前回の海外での天体観測の記事に引き続き、現在アメリカ出張中で、今はワシントン州から移動してロサンゼルス近郊に来ています。せっかくの休日なので少し足を伸ばして、Santa AnaにあるOrange county telescopeという天文ショップに行ってきました。念願のひとつだった海外天文ショップの状況の確認を、まだ1店目ですが、ついに実現することができました。

Orange county telescopeは、ここに店を構えて4年だそうです。ロス近郊にはセレストロン本社(トーランス市、この店から車で北西に1時間くらい)やミード本社(アーバイン市でこの店のすぐ近く)、ビクセンのアメリカ本社(この店から車で20分くらい南)など天文機器各社が車で行ける範囲にあるのですが、天文ショップはここの他には調べた限り一軒しか見つからず、その一軒は日曜休みなので、今回行けるのはこのOrange county telescopeほぼ一択でした。店長のMike(下の写真の中央の人)さんはとても詳しい人で、いろいろ面白い成果がありました。12時過ぎに入店して、3時頃まで居ついて、ずーっと盛り上がって話し込んでいました。

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お店は所狭しと望遠鏡が並んでいて、一見意外なほど日本と品揃えは似ていました。だいたい多い順に鏡筒はCelestron, Mead, Vixen, Orion, Explore Scientiifc位で、赤道儀はCelestronが多かったです。珍しいのはOrionとExplore Scientiifc社製の鏡筒が普通に置いてあるところくらいでしょうか。

Celestronはかなりの種類が置いてあったのですが、その中でも次に狙っているC11と今持っているC8 (ただし自分のは中古の相当古いモデルですが) が置いてあって、途中で中国系のC8ユーザーの人 (上の写真の右側の人) が来店して、同じ鏡筒どうして盛り上がっていました。もう40年くらい星をやっているベテランの方だそうです。他にも日本のものもありました。私(正確には娘が)も持っている学研「大人の科学」の付録の室内プラネタリウムなどです。

以下、新しい情報や、今まで知らなかったことのメモ書きです。
  • Celestronの赤道儀につなぐLiFeバッテリーがAdvenced VXの三脚の足に付いていました。これまでの鉛電池よりはるかに小型で、白色ライト、赤色ライトを切り替えることができます。確かUSBの出力も付いていたような...。バッテリーは10時間持つそうです。新製品だそうで、私はまだ見たことがなかったです。
  • STARSENSE AUTOALIGNや、他には日本ではまだ販売されていない(される予定もないようですが)Celestronの赤道儀とリンクするSkyPortalやSkyQ Linkなどのwifiアダプターが人気だそうですが、あいにく今日は品切れで、Celestronの方でも品薄で、仕入れてもすぐに売れてしまうそうです。
  • C8の補正板が付いている周りのネジ穴は、一部ネジがないものもありますが、これは補正板の中心位置を調整するためのもの押しネジ用のネジ穴だそうです。以前補正板を回転させた時に、像がずれるので中心が狂っていると思っていたのですが、調整する方法があるということが今回わかりました。(2016/9/25 追記: 補正板を清掃がてら、枠も外してみたのですが、少なくとも私の手持ちのC8は枠が鏡筒にほとんどぴったりはまっていて、ネジで中心をずらせるような隙間はありませんでした。もしかしたら前オーナーがネジ止め部分を改造している可能性はありますが、いずれにせよ中心を移動するのは無理だと思います。)
  • C8の補正板はフラットだと思っていたのですが、目ではわからないくらいの湾曲が付いているそうです。目ではわからないですが、玉を置いたら転がっていくそうです。これまで日本ではどの人に聞いてもフラットだと言われたので、どちらが正しいのか、一度自分で試してみようと思います。(2016/9/25 追記: 補正板を清掃がてら手で触ってみると、明らかに平面ではありませんでした。Mikeの言うことが正しかったです。)
  • San Diegoまで行くと、もっと大きな天文ショップがあるとの事です。今回は無理ですが、機会があれば行ってみたいです。 


 さて、ここからが本題ですが、以前、星雲を色つきでリアルタイムで見るという記事を書きましたが、それとほとんど同じようなことを店長のMikeさんも考えていて、なんとSony製センサーを持ったCCDカメラと簡易モニターなどを一パッケージにして、REVOLUTION IMAGERという名前で既に売り出していました。このシステムで見たときの写真も見せてもらったのですが、やはり星雲も綺麗に色が出ています。露光時間は5秒くらいあれば、星雲に色が付いて見えるとのことです。店頭ではC8にこのシステムを取り付けてデモを行っていました。


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写真にはモニターとコントローラーしか写っていなくて、肝心のCCDが写っていないのですが、そのまますぐに始められるセットになっていて$299.99だそうです。CCDは露光時間とゲインをコントローラーで変えることができるので、見たい天体の明るさによって調整することができます。さらにすごいのが、カメラにはDNRという画像をスタック(重ね合わせ)できる機能が付いていて、しかもカメラ単体でスタックが可能とのことで、単純露光したときよりもダークノイズを軽減できるので、星雲の色等もよりはっきりと見ることができるそうです。私のシステムではスタックは考えていなかったので、これは盲点でした。

このシステムはアメリカの2大天文雑誌のひとつAstronomyでも革命だという評価で記事となって(すみません、もしかしたら広告かもしれません 追記:後から写真が見つかりました。小さいですがきちんとした記事です)載っているのを見せてもらいました。

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私にとっても、このシステムはちょうどタイムリーなのと、値段もASI224MC単体よりも安い位なので、一つ購入することにしました。日本で宣伝すると言って少し安くしてもらったので、帰国してからこのブログでも使用記を書こうと思っています。

早速、購入したものを中身を詳しく見てみると

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  • CCD
  • 1.25インチアイピース径への変換アダプター
  • 7インチくらいのモニター
  • モニターリモコン
  • モニター台
  • x0.5レデューサー
  • コントローラー
  • UV/IRカットフィルター
  • リチウム電池 (12.6V, 4800mAh)
  • 電池袋
  • 充電器
  • 電源二股アダプター
  • 収納ケース

がセットになっていてかなり盛りだくさんです。収納ケースも付いていて全てのものが入るので、持ち運びにも便利そうです。

CCDとモニターはBNCで接続するみたいです。なのでアナログ信号でモニターに持っていっているみたいです。1.25インチへの変換アダプターが付いているので、買ってそのまま(充電はしなくてはいけないかもしれませんが)望遠鏡へアイピースの代わりに取り付けて使うことができそうです。モニターは枠のようなケースに収まっていて、両端のボタンを押してケースを外さないと、固定用のネジが見えてこないので注意です。

他にもオプションでwifiで飛ばしてタブレットやスマホでみるアダプターや、CCDの映像を動画として記録する小型レコーダーなどが置いてありました。また、望遠鏡にはセレストロンのNexStar シュミカセ用Piggyback Mountを使って固定するといいと言っていました。日本にも海外発送してくれるそうです。日本の代理店も探しているようです。

さて、私の方も負けじと、blogにアップしてあるリアルタイム観測の動画を見せたのですが、やはり興味津々でした。いろいろ話している途中で、キャプチャーソフトは何を使っているか聞かれたのでFireCaptureだと答えたのですが、すかさずSharpCapだと上で書いたようなスタックができるので、より見やすくなると教えてくれました。こちらも早速、帰ってから試したいと思います。

とにかくMikeさんは星が好きな人みたいで、とても親切で、私の数少ない惑星や星雲の写真を見せたのですが、今度来るときは是非観望会にきませんかと誘われてしまいました。帰りがけに来年のアメリカの皆既日食のポスターも頂きました。次回長期出張の時にはまたコンタクトしてみようと思います。

いやあ、それにしても世界は広いですね。同じようなことを考えている人はやはりいるものです。上のリンク先の動画を見ていると楽しそうに説明するMikeさんと、興味津々でモニターを見ている子供の顔がとても印象的でした。私もこういった観望会を実現させてみたいものです。