この記事は前回の天体観測を始めたい方へ (その1): 最初の頃の続きになります。

1. 最初に買った機材


あくまで自分の経験の範囲でしか言えないので、一個人の感想レベルで聞いてください。最初に購入したBKP-200は口径200mmのニュートン反射なので、値段の割には十分に見ることができます。電視観望でも十分に使えます。撮影するにしても、星が流れるとかを気にしなければ、星雲をあぶり出すだけなら十分できます。値段も後から考えると安価な部類に入るものなので、そういった意味では最初に購入するものとしては、偶然にしては良かったのかもしれません。

鏡筒は多分趣味が高じていけば、より良いものが欲しくなりますし、中古などで安く入手する手段もわかって来ますので、そのうち鏡筒の本数だけが増えていきます。それよりも赤道儀の方を良いものを選ぶ方が大切です。私はCelestron社のAdvanced VXを選びましたが、自動導入も付いていて十分実用になるので、値段の割には満足しています。それよりも実際に良かったと思った点は、世界的に見ても売れているので、各種ソフトなどの対応に全く不安がないということです。Stellariumを使った自動導入などもASCOMに対応しているので、後から色々楽しむことができます。精度はもちろんタカハシなどの方がいいのでしょうが、最初に買うものとしてはちょっと手が出ませんでした。


2. 機材の重量

もう一つすごく重要なことですが、機材が重いと多分自分が思った以上に気が重くなることです。気合いの入っている一回、二回はいいのですが、重いとセットアップが疲れる、面倒臭い、眠い、寒いなど、機材を出したくなくなる要素が意外に大きいのです。私も今は星が面白くてしょうがないのですが、それでも一番稼働率がよかったのがFS-60CB (FS-60Qからエクステンダーをとって、さらに軽くした状態、焦点距離370mm) をManfrotteのカメラ三脚に載せた相当軽い状態で電視をしていた時でした。玄関に組んだ形で置いておき、少しでも星が見えるとほぼ毎日空を見ていました。この三脚を、自動導入が欲しくてAdvanced VXにしただけて、一気に稼働率が落ちた覚えがあります。軽い機材というのはある意味長続きさせるコツの重要な要素だと思います。


3. 鏡筒の焦点距離

ただ、一台の鏡筒だと焦点距離の種類も限られるので、やはりターゲットに合わせて何通りかの焦点距離が必要になってきます。私はこのことが最初なかなか理解できないでいました。よく初心者をターゲットにした倍率が高いだけの望遠鏡は良くないと言いますが、そのことは理解できていたのですが、焦点距離の長いだけの望遠鏡も初心者にとっては意味がないということはなかなか理解できませんでした。なので最初の購入時、焦点距離800mmのBKP200と焦点距離2000mmのEdgeHD800を迷ったりしたのですが、さすがにこれはスコーピオの店長さんに止められました。

今なら最初は星雲を楽しむためにできるだけ焦点距離の短い600mm以下の鏡筒を購入し、惑星の撮影がしたくなったら、焦点距離2000mm以上で、口径のできるだけ大きいものを次に買うというようにすると思います。ですが無知というのはおろそしいもので、BKP200の次に購入したものが、結局EdgeHD800と同系列のC8でした。これは中古でBKP200よりもはるかに安価だったので、気楽に改造などできて惑星撮影も結構楽しめました。ただし、突き詰めていくともっと大口径のものが欲しくなります。

でも最初ってよくわからなくて、星雲も惑星もどれも見たいと思ってしまうんですよね。さらに私もそうだったのですが、撮影もしてみたいと平気で言ってしまうのです。なので天体ショップの店員さんは、後で潰しの効くそこそこの入門用の屈折を勧めるのかと思います。これでも土星の輪を見るくらいまでなら十分できるのですが、カッシーニの間隙をはっきり撮影するとかまで考えるとやはり限界があります。


4. ステップアップの一例

これは完全に個人的な意見なのですが、今主力で使っているFS-60Qは眼視全般、電視、星雲のかなりのレベルの撮影までこなせる相当まともな部類の鏡筒で、口径が小さいこともありタカハシの中では一番安価な部類で、しかも軽いです。なのでコストパフォーマンスはとてつもなくいいと思います。それでも性能を引き出そうとすると、初心者ならなおさらですが、できれば自動導入のある赤道儀の方が楽なので、鏡筒と赤道儀を合わせたらこれだけでも普通の人から見たらとんでもなく高価なものになるのかと思います。

FS-60Qでできないことの一つは惑星の撮影です。口径も焦点距離も全く足りません。アイピースで見るだけなら、あまり大きくは拡大しない方がいいですが、適度な倍率ではキレッキレの、ムチャクチャ綺麗な土星や木星が見えます。ただし撮影は別です。

惑星の撮影は口径の点から反射型の方が有利で、鏡筒の長さや重さからシュミットカセグレン方式が人気があります。私も使っているCelestron社のC8も人気がありますし、世界的には同社のC11やC14で成果が上がっている例が多いです。C11は口径11インチすなわち25cm程度、C14は口径30cm以上なので、個人で普通に扱うぶんには十分過ぎるくらい大きくて重くて、このくらいが限界なのでしょう。私はMEADE社の25cmを譲ってもらったのですが、これとてすごく本格的で、まだまだ準備不足で、春までになんとかしたいと思っているくらいです。

もう一つの別の手段が、詳しい人を見つけて、本当に安価な、中古でもいいので入門用の屈折型望遠鏡を買うことです。詳しい人に聞きながら、これで十分に楽しめて、趣味として続きそうならば、次のステップに進めばいいのかと思います。でも、この方法の欠点は、月を見てすごく興奮して、その後恒星をみてどれも同じかと思ってしまって、惑星を見てちょっと面白くて、頑張って星雲を見て図鑑とかで見る写真とあまりに違ってがっかりして、最後は続かなくなってしまう恐れがあることです。

やはり土星はカッシーニの間隙まで見えたほうが楽しいでしょうし、星雲は色がついていた方が当然面白いでしょう。そのためにはやはり撮影などする必要が出て来ます。星雲に色をつけるだけなら、今なら電視という手もあります。これはこれで少し敷居も高いのですが、電視なら入門用鏡筒でも十分楽しめると思います。自動導入付きの赤道儀があるとより楽しいので、そのぶん敷居は高くなります。

ステップアップの順序として、電視、自動導入と機材を充実させていくのは悪くない手だと思います。いずれにせよ、退屈しないうちに撮影ができるくらいの機材にステップアップしていかないとなかなか続かなくなるかもしれません。

そのためのアドバイスとして、詳しい人と一緒に楽しむというのは一つの手だと思います。詳しい人はだいたい機材も余っていることが多いので、初心者にとっては意外なほどいい機材を安価で譲ってもらうということもよくある話です。


5. より深い世界へ

この趣味は天井知らずで、贅沢を言ったらはっきり言ってきりがありません。色々工夫して安価に楽しむ方法もある一方、トンデモなくお金をかける方法もあります。究極的には個人で天体ドームを持ってしまうことなどでしょうか。そんな両極端でなくても、色々な種類、色々な性能の機器が各社からたくさん出ています。これらをゆっくりと選ぶこと自体も楽しみの一つですし、じっくり考えて選んだ機材は必ず愛着が湧くものです。

また、いくらいい機材を持っていても、光害やシンチレーション(空気揺らぎ)の少ない素晴らしい星空には、結局は勝つことができません。田舎から天文ショップに行くことは遠いので大変なのですが、光害のない都心から離れたところに住んでいるというのは、それだけで高価な機材を買うよりはるかに価値があることのなのです。環境のいい星空を求めて海外へ行く人たちもいます。

いずれにせよ、趣味の世界でのことなので、自分ができる範囲で、無理をせずに、楽しみながらやるのが一番かと思います。