思います。

この本はこれだけではなく、もともと読みたかった極軸精度のところなど、各所に重要なことをきちんと式を用いて説明してくれています。非常にわかりやすく、また応用も効くため、とても有用な書籍だと思います。惜しむらくは、すでに絶版で、今回も定価1800円ですが、3000円以上出して古本で手に入れました。初版からすでに4年以上たっていますので、もし最近の状況も盛り込んだ改訂版など出たら、絶対に買っておくべき本かと思います。


 

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