ここ一週間ほどオートガイドの準備と、画像処理のための準備を色々していました。

ガイドはASCOM経由でPDH2からAdvanced VXを操作することですが、PDH2から操作することはできたので、あとはガイド星を実際にとらえるところくらいまで進みました。

画像処理の方ですが、ソフトはこれまでフリーソフトでごまかしごまかしやってきたのですが、とうとうステライメージ7を購入しました。PixInsightも魅力的だったのですが、まずは基本ソフトは持っておこうと思ったのです。また天文ガイドの先月号から紹介され始めたGoogleのNik collectionを以前GIMPで試していたのですが、8bitで動かしただけでもすごいことがわかり、でもGIMPだと16bitで動かすことができなかったので、あわせてPhotoshop CSを導入しました。

画像はこれまでに自宅の庭で何枚か撮ったM45で練習していたのですが、空が明るすぎるのでなかなか星間ガスとかは出てきません。ダーク減算までは試しましたが、フラット補正はまだ手付かずの状態でした。

2016年11月18日の金曜夕方、天気が良かったので牛岳に一人で行きました。目的はガイドをしての星雲の撮影です。ところが、いくつか準備不足が露呈しました。ガイドCCDのレンズを50mmまでしか用意していなかったのですが、これだとガイドCCDの1ピクセル当たり15秒角程度になるので、同程度のオーダーのピリオディックエラーを補正するのには解像度不足です。またUSBで繋ぐものが、USB3.0がASI224MC、USB2.0がBackYard EOS(BYE)経由のEOS 60D(天体改造済み)とASCOM経由のAdvanced VXと、計3つあるのですが、PCのUSB端子が2つしかないことに現地で気づきました。60Dはレリーズで撮影してもよかったのですが、BYEのファイル名管理と自動ダウンロードと温度まで読み取れる機能が便利で、ダークフレーム管理も楽になりそうなので、やはり捨てがたく、とりあえずガイドなしのノータッチガイドでまずは撮影だけしてみました。というよりも、多分ガイドは一発ではうまくいかないと思ったので、まずはノータッチガイドでいいので画像処理の練習をできるだけの画像枚数を残しておこうと思ったのが正直なところです。

撮影はFS-60Q(焦点距離600mm)を使い、ターゲットはとりあえず見慣れているM45とM31で、ともにISO6400、60秒露光(AVX、600mmでのノータッチガイドだと60秒位が実用上限界というのは前回確認済み)、それぞれ16コマ分撮影。一応16枚撮ったのですが、風が強かったせいもあり、60秒でも流れているものがあったので、この中で実際に使ったのはM45は9枚、M31は途中から曇ってきたこともありわずか5枚です。雲に隠れた時点で、ガイドの挑戦も、これ以上の撮影もあきらめました。

ダーク画像は天体の撮影後後、鏡筒にキャップをして8枚を天体撮影時と同じ条件のISO6400、60秒露光で撮影。フラットはPCの画面に白色を出して10%の明るさにし、そこに鏡筒を平行に近づけて撮影しました。ISO100で露光時間は1秒です。これは正しい方法なのか今一自信がないので、もう少し検証が必要です。

実際に撮った写真をM31、M45、dark、flatそれぞれ一枚づつ、jpgファイルを無加工で載せておきます。


M31_LIGHT_60s_6400iso_+19c_60D_20161118-20h00m07s845ms


M45_LIGHT_60s_6400iso_+15c_60D_20161118-19h31m20s354ms



M31_DARK_60s_6400iso_+17c_60D_20161118-20h28m05s407ms


FLAT_Tv1s_100iso_60D_20161118-20h48m10s699ms



・M45もM31もすでに淡い部分が多少出ていますが、最初に撮ったM45は高度が高くなかったのか、薄雲に覆われていたのかで、ずいぶん明るく出てしまっています。
・ダーク画像は輝点がいくつも写っています。
・フラットは真ん中下あたりに黒い丸があるのに気づきました。ほこりか何かでしょうか?後でチェックします。


ここから淡い部分を炙り出していくのですが、今回やった画像処理はあくまで基本に忠実にがモットーで、奇をてらったことは何もしていません。あえていうならNik collectionがまだ少し珍しいくらいでしょうか。流れは大まかに言うと、

1. ダークフレームファイルの作成(ステライメージ7)
2. フラットフレームのダーク減算とフラットファイルフレームの作成(ステライメージ7)
3. ダーク減算/フラットフレーム補正(ステライメージ7)
4. ベイヤー・RGB変換

5. コンポジット(ステライメージ7)
6. 現像(ステライメージ7)
7. 画質調整(Photoshop+Nik collection、ステライメージ7)

といったところです。


これ以降もう少し詳しく書いておきます。



1. ダークフレームの作成


ダークフレームの撮影のポイントは、露光時間とISOと温度を合わせることです。あと、温度が同じ場合は再現性があるらしいので、同じ温度の場合は作成したダークフレームを再利用できるようです。そのため、ダークフレームのライブラリーを作ることができるようです。BackYard EOSではダークフレームを撮影した時の温度がファイル名に入るように設定することができるため、いちいち記録を取る必要がなく結構便利なのですが、実際には天体撮影時の温度とダークフレームの温度が、もしくは天体やダークフレームを撮影している最中に、1-2度位変わることはよくあるので、ライブラリを作る (追記: 後日ライブラリーの作成を試しました。) 前にどのくらいの温度差で結果が変わるかを一度検証する必要があると思います。


枚数は当然多いほうがいいです。天体の撮影枚数と同じがいいという話もありますが、今回は時間がもったいなかったので8枚としました。これらをコンポジットするとダークフレームのランダムノイズは1/sqrt(8) = 2sqrt(2)分の1になります。


撮影したダークフレームのコンポジットは、今回はステライメージ7上で行いました。撮影したファイルを全て「ベイヤー配列」で開き、「バッチ」メニューから位置合わせはしない状態で、「加算平均(σクリッピング)」というのを選んで、閾値は「1」シグマ以上で、「コンポジット実行」を押してコンポジットします (σクリッピングとは、バッチコンポジットの際に「はずれ値」(極端に他と異なる値)のピクセルをカットして合成する処理だそうです。しきい値を大きくしていくと、はずれピクセルを捨てる効果が弱くなり、光跡などの影響が残りやすくなっていきます)。 ピクセル補完は「バイキュービック」にしています。バイキュービックは補完が弱すぎず、強すぎず適度に滑らかになるようで、よく使われている方法のようです。


上に載せたダークファイルはほとんど真っ暗で、輝点が少し見える程度ですが、ダークファイルをステライメージ7で開くと勝手にうまくレベルを調整してくれて、灰色のノイズが乗った画像にして見せてくれます。この際、レベル調整で色々いじってみると色々なムラなど見えて面白いかもしれません。


作成したダークフレームファイルは、露光時間、ISO、温度などをファイル名に記録しておくと便利です。fits形式で「32ビット」、「実数」で保存します。



2. フラットフレームの作成

フラットフレームの撮影は一般的には結構大変なようです。私は簡単のために、撮影直後に設定を何も変えずに、PCの画面に白色を出して、そこに鏡筒の先端を画面に平行になるように近づけて写してみました。ポイントは、明るさは適当でもいいですが、ピントやカメラ位置などを変えないことです。ホコリなどの汚れが移動してしまっても、処理後にうまくフラットになりませんし、余分なところを汚してしまう可能性があります。ISOは撮影時と一緒にしたほうがいいという話がありますが、今回はこだわりませんでした。フラットフレームの撮影はまだ色々不明なところもあるので、今後何が正しいのか、何が正しくないのか色々検証して行きたいと思います。

枚数は多い方がフラットファイル自体のランダムノイズが減るのでいいのですが、十分明るく、露光時間が短いのであまり重要ではない気がします。枚数を増やしたとしても撮影はすぐに終わるので、今回はとりあえず16枚としました。ランダムノイズは1/sqrt(16) = 4分の1になります。

フラットフレームのダーク減算は必ずやったほうがいいとのことです。なのでまずはフラットフレーム用のフラットダーク(バイアスともいうそうです)ファイルを作ります。同じ温度の方がいいと思うので、できれば撮影時に同じiso感度、同じ露光時間で、望遠鏡もしくはカメラにキャップをして真っ暗な状態にしてから、できればフラットフレームと同じ枚数のフラットダークフレームを撮影します。

その後ダークファイルの作成時と同様に、ファイルを全て「ベイヤー配列」で開き、「バッチ」メニューから位置合わせはしない状態で、「加算平均(σクリッピング)」というのを選んで、閾値は「1」シグマ以上で、「コンポジット実行」を押してコンポジットします。作成したフラットダークファイルは、fits形式で「32ビット」、「実数」で保存します。

その上で、やっとフラットフレームの作成です。ステライメージ7上で撮影したフラットフレームファイルを全て「ベイヤー配列」で開き、その際「ダーク補正ファイル」のところで先に作ったフラットダークファイルを指定します。

コンポジットはダークの時と同様に「バッチ」メニューから位置合わせはしない状態で、「加算平均(σクリッピング)」というのを選んで、閾値は「1」シグマ以上で、「コンポジット実行」を押してコンポジットします。ピクセル補完は「バイキュービック」にします。作成したフラットフレームファイルは、fits形式で「32ビット」「実数」で保存します。

(2016/11/26 追記: フラットフレームについて後日もう少し詳しく検証しています。)


3. ダーク減算/フラットフレーム補正

撮影した天体ファイルを全て「ベイヤー配列」で開き、その際「ダーク補正ファイル」を先に作ったダークフレームファイルでを指定します。

「バッチ」メニューから「共通ダーク/フラット補正」を選択し、「フラット補正ファイル」を先ほど作ったフラットフレームファイルに指定します。「フラット画像のダーク補正」をここでしないのは、先ほど個別にフレームファイルを開くときにすでに補正をしてあるからですが、もし済ませていない場合はここで指定します。また、ライトファイルオープン時にダーク補正をしていない場合はここで一緒にするといいと思います。 

次のベイヤー・RGB変換に行く前に、必要ならばここで「バッチ」メニューの「ホット/クールピクセル除去」を行います。しきい値は5-20%くらいでいいとのことですが、ここもまだよくわかっていません。「カラーフィルタ」は「自動」いいはずです。

 

4. ベイヤー・RGB変換

「画像」メニューから「ベイヤー・RGB変換」を選び、開いているファイル分だけ一枚一枚変換します。ここに限ってはバッチ処理機能はないみたいです。「画像生成」は「カラー画像」、「カラーフィルタ」は「自動」でいいと思います。ホワイトバランスですが、「色調整」の「設定」をまず押して、「ホワイトバランス調整」を「自動調整」もしくは、「手動」にして「自動調整値」を押すと、ここでホワイトバランスが取ることができます。「ガンマ調整」はチェックなしです。もしくはここでホワイトバランスを取らなくても、コンポジット後「階調」メニューの「オートストレッチ」(ステライメージ7の目玉機能らしいです)でホワイトバランスを取ることもできますが、どちらが有利なのかは検証してみる必要があります。

あと、枚数が多い場合は処理のし忘れを防ぐために、変換後は画像を最小化する癖をつけておくといいかもしれません。

 
 5. コンポジット

やっと天体写真のコンポジットです。「バッチ」メニューから「コンポジット」を選び、「位置合わせ」で「自動」を選び「位置合わせ実行」を押します。しばらく待って位置合わせが完了してから、「コンポジット」のところの「方法」を「加算平均」にして、「コンポジット実行」を押してコンポジットします。ピクセル補完は「バイキュービック」にします。終わったら「閉じる」を押しコンポジットを終了します。

この時点での画像をjpgに変換したものを載せておきます。まだレベル補正もしていないので、淡い部分はほとんど何も見えていません。

New4


New1f


 

6. 現像

「階調」メニューの「レベル補正」を選択し、出て来たヒストグラムの下の2つの三角を動かして、星雲が出てくるように調整します。ここでは白トビしてしまってもいいそうです。いまのところまだどこらへんまで調整したらいいかがまったく手探り状態です。特にのちにPhotoshopへ渡すので、この時点でいじるべきなのか、いじらないべきなのかもまだよくわかっていません。おいおい検証して行きます。

その後、「階調」メニューの「デジタル現像/色彩強調/ガンマ調整」を選びます。レベル補正で飛んでしまったところも回復して現像してくれるとのことです。「レベル調整」は基本的にはそのまま、「デジタル現像」と「ガンマ調整」にチェックを入れ、「ハイライト」「エッジ」はいじらず、「ガンマ値」は「1」にしています。「OK」を押し、変換されたファイルをPhoshopで開けるようにtiff形式で保存。「16ビット」「IBM PC形式」「無圧縮」を選びます。

この時点での画像をjpgに変換したものを載せておきます。

New5

New1

ノイジーですが、すでに淡い部分が相当見えて来ています。


7. 画質調整

とうとう画質調整まで来ました。今度はPhotoshop CSで開きます。私はトーン補正をR、G、Bそれぞれに、暗いところを少し下げて、明るいところをあげるなどして、好みの色にします。その後Nik CollectionのColor Effect Pro 4の「ディテール強調」、Nik CollectionのSharpner Pro 3: (1) RAW Presharpner、必要ならSharpner Pro 3: (1) OUPUT Sharpner、最後にDfine 2でノイズをとります。星雲のところがザラザラしている場合はステライメージに戻って「フィルター」メニューの「バックグラウンドスムース」をかけます。

Nik Collectionがすごく強力で、ステライメージやPhotoshopの普通のメニューで色々やって納得しなかったのが、Nik Collectionを使うことでかなり簡単に思った効果が出せることがわかりました。

今回できたM31とM45の画像を載せておきます。ただしブログの設定で最大解像度を1600x1200にしてある(オリジナルの画像は5184x3456)ので、潰れてしまっている微恒星も多くあります。

New8

New4


M31、M45ともに言えますが、ISO6400で1分露光、枚数がそれぞれ5枚と9枚では星雲の明るさが全然不十分です。さらにM45は薄雲の明るい中で撮っているので、相当無理をして色を出している感が否めません。次はもう少し条件のいいに日に、ガイドを用いて長時間露光で試したいと思います。(追記: 2016/11/24オートガイドで長時間露光を試しています。)


とにかく今回は画像処理の練習ということで、色々初めてのことばかりでした。特に階調のところや、色調補正のところなど、まだまだ不明なことだらけです。でも天体観測を始めた半年ほど前に目標としたことの一つ、星雲がそこそこ綺麗に撮れるようになるというのは少しづつ実現して来ているので、ちょっと嬉しいです。


最後にですが、今回の画質調整はもちろん、それ以前の撮影とその後の処理、コンポジットから現像に至るまでも、まだ星雲撮影を始めたばかりの素人がとりあえずやってみたくらいのレベルなので、全くもって正しい方法とは限りません。パラメーターは無限にありますので、色々と検証をしながら、どの方法がいいのか、これからじっくり時間をかけて楽しみながら試していくつもりです。