ほしぞloveログ

天体観測始めました。

天文ファン、カメラファンの皆様、いかがお過ごしでしょうか?いよいよCP+の時期が近づいてきましたが、

今年もサイトロンさんに講演依頼を頂き、
CP+2024で話すことになりました!

タイムテーブルなど、詳しくはこちらのCP+のオンラインプログラム一覧の2.24(SAT)のタブをご覧ください。



今年はなんと、現地であぷらなーとさんとの連続講演になります。


セミナー情報


2024年2月24日(土) 13:20-14:00

パシフィコ横浜 CP+2024
「サイトロンジャパンブース」
(オンライン配信あり)


「画像処理でオリオン大星雲の分子雲を
あぶり出してみよう」

元々、リアルタイムで星雲星団を見ることを目指して開発されてきた電視観望ですが、近年はその延長で天体写真撮影へと手を伸ばすことも盛んになっています。本来とても手間のかかかった天体写真撮影ですが、電視観望のライブスタックなどの技術をそのまま使うことで、かなり敷居の低いものになってきています。

今回の講演では撮影方法について少し紹介し、実際事前にライブスタックで撮影したオリオン大星雲を例に、セミナー会場で画像処理をしてみたいと思います。

まず最初にお見せしたいのは、星雲本体を鮮やかに出してみること。暗い中から星雲がブワッとあぶり出される様子は、天体写真をまだ扱ったことがない方には圧巻かと思います。

次は、特に初心者がつまづきやすい星雲周りの淡い分子雲をあぶり出すことです。画像に隠れている情報をいかに引き出すか、実際に操作を見せながら、なぜその操作が必要なのか、その理由をわかりやすく説明しようと思います。こちらは画像処理を始めたくらいの方から、背景までこだわった天体写真を目指そうとする方などに参考になるかと思います。

普段私はブログ記事の文章がメインで、あまり動画など 配信しないので、私自身にとっても動作そのものを見せることができる貴重な機会になりそうです。オンライン配信されるとのことなので、後日繰り返し見ることができればより理解も進むかと思います。その中で何か得て頂くものがあればと思います。

私の会場入りは前日の金曜日午後くらいからです。土曜日は講演終了後もしばらくCP+会場にいますので、私の姿を見つけた方はお気軽にお声掛けください。一応いつものネームプレーをとぶら下げておくことにします。

私のセミナーの後に、同じくサイトロンブースにて14:35から15:15まであぷらなーとさんのセミナーがあります。タイトルは「リーズナブルな天体望遠鏡で星雲撮影を楽しむ方法」とのことです。あれ?もしかして少し内容が被るかな?とも思いましたが、独自路線のあぷらなーとさんなので、そんな心配は杞憂ですね (笑)。


現地パシフィコ横浜会場にいらっしゃる方は、来場登録をお忘れなく。
 


年末の12月初めくらいから撮り続けていたSh2-308 ミルクポット星雲がやっと仕上がりました。

海外ではDolphin Head Nebulaと呼ばれているようで、日本でも「イルカ星雲」とか「イルカの頭星雲」とも呼ばれているようです。その一方、Milk Pot Nebulaとかで検索しても全く引っかからないので、どうもミルクポットと言っているのは日本だけのようです。

本当にイルカの口に似たような特徴的な形と、OIIIで写すと青く目立ってとても綺麗で、星を始めた当初からいつか詳細な形と共に撮影したいと思っていた星雲の一つです。最高高度が31度程度と比較的低い空なので、撮影可能期間もあまり長くなく、やっと実現できたというわけです。


撮影

実際の撮影開始は結構前で、12月4日の夜中過ぎからです。自宅なので平日も撮影可能で、同じ日の前半に北西方向のダイオウイカ星雲、後半に東から昇ってきているイルカ星雲を撮影しています。

一般に淡いと言われているイルカさんですが、同日に撮影していたダイオウイカ星雲がとんでもない淡さなので、イルカ星雲はずいぶん濃く感じました。下の写真の左は6時間40分のOIIIのダイオウイカで、ABEにDBEもかけて強あぶり出ししてやっとこれくらい。一方右は3時間10分でABEをかけただけでこんなにはっきり出ます。
comp

今回のイルカ星雲は、5分露光でOIIIが59枚、Hαが39枚でAOO合成の予定です。さらに恒星用にR、G、Bでそれぞれ8枚ほど撮影しています。OIIIとHαは比較的早くに撮り終えていたのですが、RGBが曇っている日が多くてなかなか撮り溜めできず、撮影は最終的に1月14日まで食い込んでしまいました。

R、G、B画像もそれぞれ同じ5分露光なのですが、明るい星はサチってしまっています。今後はRGBの各フィルターでの撮影は露光時間を短くするか、ゲインを落とした方がいいようです。

blue_BXT_Image36_DBE_DBE_Preview02_3dplot
RGB合成した画像の左側真ん中に写っている一番明るい星を、
PIの3Dプロットで表示。


画像処理

画像処理を進めていてすぐに、今回はイルカ星雲本体の青よりも、背景の赤がポイントではないかと思うようになりました。
  1. まず、イルカさんの中にも赤い部分が存在しているようで、今回程度のHαの露光時間では全然分解して表現できていないように思います。
  2. 背景の左側の赤い部分は、周辺減光か分子雲かの見分けがつきにくかったのです。特に左下の暗くなっている部分は暗くなっていますが、これは周辺減光なのか迷いました。他の方の画像を見ると確かに暗くなっているので正しいようです。
  3. 右側と上部には、かなり濃い波のような分子雲があり、こちらはHαだけでなくOIII成分も持っているようで、左下の赤とは明らかに違った色合いになり面白いです。
  4. 画面真ん中の星雲本体の周りに、下から右上方向に進むかなり淡い筋のような模様が見えますが、これも迷光などではなく本当に存在するもののようです。この筋はHαだけでなくOIIIにも存在するので、ここでも色の変化が見られとても興味深いです。

背景の淡い部分を出すには、フラット化がどこまでできるかがとても重要です。通常のフラットフレームを撮影してのフラット補正は当然として、それだけでは取りきれない
  • 輝度勾配
  • 周辺減光の差の残り
  • ライトフレーム撮影時とフラットフレーム撮影時の迷光の入り具合の差
など、大局的な低周波成分の輝度差が、淡い部分のあぶり出しを阻害してしまいます。

私はフラットフレームは晴れた昼間の部屋の中の白い壁を写しているので、どうしても窓側と部屋中心側で輝度差が出てしまいます。これはABEの1次で簡単に補正できるので、まずはHαもOIIIもインテグレーション後にすぐにABEの1次をかけます。ABE1次の後は出てきた画像を見て、毎回それぞれ方針を考えます。


GraXpert

実は今回、フラット化のために最近人気のフリーのフラット化ツールGraXpertを使ってみました。以前からインストールはしていたのですが、ほとんど使ったことはありませんでした。

今回GraXpertをPixInsightから呼び出せるようにしようと思って、この動画にあるように

https://www.ideviceapps.de/PixInsight/Utilities/

をレポジトリに登録して、ScriptのToolboxの中のメニューにも出てきたのですが、いざPixInsightからGraXpertを呼び出すと「GraXpertの最新版が必要」と言われました。アップデートしようとして最新版をインストールしたわけですが、アップデート後PIから呼び出しても、どうも動いている様子が全くありません。確認のために、まずは単独でGraXpertを立ち上げてみましたが、セキュリティーの問題を回避した後もうまく起動しません。ちなみにMacのM1です。

それでどうしたかというと、アプリケーションフォルダのGraXpertをフォルダから右クリックして「パッケージの内容を表示」でコンテンツの中身を見てみます。ContentsのMacOSの中にあるGraXpertがターミナルから起動できる実行ファイルで、これをダブルクリックすることでエラーメッセージを確認することができます。今回はいくつかpyhthonのライブラリが足りないとか出ていたので、手動でインストールしたのですが、結局解決せず。

そもそもメインPCのpython関連はそんなに変なことをしていないので、おかしいと思い調べたら、最新版はMac OS 13.6以上が必要とのこと。私はアップデート後のトラブルが嫌であまり最新のOSには手を出していなかったのですが、自分のバージョンを見たら12.4とか2世代も古いです。仕方ないので久しぶりにOSをアップデートし、一気に14.2.1のSonomaになって、無事にGraXoertが立ち上がりました。

ちょっと蛇足になってしまいましたが、
  • うまくいかないときはターミナルから立ち上げてエラーメッセージが確認できること
  • OSのアップデートが必要なこともある
というのが教訓でしょうか。

さてGraXpertの結果ですが、背景の星雲の形が大きく変わってしまい、残念ながら撃沈でした。比較してみます。最初がABEのみでフラット化したもの、
Image19_ABE4

次がGraXpertで今回は見送ったものになります。AIとKrigingで試しましたが、大きな傾向は変わりませんでした。画像はKrigingのものです。
Image13_SPCC_GX_K

違いは左下の濃い赤の部分で、GraXpertではムラと判断され、取り除かれてしまっています。また、イルカ星雲本体があるあたりの背景のHαも同様に取り除かれてしまっています。

このように、背景全体に分子雲が広がっているような場合は非常に難しく、DBEでもあまりいい結果にならないことがわかっているので、今回は再びHαとOIIIに戻って、今一度注意深くABEのみで処理することにしました。 GraXpertの方が良い結果を出す場合もあると報告されているので、実際のフラット化処理の際には一意の決まり手は存在せず、毎回臨機応変に対応すべきなのでしょう。


ABEのみでのフラット化

さて、今回最終的に使ったABEの具体的な手順を書いておきます。これも今回限りそこそこ上手くいったと思われる、あくまで一例です。
  • Hα: ABE1次、ABE2次
  • OIII: ABE1次、ABE2次、ABE3次、ABE3次 
として、ここでAOO合成。その後さらに
  • AOO: ABE4次
として、やっと落ち着きました。繰り返しになりますが、どれも決まった手順とかはなく、その場その場で画像を見ての判断です。

ポイントは
  1. 過去に他の人が撮影した画像などを参考にして、自分の背景がおかしすぎることがないこと
  2. オートストレッチで十分に炙り出せる範囲にフラット化を進めること
の2点でしょうか。それでも特に2にあるように、あぶり出しやすくするためにというのを主目的でフラット化しているので、正しい背景からずれてしまう可能性は否定できません。さらに1も、淡いところをどんどん出していくと、参考にできる他の画像自体も数が限られてしまうようになるという問題もあります。

こうやって考えると、PixInsightのMARSプロジェクトにかなり期待したいです。何が正しい背景で、何がカブリなどのフェイクかの指標を示してもらえるのは、とてもありがたいです。もちろん、誰も到達していないような淡さなどは当然データベースに登録されないと思うので、限界はあるはずです。でも私みたいな庭撮りでやっている範囲では、十分な助けとなってくれると思います。


とりあえずの画像処理

1月19日の金曜の夜、SLIMの月面着陸の様子をネットで追いながら、画像処理をしていました。着陸後、結果発表までかなり時間があったので、寝るのは諦めてのんびり進めます。その時に一旦仕上げて、Xに投稿したのが以下の画像です。

Image19_ABE4_SPCC_BXT_back3_cut

イルカ星雲本体はかなりはっきり出ています。イルカなのでOIIIの青がよく似合っています。また、背景の赤もかなり出ているのではないでしょうか。ナローバンドと言えど、自宅で背景がここまで出るのなら、結構満足です。周りの赤いところまで出してある画像はそこまでないのでしょう、結構な反響がありました。

イルカ星雲本体に含まれる赤はもっと解像度が欲しいところですし、全体に霞みがかったようになってしまっています。淡いOIIIを無理して強調した弊害です。OIIIフィルターにバーダーの眼視用のものを使っていることが原因かと思われます。IR/UVカットができないために、青ハロが目立ち、その弊害で霞みがかったようになってしまっています。


Drizzle+BXTが流行!?

土曜の朝起きて、いつものコメダ珈琲に行き、画像処理の続きです。改めて昨晩処理したものを見てみると、ノイズ処理がのっぺりしていて、恒星の色も含めて全然ダメだと反省しました。特に、拡大するとアラが目立ちます。

そもそもε130Dの焦点距離が430mmとあまり長いものではないので、画角的にイルカ星雲本体が少し小さくなってしまいます。後から拡大しても耐え得るように、WBPP時にDrizzleの2倍をかけておいて、Drizzle+BXT法で、イルカさん本体の解像度を上げてみます。



下の画像は、左がDrizzle x1で右がDrizzle x2、上段がBXT無しで下段がBXTありです。差が分かりにくい場合は画面をクリックして、拡大するなどして比べてみてください。

comp2
  1. まず上段で左右を比べると、Drizzleを2倍にすることで、恒星の分解能が上がっていることがわかります。
  2. 次に左側で上下を比べると、(Drizzleは1倍のままで) BXTの有無で、恒星が小さくなり、背景の細かい模様もより出るのがわかります。ただし、画像の解像度そのもので分解能は制限されていて、1ピクセル単位のガタガタも見えてしまっています。
  3. さらに下段のみ注目して左右を比べると、右のDrizzle2倍にさらにBXTをかけたものでは、恒星のガタガタも解消され、かつ背景もピクセル単位のガタガタが解消されさらに細かい模様が見えています。
このように、Drizzle+BXTで、恒星も背景も分解能が上がるため、圧倒的に効果ありです。

ところでこのDrizzle+BXT法ですが、2023年5月に検証して、その後何度がこのブログ内でも実際に適用してきたのですが (1, 2, 3) 、最近のXでの天リフ編集長の「効果があるのかないのか実はよくわからなかった」という発言にあるように、当時は余り信用されなかったようです(笑)。


ところが上のリンク先にもあるように、ここ最近だいこもんさんや他の何人かの方が同様の方法を試してくださっていて、いずれも劇的な効果を上げているようです。とうとう流行期がきたようです!

この手法を科学的な画像としてそのまま使うことはさすがにできませんが、鑑賞目的ならば、本物のさらに細かい構造が見えてきている可能性があると思うと、夢が大きく膨らむのかと思います。多少の手間と、(一から揃えるとPixInsightとBXTでそこそこの値段になるので) あまり多少ではないコストになりますが、それでも対する効果としては十分なものがあるのかと思います。

土曜日はこんなことをやっていて、力尽きました。


ここに文章を入力

日曜日もほぼ丸一日かけて、Drizzle x2の画像の処理を進めます。なかなか上手くいかなくて、バージョン10まで進めてやっとそこそこ納得しました。あとから10段階を連続で見てみると、徐々に問題点が改善されていく過程がわかります。

金曜夜中に処理したDrizzle x1と、日曜夜遅くにDrizzle x2で最終的に仕上げた後の画像の比較してみます。ともにBXTをかけたものです。

まずはDrizzle x1
x1

次にDrizzle x2です。
x2

画像処理にかけた気合と時間が大きく違うこともありますが、それにしても結果が全然違います。では一体何をしたかというと、大きくはノイズ処理の見直しと、恒星の処理の見直しです。


Drizzle後のノイズ処理

特にノイズ処理は結構大変で、少し油断するとすぐにモワモワしてしまったり、分解能が悪くなったりで、全然上手くいかなかったです。でも筋道立てて丁寧にやっていくと、なんとか解は存在するといった感じでしょうか。

まず、ノイズ処理で気づいたことが一つあります。Drizzleで解像度2倍にした画像にはノイズ処理が効かないことがあるようです。興味があったので少し調べてみました。

今回試してみたノイズ処理ソフトは
  • Nik CollectionのDfine 2
  • PhotoshopのCamera RAWフィルターのディテールのノイズ軽減
  • DeNoise AI
  • NoiseXterminator
です。この中で効果があったのはDfine 2とNoiseXterminatorでした。他の2つは元々大きな構造のノイズが苦手な傾向があることは気になっていましたが、今回Drizzleで2倍の画素数にしたため、同じノイズでもより細かい画素数で表現されるようになり、相対的に大きな構造のノイズを扱っているような状態になったのかと推測します。まだ少し試しただけなので検証というレベルではなく、他のノイズ処理ソフト、例えばTGVDenoiseなどのPIのノイズ処理関連なども含めて、もう少し調べる必要があると思います。それぞれ得意な空間周波数があるような気がしています。

結局今回使ったのは、PI上でNXT、Photoshop上でDfine 2でした。これでモコモコしたノイズが残るとかを避けることができました。またNXTはカラーノイズ対策はできないので、カラーノイズはDfine2に任せました。


結果

結果です。拡大しないと一見、金曜夜中の画像とそこまで変わらないと思えるかもしれません。でも、少し細部を見ると全く違います。

Image17_ABE4_SPCC_BXTx3_HT_HT_back7_cut_low
  • 撮影日: 2023年12月5日0時3分-3時9分、12月9日0時2分-1時5分、12月29日22時3分-30日4時20分、2024年1月4日20時50分-22時43分、その他2夜
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、R、G、B
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 39枚、OIII: 59枚、R: 8枚、G: 9枚、B: 8枚、の計123枚で総露光時間10時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

私的にはかなり満足なのですが、子供に上の画像を見せたら「霞んで見えるのが惜しい」と言われました。ナローバンドフィルターは星まつりで安いB級品をちょくちょく集めてきたのですが、パッと手に入れることができた眼視用OIIIフィルターだと多分もう厳しいので、新品で購入してしまった方がいいのかもしれません。でも新品でも在庫がないみたいです。いっそのことUV/IRカットフィルターを重ねてしまうのも手かもしれません。

上の画像は拡大すると真価を発揮します。イルカに見えるように画像を90度左回転し、左に明るい赤の壁を置くような構図にしてみました。

Image17_ABE4_SPCC_BXTx3_HT_HT_back7_rot_half2_wall
恒星の色もでているかと思います。大きくクロップしたとは思えないくらいです。

さらにイルカ星雲本体のみにしてみますが、ここまで拡大してもまだ大丈夫かと思います。
up2

この画像も子供に見せたら、「イルカの中の赤いところがまだ出ていない。頭のところにある脳みそみたいなところはまだマシだが、下の心臓の形はもっと出るはずだ」とか言われて、どこからか検索してきたもっと細部が出ている画像を見せられました。でもその画像の説明を見たらそもそも大口径の350mmでf/3、撮影時間がなんと45時間...、さすがに太刀打ちできるはずもないです。

超辛口な息子の意見に少したじろぎましたが、ナローバンドだとしても自宅撮影でここまで出るなら、もうかなり満足です。あとは毎回コンスタントにこれくらいまで出すことができるかでしょうか。もう少し練習が必要な気がしています。


まとめ

金曜夜から土日のほとんどを画像処理にかけてしまいました。やり直しを含めて、今回は丁寧な処理の画大切さを実感しました。淡いところを出すときは、特に慎重に手順を考えて処理しないとすぐに破綻してしまいます。

結局これ1枚に32時間くらい画像処理にかけたので、ちょっとスキルが上がったはずです。1枚に集中してできる限りのめり込むことは、かなり効果があるのかと思います。

でも次のダイオウイカとまともに戦えるとはまだ思えません。今のところ全然ノイジーです。ダイオウイカ星雲はそれくらい手強いです。


恒例の1年のまとめ記事です。ほしぞloveログでは年末は書くのをサボって、たいてい1月中にのんびりと書いています。

昨年のまとめはここにあります。昨年は2月に公開しているので、今年の方が早いくらいですね。


さて、今年もテーマ別に振り返っていきましょうか。まずは機材からです。


機材関連

ここでは2023年に使った機材で、特筆すべきものを3つ書いておきます。

1. ε130D

上のリンクにある昨年のまとめを見直してみると、2023年の機材の目標は
  • 短焦点で広角で淡いところまで撮影する
と書いてあります。これは4月にε130Dを手に入れたので、目標達成と言えるでしょう。


最初の頃はテスト撮影をしながら、問題点を挙げていきました。四隅の星像問題や、迷光の問題などです。四隅はバックフォーカスを合わせることでかなり改善しましたが、迷光はある程度許容して画像処理で誤魔化すことが必要そうだと分かりました。それでもある程度実用レベルで撮影できるようになってきたので、主力鏡筒として今後もどんどん活用していくことになりそうです。


2. SWAgTi

SWATにAZ-GTiをくっつけた命名「SWAgTi(スワッティ、gは発音せず)」はとても楽しい試みでした。おそらくこれまでになかったアイデアで、高精度追尾のSWATと自動導入可能なAZ-GTiの互いにいいところを持ち寄って、高機能高精度追尾でお気軽撮影を実現できたのかと思います。惜しむらくは、長時間撮影では縞ノイズが出てしまい、ディザーで散らすことを試みたのですが、撮影中はAZ-GTiの自動追尾を切って高精度化を実現していて、その状態だとディザーができないことです。ソフトで解決できる問題のはずなので、いつか解決できたらと思っています。





 
SWAgTiの過程で、SharpCapを使えば一眼レフカメラでも極軸合わせとプレートソルブができることを示しました。SWATユーザーには一眼レフカメラを使っている方も多いと聞いたからです。

これは、CP+で話した一眼レフカメラで電視観望をやってみようという話にもつながっています。


3. トラバース
もう一つ、トラバースはミニマム電子観望をさらに押し進めました。カバンなどにすっぽり入るサイズで、PCと合わせても歩きの持ち運びで全然余裕です。


最初の頃はAZ-GTiに比べて少し不安定なところもありましたが、SynScan Proのアップデートと、SharpCap独自のプレートソルブで不安定なところはほぼなくなり、完全に実用レベルで観望会で使えるようになりました。最近は、持ち運びの便利さと見た目のコンパクトさでAZ-GTiにとってかわり、トラバースを使うことがほとんどです。





目標
さて、機材関連の2024年の目標ですが、今の天体撮影の主力機材は2つで
  1. SCA260(1300mm)+ASI294MM Pro(マイクロフォーサーズ)
  2. ε130D(430mm)+ASI6200MM Pro(フルサイズ)
です。他にも鏡筒はある(撮影レベルの冷却カメラは残りはカラーのみ)のですが、効率を考えて明るいものに限定すると上の2つになってしまいます。仮にこの2種だけだとすると、画角にすると一辺で6倍くらい違い、面積だと36倍くらい違うので、せめてその中間くらいがあるといいなと思い始めています。

簡単なのは、今ある手持ち鏡筒で口径の大きいF4のBKP200を使うかとかでしょうか。これに例えば今と同じASI294MMとか取り付けるか、いっそのこと使っていないカラー冷却のASI294MC Proでもいいかもしれません。コマコレクターは持っているのですが、ε130DやSCA260に比べるとそれでも多少星像は伸びるので、BXT2が前提になると思います。

もう一つのアイデアは、今は鏡筒とカメラを固定にして外さないようしていて、これは外した時のホコリの侵入を防ぐのが第一なのですが、この制限を取り除いてカメラと鏡筒を交互に入れ替えるかです。これだと
  1. SCA260(1300mm)+ASI294MM Pro(マイクロフォーサーズ) = 2380mm (フルサイズ換算) 
  2. SCA260(1300mm)+ASI6200MM Pro(フルサイズ) = 1300mm (フルサイズ換算)
  3. ε130D(430mm) +ASI294MM Pro(マイクロフォーサーズ) = 806mm (フルサイズ換算)
  4. ε130D(430mm)+ASI6200MM Pro(フルサイズ) = 430mm (フルサイズ換算)
となって、2と3がちょうど間を補完します。3はASI6200でROIで切り詰めるか、後でクロップしても同じことなので、意味がないかもしれません。これだととりあえず鏡筒もカメラも追加はないので、経済的な負担も少ないです。カメラ交換の手間と、スケアリングの問題が出ないかと、ホコリの混入をどうするかなどが問題です。そう頻繁に換えないとかにすれば大丈夫な気もします。ここら辺を今年一年悩んでみます。


撮影

去年の目標のところに「Sh2-240:スパゲティ星雲やSh2-129:ダイオウイカ星雲などの広くて淡い難物を自宅でどこまで出るかを試してみたい」と書いています。ε130Dでスパゲティー星雲はなんとか撮影できました

 
自宅からこれだけ出れば、まあまあではないでしょうか。ダイオウイカ星雲も撮影は完了していて、現在画像処理で苦労しています。ある程度目標は達成と言っていいでしょう。その一方、今回わかった反省点もあるので、これ以上はやはり暗いところに行って撮る方がいいのかもしれません。2022年に自宅で撮影したM81(未記事化)と2023年に開田高原で撮影したM81で比較して、少なくともLRGB撮影ではIFNなどの淡い部分は自宅では限界があることを身をもって理解しました。ナローバンドでも、本当の本当に自宅だと明るすぎるのかどうかは、一度きちんと検証してみたいと思っています。

淡いところを出す技術は上がってきましたが、自宅で出すには相当無理しているところもあり、画像処理に徐々に時間がかかるようになってきました。そのため結構気合を入れる必要があり、撮影は終わっていrても、画像処理が残っているものが結構あります。パッと思いつくだけでも
  • 2022年に撮った星景が2つほど
  • 2023年春に撮ったM104ソンブレロ銀河
  • 燃える木の拡大撮影
  • M45プレアデス星団、モザイク撮影
  • ダイオウイカ星雲
などです。ダイオウイカ以外はお蔵入りになりそうな雰囲気です。まだ撮影中のものもあり
  • ドルフィン星雲
  • カモメ星雲
は晴れた時にさらに進めようと思っていますが、冬はなかなか晴れないので、一向に進みません。

太陽や月はほとんど手をつけていなくて、唯一PST本体を2台目にしたことくらいでしょうか。良像範囲が少し広がりました。粒状斑はまだ何かだめなのか、いまだに満足した画像を撮ることができていません。





画像処理

天体写真の方については、年末に別記事でまとめてあります。再処理も合わせて12枚だったので、数はあまり多くはありません。


画像処理で特筆すべきは、やはりBXTでしょうか。元々恒星処理がかなり苦手だったのですが、BXTでdeconvolution処理をほぼ自動で、しかも収差まで緩和するようなすごいレベルで補正してくれるようになったので、相当楽になりました。

StarNet2も地味に構成と背景の分離精度が徐々に上がっていて、BXTと合わせて、淡いところの炙り出し、分解能向上なども楽になっています。特に、BXTとdrizzleを合わせた処理で分解能をさらに引き出すことができたのも面白い結果でした。


BXTについてはつい最近バージョンアップし、相当ひどい収差なども補正すること、最微恒星を取りこぼさないようにするなど、精度が格段に上がっています。



バージョンアップ前のBXTを使っていますが、いくつか再処理をした結果が以下の4枚になります。どれも前後で見た目ですぐわかるレベルで改善があり、例えば三日月星雲とトールの兜星雲は、同じ元画像かと思うくらいの進化が見られます。






アップデートされたBXTはさらに強力そうなので、かなり昔に撮った技術的にまだまだな画像でも再処理してみたいと思います。

目標
ε130Dで撮影したアメペリ星雲網状星雲クワガタ星雲などがそうなのですが、最近は背景をかなり炙り出しています。





これらは全てAOO合成で、赤成分はほぼHα撮影からきています。淡いところまで出せるようになってきたのはいいのですが、背景まで赤っておかしい気がしてきています。多分これって、茶色い分子雲がHαの波長も持っていて、それが出ただけなのではと。例えば、網状星雲の右半分ってRGBで丁寧に撮った画像だと茶色の分子雲で暗くなっているのが見えたりします。また、智さんが撮影したRGBで撮影したスパゲッティ星雲だと淡いながらも茶色い分子雲がはっきり見えていますが、これも自分が撮影したAOOだと言われると気づくかもしれませんが、かなり赤に寄っていて見分けがあまりつきません。

これらを踏まえて2024年の目標ですが、RGBを駆使するのかLを駆使するのか、まだ全然アイデアは固まってませんが、なんとかして背景の分子雲を、色も含めて分子雲らしく出すこにしたいと思います。多分ナローじゃなくなるので自宅だと無理かもです。


電視観望

2023年にブログで単独で電視観望を主に扱っている記事はわずか3本。トラバース天の川電視観望リモートヘルプのみです。




さらに、「電視観望」で検索してみたり、自動で保存された画像が残っているフォルダも数を数えると、実際に電視観望で見た回数は星まつりとか観望会とか合わせて18回とのことでした。月平均1.5回と考えると、ずいぶん少なくなりました。

電視観望の回数が少なくなってきていることは昨年の反省でも同じことを書いていて、よく言えば技術的には成熟してきた、悪く言えばネタがなくなってきたことを示しています。とくに2023年後半から電視観望ではSeestarが話題の中心になっています。私は結局購入していないのですが、初心者には機能的にもコスパ的にもかなりいいと思います。天文人口の裾野が広がることは超ウェルカムで、私も電視観望を始めた頃からずっと願っていたことです。Seestarはこの点、ものすごく貢献しているのかと思います。

一体型のスマート電視観望機器と言っていいものは、eVscope、Vespera、Seestar、DWARFなどと、どんどんコンパクトになってきています。そう言った意味では、一体型に対してカスタム型電視観望としてトラバースにFMA135を載せて、三脚を小さくしたセットアップは、いまだにミニマムという点では健闘していて、性能的にもコンパクト性においても私的には最近はこれが一番稼働率が高いです。


もう一つ、電視観望が繋いだ縁として、「カフェぽうざ」の訪問があります。


もともと天リフさん主催の会議で私の電視観望の基調講演の動画にコメントを頂いのがきっかけだったのですが、実際に茨城県石岡市まで訪問しました。電視観望を主とした、おそらく日本で唯一のカフェで、その後この記事を見た星ナビさんが2023年9月号で大きく取り上げてくれて、私も少しだけ記事を書かせていただきました。


講演

2023年は電視観望については講演が多かった年でもあります。パッと数えただけでもCP+天教福島志賀高原小海と5回にもなります。しかも全てオンラインではなく、実際に面と向かってのリアルでの講演です。これだけ考えても、コロナが収束に向かった年だったことがよくわかります。







特に、CP+については3回目にして初の念願の現地参加です。2021年の初の全面オンラインCP+では講演時間をわざわざ夕方遅くからにして頂きZoomで電視観望の生中継をして、北陸の冬の悪天候にも負けずに見事バーナードループを観ることができました。2022年のCP+ではNEWTONYとCeres-CとAZ-GTiを組み合わせた、安価な初心者向けの電視観望を紹介しました。この系譜はシュミットの2024年の福袋セットにも引き継がれていて、AZ-GTiがトラバースに変わっていますが、電視観望セットとしては最安で販売されています(ただし2024年1月14日23時59分まで)。



2023年のCP+は現地開催記念でCP+本来のカメラユーザーを意識して、一眼レフカメラで電視観望ができることを紹介しました。2024年のCP+も何か話せたらいいと思っています。小海の「星と自然のフェスタ」での電視観望実演で画像処理の需要がかなり高そうということが実感できたので、今後講演をもしするとしたら、そんな方向の話ができたらといいな思っています。

天教の講演会は2022年の公開天文台協会の島根の全国大会に続いて、非常に貴重な機会でした。普段接するのはアマチュア天文家なのですが、天文教育に関わるプロの意見はやはり違った側面を持っていて、とても参考になりました。

星の村天文台での講演は土壇場で決まったものでした。準備時間がわずか10分くらいと、先の天教の講演があったので何とか持ち堪えることができました。

志賀高原のセミナーは実演も合わせてのセミナーになります。この時遠くから参加してくれて手伝ってくれた大鹿村のKさんとは、その後の大鹿村の観望会、元気村での集まりへとつながっています。

小海の「星と自然のフェスタ」は比較的新しい星まつりで、過去に何度か講演させていただいています。元々の主催者のSさんが始めたもので、今では規模としては3大星まつりの一つと言っていいでしょう。せっかく定着しつつある星まつりです。運営も大変だと聞いていますが、講演会が特徴のこの星まつり、是非とも続いて欲しいと思ってやみません。

基本的には上に書いた2023年の講演は全て電視観望についてでした。画像処理についての話もしてみたいですし、でも本当はこの記事の下の方でも出てくるノイズ解析みたいな話を思う存分したいのですが、流石にマニアックすぎて聞いてくれる人はほとんどいないと思うので躊躇しています。でもいつか...どこかで...もしチャンスがあれば...。


観望会、遠征など

私の天文活動は、相変わらず平日を含めた自宅がメインなので、外にはそれほど多く出ていません。昨年の反省でもすでに書いてありますが、2023年中の遠征撮影は1月の開田高原のみです。
 

観望会もそう多くはなく、8月に富山環水公園で天の川電視観望を見せた他、長野県下伊那郡大鹿村でも(天気が良くなかったので)広域の天の川電視観望がメイン、あとは全く星が見えなくて観望会にはならなかった2泊3日の 愛知県豊田市旭高原の元気村tくらいでしょうか。





特に元気村は星こそ見えませんでしたが、母校の高校の天文部の若い生徒たちと触れ合えたのがとても刺激になりました。次の日の気ままに星空観望仲間の方達の集まりに参加させていただいたのも、とても楽しかったです。

定例の飛騨コスモスの観望会も4月22日5月21日6月17日と参加していますが、天気が悪かったり、コロナにかかって体調が悪かったりで3回(1回はドームの修理だけなので実質2回)しか参加できていません。修理も完了していないので、春になったら早々に直したいと思っています。






星まつり

星まつりですが、福島胎内星もと小海と、例年行くものは2023年も全て行っています。特にコロナが終息して胎内に久しぶりに行けたのが良かったです。やはり国内最大の星まつりなので、現地開催が一番です。






この中でいまだに進化し続けているのが小海の「星と自然のフェスタ」でしょうか。2023年はメイン会場がホテル前の広場から、少し下がったところの大きな室内会場になりました。雨が降っても、夜に寒くなっても、室内なので快適に過ごすことができます。夜の観望も室内会場を出たすぐ目の前に展開できたので、簡単に行き来できてとても便利です。眼視会場が離れたところになってしまったとか、初めての試みでまだこなれないところが残っていたかもしれませんが、実際年々快適になっていくので、来年以降はさらに快適になっていくでしょう。期待したいと思います。

残念なのは、3大星まつりの一角を担っていた原村の星まつりが、以前とは全く違った形になってしまったことでしょうか。コロナが収束しても実質以前の星まつりの雰囲気ではなくなってしまったようで、私は参加を見送りました。以前の形に戻ってくれるのか、それとも今後ももうこのままの形なのか、2024年の方向性に注目したいと思います。


解析など

1. 撮影画像のノイズ解析

2022年は解析とかあまりできなかったと反省に書きましたが、2023年の特筆すべきはノイズ解析が大きく進んでいることでしょうか。3月に(その1)を書き始めて、その後不定期に書き足しています。現在その4まで来ていますが、まだまだ終わりは見えず、今もその5以降を書き溜めていて、ライフワークになりそうな勢いです。でもこの面白さはなかなか伝わらないかもしれないので、全体を見渡して少し解説しておきます。

まず面白いのは、(その1)でスカイノイズを数値的に示したことでしょうか?読み出しノイズとかダークノイズは計算できるのですが、スカイノイズがどれくらいかということを明確に示した解説記事はほとんどないようです。画像からスカイノイズがどれくらいあるのか見積もり、同時に読み出しノイズやダークノイズが計算と実測でどれくらい合うのかを示しているので、実際に撮った画像がどのようなノイズに支配されているかが、数値で具体的にわかります。ノイズだけでなく、その後、(その3)で信号も評価し、S/Nを実測で求めているところです。まだ今の所は1枚画像での評価がメインですが、次の記事でインテグレート(スタック)された場合にどうなるかを示そうと思っています。その後はどう展開しようか?まだ迷っていて、多分ですが色々なパラメータをいじってみてグラフ化して、どのようなパラメータの時に最適化ができるかなどを示せたらと思っています。例えば、天体撮影と電視観望では最適なパラメータが違うはずで、それぞれにおいてどのような値を選んだら良くなるかなどです。アイデアはいろいろあるのですが、どうやってわかりやすく記事にまとめるか...、時間をかけながらじっくり進めていければと思っています。







2. ビニング

同時に、派生的に出てきた感のあるビニングについてです。ノイズのことをよく考えていると、これまでビニングではっきりしてこなかったことが、かなりわかってきました。ビニングについては調べてもほとんどきちんとした定量的な話が見つからないんですよね。でもそれもそのはずで、そもそもスカイノイズとかきちんと評価しないと何も言えないからなのかと、今は思っています。なのでこれまではすごい定性的な話で止まっていたり、神話的に根拠の説明なしに話が伝わってきたのではないかと思います。





3. LRGB合成

LRGB合成についても少し議論しました


だいこもんさんやNiwaさんたちとTwitter上で議論したり、ちょうど蒼月城さんが同時期にLRGB合成についての動画をアップしていて、とても参考になりました。LRGB合成はノンリニアでやるのが大原則というのはわかりましたが、まだ本質的なところでなぜノンリニアでやる必要があるのかは完全に理解できていません。リニアなうちでも問題があまり出てこない範囲でなら、絶対ダメというわけではないのかと思ってしまっています。私自身がもう少しきちんと理解する必要がありそうですが、課題として残しておきます。


解説記事など

上の電視観望のところとちょっと重なるかしれませんが、SharpCapの解説記事なども書いています。





NINAのオートフォーカスについても書きまし。


短い記事でも意外に評判がいいので、こういったものを増やしていけたらと思います。


書籍

2023年に手に入れた書籍関連です。そのほかに天文ガイド、星ナビを定期購読しているので、それぞれ12冊づつあります。

IMG_8895

これまで書籍はブログでは一部を除いてほとんど紹介してこなかったですが、特に星を始めてから数年間は結構な量を購入しています。2023年は流石に落ち着いてきて上記くらいになってきました。君は放課後インソムニアが完了したのが大きいですね。舞台の石川は富山からも近いので、地震の被害が落ち着いたらまた一度、ゆっくり聖地巡礼がてら能登半島に行ってみたいと思います。

あと、貴重なInterractiveを全冊お借りしたので、近いうちにまとめ記事を書きたいと思っています。


ブログ

2023年の一年間の投稿記事を数えたら74本でした。2022年が104本、2021年が114本となっているので、かなり減っています。月5−6本程度なので、週に1本か気が向くと2本とか書く程度になってしまっています。理由は、撮影時間が10時間オーダーに伸びてきて仕上がる枚数が減っていることと、画像処理に時間がかかっていること、あとは無駄に一本当たりの記事が長いことなどでしょうか。

これまで何度も記事を短くしようと試みてますが、ことごとく失敗しています。短い記事の方が読まれやすくてPVも伸びたりしているのですが、長い記事は多分私の習性です。この記事もそうですが、最近は諦めていて、思いの丈を書こうと思うようになりました(笑)。


まとめ

星を始めたのが2016年のゴールデンウィークくらいなので、もう7年半も経ってしまいました。流石にペーペーの初心者とは言えなくなってきました。星を始めた頃は1年がすごく長く感じましたが、最近は1年があっというまに過ぎてしまう感じです。1年で進めることができる量も徐々に少なくなってきている気がします。2023年はノイズ解析が進んだので、それでも少しマシでしょうか。

最近すごいと思うのは、私よりもはるかに短い期間で、素晴らしい天体写真を仕上げてくる人がいることです。かなり研究されているのかと思います。だんだん若い人(年齢というよりは、この世界に新しく入ってきた人と言った方がいいかもしれません)に追い抜かれていくので、ちょっと悔しいところもあるのですが、その一方で自分ではとてもできないような若い人のアイデアや成果とかに期待してしまいます。

BXTもそうでしたが、ソフトの進化はまだまだ革新的なものが出てきそうです。PixInsightのMARS計画も楽しみです。CMOSカメラもまだまだ進化しそうですね。でも進化とともに値段が上がるのではなく、フラッグシップモデルの価格が一定になって、その分こなれた機能のカメラが安価になっていくと、もう少し敷居が下がる気もします。

Seestarで参入した新しい人たちのうち、幾らかの人はのめり込んでくれるかと思いますが、初心者もベテランもあわせて、天文人口そのものが増えてくれると盛り上がっていくのかと思います。この趣味が尻つぼみにならないように、若い人(こちらは本当に年齢という意味で)が増えてくれると、とてもありがたいと思いみます。大学生とか高校生の天文好きな人達を見ていると、結構期待できそうな気もします。


今回は1ヶ月ほど前に書いたビニングの話の続きです。


ソフトウェアビニングが役に立つのかどうか...、そんな検証です。


ダイオウイカさんが釣れない...

最近ずっと自宅でダイオウイカ釣りをしています。いつまで経ってもダイオウイカさんは出てきてくれません。もうかれこれOIIIだけで10時間になりますが、全部インテグレートして、普通にオートストレッチしただけだとこんなもんで、かなり淡いです。これでもABEの4次をかけてかなり平坦化してるんですよ。

OIII_stacked_normal

今回の画像は、ε130DにASI6200MM Proでbin2で撮影しています。ゲインはHCGが作動する100、露光時間は1枚あたり5分で125枚、トータル10時間25分です。

これだけ時間をかけても高々上に出てくるくらいです。やはり自宅でのダイオウイカ釣りは難しいのでしょうか?


ビニングの効果

これ以上露光時間を伸ばすのはだんだん現実的ではなくなってきました。遠征してもっと暗いところに行けばいいのかもしれませんが、自宅でどこまで淡いところを出せるかの検証なので、限界近くを責めるのはかなり楽しいものです。

さて、こんな淡い時にはビニングです!

そもそもCMOSカメラのビニングはASI294MMなど特殊な機種でない限り、一般的にソフトウェアビニングと同等で、
  • ハードウェアビニングでは信号は4倍になる一方読み出しノイズのを一回だけ受け取ればよく、S/Nで4倍得する。
  • ソフトウェアビニングでは信号が4倍になっても読み出しノイズを4回受け取らなければならないので、4のルートの2倍ソフトウェアビニングが不利になり、S/Nとしては2倍しか得しない。逆に言えば2倍は得をする。
というものです。それでも前回議論したように、スカイノイズなど、読み出しノイズが支配的でない状況ではハードウェアビニングの有利さは活きないので、
  • 実効的には ハードウェアビニングでもソフトウェアビニングでも効果は同等で、両方ともS/Nが2倍得するだけ。
というのが重要な結論になります。

と、ここで天リフ編集長から重要な指摘がありました。
  • 「もしソフトウェアビニングで同等の効果というなら、撮影後にPC上で本当にソフトでビニングしてもいいのでは?」
というものです。理屈の上ではその通りです。でも本当にそんなに都合がいいのか?というのが疑問に残るところでしょうか。


DrizzleとBXTの組み合わせ効果

もう一つ、Drizzleをかけて分解能を2倍にして、それだけだと解像度はそこまで大きくは上がらないのですが、さらにBXTをかけると本来の2倍の解像度程度まで戻すことができるという検証を以前しました。




ここまでのことを合わせます。
  1. 2倍のビニング
  2. Drizzleのx2
  3. BXT
を使うことで、
  • S/Nを2倍得して
  • かつ分解能の犠牲を戻す
ということができるのではというのが今回考えてみたいことです。


検証

さて、上で述べたことは本当なのか?実際に検証してみましょう。ダイオウイカ星雲はものすごく淡いので、格好の検証材料です。

まずはPC上でのソフトウェアビンングの準備です。今回は、PixInsightのIntegerResampleを使います。「Resample factor」を2として、「Downsample」を選び、「Average」を選びます。Dimemsionsはいじる必要はないです。左下の三角マークをPIの画面上に落として、このインスタンスを作っておきます。あとはImageContainerで、ビニングしたい画像を全て選び、出力ディレクトリを選択したら、これも同様にインスタンスを作成します。IntegerResampleのインスタンスをImageContainerに放り込むと処理が始まり、しばらく待つとさらにbin2相当、元から見るとbin4相当の画像が出来上がります。

と、最初は結構簡単に考えていたのですが、ここから実際にWBPPで処理を進めようとすると、ダークフレーム、フラットフレーム、フラットダークフレーム全てを同様にbin2相当にしておかないとダメだということに気づきました。

さらに注意は、WBPPのReferene frameです。bin2処理をしたOIIIと何もしないHαを最後に合わせようとする場合、Referene frameに同じライトフレームを選んでおく方が楽です。その際に、bin2処理をする場合のReferene frameのみ、あらかじめbin2でダウンサンプリングしておかないと、結果が変になってしまいます。考えてみればあたりまえなのですが、気づくまでなぜか結果がおかしいと悩んでしまいました。

さて、結果を比較します。左が普通にOIIIをWBPPで処理した結果、右がダウンサンプリングでbin2(元からだとbin4)相当でさらにWBPPでDrizzle x2を適用した結果です。両方ともABEの4次をかけ、強度のオートストレッチをかけています。イカの明るい所を拡大しています

preview_s

違いがわかりますでしょうか?
  • まず恒星ですが、やはり右のビニング画像した方が大きく見えます。
  • 背景のノイズの散らばり具合は、左はトゲトゲしいですが右は丸くなっています。でもこれは単純にダウンサンプリングのせいでしょう。S/Nが良くなったかというと、うーん、見た目だけだとどうでしょうか?心持ち右が良くなったように見えなくもないですが、あまりわからないです。

背景についてはっきりさせるために、S/Nを数値で定量的に評価しましょう。比較すべきは、
  1. ノイズN: 背景と思われる何も天体が写っていない暗い部分と、
  2. 信号S: 天体と思われる、ダイオウイカの明るい部分
です。具体的には上の画像のプレビューのところを比較しました。元々の画像で位置合わせがきちんとできていることと、プレビューの位置もタグを放り込んできちんと合わせているので、公平な評価になっている思います。

測定ですが、ノイズNはPixInsightのImageInspectionのStatistics結果は「Standard deviation」で直接比較できます。問題は天体の信号Sです。同じくStatisticsの「Mean」を使いますが、そのままだと値が大きすぎてよくわかりません。ここでは、ノイズ解析でS/Nを求めた時と同じように、天体部分の輝度から背景部分の輝度を引いたものをSとします。

結果は
  • 元画像: 天体部分の輝度 411.3、背景部分の輝度: 404.6、背景部分のノイズ:1.21
  • ビニング画像: 天体部分の輝度 308.1、背景部分の輝度: 301.3、背景部分のノイズ:0.73
でした。この結果からS/Nを計算すると
  • 元画像のS/N: (411.3-404.6) / 1.21 = 5.54
  • ビニング画像のS/N: (308.1-301.3) / 0.73 = 9.32
となり、S見事に予想通り、2倍のソフトウェアビニングで2倍程度のS/Nの改善になっています。このことは、PC上のソフトウェアビニングが実際に十分な効果があるということを示しています。もちろんその分、分解能は犠牲になっています。

さて、S/Nは向上しましたが、実際に画像処理で本当に効いてくるのかどうかは興味深いところで、次の課題と言えるでしょう。


さらにBXT

ソフトウェアビニングが理屈通りに効果があることがわかってきたので、次にBXTでの分解能が改善するかを見てみましょう。これまでの議論から、Drizzle x2を欠けていることが前提です。パラメータはデフォルトの、
  • Sharpen Stars: 0.5, Adjust Star Halos: 0.0, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 0.50
としています。左が元の画像、右がソフトウェアビンニングしたものです。
BXT_s

恒星については、どちらも小さくなっていて、結構近い大きさになっています。微恒星に関しても、ビニングした方もほとんど取りこぼしなどもなさそうです。これはすごいですね。

その一方、背景の細部出しについては、元画像もビニング画像も、BXTの効果は共にほとんど見られず、差は縮まったりしなくて、依然としてビニングした方は細部が出ていないように見えます。BXT2はBXT1に比べて背景が出にくくなっているので、そのせいかとも思い、この後両方ともにBXT2を背景のみに複数回かけましたが、はっきり言ってほとんど変化が見られませんでした。さらに、AI4からAI2に戻してBXT1相当にしてかけてみても、効果がほぼ何もみられませんでした。

どうも天体部分がまだ淡すぎる、もしくは天体と背景のS/Nが低すぎるのかと思っています。ブログで示した画像は目で見えるようにストレッチしたものを掲載していますが、ストレッチ処理前の画像は真っ暗です。S/Nを見ても最も明るいところでわずかわずか5とか10で、背景との輝度差にするとわずが7 [ADU]程度で暗すぎるのです。少しストレッチしてコントラストを上げて、背景との輝度差を付けてからBXTをかけるとかの対策が必要かもしれません。

とりあえずOIIIに加えて、Hα、恒星のためのRGBの撮影も完了しているので、次は画像処理です。BXTの効果についても、仕上げまで持っていく際にもう少し検証できればと思います。


まとめ

今回の検証で2倍のソフトウェアビニングで実際にS/Nが2倍得することはわかりました。これは撮影時間にしたら4倍長くしたことに相当し、今回10時間撮影しているので、実行的に40時間撮影していることと同等です。もしCMOSカメラのbin2をそのままのbin1で撮影した時と比べるとさらに4倍で、160時間撮影したことと同等になります。分解能は当然犠牲になります。

さらにDrizzle2倍 x BXTで、恒星に関しては分解能をかなりのレベルで回復できることは分かりましたが、背景に関してはほとんど効果がないことが判明しました。ある程度広域で見た天体であること、かなり淡いので詳細はあまり見えないことなどもあり、分解能はそこまで必要ないと考えることもできますが
少し悔しいところです。淡すぎて背景との輝度差がほとんどないことが原因かと思われます。


日記

正月に能登半島で最大震度7という大きな地震がありました。その時私は実家の名古屋にいたのですが、名古屋でも大きく揺れました。すぐに富山に残っていた家族に電話をしたのですが、これまでに体験したことがないような揺れだったそうで、立っていることもできなかったそうです。

元々、元日夜に車で富山に戻ろうとしていたのですが、安全を考えて2日の明るいうちの移動としました。自宅に着いて部屋とかを見てみましたが、自宅は富山市内でも山川に近い比較的南の方で、幸いなことに何かが倒れるとかいう被害もほとんどありませんでした。天体機材もほぼ無事で、棚の上の方に置いてあった空箱が一つ落ちたくらいでした。

自宅周りは地盤的にも比較的頑丈なのか、近所の人に聞いてもほとんど大きな被害を聞くことはなかったです。その一方、少し離れた川に近いところや、富山の少し中心街に近いところは、自宅から大した距離でなくても、そこそこ被害があったと聞いています。さらに富山駅より北側、富山県の西部、金沢などはかなりひどいところもあったのことで大変だったようです。震源地に近い能登半島は、日が経つにつれ被害の状況が伝わってきて、想像をはるかに超える被害でとても心が痛みます。石川の星仲間もいるので、無事を祈るばかりです。

今週末は気温が下がり、場所によっては雪も降るとのことです。被害のひどいところでは平時の生活に戻るまではまだかかるかと思いますが、一刻も早い復旧を願って止みません。

前前々回の記事でクワガタ星雲のSAO合成をしました。



せっかくなのでいつものようにAOO合成もするのですが、普通にAOO合成をするとHαの淡い構造とかが一切出てきません。これが不満で、色々試してみました。


Hαの情報量

AOO合成をして、オートストレッチすると大体これくらいです。
Image21s

きちんとクワガタの形が出ています。でも、Hαだけの画像を見るとまだまだ模様がいっぱい残っているんです。

Hα画像を強オートストレッチしてみます。
FILTER_A_mono_drizzle_2x_integration_ABE1_ABE2_ABE4s
すごい模様が出てきます。一番暗いところが背景だとしたら、多少なりとも明るいところはなんらかのHα成分が存在していると考えていいでしょう。普通にAOO合成した画像に、このHαの模様が活かされ切っているとはさすがに言い難いのかと思います。今回はこれをどこまで表現できるかやってみたいと思います。


まずはどこまで出そうか、テスト

まずAOO合成させたものを、強オートストレッチして、さらに微調整します。
Image21_strongs
ここらへんまで出せたらHαを使い切っていると言えそうですが、いくつか問題点があります。
  1. 右真ん中に大きな黒い窪みがある。
  2. 赤がサチりかけているところがある。
  3. 星がうるさい。
くらいでしょうか。一つづつ片付けます。


1. フラット化の大切さ

まず1の黒い窪みですが、普通にAOO合成したら対して問題にならないのですが、淡いところを頑張って出そうとすると目立ってしまいます。これはOIII画像に残っていた、ε130Dの迷光の残りのようです。今回は撮影時に鏡筒にフードもつけていますし、もちろんフラット補正もしています。それでも強あぶりで、これくらいのフラットの誤差が出てくるようです。ここまででもHα、OIII共にABEの1次と2次と4次をかけていますが、さらにOIIIにDBEをかけて窪みをとることにしました。その結果が以下になります。
Image24_strongs
窪みは目立たなくなり、さらにもう少し炙り出すことができるようになりました。

しかしながら窪みが目立たなくなったことで、今度は右上に注目すると、赤が構造なしでのっぺりしている気がします。本当にHα成分があるのか、カブリなのか見極めが難しいところです。仮にカブリだとすると、ここだけをうまく取り除くのは結構難しそうです。

今回は、ABEの2次を再度かけ、右上と、左下の赤も少し緩和するようにしました。もっとはっきり除いてもいいのですが、そもそもここら辺の領域を強度に炙り出しいる参考画像がほとんどなく、何が正解かよくわかりません。これ以上やると恣意的な操作になると判断し、今回はそのままで残しました。
Image24_ABE1s
こういったカブリ問題は、将来PixInsightのMARSプロジェクトがうまくいったら解決するのかもしれません。



情報を余すところなく引き出して炙り出す場合、上の操作のように「正しい背景にするというよりは、あぶり出しやすいように、できる限りあらかじめフラット化させておく」方向になるのかと思い思います。そのため、フィルターやセンサー面についているゴミはうまくフラット補正で除けないと、強あぶり出しの際にとんでもなく目立ってしまったり、周辺減光や迷光もフラット処理がうまくいかないと、そこの輝度差で制限されてしまって炙り出しが十分できないなど、致命的になる可能性があります。

先日の記事のように
最近はソフトの力でかなりの補正が効くようになってきていますが、BXTは分解能は出せても淡いものを出すことにはほとんど助けになりません。ソフトで補正が効かないこともたくさんあり、今回のように淡い構造を引き出し切ろうとすると、光学機器の段階での丁寧な汚れの除去や迷光処理、確実なフラット補正がとても大切だと言うことも肝に銘じておきたいものです。

次に、SPCCでナローバンドを選び、AOOの正しい波長と、手持ちのフィルターの波長幅を入力します。重要なことは、ニュートラルバックグラウンドをどこにするかです。プレビューで一番暗いところを選択して「Region of interest」に設定しておいた方がいいでしょう。これをしないと、赤が再び出にくくなったり、暗いところが緑がかったりしてしまいます。RGB画像を別撮りなどしていない場合は「Oprimize for stars」にチェックを入れておくと、星の色を優先的に最適化するとなっていますが、試したところ少なくとも今回は大きな違いはわかりませんでした。SPCCがうまくいくと、赤がかなり残った状態で色バランスが取れるようになります。


2. 恒星にはBXT

次に2の星がうるさいことですが、やり方は色々あると思います。今回は簡単にBXTを使ってしまいましょう。恒星も併せて十分にあぶり出しても、恒星自身が小さければ、全体を見た時のうるささは緩和されるはずです。今回はHαの淡いところを画面全体で見せたいので、トリミングやバブル星雲のところのみを拡大することなどは考えていないです。そのためSAO合成の時よりもBXTの効果は緩和させて
  • Sharpen Stars: 0.25, Adjust Star Halos: -0.30, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
としました。


3. ストレッチは迷うところ

最後に3のサチり気味(=飽和気味)の赤をどう扱うかです。ストレッチをいかにうまくするかと言う問題です。

既に赤は色が十分出ているので、ArcsinhStretchは色が濃くなりで使えませんでした。意外なのがMaskedStretchが本来マスクで、本来はきちんとサチるのを保護してくれるはずなのに、赤のサチりを強調してしまい使えなかったことです。結局ここでは、HistgramTransformationで恒星が飽和しない範囲で軽くストレッチして、ここでStarNet2で恒星と背景を分離し、その後背景のみ必要なところまで強調しました。その後、私の場合はPhotoshopに引き渡して最終調整します。


仕上げ

最後のPhotoshopは個人の好みによるところも大きいでしょう。今回は赤の淡いところを残します。OIIIの青を少し持ち上げて色調を少しでも豊かに見せるのは、いつもの手段です。赤ももう少しいじって、強弱をつけたりします。それでも色相(RGBをそれぞれどれだけストレッチするかと、各色のブラックポイント)自体はSPCCで決めたので、それ以上は触っていません。

結果です。
Image24_ABE1_SPCC_BXTSS025_HT2_s_cut

元がHαとOIIIの高々2色なので、前回のSAOと比べてもどうしても赤でのっぺりしてしまうのは避けられません。実はAOOにする前に、なんとかSIIを使えないか、いろいろ比率を変えて試しました。複雑な比率にして、そこそこよさそうな候補はいくつかあったのですが、結局AOOのシンプルさを崩すほどいい配色は見つからず、結局今回はSIIは使わずじまいです。いつかHαとOIIIとSIIまで使った擬似RGB配色で自然に見える組み合わせが見つかるといいですが、少なくともAOOを凌駕するものでないとダメだと思うので、そんなに簡単ではないと思います。

今回のHαを余すことなく引き出すAOOですが、懸念事項の一つは画面全体が赤に寄ってしまう印象を受けることです。でも赤にのみ構造がある限り、そこを出そうとすると赤を底上げする以外に今の所いい方法を思いつきません。アメペリも同じように処理をしていて、こちらも背景が赤いですが、それでも暗いところは存在していて、それ以上明るいHαが全面近くに渡り散らばっています。

今回、やっとこのAOO手法を言語化して記事にしたことになります。他に、全体をもう少しニュートラルに寄せて、Hαにふくまれる淡い構造もきちんと強調できる方法を探していきたいと思います。


まとめ

前回の記事で年末の挨拶をしてしまったのですが、今回の記事が本当の2023年最後の記事になります。 年が明けてからのんびりまとめようと思ったのですが、大晦日に少し時間があったので、まとめてしまいました。

クワガタ星雲をとおしてSAOとAOOの議論を少ししたことになります。でもまだ十分かというとそうでもなく、SAOの色がまだハッブルパレットと違う気もしますし、AOOは全画面真っ赤問題をなんとかしたいです。所詮人工的な色付けになるので、多少色相とかいじってもいい気もするのですが、今のところはまだ躊躇しています。理由は再現性がなさそうなところです。複雑になりすぎないというのも重要かと思います。何かいい方法はないのか?今後も探していくことになるでしょう。またいい方法があったら記事にします。


日記

最近はブログ記事を休日のガストのモーニングで書くことが多いです。以前はコメダのモーニングのみでしたが、最近はガストと半々か、ガストの方が多いくらいです。ガストのドリンクバーが飲み放題でいいのと、最近はマヨコーンピザが安くて美味しいからです。多分田舎のガストなので、朝はガラ空きで、混んでくるランチタイムくらいまでは長居も可能なので、とても居心地がいいです。同じようにPCを広げている常連さんも何人かいます。この記事も最後の仕上げを大晦日にガストで書いています。

これから実家の名古屋に向かいます。元旦は実家で、おせちをつまみながらのんびり過ごす予定です。残念ながら新年2日の北陸スタバ密会は中止になってしまいました。時間が少しできるので、またノイズ計算の方を進めたいと思っています。


2023年に撮影した天体写真のまとめです。2022年のまとめはこちらにあります。

2023-12-30 - miyakawa


SCA260

「M106」
Image249_a_conv5x3_bconv5x3_Lab_CTx3_SCNR_HT_SCNR_BXT_bg4_cut
  • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時9分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGBHα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:44枚の計158枚で総露光時間13時間10分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M27: 亜鈴状星雲」
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M101での超新星爆発」
masterLight_BIN_1_8288x5644_300_00s_L_integration_ABE1_DBEcrop2
  • 撮影日: 2023年5月17日22時21分-5月18日3時8分(JST)、5月17日13時21分-18時13分(UTC)、2023年5月24日21時58分-23時1分(JST)、5月24日12時58分-14時1分(UTC)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (0℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間5分x47=235分 =3時間55分(爆発前)、5分x10=50分(爆発後)
  • Dark: 0度、Gain 120で、露光時間5分x44枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 0.01秒x128
  • 画像処理: PixInsight


ε130D

「北アメリカ星雲とペリカン星雲」
Image14_SXT_for_O_AOO_SPCC_ABE1_BXT_NXT_ABE4_MS3_s_cut
  • 撮影日: 2023年5月3日1時22分-2時9分、5月3日23時44分-5月4日3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間5分、Hα: 30枚、OIII: 22枚の計28枚で総露光時間4時間50分
  • Dark: Gain 240、露光時間5分、温度-10℃、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain240、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


 NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲
AOO_crop_SPCC_BXT_HT_HT_NXT_bg_more_s
  • 撮影日: 2023年5月16日2時14分-3時32分、5月17日2時1分-2時42分、5月17日0時12分-1時49分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 21枚、OIII: 19枚の計40枚で総露光時間3時間20分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、118枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.2秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「おとめ座銀河団」
final_50

「マルカリアンの鎖」
Markarian_large

「M99とNGC 4298、4302」
M99

「M88とM91
M88_M91
  • 撮影日: 2023年5月15日21時1分-16日0時7分、5月16日21時2分-23時23分、5月17日21時0分-23時6分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO LRGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、露光時間5分、L: 55枚、R: 11枚、G: 8枚、B: 11枚の計85枚で総露光時間7時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、37枚
  • Flat, Gain100、L: 0.01秒、128枚、RGB: 0.01秒、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、0.01秒、256枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-240: スパゲティ星雲」
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  • 撮影日: 2023年11月21日0時8分-5時23分、11月21日22時48分-22日2時25分、11月22日22時14分-23日3時14分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 48枚、OIII: 70枚、R: 9枚、G: 9枚、B: 9枚、の計145枚で総露光時間12時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「Sh2-157: クワガタ星雲」
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「バブル星雲」
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  • 撮影日: 2023年11月21日19時5分-21時22分、11月22日18時27分-22時5分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、SII6.5nm、
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 28枚、OIII: 24枚、SII: 23枚の計75枚で総露光時間6時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、SII: 1秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


再処理

「NGC6888: 三日月星雲」
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  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「IC4592: 青い馬星雲」
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  • 撮影日: 2022年5月6日0時10分-2時57分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x55枚で総露光時間2時間45分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「NGC2359: トールの兜星雲」
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  • 撮影日: 2022年1月22日22時2分-23日2時5分、1月27日18時57分-21時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα:7nm、OIII:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: オフアクシスガイダー + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα27枚、OIII36枚の計63枚で総露光時間3時間9分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間0.2秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

「M51:子持ち銀河」
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  • 撮影日: RGB: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分、LとHa: 2023年3月29日20時17分-3月30日4時34分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240で露光時間10分がR: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Gain 240で露光時間5分がL: 47枚、Hα: 21枚の計27枚で総露光時間240+340 =580分 =9時間40分
  • Dark: Gain 240で露光時間10分が64枚、Gain 240で露光時間5分が128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240で露光時間 RGB: 0.03秒、L: 0.01秒、Hα: 0.2秒、 RGBがそれぞれ64枚、LとHαがそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


まとめと反省

今年は枚数がそれほど多くなく、再処理も合わせて12枚でした。撮影だけして未処理のものもまだ4枚ほどあるので、実際にはもう少し多いですが、処理に時間がより長くかかったりしていたり、忙しく処理せずに放っておいたらそのままというのもあるので、その意味でも少し反省しています。

これまで撮ったことのない新規天体が「M106」と「クワガタ星雲」2つ、今継続撮影中でまだ未処理の「ダイオウイカ星雲」と「ドルフィン星雲」を入れても4つです。クワガタ星雲ついでの「バブル星雲」を入れても5つです。やはり少ないですね。

過去に撮ったことのある天体のリベンジは「M27亜鈴状星雲」「北アメリカ、ペリカン星雲」「網状星雲」「おとめ座銀河団」「スパゲティ星雲」の5つです。だんだん新規天体より既存天体の取り直しの割合が増えています。もしかしたらこれはダメな方向かもしれません。でもどれも再撮影の甲斐は十分にあって、あからさまに進化しているのがほとんどなので、それはそれで満足です。

「M101」は超新星爆発があったので楽しめましたが、もともとLだけ撮って既存のRGBと合わせての再処理のつもりだったので、もし何も起こらなかったらお蔵入りだったかもしれません。同様の再処理が「M51子持ち銀河」で、こちらも元々RGBのみの撮影で、さらにL画像だけ新たに撮ってLRGB合成しています。

画像処理側での再処理が「三日月星雲」「青い馬星雲」「トールの兜星雲」の3つです。主にBXTでの改善です。三日月とトールの兜は見た目にもあからさまに解像度が増しました。青い馬は収差の改善なので、拡大しないと分かりませんが、BXTの収差補正の可能性を示すことができました。BXTは最近バージョン2のAIバージョン4というアップデートがあり、さらに格段に進化しているので、再々処理をしてもいいのかもしれません。もしくは、BXT1では補正しきれなかったもっと過去の画像を再処理しても、さらに格段に改善されるかもしれません。2023年はBXTで始まり、さらに年末もBXT2で盛り上がったと言えるでしょう。

枚数はそれほど多くはありませんでしたが、それでも十分に楽しめた天体撮影でした。その一方、太陽や月はあまり盛り上がりませんでした。太陽は休日と晴れの日が中々合わないのと、粒状斑が今のところうまく出ていなくて動機がだだ下がり気味です。月も2022年末に皆既月食があり盛り上がりすぎたので、その反動か2023年はほぼ活動ゼロです。

そもそも今年は晴れの日が少なかったのですが、新鏡筒のε130Dはちょうど今かなり楽しめています。とにかく最初から分解能がものすごくて、出だしこそ星像流れでのんびりでしたが、バックフォーカスがきちんとあってからは、今現在も撮影していることを含めてかなりの稼働率です。その分、重いSCA260の稼働率が減ってきていますが、実は焦点距離430mmのε130D+フルサイズくらいの広角の対象はそれほど多いわけではないので、いずれまた1300mmのSCA260+フォーサーズに帰っていくでしょう。

ε130DとSCA260の比較で、取り付けてあるカメラも考えると、画角が一辺で6倍くらい面積だと36倍くらい違うので、その中間くらいがあるといいなと思い始めています。しかも自宅でスカイノイズが大きいので、効率のいいできるだけ明るい鏡筒がいいです。今ある手持ちだと焦点距離800mmでF4のBKP200とかでしょうか。これにあまり大きくない、例えば今と同じASI294MMとか取り付けるか、いっそのこと使っていないカラー冷却のASI294MC Proでもいいかもしれません。コマコレクターは持っているのですが、ε130DやSCA260に比べるとそれでも多少星像は伸びるので、BXT2が前提になると思います。

こんなふうに、来年もまた夢が広がりそうです。

いつも長いブログ記事を読んでいただいてありがとうございます。ネットでの付き合いの方、直接お会いした方、この一年たくさんの方々と関わることができました。一年間本当にお世話になりました。

2024年も、良い年でありますように。また今後とも、よろしくお願いいたします。


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